「仕事が続かない」と検索する方の多くは、たぶん一度や二度ではない経験を抱えています。入ったときは大丈夫だと思っていた。数か月は通えた。それなのに、ある時期から体が動かなくなって、また辞めることになった。そういうことが何度か重なると、原因は自分の性格にあるのだろうという結論に、いつのまにか落ち着いてしまいます。

その結論をここで否定することはしません。自分のことがいちばんよく分かるのは自分だからです。ただ、一つだけ先に書いておきます。続けられるかどうかは、その人の中身だけで決まるものとして制度が作られていないということです。就職して終わりではなく、その先を支えるサービスが、法律と省令の中に名前を持って存在しています。

この記事は、その仕組みの説明です。慰めの言葉は少なめにして、どこに行けば誰が何をしてくれるのかを、法令と厚生労働省の資料で確認できる範囲だけ並べます。診断を受けている方も、受けていない方も読めるように書きました。何が要るのかは支援ごとに違うので、そこも分けます。

続かないときに、性格より先に見られる「条件」があります

不調で働けなくなるという出来事について、国の側は病名から入っていません。令和8年4月1日から適用されている治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)は、対象となる疾病を次のように定めています。

国際疾病分類に掲げられている疾病であって、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なもの。

病名のリストではありません。医師が「続けて治療が要る」と判断し、働き続けるうえで配慮が必要かどうか、という基準です。同じ指針は、雇用形態にかかわらず労働者すべてを対象とするとも書いています。

もう一つ、押さえておきたい条文があります。この指針の根拠になっている労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第27条の3第1項です。

事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によつて疾病又は負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

努力義務ではありますが、働き続けられなくなりそうな人への対応は、会社が任意でやる親切ではなく、法律に書かれた事業主の課題として位置づけられているということです。ここから話を始めれば、「自分が弱いから」という説明を一度脇に置くことができます。

辞める前に、会社の中で使えるもの

先に会社の中の話をします。すでに退職を決めている方は、この節は飛ばして次に進んでください。

就業規則に何が書いてあるかは、読めば分かります

続けられるかどうかを左右する条件のうち、いちばん確かめやすいのが自分の会社の規定です。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を義務づけていて、休憩・休日・休暇に関する事項は必ず書かなければならない項目に入っています。休職の制度を設けている場合も、同条第10号の「当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項」として書かれます。

そして労働基準法第106条は、使用者に対して、就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示するか、備え付けるか、書面を交付するなどの方法で労働者に周知させなければならないと定めています。読ませてもらえないのが普通、という状態のほうが法律の想定から外れています。人事や総務に、休職と休暇に関する規定を確認したいと伝えれば、見せてもらえるのが原則です。

休職そのものの進め方は休職の手続きと過ごし方に、復職の進め方は復職の進め方にまとめています。

産業医や保健師と話す道が、法律で用意されています

労働安全衛生法第13条第1項は、政令で定める規模の事業場ごとに産業医を選任することを事業者に義務づけています。その規模は労働安全衛生法施行令第5条で常時50人以上の労働者を使用する事業場と決まっています。50人以上の会社であれば、産業医がいるはずです。

産業医との面談につながる道のうち、本人が動かせるものが二つあります。

一つはストレスチェックの結果を受けた面接指導です。労働安全衛生法第66条の10第3項は、検査の結果を通知された労働者のうち、心理的な負担の程度が省令で定める要件に該当する人が医師による面接指導を希望する旨を申し出たときは、事業者は面接指導を行わなければならないと定めています。同じ項の後段に、こう書かれています。

この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。

面接指導の結果に基づいて医師の意見を聴き、必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少といった措置を講じなければならないとも書かれています(第66条の10第5項・第6項)。申し出ることそのものが不利益の理由にならない、と条文に明記されている手続きだと知っておくと、少し使いやすくなると思います。

ただし、ストレスチェックの実施は50人未満の事業場では義務ではありません。労働安全衛生法の附則第4条が、産業医の選任義務がある事業場以外については、当分の間「行うよう努めなければならない」と読み替えると定めているためです。会社に産業医もストレスチェックもない場合は、都道府県の産業保健総合支援センターが相談を受け付けています。

もう一つは長時間労働についての面接指導です。労働安全衛生法第66条の8第1項は、労働時間の状況などが省令で定める要件に該当する労働者に対して、医師による面接指導を行わなければならないとしています。こちらも結果に基づいて就業上の措置を検討する仕組みです。

治療を受けながら働くための進め方は、指針に書かれています

治療と就業の両立支援指針は、進め方を順番で示しています。大事なのは最初の一歩なので、そこを引用します。

治療と就業の両立支援の検討は、支援を必要とする労働者からの申出から始まる。

会社が気づいてくれるのを待つ設計ではありません。申し出た人が、主治医から次の情報をもらって会社に出す、という流れです。

  • 症状、治療の状況(現在の症状、入院や通院の必要性とその期間、通勤や業務遂行に影響を及ぼしうる症状や副作用の有無とその内容など)
  • 就業継続の可否に関する意見
  • 望ましい就業上の措置に関する意見(避けるべき作業、時間外労働の制限、出張の可否など)
  • 治療に対する配慮が必要な事項に関する意見(通院時間の確保や休憩場所の確保など)

そのあと会社は、主治医から出た情報を産業医等に提供して意見を聴き、就業継続の可否を判断します。指針は、判断に当たって疾病にり患していることをもって安易に就業を禁止するのではなく、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講ずることによって就業の機会を失わせないようにすることに留意が必要だと書いています。

続けられる形にするための制度の例も並んでいます。時間単位の年次有給休暇、傷病休暇・病気休暇、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務制度、試し出勤制度の6つです。このうち時間単位の年次有給休暇だけは労働基準法にもとづくもので、労使協定を締結すれば年5日の範囲内で取得できます。ほかは事業主が自主的に設ける制度なので、あるかどうかは会社によります。就業規則を見るときに、この6つを探してみてください。

「配慮してほしい」を制度の言葉にすると、合理的配慮になります

もう一つの入口が、障害者雇用促進法の合理的配慮です。手帳を持っていない方も関係があるので、定義から確認します。

同法第2条第1号は「障害者」を、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者と定めています。ここに手帳の話は出てきません。企業の雇用率に数えられる「対象障害者」(第37条第2項)のほうには手帳の要件がありますが、合理的配慮の対象はそれとは別の定義です。

そのうえで第36条の3は、事業主に対して、障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備や援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないと定めています。過重な負担になるときは除かれます。さらに第36条の4第2項は、事業主に、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。

具体的な手続きは合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)に書かれています。読んでおくと気が楽になる記述が三つあります。

「障害者は、事業主からの確認を待たず、当該事業主に対して自ら職場において支障となっている事情を申し出ることが可能であること」。呼ばれるのを待たなくてよい、ということです。

「障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りること」。どうしてほしいかを整理しきれていなくても、困っている事情を伝えれば手続きは始まります。そのあと会社が実施可能な措置を示して話し合う、という順番が指針に書かれています。

「合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に当該障害者を補佐することを求めても差し支えないこと」。ひとりで会社と交渉する構図にしなくてよい、という根拠がここにあります。

指針の別表には、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例が障害の種類ごとに挙げられています。精神障害の欄の「採用後」に並んでいるのは次の6つです。あくまで例示であり、これに限られるものでも、必ず実施されるものでもないと指針自身が断っています。

  • 業務指導や相談に関し、担当者を定めること
  • 業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
  • 出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
  • できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
  • 本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
  • 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

正直に書いておくべきことも指針にあります。採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払っても労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、提供義務違反を問われないと明記されています。伝えなければ義務は発生しません。何をどこまで伝えるかは選べますが、まったく伝えないまま配慮だけが降ってくる制度ではない、というのが実際のところです。

就職したあとを支える公的な仕組みは、4つあります

ここからがこの記事の本題です。働き始めたあとを支える公的な仕組みは、大きく4つに分かれます。まず、どこに行けば何をしてもらえるかを一覧にします。

どこへ 何をしてもらえるか 使える人 期間 お金
就労定着支援の事業所(通っていた事業所か障害者就業・生活支援センター) 月1回以上の面談と、会社・医療機関・福祉サービスとの連絡調整 生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援を利用して就職し、就労の継続が6か月を経過した方 3年(延長不可) 障害福祉サービスの負担上限月額。非課税世帯は0円
地域障害者職業センター 職業評価、職業リハビリテーション計画の策定、職業指導、職業準備支援 障害のある方(求職中でも在職中でも) 個別に設定 無料
ジョブコーチ支援(申込みは地域障害者職業センター) 職場にジョブコーチが出向いての支援。本人にも会社にも助言する ジョブコーチによる職場での支援が必要な方(求職者または在職者) 標準2〜4か月(1〜8か月の範囲で個別に設定) 配置型は無料
障害者就業・生活支援センター 就業面と生活面の一体的な相談・支援 就業とそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある方 定めなし 無料

以下、一つずつ見ていきます。

1. 就労定着支援は、就職後6か月から3年間のサービスです

就職してから就労定着支援が終わるまで

就職から6か月
就労定着支援(3年間)
通っていた事業所が相談を続ける期間支給決定は1年ごとに更新
就労定着支援を使えるのは、生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援のいずれかを利用して就職した方に限られます。3年の標準利用期間を超えて更新することはできません。

就労定着支援は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスの一つです。法第5条第16項が、就労に向けた支援として省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者について、省令で定める期間にわたり、その事業所での就労の継続を図るために必要な連絡調整その他の便宜を供与することと定めています。

省令の中身は3つに分かれています。

施行規則 定めていること 中身
第6条の10の2 前提となるサービス 生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援
第6条の10の3 利用できる期間 3年間
第6条の10の4 支援の内容 会社の事業主、障害福祉サービス事業者、医療機関その他の者との連絡調整、雇用に伴い生じる日常生活または社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導、助言

ここがこの制度のいちばんの分かれ目です。就労定着支援は、誰でも使えるサービスではありません。厚生労働省の介護給付費等に係る支給決定事務等について(事務処理要領)は、対象者を次のように書いています。

就労移行支援等を利用した後、通常の事業所に新たに雇用された障害者であって、就労を継続している期間が6月を経過した障害者。

つまり、自分で求人に応募して就職した方や、ハローワークの紹介だけで就職した方は対象になりません。この4つのサービスのどれかを経由していることが条件です。就労移行支援がどういうサービスかは就労移行支援とは何かに、就労継続支援B型については就労継続支援B型はどんな人が使えるかに、A型については就労継続支援A型とは何かにまとめています。

6か月という期間にも意味があります。指定基準第182条は、就労移行支援の事業者に対して、利用者が就職した日から6月以上、職業生活における相談等の支援を継続しなければならないと定めています。最初の6か月は通っていた事業所が支え、そのあとを就労定着支援が引き継ぐという組み立てです。同条第2項は、6か月以上の支援が終わったあとすみやかに就労定着支援を受けられるよう、就労定着支援事業者との連絡調整を行わなければならないとも定めています。橋渡しまで基準に書かれています。

支援の頻度も基準にあります。指定基準第206条の8第2項は、1月に1回以上、利用者との対面またはテレビ電話装置等を用いる方法その他の対面に相当する方法により支援を行うとともに、1月に1回以上、利用者を雇用した事業所の事業主を訪問することにより職場での状況を把握するよう努めなければならないとしています。本人だけでなく、会社の側にも月1回のペースで足を運ぶ設計です。

事業所なら好きに手を挙げられるわけでもありません。指定基準第206条の7は、就労定着支援を行える事業者を、生活介護等の指定障害福祉サービス事業者であって、過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの、または障害者就業・生活支援センターに限っています。人員の基準では、利用者の数を40で除した数以上の就労定着支援員を置くこととされています(第206条の3)。

期間は3年で終わります。事務処理要領は、自立訓練などについては市町村審査会の個別審査を経て最大1年の更新ができるとしたうえで、就労定着支援については3年間の標準利用期間を超えて更新することはできないと明記しています。支給決定そのものは1年ごとの更新です。

利用に何が要るかも書いておきます。就労定着支援は障害福祉サービスなので、市区町村が交付する障害福祉サービス受給者証が必要です。ただし事務処理要領は、身体障害者を除き、支給決定を行うに際して障害者手帳を有することは必須要件ではないと明記しています。精神障害の場合、市町村は年金証書、自立支援医療受給者証(精神通院医療)、医師の診断書などで確認します。費用は世帯の所得に応じた負担上限月額で、市町村民税非課税世帯は0円です。18歳以上の方の「世帯」は本人と配偶者で判断するので、親と同居していても親の所得は入りません。この点は就労移行支援とは何かに詳しく書いています。

2. ジョブコーチは、職場まで来てくれます

JEEDの説明によれば、職場適応援助者(ジョブコーチ)支援は、障害者職業カウンセラーが策定した支援計画にもとづいて、ジョブコーチが職場に出向いて直接支援を行うものです。新しく就職するときだけでなく、雇用後の職場適応支援も行うと明記されています。すでに働いている人が使える支援だということです。

厚生労働省の説明では、ジョブコーチは4種類に分かれます。地域障害者職業センターに配置される配置型、就労支援を行う社会福祉法人等に雇用される訪問型、障害者を雇用する企業に雇用される企業在籍型、そして他のジョブコーチへの助言や支援のコーディネートを行う上級ジョブコーチです。地域障害者職業センターに相談すると、配置型ジョブコーチによる支援が行われます。

支援の中身は、本人と会社の両方に向いています。JEEDが挙げている例は、本人に対しては仕事に適応する(作業能率を上げる、作業のミスを減らす)ための支援と、人間関係や職場でのコミュニケーションを改善するための支援、会社に対しては障害を適切に理解し配慮するための助言と、仕事の内容や指導方法を改善するための助言・提案です。家族に対する助言も挙げられています。

進め方は集中支援期と移行支援期の2段階です。最初は課題を改善するための支援を集中的に行い、そのあと支援方法を事業所の担当者に伝えて、支援の主体をジョブコーチから職場へ徐々に移していきます。期間は個別に設定されますが、標準的には2〜4か月、幅としては1か月から8か月の範囲です。

短いと感じるかもしれませんが、これは設計上そうなっています。厚生労働省の説明には、ジョブコーチが行う障害者に対する支援は、事業所の上司や同僚による支援(ナチュラルサポート)にスムーズに移行していくことを目指していますと書かれています。ジョブコーチがいる間だけ楽になるのではなく、帰ったあとも職場の中で支援が続く状態を作るのが目的です。支援終了後も必要なフォローアップが行われるとされています。

3. 地域障害者職業センターは、試して確かめる場所です

地域障害者職業センターは、JEEDが各都道府県に1か所(ほかに支所5か所)設置している機関です。JEEDの就職支援・相談窓口のページは、ハローワークと協力して、就職に向けての相談、職業能力等の評価、就職前の支援から、就職後の職場適応のための援助まで、個々の状況に応じた継続的なサービスを提供していると説明しています。

行うことは大きく3つです。職業評価は、就職の希望などを把握したうえで職業能力等を評価し、それらを基に、職場に適応するために必要な支援内容や方法を含む個人の状況に応じた支援計画(職業リハビリテーション計画)を策定するものです。職業指導は、適切な職業選択が行えるように、また職場で安定して働き続けられるように相談や助言を行うものです。

そして職業準備支援は、就職または職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能等の向上を図るための支援です。一人ひとりの状況に応じて、次の3つのメニューを組み合わせた個別カリキュラムが作られます。

  • 障害特性や職業上の課題の把握及び改善に係る支援。さまざまな作業や講座を通して、基本的な労働習慣を身につけたり、自分に合った働き方を見つけたりする
  • 職業に関する知識の習得に係る支援。履歴書の書き方や面接の受け方などの講座
  • 社会生活技能等の向上に係る支援。対人技能、ストレス対処、障害特性の整理等の講座

「自分にはどんな働き方が合うのか」という問いに、記事は答えられません。答えが出るのは、実際に作業をして、疲れ方や集中の続き方を見てからです。職業準備支援は、その確かめを支援つきでやるための場所だと考えてください。終了後はハローワークによる職業紹介やジョブコーチ支援につなげていくとされています。

利用料は無料です。JEEDの「わかりやすい版」のページに「利用料は無料です」と明記されています。利用にあたっては、あらかじめ電話かFAXで連絡してくださいとされています。

精神疾患のある方については、精神障害者総合雇用支援という枠があります。JEEDのページは対象を精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方、または医師の診断書等により躁うつ病(そう病、うつ病を含む)、統合失調症その他の精神疾患を有していることが確認できる方と説明しています。手帳がなくても、診断書等で確認できれば対象になるということです。主治医との連携のもとで、雇用促進、職場復帰、雇用継続のための専門的支援が行われます。休職中の方が使う職場復帰支援(リワーク支援)も、この枠組みの中にあります。リワークの中身はリワークとは何かにまとめました。

4. 障害者就業・生活支援センターは、生活のほうも一緒に見ます

障害者就業・生活支援センターは、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携のもと、身近な地域で就業面と生活面の一体的な支援を行う機関です。厚生労働省によれば、令和8年4月1日時点で全国に340箇所設置されています。現場では「なかぽつ」と呼ばれることがあります。

厚生労働省が公表している概要には、業務の中身がこう整理されています。

中身
就業面 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)、特性や能力に合った職務の選定、就職活動の支援、職場定着に向けた支援、雇用管理についての事業所への助言、関係機関との連絡調整
生活面 生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言、住居、年金、余暇活動など地域生活・生活設計に関する助言、関係機関との連絡調整

体制は、就業支援担当者2〜7名と生活支援担当者1名です。センター窓口での相談だけでなく、職場や家庭への訪問も行われます。

このセンターが他の3つと違うのは、生活のほうを一緒に見るところと、期間の定めがないところです。仕事が続かない理由が職場の中だけにあるとは限りません。睡眠のリズム、通院の続き方、家賃と収入の関係といったところが崩れて働けなくなることもあります。そこまで含めて相談できる窓口は、公的な機関ではここになります。就労定着支援の3年が終わったあとの相談先としても現実的な選択肢です。指定基準第206条の7が就労定着支援の実施主体としてこのセンターを挙げているのも、そのつながりからです。

定着について、公的に分かっていること

数字を一つ紹介します。ただし、数字だけを切り取ると誤読するので、何の調査なのかを先に書きます。これは2015年に就職した方を1年間追跡した調査で、いま読める公的な職場定着率のデータとしては、これが最新です。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)障害者職業総合センターの障害者の就業状況等に関する調査研究(調査研究報告書No.137、2017年4月発行)です。2015年7月1日から8月31日までの2か月間に、全国134か所の公共職業安定所(ハローワーク)の専門援助部門の紹介により就職した方のうち、主たる障害が身体障害、知的障害、精神障害、発達障害のある方が対象で、集計対象は5,015人です。就職後3か月時点と1年時点の職場定着率を集計しています。

報告書自身が、この調査を始めた理由として「障害者の離職率・定着率を公的に把握した調査は存在しておらず」と書いています。同センターがその後に出した報告書を確認しましたが、就職後の追跡による定着率を新しく集計したものは見当たりませんでした。以下の数字は、10年以上前に就職した方の記録として読んでください。

まず、就職した求人の種類による違いです。

就職した求人の種類 3か月時点の定着率 1年時点の定着率
就労継続支援A型求人(1,742人) 88.0% 67.2%
障害者求人(1,923人) 86.9% 70.4%
一般求人・障害を開示(747人) 69.3% 49.9%
一般求人・障害を非開示(603人) 52.2% 30.8%

障害別の数字も出ています。こちらはA型を除いた一般企業への就職者が対象です。

障害 3か月時点 1年時点
身体障害(1,328人) 77.8% 60.8%
知的障害(497人) 85.3% 68.0%
精神障害(1,206人) 69.9% 49.3%
発達障害(242人) 84.7% 71.5%

もう一つ、この記事の主題に直接関わる数字があります。報告書の考察には、一般求人により就職した方のうち「支援制度の利用」があった場合の就職後1年時点の定着率は65.6%で、利用がない場合より27.9ポイント高いと書かれています。ここでいう支援制度には、特定求職者雇用開発助成金、障害者トライアル雇用、配置型ジョブコーチによる支援などが含まれます。

離職の理由も集計されています。1年時点における離職者は1,361人で、離職理由は「自己都合」が最も多く69.3%でした。ただし中身を見ると、3か月未満で離職した方では「労働条件があわない」が19.1%、「業務遂行上の課題あり」が18.1%、3か月以降1年未満で離職した方では「障害・病気のため」が17.4%と最も多くなっています。自己都合という分類の内側に、条件が合わなかったことと体調が続かなかったことが入っている、という読み方ができます。

この数字の限界も書いておきます。報告書自身が、集計・分析結果の活用に当たっての留意点として、就職先企業における職場定着への配慮や工夫の有無は不明であること、調査時期を7月から8月に設定したため年度当初の新規学卒者の就職状況が反映されていないことを挙げています。くり返しになりますが、2015年に就職した方の追跡であり、対象はハローワークの専門援助部門を経由して就職した方に限られます。法定雇用率も支援の仕組みもその後に変わっているので、いまの数字がこのとおりだという保証はありません。

そのうえで言えることは、定着率が支援や配慮の有無と一緒に動いている、ということです。数字の差を本人の頑張りの差として読む根拠は、この報告書の中にはありません。

手帳も診断もない場合に、どこまで使えるのか

ここまで出てきた仕組みは、それぞれ必要なものが違います。整理します。

仕組み 手帳 それ以外に要るもの
就業規則の確認、産業医・保健師との面談 不要 会社に制度があること(産業医は常時50人以上の事業場)
治療と就業の両立支援(指針にもとづく申出) 不要 医師が反復・継続して治療が必要と判断していること。主治医からの情報
合理的配慮(障害者雇用促進法) 不要 会社に障害があることが伝わっていること
ハローワークの障害者専門の窓口 不要 求職の申込み
地域障害者職業センター・ジョブコーチ支援 必須ではない 精神障害者総合雇用支援は、手帳または医師の診断書等
障害者就業・生活支援センター 必須ではない 相談は可能。使える制度によっては手帳が要る場合がある
就労定着支援などの障害福祉サービス 必須ではない 市区町村の受給者証。精神障害の場合は年金証書、自立支援医療受給者証、医師の診断書などで確認

ハローワークについては、障害のある皆様へのページにはっきり書かれています。専門的な支援の対象者は「障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方」であり、障害者手帳をお持ちでない方も利用できますとされています。障害のある方のための求人だけでなく一般の求人にも応募できること、個別に求人の提出を事業主に依頼したり、採用面接に同行したりすることも行っていると書かれています。

合理的配慮についても同じです。厚生労働省の障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&Aは、対象となる障害者について「障害者手帳の有無・週所定労働時間等による限定はしていません」と明記しています。同じQ&Aには、会社が本人を障害者として確認する方法として、手帳のほか、障害福祉サービスの受給者証や難病の医療受給者証、それらがない場合は本人の了解を得たうえで障害名または疾患名を記載した医師の診断書等による方法が挙げられています。

見てのとおり、手帳がなくても入口はあります。ただし、医師の関与がまったくないまま使える公的な支援は多くありません。受診したことがない方にとって、これは正直に受け止めるしかない事実です。

とはいえ、いきなり診断を受けに行くことを勧めるつもりはありません。順番があります。まずハローワークの障害者専門の窓口や、市区町村の障害福祉の窓口、障害者就業・生活支援センターに、一般的な相談として電話で聞くことはできます。そこで「今の状況だと何が使えそうか」を確かめてから、受診が要るかどうかを考えても遅くありません。手帳そのものについては障害者手帳のメリットとデメリットに、申請の手順は精神障害者保健福祉手帳の申請にまとめてあります。

一人でやらないための順番

最後に、今日から動かせる順に並べます。全部やる必要はありません。上から2つで十分です。

1. 就業規則の該当箇所を読む。休職、休暇、短時間勤務、時差出勤、試し出勤の5つがあるかどうかを見ます。手元になければ、人事や総務に「休職と休暇の規定を確認したい」と伝えてください。周知は会社の義務です。

2. 次の受診で、働き続けるうえで困っていることを話す。診断名を増やしてもらう話ではありません。治療と就業の両立支援も合理的配慮も、主治医の意見が材料になります。「この仕事を続けるとしたら、何に気をつければいいか」という聞き方でかまいません。

3. 会社の相談窓口を確かめる。産業医、保健師、人事の担当者のうち、誰に話せばいいかを確認します。誰もいない、または話しにくい場合は、都道府県の産業保健総合支援センターが外部の相談先になります。

4. 地域障害者職業センターに電話する。お住まいの都道府県に1か所あります。利用料は無料です。「今の仕事がうまくいかないので相談したい」で通じます。あらかじめ電話かFAXでの連絡が必要とされています。

5. 障害者就業・生活支援センターか、市区町村の障害福祉の窓口に相談する。生活のほうも含めて話したいとき、あるいは障害福祉サービスの利用を考えるときの入口です。就労定着支援が使えるかどうかも、ここで確かめられます。

すでに辞めることが決まっている方や、辞めたあとの生活費が心配な方は、先に病気で退職したときの失業給付退職の手続き一覧を見ておいてください。制度は退職したあとも続いています。次の働き方を選び直す段階に入ったら、障害者雇用とは何か障害者雇用の求人はどこで探すのかが参考になると思います。

続かなかった回数は、支援を受けるための条件にはなっていません。使える仕組みは、続かなかった人がいることを前提に作られています。今日は電話を1本かけるところまでで十分です。

わたしたちは就労支援の現場にいる立場なので、その前提で読んでください。続かないことを性格の問題として話す方はとても多いのですが、聞いていくと、続かなかった職場の条件のほうに共通点が見つかることがよくあります。本人の努力で埋めていた部分が大きいほど、そう見えにくくなります。回数を数えて自分を責めるより、共通していた条件をひとつ探すほうが、次につながります。