体調を崩して仕事を辞めた、あるいは辞めることになりそうだというとき、次に気になるのが失業保険だと思います。雇用保険料を払ってきたのだから受け取れるはずだ、と考えるのは自然なことです。

ところが、窓口で「今の状態では受けられません」と言われて戸惑う方が少なくありません。失業保険(雇用保険の基本手当)は、働ける状態で職を探している人に向けた給付だからです。療養が必要な状態で辞めた方は、そのままでは対象になりません。

ただし、これは「受け取れない」という意味ではありません。同じことが起きるのは分かりきっているので、法律の側に逃げ道が作ってあります。受給期間の延長特定理由離職者としての扱い就職困難者としての所定給付日数の3つです。この3つを知っているかどうかで、受け取れる金額も、いつ受け取れるかも変わります。

この記事では、まず名前が似ていて必ず混同される2つの制度を切り分けたうえで、3つの仕組みを順番に見ていきます。今日全部を読み切る必要はありません。気になるところだけ拾ってもらえれば十分です。

なぜ、そのままでは受けられないのか

先に理由を押さえておくと、あとの話が通ります。

条文が「能力」を要件にしています

雇用保険法第4条第3項は、この法律でいう「失業」を次のように定めています。

この法律において「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

大事なのは「労働の意思及び能力を有するにもかかわらず」という部分です。働きたいという意思と、働ける能力の両方があって、それでも職に就けない。この状態を「失業」と呼んでいます。

働きたい気持ちがあっても、療養が必要で今は働けないという状態は、条文の言う失業には当てはまりません。ハローワークインターネットサービスの基本手当についても、基本手当を受けられない状態の例として「病気やけがのため、すぐには就職できないとき」を最初に挙げています。

締め出されているわけではありません

雇用保険の基本手当は、次の仕事を探しているあいだの生活を支えるためのお金です。療養しているあいだの生活を支える給付は、健康保険の傷病手当金という別の制度が受け持っています。役割が分かれているだけです。

そして、療養が終わって働ける状態に戻ったときには、失業保険の出番になります。そのときのために期限を止めておく手続きが、受給期間の延長です。順番に見ていきます。

傷病手当金から失業保険へ、いつどう切り替えるのかという時間軸の設計は傷病手当金と失業保険はどちらが先かにまとめました。

「傷病手当」と「傷病手当金」を先に分けておきます

3つの仕組みに入る前に、必ず片づけておきたいことがあります。

雇用保険にも「傷病手当」という給付があります。健康保険の「傷病手当金」とは、まったく別の制度です。 名前が一文字違いなので、調べていると必ずどこかで混ざります。混ざったまま窓口に行くと話がかみ合いません。

二つを並べます

雇用保険の傷病手当(雇用保険法第37条) 健康保険の傷病手当金(健康保険法第99条)
どこから出るか 雇用保険 加入している健康保険
窓口 ハローワーク 協会けんぽ・健康保険組合など
いつの話か 離職後。ハローワークで求職の申込みをしたあと 在職中、および条件を満たせば退職後も
対象になる人 基本手当の受給資格者 健康保険の被保険者
きっかけ 求職の申込み後に、15日以上引き続いて病気やけがで働けなくなったとき 療養のため仕事に就くことができないとき
1日あたりの額 基本手当の日額と同額 おおむね、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1の3分の2
日数の扱い 所定給付日数の残りが限度。支給した日数分は基本手当を支給したものとみなされます 同一の傷病について支給開始から通算1年6か月

雇用保険法第37条第3項は「傷病手当の日額は、第十六条の規定による基本手当の日額に相当する額とする」と定めています。第6項では、傷病手当を支給したときは、その日数分の基本手当を支給したものとみなす、とされています。雇用保険の傷病手当は、基本手当とは別枠でもらえる上乗せではありません。同じ財布から、名前を変えて出ているだけです。

同じ日について両方は受け取れません

雇用保険法第37条第8項は、傷病手当の認定を受けた日について健康保険法第99条の傷病手当金などを受けることができる場合には、雇用保険の傷病手当は支給しないと定めています。同じ日に二重で受け取ることはできない、という整理です。

なお、退職後の健康保険の傷病手当金そのものについては傷病手当金は退職後も受け取れますにまとめてあります。この記事では、雇用保険の側だけを扱います。

雇用保険の傷病手当が効く場面

ではいつ使うのかというと、すでに基本手当を受け始めたあとに、体調を崩して求職活動ができなくなった場面です。ハローワークの案内では、14日以内であれば基本手当がそのまま支給され、15日以上引き続いて働けない場合に傷病手当の対象になる、と説明されています。手続きは、働けない理由がやんだあとの最初の認定日までに、居住地を管轄するハローワークで傷病の認定を受ける形で、申請書は代理人による提出でも郵送でも差し支えないとされています。

つまり、雇用保険の傷病手当は「受け取り始めたあとの保険」です。退職した時点ですでに働けない状態にある方が、まず考えるのは次に説明する受給期間の延長のほうです

条文の側にも、はっきり書かれた使い分けがあります。受給期間の延長ができる理由を定めた雇用保険法施行規則第30条第1号は、次のような書き方になっています。

疾病又は負傷(法第三十七条第一項の規定により傷病手当の支給を受ける場合における当該傷病手当に係る疾病又は負傷を除く。)

括弧の中を読むと、同じ傷病について、雇用保険の傷病手当を受けることと、受給期間を延長することは、重ねられないという整理になっています。どちらかです。ハローワークの案内も、受給期間を延長したあとに同じ傷病を理由として傷病手当を申請したときの支給日数は、その受給期間の延長がないものとした場合に支給できる日数が限度になる、と書いています。窓口で「延長にしますか、傷病手当にしますか」と聞かれることがあるのは、この規定があるからです。

仕組み1 受給期間の延長で、1年の期限を止めておく

基本手当を受けられる期間と、延長で伸びる幅

原則の期間
離職の日の翌日から1年
延長で加えられる期間(最長3年)
1年加算して最長4年まで
延長できるのは、病気やけがなどの理由で引き続き30日以上職業に就くことができない場合です。所定給付日数が330日・360日の方は、もとの期間が1年と30日・1年と60日になります。

いちばん取りこぼしが大きいのがここです。

何もしないと1年で消えます

雇用保険法第20条第1項は、基本手当を支給するのは、原則として離職の日の翌日から起算して1年の期間内の失業している日について、と定めています。所定給付日数が330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日です。

この1年は、受け取り始めてから1年ではありません。離職の翌日から数え始めます。療養に半年、1年とかかっているあいだにこの期限が過ぎると、所定給付日数が90日残っていようと300日残っていようと、1日も受け取れずに終わります。ハローワークの案内も「これを過ぎると、所定給付日数の範囲内であっても基本手当が受けられませんので、ご注意ください」と書いています。

条文はこうなっています

同じ第20条第1項の括弧書きに、逃げ道が書いてあります。

当該期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上職業に就くことができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により職業に就くことができない日数を加算するものとし、その加算された期間が四年を超えるときは、四年とする。

読み下すと、次の3つです。

  • 病気やけがなどの理由で、引き続き30日以上職業に就くことができないこと
  • ハローワークに申し出ること
  • 働けなかった日数だけ受給期間に加算される。ただし加算後の期間が4年を超えるときは4年

延長できるのは最長3年です。もともとの1年と合わせて、離職の日の翌日から最長4年まで広げられる、という形になります。

手続き 基本手当を受けられる期間
何もしない 離職した日の翌日から1年
延長を申請する 1年に、働けなかった日数を加えた期間(合計で最長4年)

なお、所定給付日数が330日・360日の方はもともとの受給期間が1年と30日・1年と60日なので、延長できる期間はそれぞれ3年から30日・60日を引いた長さになります。合計が4年で頭打ちになるのは同じです。

いつ、どこに申請するか

申請できるのは、引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日以降です。離職してすぐには申請できません。30日が過ぎるのを待つ必要があります。

期限については、平成29年4月1日に取り扱いが変わりました。厚生労働省のリーフレットは、原則は早期の申請だが、今回の変更で延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請が可能になったと説明しています。ただし同じリーフレットに、申請期間内であっても申請が遅い場合は、受給期間延長を行っても所定給付日数のすべてを受給できない可能性がある、という注意書きが添えられています。期限に余裕はあっても、遅らせて得になる話ではありません。

申請先は住所地を管轄するハローワークです。ハローワークインターネットサービスは「代理人又は郵送でも結構です」と明記しています。体調が悪くて窓口に行けない方にとって、ここは大きい情報です。大阪労働局の案内も、病気やけがを理由とする延長については本人が来られない場合は代理の方でも申請できる、としています。

提出書類について、大阪労働局は離職票-2、本人の印鑑(認印)、必要に応じ各種証明を挙げています。ハローワークによって案内が違うので、送る前か行く前に一度電話で確かめておくと二度手間になりません。

医師に書いてもらう書類があります

「必要に応じ各種証明」の中身は、多くの場合、医師が書く証明書です。

神奈川労働局のハローワークが配布している「病状証明書」(令和5年1月版)を見ると、何が確認されるのかが分かります。初診年月日、傷病の名称、現在の状態(継続治療中・治癒または寛解・転医・中止)、健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付の証明の有無、といった欄が並んでいて、中心にあるのが次の2つです。

  • 退職日において、週20時間以上の就労をすることが可能であったか(可能であった/不可能であった/可能ではあるが転職が望ましかった)
  • 証明日現在において、週20時間以上の就労の可能性があるか(軽作業を含む。可能/不可能)

同じ書式の説明書きには、この証明書は失業給付申請の離職理由確認と、受給期間延長申請における就労可否確認に使うものだと書かれています。そして、受給期間延長を申請する場合は「不可能」、基本手当の受給を申請する場合は求職申込日の時点で「可能」という対応関係が示されています。受給期間延長の申請では、離職票の離職年月日の翌日から30日以上経過した日以降の日付での証明が必要だ、という注意も添えられています。

書式の名前も様式もハローワークによって違いますが、判断の軸が「週20時間以上働けるかどうか」に置かれている点は共通しています。主治医に依頼するときは、何のための証明かをはっきり伝えてください。同じ説明書きには、担当医が失業給付を申請できない内容で記載した場合でも文書料は自己負担になるので、依頼する前にハローワークに確認してほしい、と書かれています。

仕組み2 特定理由離職者としての扱い

次に、退職の理由がどう扱われるかです。

体調を理由とする離職は「正当な理由のある自己都合」です

会社を自分から辞めた場合、離職票には自己都合と記載されるのが普通です。ただ、自己都合の中にも区別があります。

ハローワークインターネットサービスの特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要は、特定理由離職者の範囲を2つに分けています。1つ目が有期労働契約の期間満了による離職、2つ目が正当な理由のある自己都合により離職した者です。そして2つ目の筆頭に、次の類型が挙げられています。

体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

法令の側でも同じ構成です。雇用保険法第13条第3項が特定理由離職者を厚生労働省令に委ね、雇用保険法施行規則第19条の2が、第1号に有期契約の期間満了、第2号に「法第三十三条第一項の正当な理由」を挙げています。体調を理由とする離職は、この第2号にあたります。

変わるのは2つです

特定理由離職者として扱われると、次の2つが変わります。

項目 一般の自己都合離職 特定理由離職者
給付制限 待期の7日が終わったあと、原則1か月間は支給されません 給付制限はかかりません
受給資格に必要な被保険者期間 離職の日以前2年間に通算12か月以上 離職の日以前1年間に通算6か月以上でも可

給付制限は、雇用保険法第33条第1項が「正当な理由がなく自己の都合によつて退職した場合」に課すものです。正当な理由がある離職は、そもそもこの条文の対象になりません。ですから待期の7日が明ければ支給が始まります。厚生労働省の案内によれば、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は、退職日が令和7年4月1日以降であれば原則1か月です(5年間に2回以上の自己都合退職や重責解雇の場合は3か月)。1か月とはいえ、収入がない時期の1か月は重いので、ここが外れる意味は小さくありません。

被保険者期間のほうは、雇用保険法第13条第2項が「二年間」を「一年間」に、「十二箇月」を「六箇月」に読み替えると定めています。勤めていた期間が短くても受給資格が出る場合があるということです。

休職が長かった方は、数え方に例外があります

もうひとつ、見落とされやすい規定があります。

被保険者期間として数えられるのは、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上ある月です。休職して給与が出ていなかった月は、この条件を満たしません。だから「休職が長かったので、直近1年に働いた月がほとんどない」という状態が起こります。

これに対して、雇用保険法第13条第1項は、疾病や負傷などの理由で引き続き30日以上賃金の支払を受けることができなかった被保険者について、その日数を算定対象期間に加算すると定めています。加算後の期間が4年を超えるときは4年です。特定理由離職者の場合は、この「一年間」に働けなかった日数を足した期間(最長4年)をさかのぼって数えることになります。

休職が長かったせいで受給資格がなさそうに見えても、この加算を入れると要件を満たすことがあります。自分で数えて足りないと決めつけず、離職票を持ってハローワークで確認してください。

認めてもらうために出すもの

離職理由を判断するのはハローワークです。手続きの案内は、受給資格の決定のときに離職理由についても判定し、離職理由に異議がある場合は相談してほしい、事実関係を調査のうえ判定する、と説明しています。

体調を理由とする離職であることを示す資料として求められるのが、先ほどの病状証明書のような医師の証明です。同じ書式が離職理由の確認にも使われる、と説明書きに書かれているとおりです。会社に出した診断書の写しや、休職していた期間が分かる書類が役に立つこともあります。何が必要かはハローワークによって案内が違うので、行く前に電話で「体調を理由に退職したのですが、離職理由の確認に何を持って行けばよいですか」と聞いておくと、用意し直しの往復を減らせます。

増えないものもあります。ここが誤解されやすいところです

インターネットで調べていると「特定理由離職者になると給付日数が増える」という説明をよく見かけます。体調を理由に辞めた方については、これは当てはまりません。

ハローワークの基本手当の所定給付日数のページは、特定受給資格者と同じ手厚い日数表の対象を、「特定理由離職者のうち『特定理由離職者の範囲』の1に該当する方」と限定しています。範囲の1は、有期労働契約が更新されなかったことによる離職です。体調を理由とする離職は範囲の2にあたるので、この表には入りません。

根拠も追えます。雇用保険法附則第4条は、特定理由離職者を特定受給資格者とみなして日数の規定を適用する対象を「厚生労働省令で定める者に限る」としており、雇用保険法施行規則附則第18条が、その者を「第十九条の二第一号に掲げる理由により離職した者」と定めています。第2号は含まれていません。

なお、この附則第4条は暫定措置で、対象は離職の日が令和9年3月31日までの人に限られています。有期契約の期間満了で辞めた方についても、この扱いが続くかどうかは今後の改正しだいです。

まとめると次のようになります。

給付制限 被保険者期間の要件 所定給付日数
体調を理由に離職した特定理由離職者 かからない 6か月以上でも可 一般の離職者と同じ
有期契約の期間満了による特定理由離職者 かからない 6か月以上でも可 特定受給資格者と同じ表

日数が変わらないと知ると、がっかりされるかもしれません。ただ、日数のほうには別のルートがあります。次の章の就職困難者です。

所定給付日数の表

参考までに、日数の表を載せておきます。まず、体調を理由に離職した方が当てはまる一般の表です。年齢による差はありません。

被保険者であった期間 所定給付日数
10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

特定受給資格者(倒産・解雇など)と、有期契約の期間満了による特定理由離職者はこちらです。

離職時の年齢 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

仕組み3 就職困難者にあたると、日数が大きく変わります

所定給付日数の差(被保険者であった期間が1年以上の場合)

一般の離職者(被保険者であった期間10年未満)90日
就職困難者・45歳未満300日
就職困難者・45歳以上65歳未満360日
就職困難者でも、被保険者であった期間が1年未満の場合は年齢を問わず150日です。就職困難者として扱ってもらうには、手帳を自分から出す必要があります。

このサイトを読んでいる方にとっては、3つのうちこれがいちばん効く可能性があります。

誰が就職困難者にあたるのか

雇用保険法第22条第2項は、厚生労働省令で定める理由により就職が困難な受給資格者について、別の日数を定めています。その省令が雇用保険法施行規則第32条で、次の5つを挙げています。

  1. 障害者雇用促進法第2条第2号に規定する身体障害者
  2. 同法第2条第4号に規定する知的障害者
  3. 同法第2条第6号に規定する精神障害者
  4. 更生保護法第48条各号または第85条第1項各号に掲げる者であって、職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡のあったもの
  5. 社会的事情により就職が著しく阻害されている者

3番目の精神障害者が何を指すのかは、障害者雇用促進法施行規則第1条の4に書かれています。症状が安定し、就労が可能な状態にある方のうち、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方、または統合失調症・そううつ病(そう病及びうつ病を含む)・てんかんにかかっている方です。

日数の差は小さくありません

就職困難者の所定給付日数は次のとおりです。

離職時の年齢 被保険者であった期間1年未満 1年以上
45歳未満 150日 300日
45歳以上65歳未満 150日 360日

一般の離職者が90日から150日であることと比べてください。同じ経歴でも、就職困難者と認められるかどうかで受け取れる日数が2倍から3倍以上になることがあります。被保険者であった期間が1年に満たない場合でも150日あるという点も、勤めていた期間が短い方にとっては大きい違いです。

なお、所定給付日数が360日になる方は、受給期間そのものも1年ではなく1年と60日になります(雇用保険法第20条第1項第2号)。

手帳を出すかどうかは、自分で決められます

手帳を持っていることを、ハローワークに必ず伝えなければならない決まりはありません。就職困難者として扱ってもらうには自分から出す必要があり、出さないという選択もできます。

判断するときに考えるのはこのあたりです。

  • 就職困難者として扱われると、所定給付日数が大きく増えます
  • 手帳を出すと、ハローワークでの職業相談は障害者の窓口(専門援助部門)が担当になるのが一般的です
  • 求職活動の中で紹介される求人に、障害者雇用枠のものが加わります

手帳そのものの利点と気がかりな点は障害者手帳のデメリットは本当にあるのかに、障害者雇用枠の求人の探し方は障害者雇用の求人はどこで探すのかにまとめてあります。読んだうえで決めてください。急いで決めなくても構いません。

手続きの流れと、外に出るのがつらいときの選択肢

制度の話が続いたので、実際にどう進むのかを並べておきます。

順番はこうなります

段階 やること
1 会社から離職票(-1、-2)を受け取ります
2 住所地を管轄するハローワークで求職の申込みをし、離職票を提出します
3 ハローワークが受給資格を決定します。ここで離職理由も判定されます
4 待期の7日間が過ぎます
5 受給説明会に出て、受給資格者証と失業認定申告書を受け取ります
6 原則4週間に1度の認定日にハローワークへ行き、失業の認定を受けます
7 認定を行った日から通常5営業日で振り込まれます

待期については、雇用保険法第21条が、求職の申込みをした日以後に失業している日が通算して7日に満たない間は支給しない、と定めています。この条文には「(疾病又は負傷のため職業に就くことができない日を含む。)」という括弧書きがあり、体調を崩して動けなかった日も待期の日数には数えられます。

失業の認定を受けるには、原則として認定対象期間ごとに2回以上の求職活動の実績が必要です(最初の認定日については1回)。求人への応募、ハローワークでの職業相談や職業紹介、各種講習やセミナーの受講、資格試験の受験などが実績になります。求人情報を見ただけ、知人に紹介を頼んだだけでは実績になりません。

病気で外出が難しいときは

体調が戻り切らないまま手続きを進める方も多いので、使える選択肢を挙げておきます。

受給期間の延長は、代理人でも郵送でもできます。 ハローワークインターネットサービスにそう書かれています。まだ働ける状態ではない方が最初に取るべき手続きが、いちばん来所しなくて済む形になっているのは助かる設計です。

一方で、受給資格の決定と求職の申込みは、本人が窓口に行く必要があります。ここは代理では進みません。逆に言えば、この日に行けるくらいまで体調が戻ってから動けばよい、ということでもあります。延長の手続きさえしてあれば、急ぐ必要はありません。

すでに受け取り始めていて、認定日に行けなくなった場合の扱いも決まっています。雇用保険法第15条第4項は、次のときは出頭できなかった理由を記載した証明書を提出することで認定を受けられる、としています。

  • 疾病または負傷のために出頭できなかった場合で、その期間が継続して15日未満のとき
  • 紹介に応じて求人者に面接するために出頭できなかったとき
  • 指示された公共職業訓練等を受けるために出頭できなかったとき
  • 天災その他やむを得ない理由のために出頭できなかったとき

15日以上になると、この扱いではなく傷病手当のほうに移ります。いずれにしても、認定日に行けないと分かった時点で、その前にハローワークへ電話を入れておいてください。黙って行かないのがいちばん困る形です。

なお、ハローワークの窓口は月曜から金曜の8時30分から17時15分で、求職の申込みには時間がかかるため16時前までの来所がすすめられています。予定を組むときの目安にしてください。

体調と就職活動の両立が難しいと感じたら、就労移行支援のような別の支えを先に使う選択肢もあります。仕組みは就労移行支援とは何かにまとめました。

いくらぐらいになるのか

最後にお金の話です。

賃金日額から計算します

1日あたりの支給額を基本手当日額といいます。計算の元になるのが賃金日額で、これは原則として離職の日の直前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割った額です。賞与は含みません。

基本手当日額は、この賃金日額のおよそ50〜80%です。60歳以上65歳未満の方は45〜80%になります。賃金が低い方ほど率が高くなる仕組みで、令和8年8月1日以降であれば、賃金日額が3,203円以上5,480円未満の範囲は一律80%です。

賃金日額の計算に、休職して給与が出ていなかった月は使いません。被保険者期間として計算された最後の6か月分で見るためです(雇用保険法第17条第1項)。休職中の低い金額で計算されるのではないか、という心配は要りません。

上限額と下限額は毎年8月1日に変わります

ここは年度を必ず確認してほしい数字です。厚生労働省は毎年、平均給与額の変動に応じて8月1日から金額を改定しています。令和8年8月1日から適用されている額は次のとおりです。

離職時の年齢 基本手当日額の上限額 賃金日額の上限額
30歳未満 7,450円 14,900円
30歳以上45歳未満 8,270円 16,540円
45歳以上60歳未満 9,110円 18,220円
60歳以上65歳未満 7,830円 17,400円

下限額は年齢を問わず共通です。

項目 令和8年8月1日から
基本手当日額の下限額 2,562円
賃金日額の下限額 3,203円

令和8年7月31日の厚生労働省の報道発表資料によれば、今回の改定は令和7年度の平均給与額が令和6年度と比べて約2.7%上昇したことと、最低賃金日額の適用によるものです。下限額の2,562円は、令和8年4月1日時点の地域別最低賃金の全国加重平均額である1,121円に20を掛けて7で割り、給付率80%を掛けて算出されています。

この改定は毎年あります。令和9年8月1日には別の額になります。手続きをする時点の額は、厚生労働省の基本手当日額等の適用についてのページで確かめてください。自分の正確な額は受給資格者証に記載されるので、受給説明会で分かります。

そのうえでひとつ。支給される総額は「基本手当日額 × 所定給付日数」です。日額の差より、日数の差のほうが総額に効きます。90日と300日では3倍以上ちがいます。就職困難者に当たるかどうかを確認しておく価値は、ここにあります。

今日は、期限の日付を一つ書き出すだけで十分です

ここまで、条文と数字が続きました。全部を今日やる必要はまったくありません。

いちばん最初に効くのは、離職日の翌日から1年後がいつなのかを、紙かスマートフォンのメモに書き出すことです。それが、何もしなければ失業保険が消える日です。日付が一つ決まるだけで、「いつまでに何とかしないといけないのか」という漠然とした不安が、具体的な予定に変わります。そして、その日付を動かす手続きが受給期間の延長です。30日以上働けない状態が続いていれば申請でき、代理人でも郵送でもできます。窓口に行けないから何もできない、ということにはなりません。

今日の体調がどうであっても、この記事に書いた期限は明日も明後日も同じ場所にあります。まず日付を一つ書き出して、体調のよい日にハローワークへ電話をかける。それだけで、この先の手続きはずいぶん進めやすくなります。

わたしたちは就労支援の現場で、退職後に失業保険のことを知らないまま時間が過ぎてしまった方に会うことがあります。働ける状態になってから窓口に行けばよいと思っていた、という話をよく聞きます。受け取るのはあとでよいのですが、期限を止めておく手続きだけは先にあります。