数字で見る、メンタル不調と休職
休職しているとき、自分だけが長く休んでいるように感じることがあります。実際の数字を見ると、そうではないことが分かります。ここでは公的な統計の原典から数字を拾い直して、定義と一緒に置いています。
最終確認 (原典を開き直して確認した日)
読む前に。統計の言葉は、日常の語感とずれていることがあります。ここで特に大事なのは次の3つです。
1つめ。傷病手当金の「支給期間」は、令和6年10月の時点で受け始めてから何日経ったかです。受け終わるまでの完結した長さではありません。調査の時点でまだ受け取っている人が多く含まれるので、実際に最後まで受け取った期間より短く出ます。
2つめ。「件数」は令和6年10月の1か月分の支給件数です。1年間の受給者数ではありません。
3つめ。障害年金の診断書種類別の件数は、1人が複数枚の診断書を出すとその枚数だけ数えられます。だから合計は決定件数の合計と一致しません。
傷病手当金を受け取っている人の39%は、精神疾患
協会けんぽが令和6年10月の受給者全員を調べたところ、傷病手当金の支給件数179,680件のうち、「精神及び行動の障害」が70,339件で39.15%を占めていました。全傷病の中で1位です。
傷病手当金の支給件数に占める割合(令和6年10月・上位5つ)
その中身は、うつ病などの気分障害と、適応障害などのストレス関連障害でほとんど
| 傷病 | 件数 | 精神の中での割合 |
|---|---|---|
| 気分[感情]障害(躁うつ病を含む) | 37,091件 | 52.73% |
| 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害 | 31,033件 | 44.12% |
| 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 | 959件 | 1.36% |
| その他(認知症・知的障害・精神作用物質によるものなど) | 1,256件 | 1.79% |
件数は原典(統計表第2表)の実数です。「精神の中での割合」は原典に記載がないため、実数からこちらで計算しました。7分類の合計は原典の精神計70,339件と一致します。
30年で、4.45%から39.15%になっています
この割合は昔からこうだったわけではありません。平成7年には4.45%でした。
| 調査年 | 精神及び行動の障害の割合 |
|---|---|
| 平成7年 | 4.45% |
| 平成15年 | 10.14% |
| 平成20年 | 21.46% |
| 平成25年 | 25.67% |
| 令和元年 | 31.30% |
| 令和3年 | 32.96% |
| 令和5年 | 35.20% |
| 令和6年 | 39.15% |
令和4年だけ18.11%と落ち込みますが、これは新型コロナウイルス感染症を含む「特殊目的用コード」がその年の48.62%を占めた影響です。原典も、令和4年を除いて見ると割合は増加していると書いています。
精神疾患は、受け取っている期間がいちばん長い
令和6年10月の時点で、支給開始日から数えた期間の平均は、全体で171.75日でした。精神及び行動の障害は215.28日で、すべての傷病の中でいちばん長くなっています。
| 傷病分類 | 平均支給期間 |
|---|---|
| 精神及び行動の障害 | 215.28日 |
| 神経系の疾患 | 202.25日 |
| 新生物 | 201.41日 |
| 循環器系の疾患 | 198.97日 |
| 筋骨格系及び結合組織の疾患 | 155.65日 |
| 損傷、中毒及びその他の外因の影響 | 107.74日 |
| 消化器系の疾患 | 95.60日 |
| すべての傷病の平均 | 171.75日 |
この数字の読み方に注意してください。「精神疾患だと平均で215日もらえる」という意味ではありません。ここでいう支給期間は、令和6年10月の時点で支給開始日から何日経ったかです。まだ受け取り続けている人も含まれているので、最後まで受け取った期間はこれより長くなります。
逆に言えば、半年や1年を超えて受け取っている人は珍しくありません。全体で見ても、支給期間が181日を超えている件数が31.43%あります。
退職したあとも受け取っている人では、63.75%が精神疾患
傷病手当金は、条件を満たせば退職後も受け取り続けられます。令和6年10月の支給件数のうち38,675件(21.52%)が、すでに健康保険の資格を失った人への支給でした。その中では精神及び行動の障害が63.75%を占めます。全47都道府県で1位で、青森を除く46都道府県では50%を超えています。
逆から見ると、精神及び行動の障害で受け取っている人の35.05%が、すでに退職した人です。
職場では、13.5%の事業所で起きています
厚生労働省の令和7年 労働安全衛生調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した人、または退職した人がいた事業所は13.5%でした。休業した人がいた事業所は10.8%、退職した人がいた事業所は6.5%です。
これは事業所の数え方なので、規模によって大きく変わります。
| 事業所の規模 | 休業または退職した人がいた割合 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 92.9% |
| 500〜999人 | 89.7% |
| 300〜499人 | 82.4% |
| 100〜299人 | 54.6% |
| 50〜99人 | 26.8% |
| 30〜49人 | 18.3% |
| 10〜29人 | 6.8% |
1,000人以上の会社では、92.9%でメンタル不調による休業か退職が起きています。大きな会社に勤めているなら、自分が最初の一人ということはまず無いということです。
働く人の数で見ると、連続1か月以上休業した人は0.6%、退職した人は0.2%でした。産業別では情報通信業が37.4%でいちばん高く、宿泊業・飲食サービス業が3.3%でいちばん低くなっています。
この数年、割合はほぼ横ばいです
| 調査年 | 休業または退職した人がいた事業所 |
|---|---|
| 令和2年 | 9.2% |
| 令和3年 | 10.1% |
| 令和4年 | 13.3% |
| 令和5年 | 13.5% |
| 令和6年 | 12.8% |
| 令和7年 | 13.5% |
障害年金でも、決定件数の67%が精神障害・知的障害
日本年金機構の障害年金業務統計によると、令和6年度に新しく決まった障害年金のうち、診断書の種類が「精神障害・知的障害」だったものが87,697件で67.0%でした。障害基礎年金だけで見ると80.6%、障害厚生年金では48.4%です。更新のときの再認定でも79.1%を占めます。
この件数は、1人が複数枚の診断書を出すと枚数だけ数えられる集計です。人数ではありません。
受け取っている額の平均は、令和6年度末の時点で障害基礎年金が月74,487円(1級85,757円・2級69,576円)、障害厚生年金は月99,171円でした。障害厚生年金の1級と2級の額には、あわせて受け取る障害基礎年金の分が含まれています。
同じ病気で通院している人は、気分障害だけで159万人
厚生労働省の令和5年 患者調査によると、気分[感情]障害(うつ病や躁うつ病を含む)で継続的に医療を受けている人は1,593千人でした。適応障害などが入る「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」は1,177千人です。精神及び行動の障害の全体では4,896千人になります。
| 傷病 | 総患者数 | 男 | 女 |
|---|---|---|---|
| 精神及び行動の障害(全体) | 4,896千人 | 2,149千人 | 2,747千人 |
| 気分[感情]障害(躁うつ病を含む) | 1,593千人 | 626千人 | 968千人 |
| 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害 | 1,177千人 | 419千人 | 758千人 |
| 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 | 891千人 | 393千人 | 498千人 |
この数字を、昔の数字と比べないでください。患者調査の「総患者数」は、令和2年の調査から推計のやり方が変わっています。それまでは診療の間隔が31日以上あくと数えていませんでしたが、令和2年からは99日まで数えるようになりました。厚生労働省は平成29年以前にさかのぼって直すことはしないと明記しているので、平成29年以前と令和2年以降を並べても、増えたか減ったかは読み取れません。
出典と、数字の定義
傷病手当金の数字
全国健康保険協会「全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告 令和6年度 第一部 傷病手当金」(ページ更新日 2026年3月19日)。原典はこちらで公開されています。
- 調査の対象は令和6年10月の傷病手当金受給者全員(健康保険法第3条第2項被保険者を除く)です
- 「件数」は令和6年10月の1か月分の支給件数で、受給者数でも年間の支給決定件数でもありません
- 「支給期間」は支給開始日から令和6年10月の申請の支給末日までの期間です。受給が終わるまでの完結した期間ではありません
- 疾病分類は社会保険表章用疾病分類表によります
- 令和6年度版が最新です(2026年8月19日時点)
職場の数字
厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」(令和8年8月7日公表)。結果の概要はこちらです。
- 対象は常用労働者10人以上を雇用する民営事業所です。有効回答8,054事業所(有効回答率57.3%)
- 「過去1年間」は令和6年11月1日から令和7年10月31日までです
- 受け入れている派遣労働者は、休業者・退職者に含まれません
- 同じ人が1か月以上休業したあと退職した場合は、「退職した労働者」にだけ数えられます
- 産業・規模ごとに復元して集計した推計値です
障害年金の数字
日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(令和7年9月公表・令和7年10月31日訂正)と、厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報 令和6年度」。障害年金業務統計の原典はこちらです。
- 診断書種類別の件数は、1人が複数枚の診断書を用いている場合は枚数ごとに数えます。そのため合計は決定件数の合計と一致しません
- 平均年金月額は、年金総額を受給権者数で割って12で割った額です
- 受給権者には、全額支給停止されている人も含まれます
- 診断書の種類は8つに分かれていて、「精神障害・知的障害」はその1つです。病名ごとの分類ではありません
通院している人の数
厚生労働省「令和5年(2023)患者調査」(統計表の公開日 2024年12月20日)。概況はこちらです。数値は全国編 第157表・第158表から取りました。
- 「総患者数」は、調査日の時点で継続的に医療を受けている人の数です。調査日に受診していない人も含みます。入院患者数と初診外来患者数に、再来外来患者数へ平均診療間隔と調整係数を掛けたものを足して推計します
- 令和2年の調査から推計方法が変わりました。算出の上限日数が30日から98日になっています。厚生労働省は平成29年以前を遡って直さないとしているため、平成29年以前とは比較できません
- 令和5年調査が最新です(2026年8月19日時点)。次の調査は2026年10月に行われます
- 男女の合計が総数に合わないことがあります(分類ごとに平均診療間隔が違うため)
このページについて
数字はすべて、上に挙げた公的統計の原典(PDFとExcel)を開いて取っています。まとめ記事などの二次情報からは取っていません。割合をこちらで計算した箇所には、そのことを書いています。
統計は毎年更新されます。新しい年度版が出たら、原典を開き直してから差し替えます。作成しているのは運営者情報に記載の事業者です。制度そのものの説明は休職と制度のガイドにまとめています。
