出勤はしています。席にも着いています。それでも画面を見ている時間だけが過ぎて、手が動きません。前なら30分で終わっていたものに半日かかり、見落としが増え、そのたびに自分を責めています。会社の建物に入るところで、もう足が止まります。

この記事は、その状態で読まれることを前提に書きました。ですから、頑張り方の話はしません。逆に「もう働かなくていい」とも書きません。書くのは、いまの段階で確認できることと、その順番だけです。

読み切らなくて大丈夫です。最初の節の3つだけ持っていってもらえれば足ります。

今日と今週で確認できるのは、3つです

確認する順番

  1. 1就業規則の休職の条項を読む休職に入る前に欠勤が何か月必要か、休職できる期間は何年か。日付を知るだけで、決めるのは今日ではない
  2. 2年次有給休暇の残りを確認する使用者は年次有給休暇管理簿を作ることになっている。時間単位で取れる会社もある
  3. 3産業医がいるかどうかを確認する選任している会社は、健康相談の申し出方を労働者に周知する義務がある。50人未満の会社なら地域産業保健センター
3つとも、会社に「休みたい」と切り出す前にできることです。順番に意味があります。手元の材料がそろってから話すほうが、話が短く済みます。

順番を決めておく理由は、状態が悪いときに考えることを減らすためです。どれも調べものというより、決まった場所を見に行くだけの作業です。

1. 就業規則の休職の条項を読む

いちばん先に読んでほしいのがここです。理由が2つあります。

ひとつは、休職の制度は法律で全国一律に決まっているものではなく、会社ごとの就業規則で決まっているからです。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説にも、休職の定義、休職期間の制限、復職等については労働基準法に定めはない、とはっきり書かれています。世の中の相場を調べても答えは出ませんが、自分の会社の規定は文書になっていて、読めば分かります。

もうひとつは、多くの就業規則で、休職に入る前に欠勤の期間が置かれているからです。モデル就業規則の第9条は、休職とする場合の例として「業務外の傷病による欠勤が○か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」という規定を挙げています。○の数字も、そのあとに続く休職できる期間も空欄になっていて、そこは会社が埋めます。つまり、休むと決めた日から休職が始まるとは限りません。助走の長さが会社ごとに違うので、先に知っておくほど選べる幅が残ります。

読むところは4か所です。

見る場所 何が分かるか
休職の事由 休職に入るまでに欠勤が何か月必要か。診断書が要るか
休職できる期間 上限が何年か。勤続年数で変わることが多い
休職中の賃金の扱い 無給か、一部支給か
休職期間が満了しても復職できないときの扱い 退職とするのか、解雇とするのか

就業規則は、探して回るものではありません。労働基準法第106条第1項は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示するか備え付けること、書面を交付することなど厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならないと使用者に義務づけています。 社内の共有フォルダかイントラネットにあることが多いので、まずそこを見てください。見つからなければ、人事や総務に「就業規則を確認したい」と伝えれば足ります。理由を説明する必要はありません。

なお、常時10人以上の労働者を使用する使用者には、就業規則を作成して行政官庁に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。休職の定めは、置く場合には記載しなければならない事項に当たります。10人に満たない会社には作成の義務がないので、そもそも規定がないこともあります。その場合は、何がどう決まっているのかを人事に確認するところからになります。

休職そのものの始め方は休職の手続きと過ごし方に分けてあります。今日は日付を知るだけで十分です。

2. 年次有給休暇の残りを確認する

次に、有給休暇があと何日残っているかです。使うかどうかは今決めなくてよいので、数字だけ押さえます。

年次有給休暇は労働基準法第39条の制度で、雇入れの日から6か月間続けて働き、全労働日の8割以上出勤した人に10労働日が与えられ、その後は勤続年数に応じて日数が加算されます。会社は残日数を管理しています。労働基準法施行規則第24条の7が、時季と日数と基準日を労働者ごとに明らかにした年次有給休暇管理簿を作成し、有給休暇を与えた期間中と満了後5年間保存しなければならないと定めているためです。給与明細に残日数が印字されている会社も多くあります。

もうひとつ知っておくと選択肢が増えるのが、時間単位の年次有給休暇です。労働基準法第39条第4項は、労使協定を結んで対象となる労働者の範囲と日数を定めた場合には、年5日以内に限って、有給休暇を時間を単位として与えることができるとしています。全部の会社にあるわけではありませんが、通院のために半日休むことすら言い出しにくいとき、1時間だけ抜ける形が用意されていることがあります。就業規則を開くついでに、この定めがあるかも見てください。

有給休暇について、傷病手当金との関係で一点だけ補足します。全国健康保険協会は傷病手当金の説明の中で、支給の起点になる連続3日間の待期について、待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれ、給与の支払いがあったかどうかは関係ないと書いています。つまり、有給を先に使ったからといって、そのあとの手当が受けられなくなるわけではありません。

3. 産業医がいるかどうかを確認する

3つ目は、社内に医師の窓口があるかどうかです。

労働安全衛生法第13条第1項は、政令で定める規模の事業場ごとに産業医を選任しなければならないと定めていて、その規模は労働安全衛生法施行令第5条により常時50人以上の労働者を使用する事業場とされています。ここでいう事業場は会社全体ではなく、工場や支店といった場所ごとの単位です。

産業医がいる場合、探し方は決まっています。労働安全衛生法第101条第2項は、産業医を選任した事業者に対して、産業医の業務に関する事項を、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付といった方法で労働者に周知させなければならないと定めています。 周知しなければならない事項は労働安全衛生規則第98条の2第2項に3つ挙げられていて、そのうちの2つ目が「産業医に対する健康相談の申出の方法」です。3つ目は「産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法」で、相談した内容がどう扱われるかも周知の対象に入っています。

これは実務上とても効く事実です。掲示板や社内文書のどこかに、申し込み方が書いてある状態が法律上の前提になっています。見当たらないときは、人事や衛生管理者に「産業医への健康相談はどう申し込むことになっていますか」と聞けば済みます。何を相談したいかを説明する必要はありません。

50人未満の事業場で産業医がいない場合は、外に窓口があります。独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センター(地さんぽ)は、労働者数50人未満の小規模事業者とそこで働く方を対象に、産業保健サービスを無料で提供しています。健康相談窓口の業務には、健康診断結果に基づいた健康管理や作業関連疾患の予防方法とならんで、メンタルヘルスに関することが明記されています。おおむね労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されていて、利用には事前の申し込みが必要です。一部のセンターでは休日・夜間の窓口も開かれています。

会社と交わす手続きには、国が作った様式があります

ここからは、働けない状態が続いたときの話です。

まず前提が変わっています。令和8年4月1日から、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第27条の3が施行されました。条文は、事業主は、治療を受ける労働者について、就業によって症状が増悪すること等を防止し、治療と就業との両立を支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない、というものです。努力義務ですが、法律に書かれた努力義務です。

この条文にもとづいて厚生労働大臣が定めたのが治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)で、令和8年4月1日から適用されています。それまで行政の手引きとして出されていた内容を、法律にもとづく告示として定め直したものです。対象は特定の病気に限られていません。指針は、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ就業の継続に配慮が必要な疾病を対象とし、雇用形態に関わらず労働者全てを対象とすると書いています。

そして進め方の最初に置かれているのが、これです。

治療と就業の両立支援の検討は、支援を必要とする労働者からの申出から始まる。

会社が察してくれるのを待つ形ではありません。指針の留意事項にも、私傷病に関わるものなので本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本となる、と書かれています。つらいのに自分から言わなければならないのは重い話ですが、逆に言えば、言った時点で会社の側に手順が発生します。

主治医に渡す書面には、何を書く欄があるか

指針には様式例が付いています。そのうち最初に使うのが別添2-1 勤務情報を主治医に提供する際の様式例です。これは会社と本人の側が書いて、主治医に渡す紙です。 医師に書いてもらう診断書とは向きが逆になります。

冒頭にはこう印刷されています。今後の就業継続の可否、業務の内容について職場で配慮したほうがよいことなどについて、先生にご意見をいただくための従業員の勤務に関する情報です。つまり、医師が意見を書くために必要な職場側の材料を渡す書面です。

書く欄は次のとおりです。

中身
職種 事務職、自動車の運転手、建設作業員などと例示されています
職務内容 作業場所と作業内容。体を使う作業(重作業/軽作業)、長時間立位、暑熱場所、寒冷場所、高所作業、車の運転、機械の運転・操作、対人業務、遠隔地出張、海外出張、単身赴任のチェック欄があります
勤務形態 常昼勤務、二交替勤務、三交替勤務、その他
勤務時間 始業と終業、休憩時間、週何日か。時間外・休日労働の状況と出張の状況を書く欄が別にあります
通勤方法・通勤時間 徒歩、公共交通機関(着座可能)、公共交通機関(着座不可能)、自動車、その他。所要時間を分で書きます
休業可能期間 何年何月何日まで、何日間。給与支給の有無と傷病手当金の割合を書く括弧が付いています
有給休暇日数 残り何日間
利用可能な制度 時間単位の年次有給休暇、傷病休暇・病気休暇、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務(テレワーク)、試し出勤制度、その他
産業医等 産業医、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、保健師のうち、選任されているものにチェックします

最後に、本人の署名欄と会社名・住所・電話番号の欄があります。

この一覧を見て気づくことがあると思います。「休業可能期間」「有給休暇日数の残り」「利用可能な制度」は、この記事の最初の節で確認をお願いした3つとほぼ同じです。 順番の理由はここにあります。先に自分で見ておけば、この紙のほとんどの欄が埋まる状態になります。

「対人業務」のチェック欄があることにも触れておきます。この様式は職業の適性を判定するためのものではなく、いま就いている仕事にどういう負荷があるかを医師に伝えるためのものです。人と関わる量、時間外労働の量、通勤に座れるかどうかといった、仕事の側の条件を並べる構成になっています。

主治医から返ってくる書面には、何を書く欄があるか

主治医の側が書くのが別添2-2 治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例です。欄はこうなっています。

中身
病名 主治医が記入します
現在の症状 通勤や業務遂行に影響を及ぼし得る症状や薬の副作用等
治療の予定 入院治療・通院治療の必要性、今後のスケジュール
退院後/治療中の就業継続の可否 可(職務の健康への悪影響は見込まれない)/条件付きで可(就業上の措置があれば可能)/現時点で不可(療養の継続が望ましい)の3択
望ましい就業上の措置 残業を避ける、長期の出張や海外出張は避ける、車の運転は不可などが例示されています
治療に対する配慮事項 通院時間を確保する、休憩場所を確保するなどが例示されています
上記の措置期間 いつからいつまで

注目してほしいのは、就業継続の可否が2択ではなく3択になっているところです。真ん中に「条件付きで可」が置かれています。働けるか働けないかの二者択一で考えると行き止まりに見えますが、様式の側は最初から中間を想定しています。

そして様式の下部には、2つの注記が印刷されています。ひとつは、この様式は患者が病状を悪化させることなく治療と就労を両立できるよう職場での対応を検討するために使うもので、この書類は患者本人から会社に提供され、プライバシーに十分配慮して管理されますというもの。もうひとつは、職場復帰・就業継続の可否や具体的な就業上の配慮等については、主治医の意見をもとに産業医等の意見を勘案しつつ、労働者と十分話し合った上で、事業者が最終的に決定するというものです。

決めるのは会社です。ただし、話し合いを経ることが前提になっています。

会社の側に課されていること

指針の「留意事項」には、本人の側から見て知っておく価値のある記述がいくつかあります。

業務の繁忙等を理由に、必要な就業上の措置及び治療に対する配慮を行わないことはあってはならないとされています。就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少といった措置と、治療に対する配慮を行うことが就業の前提だという書き方です。

措置を検討するときには、事業主が一方的に判断しないよう、次の取組が必要だとされています。就業継続の希望や配慮の要望を聴取して十分な話合いを通じて本人の了解を得られるよう努めること。疾病にかかっていることをもって安易に就業を禁止せず、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講じて就業の機会を失わせないよう留意すること。 疾病やその治療に対する誤解や偏見等が生じないよう、事業主、人事労務担当者、上司や同僚等の関係者において必要な配慮を行うこと。

健康情報の扱いについては、症状や治療の状況といった情報は機微な情報であることから、労働安全衛生法にもとづく健康診断で把握した場合を除いては、原則として事業主が本人の同意なく取得してはならないとされています。

休業を要しない場合には、就業上の措置と治療に対する配慮の内容やスケジュールをまとめた治療と就業の両立支援プランを作ることが望ましいとされ、盛り込む事項として、治療や通院の予定、措置と配慮の具体的内容と実施時期・期間、フォローアップの方法とスケジュールが挙げられています。休むか休まないかの二択ではなく、働きながら組み直す道が先に用意されている、ということです。

産業医の面接指導は、入口が分かれています

「産業医面談を受けたい」と考えたときに知っておいたほうがよいことがあります。法律が事業者に義務づけている面接指導には、入口が決まっているという点です。

医師の面接指導につながる3つの経路

医師に職場のことを含めて話したい
労働安全衛生法66条の81か月80時間を超える時間外労働と疲労の蓄積。本人の申出で事業者に実施義務
同66条の10第3項ストレスチェックの結果が要件に該当した人の申出。申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁止
同66条の9・13条の3上の2つに当たらなくても、健康への配慮が必要な人への措置と健康相談の体制整備は事業者の努力義務
義務の面接指導に当たらないことと、相談できないことは別です。50人未満の事業場には地域産業保健センターの無料の健康相談があります。

順に説明します。

労働安全衛生法第66条の8の面接指導は、労働時間が起点です。対象となる要件は労働安全衛生規則第52条の2に定められていて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる者とされています。事業者は毎月1回以上、一定の期日を定めてこの時間を算定し、80時間を超えた労働者には超えた時間を通知しなければなりません。面接指導は本人の申出により行われ(労働安全衛生規則第52条の3)、申出があったときは事業者は遅滞なく行わなければなりません。つまり、この経路は「つらい」だけでは開きません。残業が多いことが条件です。

第66条の10第3項の面接指導は、ストレスチェックが起点です。検査の結果、心理的な負担の程度が高く、面接指導を受ける必要があると検査を行った医師等が認めた人が、面接指導を希望する旨を申し出たときに、事業者に実施義務が生じます。そしてこの項の後段には、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し不利益な取扱いをしてはならない、と明記されています。 申し出ることそのものが守られている、ということです。

面接指導で医師が確認することも決まっています。労働安全衛生規則第52条の17は、勤務の状況、心理的な負担の状況、そのほか心身の状況の3つを確認するものとしています。職場の話をする場として設計されています。 面接指導のあと、事業者は医師の意見を聴かなければならず、その意見を勘案して必要があると認めるときは、本人の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じなければなりません(第66条の10第5項・第6項)。第66条の8のほうにも同じ内容の定めがあります。

なおストレスチェックの実施頻度は1年以内ごとに1回です(労働安全衛生規則第52条の9)。ただし、義務がかかるのは常時50人以上の労働者を使用する事業場で、それ以外の事業場については、労働安全衛生法の附則第4条により、当分の間は努力義務とされています。 受けた記憶がないという場合、実施義務のない規模の会社かもしれません。

どちらの入口にも当たらない場合はどうなるか。第66条の9は、これらの面接指導を行う労働者以外の労働者であって健康への配慮が必要なものについて、必要な措置を講ずるように努めなければならないとしています。第13条の3は、産業医等が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないとしています。産業医の職務にも、労働安全衛生規則第14条第1項により「健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること」が含まれています。相談は職務のうちです。

収入が止まることへの不安について

ここは短く書いて、詳しい記事に送ります。いま全部を読む必要はありません。

働けない期間の収入を支える中心は健康保険の傷病手当金です。全国健康保険協会は、これを病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度と説明しています。対象になるのは、業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間について給与の支払いがないこと、という4つの要件を満たす場合です。支給期間は、同一の傷病について支給を開始した日から通算して1年6か月です。

条件の詳細は傷病手当金がもらえる条件に、休職中のお金全体の見取り図は休職中にもらえる手当にまとめています。診断書が必要になったときの進め方は休職の診断書診断書のもらい方にあります。申し訳なさのほうが先に立つ方は休職中の罪悪感がつらいときを見てください。

先ほどの勤務情報の様式に「給与支給 有り・無し 傷病手当金 %」という欄があったことを思い出してください。お金の見通しは、医師が就業継続の可否を判断するときの材料の一部として、最初から様式に組み込まれています。 生活のことを考えるのは後ろめたいことではなく、手続きの一部です。

働けない自分を、いまどう扱うか

ここからは制度の話ではありません。ですから、書ける範囲がぐっと狭くなります。資料に根拠のあることだけを書きます。

厚生労働省のこころの耳に掲載されている事例紹介のページに、次の記述があります。一般的にうつ病の状態が悪い時期には「人生の大決断をしない」ということも忘れてはいけない。「考えがまとまらない」「どうしたらいいか考えが浮かばない」などという思考力や決断力が低下し、心理的な視野狭窄が起きている状態で導く結論は、大きなリスクを含んでいることが多いから、というものです。そのうえで、大きなことを考える際には、視野が狭くなった状態で結論を出しているかもしれない自分の考えについて、主治医や家族にきちんと相談し、意見によく耳を傾けることが大切だと続きます。

これは、いま決めなくてよいという話です。先延ばしにしているのではなく、判断する時期をずらすことが公的な資料の側で推奨されています。

もう一つ、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きにこう書かれています。疾病による休業は、多くの労働者にとって働くことについての自信を失わせる出来事である。必要以上に自信を失った状態での職場復帰は、健康及び就業能力の回復に好ましくない影響を与える可能性が高いため、休業開始から復職後に至るまで、適宜、周囲からの適切な心理的支援が大切となる、というものです。

読み方を一つだけ添えます。働くことについての自信が下がるのは、その人の能力を測った結果ではなく、この状況で起きることとして手引きに書かれています。 そして先ほどのこころの耳の記述は、思考力や決断力が下がっている時期に出した結論はリスクを含みやすいとしています。この2つを重ねると、いま「自分はもう働けない」と感じていることは、事実の確認ではなく状態の一部かもしれない、というところまでは資料から言えます。

同じくこころの耳の職場復帰のガイダンスには、休むことについてこう書かれています。休みたくても休めない、でも休まないと病状がよくならず、頑張れない状態が続いて仕事がさらに溜まっていく。そこから逃れるためには、一時的に上司や同僚に仕事を預けて休業に入ることが重要である、というものです。ミスが増えていることや、時間がかかるようになったことを自分の落ち度として数えているなら、そこは資料の見方と違います。

書けないこともはっきりさせておきます。いまの状態がどれくらい続くのか、何をすれば軽くなるのかは、この記事では扱いません。 医学の領域で、主治医の領分です。この記事が扱えるのは、手続きと制度と働き方だけです。

今日、決めなくていいこと

整理します。今日決めなくてよいのは、次のものです。

  • 休職するかどうか
  • 会社を辞めるかどうか
  • この先も同じ仕事を続けられるかどうか
  • 誰にどこまで話すか

今日できるのは、最初に挙げた3つのうちのどれか1つです。3つ全部でなくて構いません。 就業規則の休職の条項を開くだけでも、有給の残り日数を見るだけでも、産業医への相談の申し込み方を探すだけでも、材料は1つ増えます。そしてそれは、会社に何かを申し出るより前の段階です。指針は本人の申出から支援が始まる仕組みですが、申し出るときに手ぶらである必要はありません。

行き先だけ置いておきます。休職という選択肢そのものについては「休職したら終わり」は本当かに、すでに一度復職していてまた調子を崩している方には復職したあと、また休みがちになったときのほうが近いと思います。職場で受けている扱いそのものに問題があると感じている場合は、パワハラの相談先に会社の外の窓口をまとめています。

最後に、この記事で確認したことをもう一度だけ並べます。休職の制度は会社の就業規則で決まっていて、読めば分かります。有給の残りは会社が管理していて、聞けば分かります。産業医への健康相談の申し出方は、会社が周知しなければならないことになっています。そして働きながら治療を続けるための手続きには国が作った様式があり、その様式は「働けるか働けないか」ではなく「どういう条件なら働けるか」を書く形になっています。

決めるのは今日ではありません。

わたしたちは就労支援の現場で、働けなくなった時期のことをあとから伺うことがあります。いちばん苦しい時期に、いちばん大きな決断をしようとしていた、という話がとても多いです。あとから振り返って良かったと語られるのは、大きな決断ではなく、あの日は確認だけにしておいた、という小さな線引きのほうです。この記事の順番も、その考え方で並べてあります。