復職して数週間、あるいは数か月が経ったころに、また朝が起きられなくなる。出勤はしているけれど前のようには集中できない。休みが増えてきて、そのたびに「せっかく戻してもらったのに」と自分を責めてしまう。

このページを開いた方は、そういう時期にいるのだと思います。まず書いておきたいのは、いま起きていることが制度の想定から外れた出来事ではないということです。国が示している職場復帰の手順には、復帰後に状態が変わることを前提とした段階が最初から組み込まれています。

以下は、厚生労働省の資料と全国健康保険協会の記載で確認できる範囲だけをまとめたものです。確認できなかったことは、確認できなかったと書きます。読んでいて重ければ、傷病手当金の節と就業規則の節だけ見てもらえば十分です。

復職後のフォローアップは、手順の中に入っている

厚生労働省と労働者健康安全機構が出している心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きは、職場復帰支援を5つの段階で示しています。その5番目が「職場復帰後のフォローアップ」です。

手引きの本文には、こう書かれています。

心の健康問題には様々な要因が複雑に重なり合っていることが多いため、職場復帰の可否の判断や職場復帰支援プランの作成には多くの不確定要素が含まれることが少なくない。また、たとえ周到に職場復帰の準備を行ったとしても、実際には様々な事情から当初の計画通りに職場復帰が進まないこともある。

さらに、フォローアップ期間を終えたあとについても「心の健康問題は再燃・再発することも少なくないため」という前置きのうえで、就業上の配慮について慎重な対応が必要だと書かれています。

つまり、計画どおりに進まないことがあるという前提で手順が組まれています。 復職の判断は一度きりの合否判定ではなく、戻したあとに見ながら調整していくものとして設計されている、ということです。

フォローアップで確認することになっている7つの項目

手引きは、復職後の面談で中心に扱う事項として次の7つを挙げています。産業保健スタッフが本人と管理監督者の双方から話を聞き、必要に応じて復帰プランを見直す、という進め方です。

項目 手引きに書かれている内容
疾患の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認 早期の気づきと迅速な対応が不可欠。産業保健スタッフと管理監督者は日頃から連携しておく
勤務状況及び業務遂行能力の評価 本人の意見だけでなく管理監督者の意見も合わせて客観的に評価する
職場復帰支援プランの実施状況の確認 計画どおりに実施されていない場合は関係者間で再調整する
治療状況の確認 通院状況や治療の自己中断がないか、病状や今後の見通しについての主治医の意見を本人から聞く
職場復帰支援プランの評価と見直し 問題が生じた場合は関係者が連携してプランを変更する
職場環境等の改善等 労働時間管理、人事労務管理、仕事の進め方など職場側の環境も評価し改善を検討する
管理監督者、同僚等への配慮等 配慮する側に過度の負担がかからないようにする

ここで注目してほしいのは、見直しの対象が本人だけではないという点です。労働時間の管理や人材配置、サポート体制といった職場の側も評価と改善の対象に入っています。

業務量を戻すペースは、調整できるものとして扱われている

「復帰したのだから元どおりに働けて当然」という考え方は、手引きの立場ではありません。手引きにはこう書かれています。

数か月にわたって休業していた労働者に、いきなり発病前と同じ質、量の仕事を期待することには無理がある。また、うつ病などでは、回復過程においても状態に波があることも事実である。

そのうえで、復職後の労働負荷を軽減して段階的に元へ戻す配慮が重要な対策になるとされ、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業や深夜業務の禁止、出張制限、交替勤務制限といった具体例が並んでいます。

フォローアップの期間についても、あらかじめ目安を定めて、その期間内に通常のペースに戻すよう目標を立てることが望ましい、ただしその期間は主治医と連携して病態や病状に応じて柔軟に定めることが望ましいと書かれています。期間の目安は固定されたものではない、という書き方です。

いま組まれている働き方が自分に合っていないと感じているなら、それはプランの見直しという手続きの対象になり得ます。復職の進め方そのものについては復職の進め方にまとめてあります。

傷病手当金をもう一度受け取れるか

10か月受け取ったあとに復職した場合の、残りの期間

受け取った期間
10か月
復職して給与を受けていた期間
数えない
残り
8か月
支給開始復職した日再び休んだとき
同一の傷病について、支給を開始した日から通算して1年6か月です。復職していた期間の長さは通算に関係がないので、図の真ん中の幅は目安として置いています。今回の不調が前回と同一の傷病にあたるかどうかを判断するのは、加入している健康保険(保険者)です。

ここが実務としていちばん重いところだと思います。順に確認します。

全国健康保険協会は、傷病手当金の支給期間について「同一の傷病について、支給を開始した日から通算して1年6か月」と説明しています。ポイントは通算という言葉です。

令和4年1月1日から、この期間の数え方が変わりました。厚生労働省の傷病手当金の支給期間の通算化についての案内では、支給期間中に途中で就労するなど傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1年6か月を超えても繰り越して支給できるようになった、とされています。

言い換えると、こういうことです。

状況 支給期間の数え方
休んで傷病手当金を受けていた期間 1年6か月に数える
復職して給与を受けていた期間 数えない(その分だけ後ろに延びる)

たとえば10か月受け取ったあとに復職した場合、残りは8か月分ということになります。復職していた期間の長さは関係ありません。

「同一の傷病」にあたるかどうかは、自分では決められない

ただし、条文の言葉は「同一の傷病について」です。今回の不調が前回と同一の傷病として扱われるのか、別の傷病として扱われるのかで、話が変わってきます。

この判断をするのは加入している健康保険、つまり保険者です。どういう場合に別の傷病として扱われるかの基準を、公表資料の中では確認できませんでした。 ここは分からないと書いておきます。

したがって、確実なのは窓口に聞くことです。全国健康保険協会であれば加入している都道府県支部、健康保険組合であれば組合の事務局が窓口になります。前回いつからいつまで受給していたか、いま診断名がどうなっているかを手元に置いて電話すれば、答えてもらえます。名前を伝えずに一般的な質問として聞くこともできます。

傷病手当金そのものの条件は傷病手当金がもらえないケースに、申請書の書き方は傷病手当金申請書の書き方にまとめてあります。

休職期間の通算は、会社の就業規則で決まります

ここは間違えると影響が大きいので、はっきり書きます。

復職後に再び休職したとき、前回の休職期間と通算されるかどうかは、法律で全国一律に決まっているものではありません。 会社の就業規則で決まります。

厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)の解説には、休職についてこう書かれています。

休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。

そして職場復帰支援の手引きのほうには、就業規則等にあらかじめ定めて周知しておくことが望ましい事項として、次のものが挙げられています。

私傷病による休業の最長(保障)期間、クーリング期間(休業の最長(保障)期間を定めている場合で、一旦職場復帰してから再び同一理由で休業するときに、休業期間に前回の休業期間を算入しないために必要な、職場復帰から新たな休業までの期間)等を定める場合

このクーリング期間というのが、いわゆる通算の話です。「復職してから○か月以内に同じ理由で再び休職した場合は、前後の休職期間を通算する」といった形の定めを置いている会社があります。逆に、そういう定めがまったくない会社もあります。どちらが普通ということはなく、会社ごとに違います。

就業規則で確認したい4か所

  • 休職の事由(どういうときに休職になるか)
  • 休職期間の上限(勤続年数によって変わることがあります)
  • 通算やクーリング期間の定めがあるかどうか、あるとしたら何か月か
  • 休職期間が満了しても復職できない場合の扱い

就業規則は労働者が見られる状態にしておくことになっているので、人事や総務に「休職に関する規定を確認したい」と伝えれば見せてもらえます。どこを読めばよいかは休職の手続きと過ごし方に詳しく書きました。

ここは不安の性質を変えてくれる部分だと思います。世の中の相場を調べても答えは出ませんが、自分の会社の規定は文書に書いてあり、読めば分かります。

主治医と産業医には、そのまま伝えてよい

我慢して勤怠だけ保っていると、実際の状態が誰にも伝わりません。診察室で「まあ何とかやっています」と答えてしまう気持ちは分かりますが、それだと処方も配慮も変わらないまま時間が過ぎます。

手引きでは、治療状況の確認について、現在の病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞くという進め方が示されています。本人が話す内容が情報源になっている、ということです。

勤務状況の評価についても、こう書かれています。

職場復帰後に、突発的な休業等が職場復帰決定時に想定していた程度を超えるような場合は、事業場内産業保健スタッフ等が面接を行い、主治医と連携をとりながら、適切な対応を検討すべきである。

つまり、突発的な休みが増えているという事実は、隠すべき失点ではなく、対応を動かすための材料として制度に位置づけられています。

伝えてよい事実は、たとえばこういうものです。評価ではなく、起きたことをそのまま並べれば十分です。

  • 今月の遅刻・早退・欠勤がそれぞれ何回あったか
  • 朝、目が覚めてから家を出るまでにどれくらいかかっているか
  • 業務中に、前はできていたのに今はできなくなっていること
  • 帰宅後や休日に、どこまで回復できているか
  • 通勤そのものがどの程度負担になっているか

言葉にしづらいときは、メモを書いて渡すだけでも構いません。

いま取れる選択肢を並べます

どれかを勧めることはしません。並べておくので、今日は読むだけで大丈夫です。

選択肢 内容 話す相手
復帰プランの見直し 業務量や勤務時間、業務内容の配慮を組み直す。手引きが想定している手続き 産業医・人事・上司
時短勤務にする 手引きが挙げる配慮の例のひとつ。生活リズムの観点からは終業時間を早めるほうが望ましいとされる 産業医・人事
業務内容や配置を変える 手引きは「まずは元の職場への復帰」を原則としつつ、状況によって配置転換の検討が必要な場合も挙げている 人事・上司
もう一度休職する できるかどうか、期間がどうなるかは就業規則による。傷病手当金の残り期間もあわせて確認する 人事・主治医・健康保険の窓口
リワークを利用する 復職の前に働く感覚を取り戻すための仕組み。対象や利用条件は実施機関に確認が必要 地域障害者職業センター・主治医
退職する 雇用保険や傷病手当金の扱いが変わるため、退職日を決める前に確認したほうが安全 ハローワーク・健康保険の窓口

退職について、ひとつだけ注意点があります。退職後も傷病手当金を受け続ける「資格喪失後の継続給付」には条件があり、全国健康保険協会は傷病手当金のよくあるご質問で、退職後にいったん仕事に就くことができる状態になった場合には、そのあと再び仕事に就くことができない状態になっても傷病手当金は支給されない、と説明しています。在職中の通算のルールとは扱いが違うので、退職を考える段階になったら、この点も含めて窓口に確認しておくと安心です。

リワークについてはリワークとは何かにまとめています。元の職場に戻り続けるかどうかという判断そのものは適応障害での復職で扱っています。

働き方そのものを変える道もあります

いまの雇用の形を保つことを前提にせず、働き方から組み直すという方向もあります。すぐに選ぶ話ではありませんが、そういう道があると知っておくだけで、追い詰められ方が変わることがあります。

どれも今日申し込む必要はありません。存在を知っておくだけで十分です。

今日決めなくていいことばかりです

整理します。

  • 復職後に状態が変わることは、国の手引きの中に「職場復帰後のフォローアップ」として組み込まれている
  • 業務量や勤務時間の配慮は、プランの見直しという手続きの対象になる
  • 傷病手当金は同一の傷病について通算1年6か月で、復職していた期間は数えない。同一かどうかの判断は保険者が行う
  • 休職期間を通算するかどうかは法律ではなく会社の就業規則の問題で、読めば確認できる
  • 遅刻や欠勤の頻度、できなくなっていることは、そのまま伝えてよい事実として扱われている

復職したあとに調子を崩すと、「前回は運よく戻れただけで、今度こそ駄目なのではないか」という考えが浮かびやすくなります。ただ、制度の側は復帰を一度きりの試験としては作っていません。見ながら直す前提の仕組みです。

いま必要なのは、頑張り方を変えることではなく、起きている事実を主治医に伝えることと、自分の会社の就業規則を一度読むことです。その2つだけで、選べる範囲がはっきりします。

わたしたちは就労支援の現場で、復職したあとに調子を崩した方の相談を受けることがあります。多いのは、一度戻れた手前もう言い出せない、と抱えたまま日が過ぎてしまう形です。早い段階なら勤務時間の調整で済んだかもしれないことが、遅れるほど大きな決断になっていきます。言い出しにくさ自体は変わらないので、順番だけ前に持ってくるのがいいと思います。