申請書を開くと4ページあって、それだけで気持ちが重くなると思います。ただ、実際に自分で書くのは最初の2ページだけです。残りの2ページは会社と医師が書く欄なので、自分がすることは「渡して、お願いする」ことだけになります。

ここでは全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険傷病手当金支給申請書の様式に沿って、ページごとに何を書くのかを整理しました。健康保険組合に加入している場合は組合の様式になりますが、聞かれる内容はおおむね同じです。

申請書を手に入れるところから提出までの全体の流れは傷病手当金の申請方法に、そもそも受け取れる条件は傷病手当金を受け取れる条件にあります。

4ページそれぞれ、誰が書くのか

ページ 書く人 内容
1ページ目 自分 氏名や住所などの情報と、振込先の口座
2ページ目 自分 傷病名、申請期間、報酬や年金についての確認事項
3ページ目 会社 申請期間中の勤務状況と、給与の支払い状況
4ページ目 医師 働けなかったと認められる期間と、その間の症状や経過

進め方としては、先に自分の2ページを書いてしまい、そのうえで医師と会社に証明をお願いする流れが分かりやすいと思います。医師が書くのは「労務不能と認めた期間」なので、申請したい期間が過ぎてからの記入になります。会社が書く勤務状況も同じ期間についてのものです。

1ページ目の書き方

自分の情報と、お金の振込先を書くページです。

記号・番号は保険証に書かれています。マイナ保険証を使っている場合は、マイナポータルの資格情報の画面で確認できます。ここを記入(印字)すれば、マイナンバーを書く必要はありません。マイナンバーを書いた場合は本人確認書類などの添付が必要になるので、記号・番号がわかるならそちらで書くほうが簡単です。

氏名(カタカナ)は、姓と名の間を1マス空けて書きます。濁点と半濁点は1字として数えます。

振込先については、まず「公金受取口座の利用について」を選びます。

  • 「1. 希望する」を選ぶと、マイナポータルであらかじめ登録しておいた口座に振り込まれます。この場合、下の振込先の欄は書かなくて構いません
  • 「2. 希望しない」を選ぶ場合は、申請者本人と同じ名義の口座を書きます

ゆうちょ銀行を指定するときだけ、書き方が変わります。支店名は3桁の漢数字を、口座番号は振込専用の7桁の番号を書きます。通帳に印字されている記号・番号では振り込めません。

ページの下のほうに協会の使用欄がありますが、そこは記入せずに空けておきます。

2ページ目の書き方

申請の中身を書くページです。ここが実質的な本体になります。

書く項目は次のとおりです。

  • 傷病名と、発病または負傷の年月日
  • 傷病の原因(仕事中以外か、仕事中か、通勤途中か)
  • 労働災害・通勤災害の認定を受けているか
  • 傷病の原因が第三者の行為(交通事故やケンカなど)によるものか
  • 申請期間(療養のために休んだ期間)
  • 被保険者の仕事の内容。退職後の申請であれば、退職前の仕事の内容
  • 確認事項として、申請期間に報酬を受けたか、障害厚生年金や障害手当金を受けているか、老齢または退職を事由とする公的年金を受けているか、別の傷病で労災の休業補償給付を受けているか

4ページ目に医師が書いた傷病についての申請であれば、そのことを示すチェック欄があるので忘れずに入れておきます。

記入例

たとえば2026年6月1日から6月30日まで休んだ場合、申請期間は次のように書きます。

書き方の例
申請期間 令和8年6月1日 から 令和8年6月30日 まで
傷病名 うつ病(4ページ目に医師が書く傷病名と合わせます)
発病または負傷の年月日 令和8年5月20日(初めて症状が出た日。こちらも4ページ目と合わせます)
傷病の原因 1. 仕事中以外(業務外)での傷病

傷病名と発病年月日は2ページ目と4ページ目の両方に出てくる項目です。自分が書いた内容と医師が書いた内容が食い違うと確認に時間がかかりますので、医師に依頼するときに自分の記入内容を見せておくと安心です。

なお、支給が始まるのは連続して3日休んだあとの4日目からです。申請期間の書き方そのものは休んだ期間を書きますが、最初の3日分は支給されないという点は頭に置いておいてください。

もうひとつ、1回の申請書に書ける申請期間は暦で3か月以内と決まっています。療養が長くなって3か月を超える期間をまとめて申請したいときは、申請書を分けて出します。

第三者の行為によるものだった場合

交通事故など、第三者の行為が原因の場合は「第三者行為による傷病届」を別に提出することになります。この欄で「はい」を選んだときは、その案内が申請書にも書かれています。

3ページ目(会社に書いてもらう欄)

会社が証明する内容は、勤務状況と給与の支払い状況です。

  • 2ページ目に書いた申請期間のうち、出勤した日を丸で囲む形式になっています
  • 出勤していない日に報酬などを支払った日があれば、その日付と金額を書く欄があります
  • ここでいう報酬には、有給休暇の賃金のほか、出勤の有無に関わらず支払われる手当(扶養手当や住宅手当など)、食事や住居などの現物支給も含まれます

2ページ目で「申請期間に報酬を受けましたか」と聞かれるのは、この会社の証明と照らし合わせるためです。自分では「給与は出ていない」と思っていても、住宅手当などが支払われていることがあります。判断に迷うときは、会社の担当者に確認してから書いても構いません。

この欄を会社が書いてくれない、頼んでも話が進まないというときは、傷病手当金を会社が嫌がるときに進め方をまとめてあります。

4ページ目(医師に書いてもらう欄)

医師が書くのは次の内容です。

  • 労務不能と認めた期間(勤務先での従前の労務に服することができない期間)
  • 傷病名、発病または負傷の年月日と原因、初診日
  • その期間に診療した日があったかどうか
  • 期間中の主な症状や経過、治療内容、検査結果、療養指導など

依頼するときは、申請書を診察に持っていくのが確実です。書き上がるまでに日数がかかることもありますし、証明にかかる文書料は医療機関によって違います。次の診察の予定と合わせて、いつ受け取れるかを聞いておくと予定が立てやすくなります。

この4ページ目に何を書いてもらうのか、いつ頼むのか、いくらかかるのかは傷病手当金申請書の医師記入欄で詳しく書いています。

つまずきやすいところ

差し戻しの原因は、たいてい書き間違いではなく、4ページのあいだで内容がそろっていないことです。よくある形を挙げておきます。

会社に先に頼んで、書き直しになる

会社が書くのは「申請期間のうち出勤した日」です。つまり、先に申請期間が決まっていないと会社は書けません。ところが手続きを早く進めたい気持ちから、期間を決める前に総務へ渡してしまうことがあります。

医師が証明できるのも過ぎた期間についてです。先に自分の2ページで期間を決めて、その期間を医師と会社に伝えるという順番にすると、書き直しが起きにくくなります。

「給与は出ていない」つもりが、出ていた

2ページ目には申請期間に報酬を受けたかどうかを書く欄があり、3ページ目では会社が支払った日と金額を書きます。この2つが食い違うと確認に時間がかかります。

見落とされやすいのは、基本給ではない部分です。住宅手当や扶養手当のように出勤の有無に関わらず支払われるもの、社宅や食事のように現物で支給されているものも、ここでいう報酬に含まれます。給与明細を見て判断がつかないときは、書く前に会社の担当者へ「休職中に支払われているものはありますか」と聞いてしまうほうが早いです。

傷病名が医師と少し違う

自分は「うつ病」と書いたけれど、診断書には「抑うつ状態」と書かれていた、というように呼び方がずれることがあります。傷病名は2ページ目と4ページ目の両方にある項目なので、そろえておくほうが確認がなめらかです。

医師に4ページ目を依頼するときに、自分が書いた2ページ目を一緒に見せておけば、この行き違いはほぼ防げます。発病または負傷の年月日も同じで、両方のページに出てきます。

振込先で止まる

金額や期間はきちんと書けているのに、口座の欄で止まってしまう例が多いところです。ゆうちょ銀行を指定する場合、通帳に大きく印字されている記号・番号では振り込めません。支店名は3桁の漢数字、口座番号は振込専用の7桁を書きます。

マイナポータルで公金受取口座を登録しているなら、「1. 希望する」を選べば口座の記入そのものが不要になります。迷ったときはこちらのほうが確実です。

思っていたより少なかった

最初の申請では、支給される日数が想像より少なく感じることがあります。連続した3日間の待期が終わったあと、4日目から支給が始まるためです。申請期間には休んだ日を書きますが、そのうち最初の3日分は支給されません。

生活費の見通しを立てるときは、この3日分と、申請書を出してから振り込みまでに時間がかかることの両方を見込んでおくと、あとで慌てずに済みます。協会けんぽは、健康保険傷病手当金支給申請書のページで、審査の結果お支払い可能であれば受付日から10営業日以内に支払うと案内していますが、これは支部が受け付けた日からの日数で、郵送にかかる日数は別に加わります。

書くのを手伝ってもらうこともできます

申請書は本人が書くものですが、書くのを手伝ってもらうことはできます。

通院先に医療相談室や医療ソーシャルワーカーがいれば、書き方の相談ができます。会社の総務や健康保険組合の担当者も、自分たちが書く欄については説明できる立場です。障害福祉のサービスをすでに使っているなら、支援員に一緒に見てもらうこともできます。

わたしたちが就労支援の現場で見ていても、この手続きでつまずく方の多くは、書類が難しいというより、体調が悪い時期に一人で全部を判断しようとして動けなくなっています。ペンを持つ前に、誰かに一度見てもらうと決めるだけで、進み方がずいぶん変わります。

添付書類が必要になる場合

いつも必要なわけではありませんが、協会けんぽのアップロード必要書類(電子申請)には、次のような場合に書類が追加になると案内されています。

状況 必要になるもの
支給開始日以前の12か月以内に勤め先(事業所)が変わった、または定年再雇用などで健康保険の資格に変更があった 健康保険加入状況等申告書
障害厚生年金や老齢退職年金を受けている 年金証書と、直近の額を証明する書類(マイナンバーでの照会を希望しない場合)
労災の休業補償給付を受けている 支給決定通知書
交通事故など第三者の行為による傷病 第三者行為による傷病届

出す先と、期限

書き上がった申請書は、加入している協会けんぽの支部に提出します。健康保険組合であれば組合が提出先です。会社を通して提出する運用になっている職場もあるので、そこは会社の担当者に確認してください。

電子申請も案内されていて、「システムチェックにより記載もれなどのミスを防げます」と説明されています。パソコンでの操作に抵抗がなければ、こちらのほうが差し戻しは起きにくいと思います。

期限については、傷病手当金は休んだ日ごとに、その翌日から2年で時効になります。健康保険法は、保険給付を受ける権利は行使できるときから2年で時効によって消滅すると定めていて(第193条)、傷病手当金は「一日につき」支給される給付です(第99条第2項)。つまり権利が日ごとに生じるので、時効も日ごとに進みます。そのため、そのままにしておくと古い日の分から順に受け取れなくなります。今日中に仕上げなければいけないものではありませんが、体調が落ち着いている日に、少しずつでも進めておいてください。

一度に全部やろうとしなくて大丈夫です

この手続きでいちばんつらいのは、書類そのものより「わからないまま抱えている状態」だと思います。

今日できることは、保険証を出して記号・番号を確認する、それだけでも構いません。振込先の口座を決める、次の診察の予約を確認する。そうやって分けていけば、4ページはいつか揃います。

書き方でどうしても判断がつかないところは、加入している健康保険の窓口に聞くのがいちばん早くて確実です。手続きの相談は本人の権利ですし、会社を通さずに直接聞くこともできます。