傷病手当金の申請書は4ページあって、最後の1枚が医師に書いてもらうページです。自分では手を出せない部分なので、渡したあとは待つことしかできません。だからこそ、どんな欄なのか、いつ渡せばいいのか、いくらかかるのかを先に知っておくと、書き直しや二度手間が起きにくくなります。

ここでは全国健康保険協会(協会けんぽ)の2026年6月版の様式に沿って、4ページ目だけを取り出して見ていきます。健康保険組合に加入している場合は組合の様式になりますが、この欄が担っている役割は同じです。なお、1ページ目から3ページ目までの書き方は傷病手当金支給申請書の書き方と記入例にまとめてあります。

4ページ目の正式な名前は「療養担当者記入用」です

ページの上に「療養担当者記入用」と印刷されていて、欄の左側には縦書きで「療養担当者が意見を記入するところ」と入っています。療養担当者というのは、その人の療養を担当している医師や歯科医師のことです。

医師が書くというイメージが強い欄ですが、根拠になっている条文では歯科医師も並んで書かれています。健康保険法施行規則第84条第2項は、傷病手当金の申請書に添付しなければならない書類として、次のものを挙げています。

被保険者の疾病又は負傷の発生した年月日、原因、主症状、経過の概要及び前項第四号の期間に関する医師又は歯科医師の意見書

ここでいう「前項第四号の期間」は、労務に服することができなかった期間のことです。4ページ目は、法律上は「医師又は歯科医師の意見書」という位置づけの書類で、申請書の一部として綴じられているだけなのです。同じ条の第3項は、この意見書には証明する医師または歯科医師が診断年月日と氏名を記載しなければならないと定めています。

様式の署名欄そのものは「医師の氏名」となっていますが、歯の傷病で休んでいて歯科医院にかかっている場合は、そこで意見をもらうことになります。

「診断書」と呼ばれることも多い欄ですが、正確には診断書ではなく意見書です。この呼び方の違いは、あとで出てくる費用のところで効いてきます。

4ページ目にある欄

様式に印刷されている欄を、上から順に並べます。名称は様式に書かれているとおりのものです。

欄の名称 様式に添えられている説明
患者氏名(カタカナ) 姓と名の間は1マス空けてご記入ください。濁点(゛)、半濁点(゜)は1字としてご記入ください。
労務不能と認めた期間 勤務先での従前の労務に服することができない期間をいいます。
傷病名 労務不能と認めた傷病をご記入ください
初診日 療養の給付の開始年月日
発病または負傷の原因 (説明なし)
発病または負傷の年月日 (説明なし)
労務不能と認めた期間に診療した日がありましたか。 1. はい/2. いいえ
上記期間中における「主たる症状及び経過」「治療内容、検査結果、療養指導」等 (説明なし)

いちばん下に、医療機関の所在地、医療機関の名称、医師の氏名、電話番号を書く欄があり、その上に「上記のとおり相違ないことを証明します。」という一文と、証明した日付を入れる欄が置かれています。

このうち、傷病名と、発病または負傷の年月日は、2ページ目にも同じ項目があります。2ページ目は自分が書くページなので、内容がそろっているかどうかが差し戻しの分かれ目になります。

「労務不能と認めた期間」は治療期間とは別のものです

この欄がこのページの中心です。そして、いちばん誤解が起きやすいところでもあります。

記入の手引きには【療養担当者の方へ】という囲みがあり、この欄について次のように書かれています。

治療期間ではなく、療養のため就労できなかったと認められる期間の始期と終期をご記入ください。

通院した期間でもなければ、治療にかかっている期間でもありません。仕事に就けなかったと認められる期間です。様式の側にも「勤務先での従前の労務に服することができない期間をいいます」と説明が添えられています。従前の労務というのは、いままでやっていた仕事という意味です。軽い作業ならできるかどうかではなく、それまで従事していた業務ができない状態かどうかで見ます。

協会けんぽも、労務不能について次のように説明しています。

労務不能とは、被保険者が今まで従事している業務ができない状態のことで、労務不能であるか否かは、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を考慮して判断します。

ここで押さえておきたいのは、最終的に労務不能かどうかを決めるのは医師ではなく健康保険の側だということです。医師が書くのはあくまで意見であって、判定そのものではありません。だから欄の名前も「労務不能の期間」ではなく「労務不能と認めた期間」になっています。

医師は自分が診た範囲で医学的な意見を書き、保険者はそれと本人の仕事の内容などを合わせて判断します。役割が分かれているとわかっていると、医師の書きぶりに一喜一憂しすぎずに済みます。

なお、手引きは同じ囲みの中で、期間のうち労務不能と認められる期間が一部の場合は、右側の余白に労務不能と認められる日を記入するよう求めています。期間まるごとではなく、日を選んで証明することも様式は想定しています

「労務不能と認めた期間に診療した日がありましたか」の欄

はい、いいえのどちらかを選ぶだけの小さな欄ですが、意味を知っておくと落ち着いて見られます。

聞かれているのは、医師が労務不能と認めた期間の中に、実際に診察をした日が入っていたかどうかです。6月1日から6月30日までを労務不能と認めて、その間に6月10日と6月24日に診察をしていれば「1. はい」になります。その1か月まったく受診がないまま期間だけを書いた場合は「2. いいえ」です。

注目してほしいのは、「2. いいえ」という選択肢が最初から様式に用意されていることです。診療日のない期間が申請書に書かれること自体は、様式が想定していないわけではないという意味になります。

ただし、そこから先は保険者の審査です。診療日がないからといって自動的に不支給になるわけでもありませんし、逆に必ず認められると決まっているわけでもありません。すでに休んでしまった過去の期間をさかのぼって書いてもらえるのかという話は、診断書はあとから書いてもらえますかで扱っています。

依頼するのは、申請したい期間が過ぎてからです

4ページ目は証明する欄なので、期間の途中では書けません。医師は、まだ来ていない日について「働けなかった」と証明することはできないからです。

記入の手引きにも、申請書全体についてこう書かれています。

この申請書は、申請期間が経過する前に提出することはできません。(申請期間が経過した後にご提出ください。)

手引きに載っている記入見本を見ると、この順番がはっきりします。見本では労務不能と認めた期間が令和6年11月14日から12月31日までで、証明した日付は令和7年1月6日になっています。期間が終わってから証明するという形が、見本でそのまま示されているということです。

進め方としては、こうなります。

  1. 2ページ目の申請期間を先に決める
  2. その期間が過ぎるのを待つ
  3. 過ぎてから、申請書を持って受診する

3ページ目を書く会社も同じ期間について証明するので、期間が終わってからまとめて依頼すると行き違いが起きにくくなります。手続きを早く進めたい気持ちから、期間の途中で医師に渡してしまう方がいますが、そこは急いでも進みません。

長く休むことになりそうな場合、協会けんぽは申請の間隔について次のように案内しています。

傷病手当金の申請は、給与の支払い有無について事業主の証明が必要になりますので、1か月単位で給与の締切日ごとに申請されることをお勧めします。

1回の申請書に書ける期間は暦で3か月以内とも決まっているので、長期になるときは、どのみち何回かに分けて申請することになります。

どう頼むか。持っていくものと、聞いておくこと

いちばん確実なのは、次の診察に申請書そのものを持っていくことです。郵送や受付に預ける形を取っている医療機関もありますが、診察の場で渡せれば、書く内容についてその場で確認できます。

渡すときに一緒に伝えておくと話が早いのは、次の3つです。

  • 何月何日から何月何日までの期間について証明してほしいのか
  • 2ページ目に自分が何と書いたか(傷病名と、発病または負傷の年月日)
  • いつまでに必要か

2つ目が抜けやすいところです。自分は「うつ病」と書いたのに、4ページ目に「抑うつ状態」と書かれると、傷病名がそろわないまま提出することになります。自分が書いた2ページ目を、医師に一度見せてしまうのがいちばん早いです。コピーでも、スマートフォンの写真でも構いません。

そのうえで、渡すときに次のことを聞いておいてください。

  • いつごろ受け取れるか
  • 受け取り方(次の診察のときか、郵送か、受付での引き渡しか)
  • 費用の支払いはいつになるか

かかる日数は、その場で受け取れることもあれば、2週間ほど待つこともあります。国が日数を決めているものではないので、通院先ごとの運用を聞くしかありません。医師本人ではなく、受付や医療事務の方のほうが正確に答えられることが多いです。

診察のときに口で伝えるのがつらければ、メモを添えても構いません。日付が書いてある紙が1枚あるだけで、伝わり方はずいぶん変わります。

かかるお金は決まっています

4ページ目の費用(3割負担の場合)

傷病手当金意見書交付料(100点)1,000円
窓口で払う額(3割負担の場合)300円
健康保険がきく扱いなので、窓口で払うのは自己負担割合の分だけです。医療機関ごとに金額が変わるものではありません。医師が労務不能と認め証明した期間ごとに算定されるため、1か月ごとに申請すればそのつどかかります。

ここは、はっきりした数字が出せる部分です。

4ページ目の作成にかかる費用は、診療報酬の点数表に置かれています。令和8年度の医科診療報酬点数表には、次のように定められています。

B012 傷病手当金意見書交付料 100点 注 健康保険法第99条第1項の規定による傷病手当金に係る意見書を交付した場合に算定する。

そして、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号)は「保険医療機関に係る療養に要する費用の額は、一点の単価を十円とし、別表第一又は別表第二に定める点数を乗じて算定するものとする」と定めています。100点は1,000円です。

大事なのは、これが健康保険の給付の中に入っているということです。窓口で払うのは全額ではなく、自己負担割合の分になります。3割負担の方であれば300円です。

会社に出す診断書は健康保険の給付に入らないため全額自己負担で、金額も医療機関ごとに違います。傷病手当金の4ページ目はそこが違います。詳しい仕組みは診断書の費用に保険がきかない理由にまとめました。

もう2つ、通知で決まっていることがあります。昭和60年3月29日の保険発第27号は、次のように整理しています。

  • 傷病手当金意見書交付料は、医師・歯科医師が労務不能と認め証明した期間ごとにそれぞれ算定できる
  • 意見書を交付したあとに被保険者がそれを紛失し、再度交付した場合は、最初の交付料のみを算定する。この場合、二度目の交付に要する費用は被保険者の負担とする

1つ目は、1か月ごとに申請すればそのつど費用がかかるという意味です。半年休むなら6回分になります。2つ目は、受け取った申請書をなくすと、書き直しの費用は保険の外側で自分が払うことになるという意味です。書いてもらった申請書は、封筒に入れて置き場所を決めておいてください。

転院したとき、主治医が変わったとき

途中で病院を変えた場合、4ページ目は期間ごとに分かれます。記入の手引きには、次のように書かれています。

注2)病院を転院した場合は、それぞれの病院で療養担当者(医師等)の意見を受けてください。

さらに、その下に次の案内が続きます。

※主治医が変更となった場合など、4ページ目が複数に分かれる場合は、申請書を分けてご申請ください。

つまり、1枚の申請書に2つの医療機関の証明を載せることはできず、申請書ごと分けるという扱いです。前の病院に通っていた期間はその病院に、移ってからの期間はいまの病院に依頼して、それぞれ1式ずつ提出することになります。

すでに通わなくなった病院に連絡するのは気が重い作業だと思います。ただ、その期間に診察していたのはその医療機関だけなので、ほかに頼める先がありません。電話で「傷病手当金の申請書の療養担当者記入用を書いていただきたいのですが」と伝えれば、受付で扱いがわかるはずです。書類だけの受付をしている医療機関も多く、必ずしも再受診が要るとは限らないので、そこも電話で確かめてください。同じ病院の中で主治医が代わった場合は、院内で調整してもらえることもあります。

自分の申請期間と、医師が書いた期間が食い違っていたら

戻ってきた申請書を見て、思っていた日付と違っていることがあります。落ち着いて見ていきます。

まず、期間がずれていても申請書が無効になるわけではありません。傷病手当金の対象になるのは、原則として、自分が申請した期間と医師が労務不能と認めた期間が重なっている部分です。医師が短めに書いた場合は、その範囲で判断されることになります。

前に触れたとおり、手引きは「期間のうち、労務不能と認められる期間が一部の場合は、右側の余白に労務不能と認められる日をご記入ください」と療養担当者に求めています。期間の一部だけを証明する書き方が、はじめから用意されているということです。飛び飛びの日付が並んでいても、それが誤記だとは限りません。

そのうえで、実際にできることは3つです。

  1. そのまま提出する。医師が証明した範囲で審査を受けることになります
  2. 2ページ目の申請期間を、医師の証明に合わせて書き直す。まだ提出していないなら、こちらのほうが確認は早く済みます
  3. 加入している健康保険の窓口に、この状態で出してよいかを聞く

判断がつかないときは3つ目です。手続きについて本人が問い合わせることは当然できますし、会社を通す必要もありません。

書き直しの相談を医師にする場合は、「もっと長く書いてください」と頼むよりも、実際に休んでいた日、その間の状態、会社にどう連絡していたかを伝えるほうが、医師の判断材料になります。

なお、傷病名や発病年月日が2ページ目と食い違っている場合は、自分が書いた2ページ目のほうを直すのが原則です。4ページ目は医師が証明した文書なので、こちらで手を入れるものではありません。

医師が「書けない」と言うときに起きていること

依頼したときに、渋られたり、一部しか書けないと言われたりすることがあります。断られたと感じると気持ちがくじけますが、その言葉の中身はいくつかに分かれます。

1つ目は、診ていない期間についての話です。医師法第20条は、自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定めていて、罰則もあります。診ていない期間について書けないというのは、その医師の方針ではなく法律の話です。この論点は診断書はあとから書いてもらえますかで詳しく扱っています。

2つ目は、労務不能かどうかの判断そのものについての迷いです。医師は本人の仕事の内容を細かくは知りません。デスクワークなのか、立ち仕事なのか、通勤に何時間かかるのか。ここが見えないと、従前の労務に服することができるかどうかは判断しづらくなります。この場合は、仕事の内容を具体的に伝えるだけで話が進むことがあります。

3つ目は、書類が院内にたまっている場合です。この場合は「書けない」ではなく「すぐには書けない」で、時間の問題です。いつごろになるかを聞いておけば足ります。

そして、依頼すること自体に引け目を感じる必要はありません。医師法第19条第2項は、次のように定めています。

診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

診察した医師には、正当な理由がなければ交付を断ってはならないという義務があるということです。通院している医療機関に依頼することは、遠慮するようなことではありません。

受け取ったら、その場で見ておきたいところ

書き上がった4ページ目を受け取ったら、封をする前に次の点だけ見てください。あとから気づくと、また往復することになります。

見るところ 確かめること
労務不能と認めた期間 日付が入っているか。自分が2ページ目に書いた期間と、どこまで重なっているか
傷病名 2ページ目に自分が書いた傷病名と同じか
発病または負傷の年月日 2ページ目と同じか
「上記のとおり相違ないことを証明します。」の日付 空欄になっていないか
医療機関の名称、医師の氏名 記載があるか

証明日と医師の氏名は、施行規則が「診断年月日及び氏名を記載しなければならない」と定めている項目です。空欄のまま出すと確認に時間がかかります。

もうひとつ、2ページ目に「療養担当者記入欄(4ページ)に記入されている傷病による申請である場合は、左記にチェックを入れてください」という欄があります。4ページ目が戻ってきたタイミングで、ここのチェックも入れておいてください。

今日できること

読んでいて情報が多く感じられたかもしれませんが、実際にやることは順番が決まっています。

  1. 申請したい期間を決める。まだ期間が終わっていないなら、終わるのを待ちます
  2. 期間が過ぎたら、申請書と、自分が書いた2ページ目を持って受診する
  3. 渡すときに、期間と傷病名を口かメモで伝えて、いつ受け取れるかを聞く
  4. 受け取ったら、期間と傷病名と証明日だけ見る

この4つだけです。医師記入欄は、自分の側でできることが少ないぶん、渡す前の準備でほとんどが決まります。期間を決めて、2ページ目を見せて、受け取り日を聞く。それができていれば、あとは待つ時間になります。

書き方や進め方で判断がつかないところは、加入している健康保険の窓口に直接聞くのがいちばん早くて確実です。通院先に医療相談室や医療ソーシャルワーカーがいる場合は、書類の依頼そのものについて相談できます。ひとりで正しい答えを探すより、一度誰かに現状を話してしまうほうが、結果として早く片づきます。

わたしたちは就労支援の現場で、医師に書類を頼むことに気を遣いすぎてしまう方をよく見かけます。この欄は日常的に書かれている書類で、頼むこと自体は遠慮のいる場面ではありません。ただ、頼む時期だけは決まっています。期間が過ぎてから、というところだけ押さえておけば大丈夫です。