診断書をお願いしたら、思っていたより高い金額を言われて驚いた。あるいは、これから頼むところなのに、いくらかかるのか分からなくて診察に行くのが怖い。どちらも、体調が悪くて働けていない時期には本当にこたえる話だと思います。

この記事では、診断書のお金のことだけを扱います。なぜ保険がきかないのか、金額はどこを見れば分かるのか、誰が払うことになっているのか、医療費控除に使えるのか、そして払わずに済ませられる部分はどこか。順番に整理していきます。

なお、診断書をどう頼むか、何を書いてもらうかという手順の話は、診断書のもらい方のほうにまとめています。

保険がきかないのは、書類が「療養の給付」に入っていないからです

まず、いちばん納得しにくいところから説明します。同じ病院の同じ診察の日に払っているのに、診察代は3割で、診断書だけ全額なのはどうしてなのか、という話です。

健康保険法は、保険から給付されるものを次の5つと定めています。

  1. 診察
  2. 薬剤または治療材料の支給
  3. 処置、手術その他の治療
  4. 居宅における療養上の管理と、その療養に伴う世話その他の看護
  5. 病院または診療所への入院と、その療養に伴う世話その他の看護

書類を書いて渡すことは、この5つのどこにも入っていません。診断書の作成は治療ではないので、そもそも健康保険が払う対象になっていないということです。

厚生労働省の通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」には、もっとはっきり書かれています。療養の給付と直接関係ないサービス等の具体例として「公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用」という項目があり、その中に証明書代が挙げられています。例として示されているのは、産業医が主治医に依頼する職場復帰等に関する意見書や、生命保険等に必要な診断書等の作成代です。同じ項目には、診療録(カルテ)の開示手数料も並んでいます。

つまり診断書代は、保険診療の枠の外にある費用です。窓口で全額を請求されるのは、間違いではありません。

ちなみに医師の側には、診断書を書くこと自体を断れないという決まりがあります。医師法第19条第2項は、診察をした医師は、診断書の交付の求があった場合には、正当の事由がなければこれを拒んではならないと定めています。ただしこれは「無料で書く」という意味ではありません。書いてもらえることと、費用がかかることは、別の話として並んでいます。

書類によって、保険がきくものときかないものがあります

「病院で書いてもらう紙」とひとまとめに考えていると、金額の見当がつきません。実際には、保険の中にある書類と外にある書類が混ざっています。休職の前後で出てくるものを、公的な資料に沿って分けておきます。

書類 費用の扱い
会社に出す診断書(休職・復職) 保険の外。全額自己負担で、金額は医療機関が決めます
傷病手当金の申請書の医師記入欄(意見書) 保険の中。診療報酬に「傷病手当金意見書交付料 100点」があります
他の医療機関あての紹介状(診療情報提供書) 保険の中。診療情報提供料として点数が置かれています
生命保険などに出す診断書 保険の外。通知に例として明記されています
会社や産業医が主治医に依頼する意見書 保険の外。費用負担を取り決めておくものとされています
カルテ(診療録)の開示手数料 保険の外。通知の同じ項目に並んでいます

大まかな原則は、その書類が治療そのもののために使われるのか、治療の外にある手続きのために出すものなのかという線です。会社に出す診断書や生命保険に出す診断書は後者にあたり、保険の外に出ます。診断書の多くは後者です。

ただし、この原則には例外があります。傷病手当金の意見書と、他の医療機関あての紹介状は、手続きや連携のための書類でありながら診療報酬に点数が置かれていて、保険の中に入ります。とくに意見書は、休職中にいちばん多く書いてもらう書類でありながら保険がきくほうなので、ここは原則で判断せず、上の表で確かめてください。

金額は、通院先の掲示かウェブサイトで確認できます

文書料の調べ方

  1. 1通院先のウェブサイトを見る「自費診療」「文書料」「各種証明書」「保険外費用」といった見出しの下にまとめられていることが多いです
  2. 2院内の掲示を見る受付窓口や待合室など見やすい場所に掲示しておくことが通知で求められています
  3. 3受付に電話して聞く「診断書の文書料はおいくらですか」で足ります。診察を待たずに確認できます
国が一律の額を決めているものではないので、相場を探すより通院先の料金を1回調べるほうが早くて正確です。

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

診断書の料金は、保険診療の点数のように国が一律に決めているものではありません。ですので、この記事に「だいたい◯◯円です」と書くことはできませんし、書いてある情報があったとしても、あなたが通っている病院の金額とは限りません。相場を探すより、通院先の料金を1回調べたほうが、はるかに早く正確です

調べる方法は、通知で決まっています。

先ほどの通知は、費用を徴収する場合の手続きとして、保険医療機関等内の見やすい場所、例えば受付窓口や待合室等に、費用徴収に係るサービス等の内容および料金について、患者にとって分かりやすく掲示しておくことを求めています。

そして令和6年3月21日の一部改正で、ここに一項目が加わりました。この掲示事項については、原則として、ウェブサイトに掲載しなければならないという内容です。ただし自ら管理するホームページ等を持たない医療機関は除かれます。この改正には令和7年5月31日までの経過措置が置かれていましたが、その期間はすでに終わっています。ホームページを持っている医療機関であれば、料金は原則としてサイトに載っているはずだ、ということです。

サイトの中では、「自費診療」「文書料」「各種証明書」「保険外費用」といった見出しの下にまとめられていることが多いです。見つからないときは、受付に電話をして「診断書の文書料はおいくらですか」と聞けば足ります。診察を待たずに電話で確認できるので、体調が悪い日でも負担が少ない方法です。

金額に上限が定められているわけではありませんが、まったくの自由というわけでもありません。同じ通知には、徴収する費用については、社会的にみて妥当適切なものとすることという一文があります。

頼む前に確かめておくと安心なこと

料金だけ分かっても、当日になって困ることがあります。あわせて聞いておくとよいものを並べておきます。

確かめること なぜ必要か
文書料の金額 掲示かウェブサイトに出ています。電話でも聞けます
受け取りまでの日数 当日渡しとは限りません。提出期限から逆算するために要ります
会社の様式でも書けるか 病院の様式と会社の様式で料金が違うことがあります
支払うタイミング 依頼したときか、受け取るときかは医療機関によります
領収証をもらえるか あとで会社に費用を求めるときや、記録として残すときに要ります

領収証については、通知に定めがあります。患者から費用徴収した場合は、他の費用と区別した内容のわかる領収証を発行することとされています。診察代とまとめられた領収証しかもらえないと、あとで診断書代がいくらだったのか確かめられなくなります。

内容の説明がないまま払わされるものではありません

金額が思っていたより高かったとき、言い出しにくくて黙って払ってしまう方は多いと思います。ただ、通知の書き方はこうです。

患者からの費用徴収が必要となる場合には、患者に対し、徴収に係るサービスの内容や料金等について明確かつ懇切に説明し、同意を確認の上徴収すること。そしてこの同意の確認は、徴収に係るサービスの内容および料金を明示した文書に患者側の署名を受けることにより行うものである、とされています。

つまり、いくらかかるのかを説明されて、あなたが納得したうえで払う。それが本来の順番です。頼む前に「おいくらになりますか」と聞くことは、遠慮すべきお願いではなく、手続きに元から含まれているものだと考えてください。

もうひとつ、覚えておくと役に立つ一文があります。同じ通知は、「お世話料」「施設管理料」「雑費」等の曖昧な名目での費用徴収は認められないとしています。何の費用なのか分からない項目が請求に混ざっていたら、それが何かを聞いていい、ということです。

会社に出す書類の費用は、誰が払うのか

休職や復職のときの診断書は、あなたが読みたくて取るものではなく、会社が求めるから取るものです。それでも費用は本人が払うことが多く、そこに納得しづらさが残ります。

法律で負担者が決まっているわけではありません。ですので、確かめる先は会社の就業規則や休職・復職の規程になります。書類を求められたその場で「この診断書の費用は自己負担になりますか」と聞いておくと、あとで行き違いになりません。

一方で、会社の側が主治医に直接たずねる場合の費用については、取り決めておくものとされています。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、職場復帰支援に関する情報提供依頼書などを用いて主治医に情報提供を依頼する場合や、直接主治医との連絡や面会を行う場合、その費用負担についても事前に主治医との間で取り決めておく必要がある、と書いています。

先に挙げた通知の例示に「産業医が主治医に依頼する職場復帰等に関する意見書」の作成代が入っていたことを思い出してください。会社側が動かす書類にも、やはり文書料は発生します。誰が払うのかを最初に決めておくべきものだと、国の資料が言っているわけです。

会社から書類を渡されたときに、次のように聞いてみてください。

  • この書類の文書料は、会社の負担になりますか、自己負担になりますか
  • 会社から主治医に問い合わせをする予定はありますか。その場合の費用はどちらが払いますか
  • 領収証は提出したほうがよいですか

医療費控除には、原則として使えません

確定申告のときに、まとめて医療費に入れられないかと考える方は多いと思います。結論から言うと、診断書の文書料は原則として医療費控除の対象になりません。

所得税法は、医療費控除の対象になる医療費を、医師または歯科医師による診療または治療、治療または療養に必要な医薬品の購入その他医療またはこれに関連する人的役務の提供の対価のうち、通常必要であると認められるものと定めています。金額についても、政令で、その病状等に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分とされています。

国税庁(東京国税局)の診療情報提供書に係る診療情報提供料の自己負担額の医療費控除の取扱いについて(文書回答事例)には、この定義を診断書に当てはめた説明が載っています。いわゆる診断書などの作成に係る文書料については、医師が診療または治療した内容等を記載した文書の発行に係る手数料であり、その発行された文書は通常、生命保険会社等へ給付金等を請求する際の提出書類等として使用されることから、医師等の診療または治療の対価に該当せず、医療費控除の対象にならないと考えられる、というものです。

ただし、その事例で問題になっていた文書料そのものは、対象になると回答されています。別の医療機関で治療を続けるために交付された紹介状(診療情報提供書)の自己負担額で、紹介先での診療を受けるために直接必要な費用にあたる、という理由です。回答日は平成26年12月1日、回答者は東京国税局審理課長で、照会者の見解のとおりで差し支えないとされました。

線の引き方はここにあります。その書類が、治療そのものを受けるために要るのか、治療の外にある手続きのために要るのか。会社や保険会社に出すための診断書は後者にあたるので、控除には使えません。国税庁のタックスアンサーでも、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金は原則として含まれないとされていて、同じ考え方が通っています。

もっとも、診察そのものの費用や、通院にかかった交通費は対象になり得ます。診断書代が対象外だからといって、その日の医療費まで諦める必要はありません。領収証を項目ごとに分けて保管しておくと、申告のときに迷わずに済みます。

費用を抑えるために、現実にできること

ここからは実務の話です。診断書代そのものを値切ることはできませんが、枚数を増やさない、二度手間にしないという考え方で、払う総額は変わります。

傷病手当金の申請書は、診断書ではありません

いちばん効くのがこれです。健康保険の傷病手当金を申請するとき、申請書には医師が記入する欄があります。この欄は診断書ではなく意見書で、健康保険法第99条第1項の傷病手当金に係る意見書として、医科診療報酬点数表に「B012 傷病手当金意見書交付料 100点」が置かれています。

保険診療として扱われる項目なので、1点10円で計算して1,000円にあたり、窓口で払うのはそのうち自己負担割合の分だけです。自費の診断書とは金額の桁が違います。

ですから、会社や健康保険組合から申請書とは別に診断書も求められているときは、本当に両方必要なのかを先に確かめてください。申請書の意見書欄で足りるのに、念のためと言われて診断書も取ってしまうと、その分がまるごと自己負担になります。

この交付料は、医師が労務不能と認めて証明した期間ごとにそれぞれ算定できるものとされています。傷病手当金は多くの場合1か月ごとに申請するので、申請の回数だけ発生すると考えておいてください。傷病手当金そのものの仕組みは傷病手当金でいくらもらえるかにまとめています。

受け取った書類は、なくさないでください

小さいことのようですが、金額に直結します。厚生労働省の通知には、医師が傷病手当金意見書を被保険者に交付した後に、被保険者が当該意見書を紛失し、再度医師が意見書を交付した場合は、最初の交付料のみを算定することとしたうえで、2度目の意見書の交付に要する費用は被保険者の負担とすると書かれています。書き直してもらう分は、保険がきかないということです。

診断書も同じです。受け取ったらその場でスマートフォンで撮っておく、提出する前にコピーを1部取っておく。これだけで、紛失や再提出のときに払い直さずに済むことがあります。

何枚要るのかを、先に数えておく

診断書が必要になる場面は、休職の申し出、会社への定期的な報告、復職の申請と、時期をまたいで何度も出てきます。そのつど1枚ずつ頼むと、そのつど費用がかかります。

先に確かめておきたいのは次の3つです。

  • 提出先ごとに原本が要るのか、コピーで足りるのか
  • 会社は診断書をいつまでの期間について求めているのか(1回で足りるのか、更新が要るのか)
  • 保険会社への請求など、他にも同じ時期に書類が要る予定があるか

同じ時期に必要になるものが分かっていれば、1回の診察でまとめて依頼できます。医療機関によっては複数枚を同時に頼んだほうが手続きが1回で済むので、依頼のときに相談してみてください。

依頼するときに、書いてほしい内容を先に伝える

書き上がった診断書を見て、会社が求めていた内容が入っていなかった。それで書き直しをお願いすることになると、もう一度文書料がかかることがあります。

防ぎ方は単純で、会社から様式や記載してほしい項目を指定されているなら、その紙をそのまま診察に持っていくことです。何を書いてもらうかという中身の話は診断書のもらい方のほうで扱っています。

今日できるのは、電話1本です

診断書の費用は、保険の外にあるお金です。だから高く感じますし、休んでいる時期にはなおさら重く感じられます。ただ、金額が分からないまま不安なのと、金額を知ったうえで払うのとでは、心の負担がまったく違います。

今日できることを1つだけ挙げるなら、通院先のウェブサイトで文書料のページを探すか、受付に電話をして金額を聞いておくことです。診察を待つ必要はありませんし、名前を名乗る必要もありません。料金は本来、掲示とウェブサイトで示されているものです。聞いて構いません。

わたしたちは就労支援の現場で、書類の費用が重なる時期に立ち会うことがあります。一枚ずつの金額は大きくなくても、休職の手続きと制度の申請が同じ時期に来ると、収入が止まっているところへまとめて出ていきます。何枚必要になるのかを先に数えておくと、あとで驚かずに済みます。