会社を休みたい、でもそのためには診断書が要るらしい。そこまでは分かっても、その先で止まってしまう方がとても多いです。誰に言えばいいのか、なんと言えばいいのか、それを言ったら大げさだと思われないか。診察室の椅子に座った瞬間に、頭が真っ白になったという話も何度も聞きます。
先に結論から書きます。診断書は、診察のときに「会社に出す診断書をお願いしたい」と口に出せば始まります。申込用紙を先に取り寄せる必要も、上手な言い方を考えておく必要もありません。この記事は、その一言の前後で何が起きるのかを、順番に並べただけのものです。
体調が悪いときに長い文章を読むのはつらいので、必要なところだけ拾って読んでください。
診断書とは、医師が見たことを書いた書類です
診断書という言葉は堅く聞こえますが、中身は、診察した医師が、そのときの患者の状態について医学的に判断したことを書いた書類です。会社に提出するものは、そのうち「働くこと」に関わる部分を書いてもらう形になります。
この書類には、法律上の位置づけがあります。医師法第19条第2項は、次のように定めています。
診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
読みにくい書き方ですが、意味は単純です。診察をした医師は、診断書を書いてほしいと求められたら、正当の事由がなければ断ってはいけないということです。
ここを知っておいてほしくて先に書きました。診断書を頼むのは、医師の厚意にすがるお願いではありません。診察を受けた人が持っている、ふつうの求めです。「こんなことで書いてもらっていいのだろうか」と迷う必要はありませんし、頼んだからといって迷惑な患者になるわけでもありません。
ただし「求めれば必ず出る」と言い切ることもできません。正当の事由があるかどうかを判断するのは医師です。診察した内容から書けないことは書けませんし、まだ判断がつかない段階だと言われることもあります。そこまで含めて、頼んでみないと分からない、というのが正直なところです。
診断名がつくかどうかは、医師が決めます
心の不調の場合、受診した時点で診断名がはっきり決まるとは限りません。数回の診察を経て見立てが変わることもありますし、経過を見ましょうと言われることもあります。
これはよくあることで、あなたの症状が軽いという意味でも、信じてもらえなかったという意味でもありません。診断名をどう扱うかは医師の専門的な判断なので、この記事でも、どういう場合に何という診断がつくのかは書きません。
大事なのは、診断名が確定していなくても、療養が必要だと医師が判断すれば診断書は書かれうるということです。名前がつくのを待たなくてはいけない、という決まりはありません。
誰に頼むのか
診断書を書けるのは、あなたを診察した医師です。ここが出発点になります。
診断書は、いま診てもらっているかどうかで頼み方が変わります
すでに通院している場合
いま心療内科や精神科にかかっているなら、その主治医に頼むのが一番早くて確実です。すでにあなたの経過を知っているので、療養期間の見込みも書きやすくなります。
内科など別の科にかかっている場合も、まずそこで相談して構いません。専門の医療機関を紹介してもらえることもあります。
まだどこにもかかっていない場合
まず受診が必要です。医師法第20条は、医師は、自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定めています。電話やメールだけで診断書を出してもらうことはできません。
どこにかかればいいか分からないときは、厚生労働省の「こころの耳」に全国医療機関検索のページがあり、令和6年4月から運用されている国の「医療情報ネット(ナビイ)」につながっています。診療科や地域で探せるので、まずここで近くの心療内科や精神科を見てみてください。
心療内科と精神科のどちらにかかればよいのか、その違いと選び方は心療内科の診断書は、どこにかかればもらえるのかにまとめています。
予約の電話をするとき、あるいは予約フォームの備考欄に、「会社に提出する診断書が必要になるかもしれない」と先に伝えておくと、当日の流れが楽になります。伝えたからといって必ず書いてもらえるわけではありませんが、その前提で診察を進めてもらえます。
会社の産業医に頼むものではありません
産業医がいる職場だと、産業医に書いてもらうのかと考える方がいます。ここは分けて理解しておくほうが混乱しません。
産業医は、労働安全衛生法第13条にもとづいて、労働者の健康管理などを行い、必要があるときは事業者に勧告をする立場の医師です。同法第13条の3では、産業医が労働者からの健康相談に応じられるよう体制を整えることが会社の努力義務とされています。つまり産業医は、あなたの治療を担当する医師ではなく、職場の健康管理に関わる医師です。
会社に出す病気休業の診断書は、治療を担当している主治医に書いてもらうのが基本の形になります。なお、産業医の選任が義務づけられているのは常時50人以上の労働者を使用する事業場なので、産業医がいない職場も珍しくありません。いない場合でも、主治医に頼む流れは何も変わりません。
診断書に何が書かれるのか
会社を休むために出す診断書は、実務では「病気休業診断書」と呼ばれることがあります。厚生労働省の心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きには、休業を始める段階について次のように書かれています。
病気休業の開始においては、主治医によって作成された診断書を労働者より管理監督者等に提出してもらう。診断書には病気休業を必要とする旨の他、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましい。
つまり、国が会社向けに示している標準的な形は、休業が必要であることと、必要な療養期間の見込みの2つが書かれた診断書です。実際の診断書もおおむねこの形になっていて、これに病名にあたる記載と、日付、医師名、医療機関名が入ります。
| 書かれることが多い項目 | 補足 |
|---|---|
| 氏名・生年月日 | 会社の記録と一致しているか確認します |
| 病名(診断名) | 書き方は医師が判断します |
| 休業が必要であること | 「療養を要する」などの表現になります |
| 必要な療養期間の見込み | 「令和◯年◯月◯日から◯か月間」のような書き方です |
| 発行日・医師名・医療機関名 | 押印がある形式が多いです |
療養期間の見込みをどのくらいの幅で書くかは医師の判断です。相場を示した公的な資料はないので、何か月と書いてくださいと指定できるものではありません。ただ、あとから足りなくなれば、期間が終わる前に受診して書き足してもらえます。最初の一枚で全部を決めなければいけない書類ではない、と考えておいてください。
会社によっては指定の様式がある場合があります。人事や総務に「診断書の様式はありますか」と一度聞いておくと、書き直しの手間を防げます。様式があるなら、受診の前に印刷して持っていってください。
いつ、どう言えばいいのか
診察は思っているより短く終わります。だから、診断書の話は診察の最初のほうで出すほうが確実です。最後に「あの、実は」と切り出すと、その日は時間がなくて、と言われてしまうことがあります。
言い方の例をいくつか置いておきます。どれでも構いませんし、そのまま読み上げてもらってもいいように短くしました。
- 「仕事を休むことを考えているので、会社に出す診断書をお願いしたいです」
- 「会社に休職を申し出たいのですが、診断書が要ると言われました」
- 「このまま働き続けるのが難しくて、診断書を書いてもらえるか相談したいです」
会社に何と言われたかをそのまま伝えるのが、一番早くて確実です。「上司に相談したら、診断書を持ってきてほしいと言われました」でも十分に通じます。
声が出ないときは、メモを渡してください
診察室に入ると涙が出て話せなくなる、聞かれたことに「大丈夫です」と答えてしまう。これはとてもよくあることで、あなたの意志が弱いからではありません。
そういうときは、紙に書いて渡してください。医師は読んでくれます。スマートフォンのメモ画面を見せる形でも構いません。書く内容は次の3つだけで足ります。
- いま困っている症状(眠れない、朝起き上がれない、食欲がない、涙が出る、など)
- 仕事のどこができなくなっているか(集中できない、遅刻が増えた、電話に出られない、など)
- 会社に出す診断書をお願いしたいこと
家族や信頼できる人に付き添ってもらう方法もあります。診察室に一緒に入ってもらえるかは医療機関によって運用が違うので、予約のときに確認してください。
何を伝えると、診断書が書きやすくなるか
医師は、あなたの生活と仕事を外から見ることができません。だから、診察室で伝えられたことが、そのまま判断の材料になります。
つらさを我慢して「まあ何とかやっています」と答えてしまうと、そのとおりに受け取られます。逆に、大げさに言う必要もありません。事実を、起きたとおりに言えば足ります。
伝えると役に立ちやすいのは、次のような具体的な事実です。
| 伝えること | 例 |
|---|---|
| 眠れているか | 「2時間おきに目が覚めて、4時には起きてしまう日が2週間続いています」 |
| 食べられているか | 「昼は食べられなくて、この1か月で3キロ減りました」 |
| 朝、動けるか | 「布団から出るまでに1時間かかって、遅刻が週2回あります」 |
| 仕事で起きていること | 「メールの文章が読めなくなって、同じ行を何度も読み返しています」 |
| 涙や不安 | 「通勤電車で急に涙が出て、途中で降りた日がありました」 |
| いつからか | 「異動があった4月ごろから、少しずつです」 |
数字と期間が入ると伝わりやすくなります。何日続いているか、週に何回か、それだけでも大きな違いがあります。
働き方の実際も、あわせて伝えてください。残業がどのくらいあるか、休日に出勤しているか、通勤にどれだけかかるか、どんな作業をしているか。心の不調は仕事の負荷と切り離せないので、この情報は医師にとって重要です。「毎日22時まで残っています」「往復で2時間半かかります」といった一言が、判断を左右することがあります。
何日で受け取れるのか
ここは正直に書きます。医療機関によってまったく違います。
その日の診察後に手書きで作成して渡してくれるところもありますし、作成に1週間から2週間かかりますと言われるところもあります。混み具合や、その医療機関の事務の体制によります。だから「だいたい何日」と言い切ることはできません。
やっておくべきことは1つだけです。頼んだその場で「いつ受け取れますか」と聞くこと。これだけで、その後の予定が立ちます。
そして、会社に提出する期限が決まっているなら、それも同時に伝えてください。「今週中に出すよう言われています」と言えば、間に合う方法を考えてもらえることがあります。何も言わなければ、急いでいることは伝わりません。
受け取り方も確認しておくと安心です。次の診察のときに窓口で受け取るのか、できあがったら電話をもらえるのか、郵送してもらえるのか。郵送に対応している医療機関なら、体調が悪い日に無理に外出しなくて済みます。
できあがるまで出社し続けなければいけない、というわけでもありません。明日から休むだけなら何が要るのかは診断書はすぐもらえるのかにまとめました。
診断書と、傷病手当金の申請書は別の書類です
ここで混乱しやすいところをひとつ整理しておきます。会社に休みを申し出るために出す診断書と、休んでいるあいだの生活費のために健康保険へ出す傷病手当金の申請書は、まったく別の書類です。診断書を出したから傷病手当金の手続きも済んでいる、ということにはなりません。
全国健康保険協会の健康保険傷病手当金支給申請書は4ページの構成になっていて、1ページ目と2ページ目が被保険者記入用、3ページ目が事業主記入用、4ページ目が療養担当者記入用です。この4ページ目に、医師が「労務不能と認めた期間」や傷病名、その期間の主な症状と経過などを記入します。つまり、この申請書についても、医師に書いてもらう欄があるということです。
この4ページ目をいつ、どう頼むのかは傷病手当金申請書の医師記入欄にまとめています。
厚生労働省の職場復帰支援の手引きでも、休業者と連絡を取るタイミングの例として「診断書や傷病手当金申請書の提出のタイミング」が挙げられていて、この2つは別々に出てくる書類として扱われています。
実務として役に立つのは、診断書を頼むときに、傷病手当金の申請書の予定もあわせて伝えておくことです。申請書は休んだ期間が過ぎたあとに書いてもらうものなので同時にはできませんが、「あとで傷病手当金の申請書もお願いすることになると思います」と一言添えておくと、その後の通院の間隔を相談しやすくなります。
なお、この2つは書類の性質が違うため、費用の扱いも同じではありません。詳しくは費用の記事にまとめてあります。
費用について
診断書の作成にかかる文書料は、健康保険がきく診療とは別のものとして扱われます。会社に提出する診断書のような公的な保険給付と関係のない文書の発行費用は、厚生労働省の通知療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについてで「療養の給付と直接関係ないサービス等」に位置づけられていて、金額は医療機関がそれぞれ定めています。同じ通知で、費用は受付窓口など見やすい場所に分かりやすく掲示することとされていて、令和6年3月の改正で、原則としてウェブサイトにも掲載することになりました。行く前に医療機関のホームページを見れば、金額が分かることが増えています。
金額の相場や、書類の種類によって扱いが違う点は診断書の費用はいくらかにまとめました。
受け取ったら、その場で見るところ
窓口で封筒を渡されたら、開けて確認して構いません。あとで書き直しになると、また日数がかかります。見るのは4か所だけです。
- 氏名と生年月日が正しいか
- 療養期間の始まりの日がいつになっているか
- 期間の長さが書かれているか
- 発行日と医師名、医療機関名が入っているか
とくに2番目は大事です。休職の始まりの日や、傷病手当金の待期の数え方に関わってくるので、自分の認識とずれていないか見ておいてください。ずれていると感じたら、その場で受付に伝えるのが一番早いです。
もう1つ、会社に渡す前に、自分用のコピーか写真を残してください。原本の提出を求める会社が多く、渡してしまうと手元に何も残りません。あとで「療養期間はいつまでだったか」を確認したくなる場面が必ず来ます。スマートフォンで撮っておくだけで十分です。
会社に出したあとのこと
診断書を提出すると、会社の側で手続きが始まります。誰に出すかは会社によって違い、直属の上司の場合も、人事や総務の場合もあります。迷ったら人事に「診断書はどこに提出すればいいですか」と聞いて構いません。
ここで知っておいてほしいことが1つあります。会社が、診断書に書かれていること以外の情報を主治医から集めようとする場合、医療機関は本人から同意を得る必要があるとされています。厚生労働省こころの耳の診断書等の個人情報の取扱いに関する注意点は?で、社会保険労務士が解説しているなかで示されている考え方です。
つまり、あなたの知らないところで会社と主治医が話を進めることは、原則として起きません。会社から「主治医に聞いてもいいですか」と同意を求められることはありますが、その場で即答しなくても大丈夫です。何を聞くのかを確認してから決めて構いません。
病名についても同じで、診断書に書かれている以上のことを上司に説明する義務は原則としてありません。詳しい経過を話したくなければ、話さなくて大丈夫です。
診断書を出したあと、会社とどんなやりとりをして休職に入るのかは、休職の手続きと過ごし方に順番どおりに書いてあります。就業規則のどこを見ておくべきかも、そちらにまとめました。
なお、この一枚が休職以外の手続きにもそのまま使えるとは限りません。自立支援医療や障害者手帳など、手続きごとに別の書類が要ることはうつ病の診断書は、そのあと何に使えるのかで整理しています。
期間が足りなくなったとき
診断書に書かれた療養期間が終わりに近づいたのに、まだ働ける状態ではない。これはよくあることで、失敗ではありません。
やることは1つです。期間が終わる前に受診して、いまの状態を医師に伝えること。まだ療養が必要と判断されれば、続きの期間について診断書を書いてもらえます。
気をつけたいのは日付です。期限が切れてから受診すると、あいだの期間の扱いで会社と話し合いが必要になったり、傷病手当金の申請で困ったりすることがあります。期限の2週間くらい前に、次の受診の予定を確認しておくと落ち着いて進められます。
通院を続けること自体にも意味があります。傷病手当金は、医師が働けない状態だと認めた期間について支給される仕組みなので、診察が途切れると、その期間の証明ができなくなります。調子が良い日が続くと通院の間隔を空けたくなりますが、そこは間隔を保っておくほうが結果的に自分を守ります。
復職するときにも、診断書が要ります
先の話ですが、地図があるほうが不安は小さくなるので、ひとことだけ書いておきます。休職から職場に戻るときにも、多くの会社では診断書の提出を求められます。休むときの診断書とは書いてもらう内容が違い、就業上の配慮についての意見を含めてもらうことが望ましいとされています。詳しくは復職の診断書にまとめました。
いまは、この先のことを考えなくて大丈夫です。休むための一枚と、戻るための一枚は別なので、今日は前者だけ考えてください。
思ったとおりに書いてもらえなかったとき
頼んだけれど「もう少し様子を見ましょう」と言われた、書いてもらえたけれど期間が思っていたより短かった。そういうことも起こります。
理由はいろいろあり、その日の診察だけでは判断がつかない場合もあれば、伝えたつもりのことが伝わっていない場合もあります。まずは、この記事の「何を伝えると、診断書が書きやすくなるか」に書いた事実を、次の診察でもう一度具体的に伝えてみてください。それで変わることがあります。
それでも状況が動かないときの考え方は、この記事とは別の話になるので診断書を書いてもらえないときにできることに分けました。困っている方は、そちらを見てください。
誰にも言えないときの相談先
会社にも家族にも言いにくい、そもそも受診に踏み出せない。そういう段階でも使える窓口があります。
こころの耳電話相談(厚生労働省)は、働く方とその家族、企業の人事労務担当者を対象にしたフリーダイヤルの相談窓口です。
- 電話 0120-565-455
- 平日(月曜日〜金曜日)17時〜22時(受付は21時50分まで)
- 土曜日・日曜日 10時〜16時(受付は15時50分まで)
- 祝日、振替休日、年末年始(12月29日〜1月3日)は除く
平日の夜と土日に開いているので、まだ会社を休んでいない段階でも使いやすい窓口です。診断書のことを相談してもいいですし、そもそも受診すべきかどうかから話しても構いません。
今日やることは、ひとつだけです
長く書きましたが、実際に必要な動きはとても小さいものです。
いま通院しているなら、次の診察で「会社に出す診断書をお願いしたいです」と言う。まだ受診していないなら、近くの心療内科か精神科に予約の電話をして、そのときに「診断書が必要になるかもしれません」と添える。今日のところは、それで十分です。
書類の中身も、期間の長さも、会社への伝え方も、あとから順番に考えれば間に合います。頼むこと自体は、あなたに認められている求めです。うまく言えなくても、途中で言葉に詰まっても、その一言だけ届けば話は進みます。
わたしたちは就労支援の現場で、診断書を何度も受け取ってきた方に会います。話を聞くと、いちばん緊張したのは最初の一枚を頼むときで、あとから振り返れば身構えるほどのことではなかった、という方が多いです。医師にとっては日常的に受ける依頼で、頼んでよいかどうかを迷う場面ではありません。言い出す一言だけ決めておけば足ります。
