会社に出すため、あるいは手続きのために診断書が要る、と分かったところで多くの方が止まります。書いてもらう手順の前に、そもそもどこに行けばいいのかが分からないからです。心療内科なのか精神科なのか、駅前のメンタルクリニックでいいのか、いつも風邪で行っている内科ではだめなのか。名前が似ているものが並んでいて、しかもどこも予約が先まで埋まっています。

この記事では、受診すると決めた方が、どこの扉を開けばいいのかだけを扱います。制度としてどうなっているかを、法令と厚生労働省の資料で確かめて整理しました。症状から受診の要否を判断するような話は書きません。それは診察室で医師と相談することです。

診断書を書けるのは、あなたを診察した医師です

出発点になる決まりは2つで、どちらも医師法にあります。

ひとつは医師法第20条で、医師は、自ら診察しないで診断書を交付してはならないと定めています。会ったこともない医師に書いてもらうことはできない、という意味です。

もうひとつは医師法第19条第2項で、診察をした医師は、診断書の交付の求めがあった場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならないと定めています。診察を受けていれば、こちらから頼んでよいということです。

この2つに、診療科の指定はありません。「精神科の医師でなければ精神の診断書を書けない」といった決まりが医師法に置かれているわけではないのです。ですから、どこにかかるかを考えるときの軸は、誰が書けるかではなく、自分が受診できて、その医師が診察のうえで書けると判断できるところはどこかになります。

ただし、あとで見るように、診断書の提出先のほうが書き手の条件を決めている場合があります。そこだけは先に確認する価値があります。

心療内科・精神科・メンタルクリニックの違い

看板の名前の違いには、制度上の理由があります。

診療科名は政令で決められています

病院や診療所が看板やウェブサイトに掲げられる診療科名は、医療法第6条の6により、政令で定めるものとされています。その政令が医療法施行令で、第3条の2に一覧があります。政令に載っていない名称を掲げるには、厚生労働大臣の許可が必要です。つまり、街で見かける診療科名は、勝手に名乗っているものではなく、この一覧の中から選ばれています。

この規定が定めているのは、あくまで広告に掲げてよい名称です。その医療機関で何ができるかを一つずつ決めているものではない、という点は押さえておいてください。

精神科は単独の科名、心療内科は組み合わせの名称

一覧を実際に読むと、両者の位置づけがはっきりします。

精神科は、医療法施行令第3条の2第1項第1号ニ(1)に、小児科や皮膚科などと並んで単独の診療科名として直接書かれています

心療内科は、そこには出てきません。同じ条文のハに、「内科又は外科」と一定の事項を組み合わせた名称を掲げてよいという定めがあり、その組み合わせられる事項のひとつとして「心療」が挙げられています。さらに医療法施行規則では、「外科」と「心療」の組み合わせは不合理なものとして除かれています。結果として、心療内科は「内科」に「心療」を組み合わせて成り立っている診療科名ということになります。

制度上の位置づけ
精神科 医療法施行令に単独の診療科名として挙げられています
心療内科 「内科」と「心療」を組み合わせた名称として認められています
メンタルクリニック 診療科名ではありません(後述)

心療内科の名称が内科から派生していることは、制度の建て付けとしてはそのとおりです。ただし、どちらにかかるべきかという医学的な判断は、この条文からは出てきません。実際に何を扱っているかは医療機関ごとに違いますので、迷ったときは受付に電話して聞くのが確実です。

「メンタルクリニック」は診療科名ではありません

「〇〇メンタルクリニック」という名前をよく見かけますが、これは医療機関そのものの名称であって、診療科名ではありません。政令の一覧に「メンタル科」はありません。

ですから、名前だけでは何科を掲げているかは分かりません。看板やウェブサイトを見ると、たいてい名称とは別に「精神科・心療内科」といった診療科名が書かれています。見るべきはそちらです。

同じことは「〇〇こころのクリニック」「〇〇ストレスケア」といった名前にも当てはまります。掲げられる診療科名は政令の一覧から選ばれているので、そこに書かれている「精神科」「心療内科」「内科」といった表示が、制度上の情報です。ひとつの医療機関が精神科と心療内科の両方を掲げていることもよくあります。この場合、どちらか一方しか診てもらえないという意味ではありません。

かかりつけの内科でも書いてもらえるのか

何に使う診断書かで、書き手の条件が変わります

その診断書を何に使うのかを先にはっきりさせる
勤め先に出す提出先が書き手の条件を決めていなければ、診察をした医師であれば足ります
精神障害者保健福祉手帳指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師が作成したもの。初診から6か月を経過した日以後の診断書に限られます
自立支援医療(精神通院医療)指定自立支援医療機関で書かれたものである必要があります
提出先が書き手や期間の条件を決めている例です。何のための診断書かを先に確かめてから受診先を選ぶと、遠回りになりません。

先に見たとおり、医師法は診療科で線を引いていません。ふだんから通っている内科の医師が診察したうえで書けると判断すれば、診断書を書くことは制度上できます。実際、まずかかりつけに相談してから紹介してもらう、という進み方は珍しくありません。

問題になるのは、提出先がどんな診断書を求めているかです。ここは法令で決まっているものがあります。

精神障害者保健福祉手帳の診断書。 精神保健福祉法施行規則第23条により、申請に添える診断書は「指定医その他精神障害の診断又は治療に従事する医師」が作成したものとされています。書き手に条件が付いている例です。

自立支援医療(精神通院医療)の診断書。 厚生労働省の資料では、この制度で医療費の軽減が受けられるのは指定自立支援医療機関に限られ、診断書を記載できるのも同様だと注記されています。通院先が指定を受けていなければ、その診断書は使えません。

一方で、勤め先に出す診断書のように、提出先が書き手の条件を決めていないものもあります。この場合は、診察をした医師であれば足ります。

つまり順番としては、その診断書を何に使うのかを先にはっきりさせて、提出先に条件があるかどうかを確かめてから、受診先を選ぶほうが遠回りになりません。会社に出すためなのか、制度の申請に使うのかで、選ぶべき扉が変わることがあります。

なお、これから自立支援医療を使う見込みがあるなら、通院先を選ぶ段階で「こちらは指定自立支援医療機関ですか」と聞いておくと、あとで転院しなくて済みます。制度の中身は自立支援医療制度で精神科の通院費を1割にする手順にまとめています。

初診でも書いてもらえるのか

制度としては、初診であっても、診察を受けたうえで診断書の交付を求めることはできます。医師法第19条第2項に「初診を除く」といった条件は付いていません。

ただし、実際には次の2つが関わってきます。

何をどこまで書くかは医師の判断です。 第19条第2項も「正当の事由がなければ」という書き方をしています。求めれば必ず希望どおりの内容になる、という規定ではありません。初回の診察で分かることには限りがありますから、その範囲で書けることが書かれます。

提出先が期間の条件を付けていることがあります。 分かりやすいのが精神障害者保健福祉手帳です。先ほどの施行規則第23条は、添える診断書について「初めて医師の診療を受けた日から起算して六月を経過した日以後における診断書に限る」と定めています。つまり初診の日から6か月は、手帳の診断書は制度上書けません。急いでも早まらない部分です。

このあたりを踏まえると、初診の予約を取る段階で「診断書が必要な事情があります」と一言伝えておくのが実務的です。医療機関によっては、初診の枠の取り方や当日の流れが変わることがあります。診断書そのものを頼む手順は診断書のもらい方にまとめてありますので、受診先が決まったらそちらを読んでください。

受診先の探し方

「クリニック」と「病院」は制度上の呼び分けです

探し始める前に、もうひとつ用語を整理しておきます。医療法第1条の5は、20人以上の患者を入院させる施設を持つものを「病院」入院の施設を持たないか19人以下のものを「診療所」と定義しています。「クリニック」「医院」といった呼び方は、この診療所に付けられている通称です。

つまり、駅前の小さなメンタルクリニックも、大学の附属病院も、制度の上では規模で分かれているだけで、どちらも医療機関です。初診の予約の取りやすさ、通いやすさ、待ち時間、そしてあとで触れる紹介状の扱いは、この区別によって変わってきます。検索するときに「病院」だけを見ていると候補がかなり狭くなりますので、診療所も含めて探してください。

医療情報ネット(ナビイ)で探す

医療法第6条の3は、病院や診療所の管理者に対して、医療を受ける人が医療機関を適切に選べるようにするための情報を都道府県知事に報告することを義務づけ、都道府県知事にその公表を義務づけています。これが医療機能情報提供制度です。

その全国統一の窓口が医療情報ネット(ナビイ)で、厚生労働省によると令和6年4月から運用が始まりました。診療日や診療科目といった基本の情報に加えて、対応可能な疾患や治療内容、提供しているサービスなどから全国の医療機関を検索できるとされています。

サイトには、キーワードで探す、急いで探す(現在診療中、休日夜間対応)、じっくり探す(診療科目、場所、外国語対応)といった入口が用意されています。広告や口コミサイトではなく、医療機関自身が都道府県に報告した情報が元になっているという点で、最初に開く先としては手堅い場所です。

精神保健福祉センターと保健所に相談する

自分で探しても決まらないときのために、公的な相談先が法律で用意されています。

精神保健福祉センター。 精神保健福祉法第6条により、都道府県が設置するものとされている機関です。業務として「精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び援助のうち複雑又は困難なものを行うこと」が挙げられています。

保健所など。 同じ法律の第47条第1項は、都道府県、保健所を設置する市、特別区に対して、必要に応じて、職員や指定した医師に相談を受けさせ、必要な情報の提供や助言を行わせなければならないと定めています。そして第2項では、必要に応じて、医療を必要とする精神障害者に対し、その精神障害の状態に応じた適切な医療施設を紹介しなければならないとされています。医療機関を紹介することは、行政の仕事として法律に書かれているのです。

「どこにかかればいいか分からない」という段階で相談してよい窓口だ、と考えて差し支えありません。

電話で話したいときは、厚生労働省が案内しているこころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)があります。かけた地域の都道府県・政令指定都市の公的な相談窓口につながる全国共通の番号です。対応の曜日と時間は都道府県によって異なるとされています。

初診の予約が取れないとき

精神科や心療内科の初診は、予約が先まで埋まっていることがよくあります。ここで気力が尽きてしまうのがいちばんもったいないので、探し方を変える手を書いておきます。

1か所で決めずに、3か所に電話してみる。 空き状況は医療機関ごとにまったく違います。1件目が2か月先でも、2件目が来週ということは起こります。

ナビイで診療日や場所の条件を広げてみる。 最寄り駅にこだわらず、隣の駅や隣の市まで範囲を広げると候補が増えます。通いやすさは大事ですが、初診が取れないことには始まりません。

キャンセル待ちができるか聞いてみる。 予約の受付方法は医療機関ごとに違います。電話のときに聞いておくと、空きが出たときに連絡をもらえることがあります。

かかりつけの医師に相談してみる。 ふだん通っている内科などがあれば、そこから紹介してもらえることがあります。紹介があると初診の枠を確保しやすい医療機関もあります。

それでも決まらなければ、精神保健福祉センターや保健所に相談する。 前の章のとおり、医療施設を紹介することは法律上の役割として定められています。自力で探すことに疲れてしまったら、ここを頼って構いません。

オンライン診療ではどうなるか

移動そのものがつらいときに、オンラインで済ませられないかと考えるのは自然なことです。制度がどうなっているかを確認しておきます。

令和8年4月に施行された医療法の改正で、オンライン診療が法律に定義されました。医療法第2条の2は、医師と遠くにいる患者が、映像と音声の送受信によってお互いの状態を認識しながら通話できる方法による診療、としています。画面越しであっても、これは診察です。ですから医師法第20条の「自ら診察しないで」には当たりません。

そのうえで、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂)には、初診について次のように書かれています。

  • 初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うこと。ここでいう「かかりつけの医師」は、日頃から直接の対面診療を重ねているなど、患者と直接的な関係がすでにある医師を指します。
  • ただし、過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、お薬手帳などから必要な医学的情報が把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できるとされています。
  • それ以外の場合に、かかりつけ以外の医師が初診からオンライン診療を行うときは、先に「診療前相談」を行います。これは映像を使ったリアルタイムのやりとりで症状と医学的情報を確認する行為で、指針では診断や処方は含まない行為と定義されています。結果としてオンライン診療に至らないこともあります。

もうひとつ知っておいたほうがよいことがあります。指針は、初診の場合には麻薬及び向精神薬の処方は行わないことと明記しています。精神科で使われる薬にはこれに当たるものがありますので、初回からオンラインだけで薬まで完結するとは限りません。

診断書についても、書いてもらえるかどうかは医師の判断であり、医療機関ごとの方針にもよります。オンライン診療で診断書を発行しているかどうかを、予約の前にその医療機関のサイトや電話で確認してください。指針は、診療前相談を行うにあたって、オンライン診療が行えない可能性があることや費用をあらかじめ十分に周知することを求めていますので、掲載されている案内を読んでおくと行き違いが減ります。

紹介状は要るのか

診療所(クリニック)を受診するのに紹介状が要る、という決まりはありません。予約して行けば受診できます。

注意したいのは、大きな病院を選んだ場合です。次の病院を他の医療機関からの紹介なしに受診すると、通常の自己負担とは別に「特別の料金」がかかります。

対象になる病院 紹介状なしの初診でかかる額
特定機能病院 医科7,000円
地域医療支援病院(一般病床200床以上) 医科7,000円
紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上) 医科7,000円

厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の資料でも、この定額負担は今回の改定で変更なしとされています(再診は医科3,000円です)。

この仕組みは、まず身近な医療機関にかかり、必要に応じて大きな病院へつないでいくという考え方でできています。診断書が要るというだけの事情であれば、まずは通いやすい診療所を候補にするほうが、費用の面でも予約の取りやすさの面でも現実的です。

予約の電話で聞いておくとよいこと

受診先を絞り込んだら、予約の電話で次のことを聞いておくと、初診が空振りになりにくくなります。

  • 初診はいつ予約が取れるか、キャンセル待ちはできるか
  • 診断書を出してもらえるか、その場で受け取れるのか後日になるのか
  • (制度の申請に使う場合)指定自立支援医療機関かどうか
  • (オンラインを考えている場合)オンライン診療に対応しているか、初診から受けられるか
  • 健康保険証やマイナンバーカードのほか、初診で持っていくものはあるか

診断書の話を先に伝えることに、遠慮は要りません。文書の準備には医療機関側の段取りもあるので、あらかじめ聞いておくほうがお互いに助かります。

まとめ

  • 診断書を書けるのは、あなたを診察した医師です。診療科で決まっているわけではありません。
  • 心療内科も精神科も、医療法の政令に基づく正式な診療科名です。制度上は、精神科が単独の名称、心療内科は「内科」と「心療」の組み合わせという関係になります。
  • 「メンタルクリニック」は医療機関の名前で、診療科名ではありません。看板に並記されている診療科名のほうを見てください。
  • 何のための診断書かによって、提出先が書き手や期間の条件を決めていることがあります。手帳なら初診から6か月、自立支援医療なら指定自立支援医療機関、という具合です。
  • 探すときは医療情報ネット(ナビイ)、決まらないときは精神保健福祉センターや保健所に相談できます。

今日できることは、候補を1つ決めて電話をかけてみる、それだけで十分です。予約が先になったとしても、日付が決まれば、そこまでの過ごし方を考えられるようになります。

わたしたちは就労支援の現場で、どこにかかるかを迷ったまま時間が過ぎてしまった方に会うことがあります。科の名前で迷っているうちに、予約の取りにくい時期に入ってしまうこともあります。名前の違いは制度上の区分なので、迷ったときは通いやすさで選んで構いません。合わなければ変えられます。