精神科や心療内科に通い続けていると、診察代と薬代が毎月かかります。治療を続けたほうがいいとわかっていても、お金のことが頭をよぎって受診を先延ばしにしてしまう、という話は珍しくありません。
自立支援医療(精神通院医療)は、そのための制度です。障害者総合支援法にもとづく公費負担医療で、通院にかかる医療費の自己負担を3割から1割に軽くします。さらに、その1割が重くなりすぎないように、1か月あたりの上限額も所得に応じて決められています。
この制度でややこしいのは、全国共通で決まっている部分と、自治体ごとに運用が違う部分が混ざっていることです。申請書の様式、書類の細かい名前、受給者証が届くまでの日数、上乗せの助成があるかどうかは、住んでいる場所によって変わります。そこでこの記事では、全国どこでも同じ枠組みと、お住まいの窓口で確認が必要なことを分けて書きました。
自立支援医療(精神通院医療)とは
厚生労働省は自立支援医療を、「心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度」と説明しています。制度は精神通院医療、更生医療(18歳以上の身体障害)、育成医療(18歳未満の身体障害)の3つに分かれていて、精神科の通院に関わるのが精神通院医療です。厚生労働省の自立支援医療等における利用者負担区分の見直しについてによると、精神通院医療の支給決定件数は令和4年度で2,470,960件でした。決して珍しい制度ではありません。
3割が1割になる仕組み
医療費の総額のうち、公的医療保険が7割を負担し、通常はのこりの3割を自己負担しています。自立支援医療の認定を受けると、この3割のうち2割にあたる部分を国と自治体が公費で負担します。結果として、窓口で払う分が1割になります。
厚生労働省の説明では、ひと月の医療費が7,000円で、医療保険による自己負担が2,100円だった場合、この制度によって自己負担が700円に軽くなる、という例が挙げられています。保険が優先される仕組みなので、そもそも公的医療保険が使えない治療や投薬は、自立支援医療の対象にもなりません。
さらに1か月の上限額があります
1割になっても、通院回数が多かったり薬が高額だったりすると負担が積み上がります。そのため、世帯の所得に応じて1か月あたりの自己負担上限額が定められています。その月の医療費の1割が上限額に届かない場合は、1割のほうを払います。
ここでいう「世帯」は、住民票の世帯ではありません。厚生労働省は、通院する方と同じ公的医療保険に加入している方を同一の世帯として捉えると説明しています。同居していても加入している医療保険が別なら、所得を見る対象には入りません。
受診のたびに、受給者証と一緒に「自己負担上限額管理票」を医療機関に提示します。その月にいくら払ったかを記録していく紙です。
対象になる人と、対象になる医療
対象になる人
厚生労働省は、精神障害(てんかんを含む)により、通院による治療を続ける必要がある程度の状態にある方が対象になるとしています。挙げられている例は次のとおりです。
- 統合失調症
- うつ病、躁うつ病などの気分障害
- 薬物などの精神作用物質による急性中毒、またはその依存症
- PTSDなどのストレス関連障害や、パニック障害などの不安障害
- 知的障害、心理的発達の障害
- アルツハイマー病型認知症、血管性認知症
- てんかん など
診断名で機械的に線が引かれるわけではなく、「通院による精神医療を継続的に要する病状にあるかどうか」で判断されます。厚生労働省は、症状がほとんど消えている場合でも、再発を防ぐために治療を続ける必要があるときは含まれると説明しています。実際に当てはまるかどうかは、通院先の医師が診断書に書く内容にもとづいて審査されます。
対象になる医療の範囲
対象は、精神障害と、その精神障害に起因して生じた病態に対して、病院または診療所に入院しないで行われる医療です。外来での診察、外来で処方された薬(院外処方の薬局での支払いを含みます)、精神科デイケア、訪問看護が挙げられています。
「精神障害に起因して生じた病態」とは、精神障害の治療に関連して生じた病態や、躁状態・抑うつ状態・幻覚妄想・情動障害・行動障害・残遺状態などによって生じた病態のことだと説明されています。
対象にならないもの
ここが「自立支援医療 対象外」と検索されている部分です。厚生労働省は、次のような医療は対象外になるとはっきり書いています。
| 対象にならないもの | 補足 |
|---|---|
| 入院医療の費用 | 通院のための制度なので、入院中の費用には使えません |
| 公的医療保険が対象にならない治療や投薬の費用 | 例として、病院や診療所以外でのカウンセリングが挙げられています |
| 精神障害と関係のない疾患の医療費 | 風邪や歯科、けがの治療などは別扱いです |
診断書の作成料も、公的医療保険が使えない費用なので対象外です。横浜市も、医療保険が適用にならない治療・投薬・診断書料などの費用は対象外だと案内しています。
使えるのは「指定自立支援医療機関」だけです
もうひとつ、見落とされやすい条件があります。この制度で医療費が軽くなるのは、都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」のうち、受給者証に記載されたものに限られます。指定を受ける対象には、病院・診療所だけでなく、薬局と訪問看護ステーションも含まれます。通っている病院が指定されていても、処方せんを持っていく薬局を登録していなければ、薬局での支払いは1割になりません。
厚生労働省の支給認定に関する通知は、精神通院医療について「治療に重複がなく、やむを得ない事情がある場合、同一の受診者に対し複数指定することを妨げない」と定めています。「原則1か所」という言い方をしているのは育成医療と更生医療のほうで、精神通院医療の実施要綱にその文言はありません。とはいえ受給者証に記載されたところでしか使えないことに変わりはないので、通う先が増えるときは手続きが要ります。登録できる数の運用は自治体によって幅があり、たとえば大阪市は通常1か所の病院・診療所と最大2か所の薬局を登録できると案内しています。これは大阪市の例であって、全国どこでも同じというわけではありません。
今通っている病院や診療所、薬局が指定を受けているかどうかは、その医療機関に直接たずねるか、精神保健福祉センターや都道府県・指定都市の担当課に問い合わせれば確認できます。
1か月の自己負担上限額
厚生労働省が示している「自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み」に沿って、精神通院医療の上限額を整理します。全国共通の枠組みです。
| 所得区分 | 世帯の状況(同じ医療保険に加入している方で判断します) | 精神通院医療 | 「重度かつ継続」に当てはまる場合 |
|---|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
| 低所得1 | 市町村民税非課税で、本人の年収が82万6,500円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
| 低所得2 | 市町村民税非課税(低所得1に当たらない場合) | 5,000円 | 5,000円 |
| 中間所得1 | 市町村民税所得割33,000円未満(年収およそ290万〜400万円未満) | 上限額の定めはなく、医療費の1割(医療保険の高額療養費の自己負担限度額が上限) | 5,000円 |
| 中間所得2 | 市町村民税所得割33,000円以上235,000円未満(年収およそ400万〜833万円未満) | 上限額の定めはなく、医療費の1割(医療保険の高額療養費の自己負担限度額が上限) | 10,000円 |
| 一定所得以上 | 市町村民税所得割235,000円以上(年収およそ833万円以上) | 制度の対象外 | 20,000円 |
いくつか補足しておきます。
年収の目安について。 表に書かれている年収は、厚生労働省の資料に「夫婦+障害者である子の3人世帯の粗い試算」と注記されているものです。判定に使われるのは年収そのものではなく市町村民税の所得割額なので、感覚をつかむための目安として見てください。
低所得1の基準額について。 82万6,500円は、障害者総合支援法施行令35条4号の条文にそのまま書き込まれている金額です。この基準はもともと障害基礎年金2級の支給額に合わせて設定されたもので、年金額が制度設計時の80万円を超えたことを受けて見直されました。年金額に自動で連動するのではなく、政令が改正されたときに変わります。改正の前後にまたがる時期は自治体の案内が古い金額のまま残っていることもあるので、申請時点の基準は窓口で確認するのが確実です。
一定所得以上の20,000円について。 これは経過的な特例措置として設けられている金額で、期限は令和9年3月31日までとされています。
「重度かつ継続」に当てはまる場合
費用が高額な治療を長期間続ける必要がある方には、上の表のとおり別の(軽い)上限額が適用されます。制度ではこれを「重度かつ継続」と呼んでいます。市町村民税が課税されている世帯にとっては、この扱いになるかどうかで負担がかなり変わります。厚生労働省が示している対象は、次のいずれかに当てはまる方です。
- 医療保険の「多数回該当」の方。 直近の12か月間に、公的医療保険の高額療養費の支給を3回以上受けた方をいいます。
- 次の精神疾患のいずれかに当たる方。 カッコ内はICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)による分類です。
- 症状性を含む器質性精神障害(F0。例として高次脳機能障害、認知症など)
- 精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1。例としてアルコール依存症、薬物依存症など)
- 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)
- 気分障害(F3。例としてうつ病、躁うつ病など)
- てんかん(G40)
- 3年以上精神医療を経験している医師の判断による場合。 情動及び行動の障害、または不安及び不穏状態を示すことから、入院によらない計画的かつ集中的な精神医療(状態の維持や悪化の予防のための医療を含みます)が続けて必要だと判断された方です。
3番目があるので、上に挙がっていない診断名でも該当することがあります。自分だけで判断する必要はありません。診断書を書いてもらう診察のときに医師に確認してみてください。「重度かつ継続」に該当する場合は診断書の様式が変わることもあります。
申請の手順
申請の流れは全国共通です。ただし、書類の名前や様式、窓口の課の名前は自治体ごとに違います。
- 通っている医療機関が指定自立支援医療機関かどうかを確認します。 診断書を書けるのも指定を受けた医療機関です。受付や医師に「自立支援医療の診断書をお願いできますか」と聞けば確認できます。
- お住まいの市区町村の担当窓口で申請書を受け取ります。 厚生労働省は、担当する課の名称は市町村によって異なるものの、障害福祉課や保健福祉課が担当することが多いと説明しています。医療機関に置いてあることや、自治体のサイトからダウンロードできることもあります。
- 診断書を医師に依頼します。 診察のときに申請書と一緒に渡すのが確実です。書き上がるまでに日数がかかることもあります。
- 所得と医療保険を確認する書類をそろえます。
- 窓口に提出します。 申請が認められると「自立支援医療受給者証」が交付されます。
- 受診のたびに、受給者証と自己負担上限額管理票を医療機関と薬局に提示します。
必要な書類
厚生労働省が挙げている、おおよその必要書類です。
| 書類 | 内容 | 入手先 |
|---|---|---|
| 申請書(自立支援医療支給認定申請書) | 受診する医療機関と薬局を記入します | 市町村など(医療機関で入手できる場合もあります) |
| 医師の診断書 | 通っている精神科の病院・診療所で記入してもらいます。指定自立支援医療機関で書かれたものである必要があります | 医療機関(様式は市町村などにもあります) |
| 所得の状況が確認できる資料 | 課税世帯なら課税証明書、非課税世帯なら非課税証明書と、本人の収入が確認できる書類(障害年金の振込通知書の写しなど)、生活保護世帯なら生活保護受給証明書 | 市町村、または福祉事務所 |
| 医療保険の資格が確認できる書類 | 世帯全員の名前が記載されている被保険者証・被扶養者証・組合員証など | 加入している医療保険 |
| マイナンバーの確認書類 | 個人番号と身元確認ができる書類 | 個人番号カードなど |
診断書には有効な期限があります。千葉県は「作成日から3か月以内に市町村窓口で申請してください」と案内していて、群馬県や愛知県も3か月以内としています。受け取ったら早めに窓口へ持っていくほうが安心です。
ここは全国共通、ここは自治体で確認
混ざりやすいところを整理しておきます。
| 全国共通の枠組み | 自治体ごとに確認が必要なこと |
|---|---|
| 自己負担が1割になること | 申請書の様式と、書類の細かい名称 |
| 所得区分ごとの1か月の上限額 | 担当する課の名前と窓口の場所 |
| 「重度かつ継続」の対象範囲 | 課税証明書などの提出を省略できるかどうか |
| 対象になる医療、対象外になる医療 | 受給者証が届くまでにかかる日数 |
| 指定自立支援医療機関でのみ使えること | 登録できる薬局の数などの運用 |
| 有効期間が1年以内であること | 自治体独自の上乗せ助成があるかどうか |
| 更新申請が有効期間終了の3か月前からできること | 郵送申請や代理申請ができるかどうか |
自治体によっては、この制度に上乗せする独自の医療費助成を設けているところがあります。あるかないか、条件は何かは地域によって違いますので、申請のときに窓口で「ほかに使える助成はありますか」と一言たずねてみてください。
なお、所得を確認する書類については、申請する市町村が必要なデータを把握できる場合、窓口で同意書を提出することなどによって提出を省略できる場合があると厚生労働省も説明しています。証明書を先に取りに行く手間が省けることがあるので、これも聞いてみる価値があります。
受給者証が届くまでの期間
「自立支援医療 届くまで」と検索されることが多い部分ですが、ここは自治体差が大きいところです。厚生労働省が全国一律の日数を定めているわけではありません。
実際の案内を見ると、東京都は審査などに2か月程度かかるため早めの申請を、と案内しています。横浜市も、申請してから受給者証が手元に届くまで約2か月程度かかると書いています。これらはあくまでこの2つの自治体の例です。1か月から2か月程度を見込んでいる自治体が多いようですが、時期や混み具合によっても変わりますので、申請のときに窓口でおおよその目安を聞いておくと予定が立てやすくなります。東京都は、精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、医療機関の確認が必要な場合には、さらに時間がかかることがあるとも案内しています。
届く前の受診はどうなるか
ここは安心してよい部分です。認定されたときの有効期間は、市区町村が申請を受け付けた日から始まります。厚生労働省の支給認定に関する通知でも、精神通院医療の有効期間は「市町村が申請を受理した日を始期とし、その始期から1年以内の日で月の末日たる日を終期とする」と定められています。埼玉県も同じ説明をしています。裏を返すと、申請より前の医療費はさかのぼって対象にはなりません。横浜市も、有効期間は申請を受理した日から始まり、それより前の医療費は対象外だと明記しています。
では届く前の受診はどうするかというと、ここは自治体と医療機関の運用によります。埼玉県は「申請書の控え等をお持ちになり、各医療機関等に御相談ください」と案内していて、群馬県も同じように申請書の写しを持って医療機関に相談するよう書いています。控えを見せればその場で1割にしてもらえることもあれば、いったん3割を払っておいて、受給者証が届いてから差額を精算する扱いになることもあります。申請の日に窓口で「控えはもらえますか」と確認しておくと、そのあと迷わずに済みます。
更新の手続き
受給者証の有効期間は1年以内です。引き続き使うには毎年の更新(再認定)が必要になります。全国共通で決まっているのは次の3点です。
- 更新の申請は、有効期間が終了する日のおおむね3か月前からできます。厚生労働省の通知に定められていて、東京都、埼玉県、千葉県、群馬県、愛知県、兵庫県、大阪市の案内もすべて同じ「3か月前から」で揃っています。
- 診断書は原則として2年に1回で足ります。病状や治療方針に変更がなければ、2回に1回は医師の診断書を省略できると厚生労働省が説明しています。群馬県も、診断書を提出して認定を受けた翌年は診断書が不要だと書いています。費用の面でも通院の手間の面でも大きい部分ですが、ご自身が今年どちらに当たるかは受給者証や市区町村からの案内で確認してください。
- 所得や医療保険の状況が変わったときは、届け出が必要です。厚生労働省の通知では、氏名が変わったとき、同じ都道府県内で住所を移したとき、所得の状況に変化があったとき、「世帯」の状況が変わったとき、保険の種類に変更が生じたときが挙げられています。
更新を忘れると新規申請扱いになります
ここは実害が出るところなので、はっきり書いておきます。
有効期間が切れてしまうと、そのあとの申請は新規の申請として扱われます。兵庫県は「有効期間終了後、再度自立支援医療(精神通院医療)を利用する場合は、新規申請(再申請)をしてください」と案内しています。大阪市は、期限を過ぎてから申請した場合は新規申請扱いになるため、区の窓口の受付日が有効期間の始まりになり、受給者番号が変わる場合があると書いています。横浜市も、有効期間を過ぎてしまうと再申請するまでのあいだは自立支援医療が受けられなくなると案内しています。
新規申請扱いになると、実際には次のことが起きます。
- 診断書が必要になります。本来なら省略できる年でも、新規なので用意することになります。作成料も自己負担です。
- 切れているあいだの医療費は1割になりません。さかのぼって適用されないため、その期間は原則どおりの窓口負担になります。
3か月前から申請できるのは、こうした空白をつくらないためです。受給者証に更新申請を始められる時期が印字されている自治体もあります(横浜市はそのように案内しています)。忘れやすいと感じる方は、受給者証を受け取ったときに、有効期間が切れる3か月前の日付をカレンダーに入れてしまうのが確実です。
もし切れてしまっても、手続きそのものはやり直せます。気づいた時点で窓口に相談してください。
デメリットとして心配されていること
「自立支援医療 デメリット」はよく検索されている言葉です。ただ、心配されているものの多くは不利益というより手続き上こうなる、という事実です。順番に整理します。
受給者証に医療機関と薬局が書かれ、そこでしか使えません
これは制度の設計そのものです。大阪市も、受給者証に記載された医療機関でのみ利用できると案内しています。使える場所が限られている代わりに、その場所での自己負担が1割になるという仕組みです。
はじめて申請するときに書き忘れやすいのが薬局です。病院だけを書いて薬局を書かずにいると、薬代のほうは1割になりません。申請書には、処方せんを持っていく薬局の名前も一緒に記入しておいてください。
受診先を変えるときは、先に手続きが要ります
転院したいとき、引っ越しで通院先が変わるとき、薬局を変えたいときは、変更の申請が必要になります。大事なのはタイミングで、変更が適用されるのは窓口が申請を受け付けた日からです。横浜市も大阪市も、変更の適用は申請の受理日以降だと案内しています。埼玉県は「受診される前に市町村担当窓口で必ず手続きを行ってください」と書いていますし、群馬県も事前の申請が必要だとしています。
新しい医療機関に先にかかってしまうと、手続きが済むまでのその分は1割になりません。転院を考え始めた段階で窓口に相談しておくと、この空白は避けられます。なお、投薬治療を受ける医療機関を追加する場合は診断書が必要になると案内している自治体もあります(兵庫県の例)。
勤務先や保険者に知られるのか
申請の窓口はお住まいの市区町村で、申請書類のなかに勤務先が記入する欄はありません。傷病手当金のように会社の証明が要る手続きとは、ここが違います。
一方で、次の点は手続き上そうなります。
- 加入している医療保険の資格を確認する書類が必要です。世帯全員の名前が記載されている被保険者証・被扶養者証・組合員証などを提出します。
- 所得区分は、同じ医療保険に加入している方をひとつの「世帯」として判定します。ご自身が家族の被扶養者になっている場合は、被保険者である家族の課税状況がわかる書類が必要になります。家族に一切知られずに手続きを進めるのは、この点で難しくなります。
家族に伝えるかどうか、どこまで話すかは、ご自身のペースで決めていいことです。ただ、必要書類の関係で説明が要る場面が出てくることは、先に知っておくと心の準備ができると思います。申請の前に窓口へ電話で「こういう状況ですが、どの書類が必要になりますか」と聞くこともできます。名前を伝えずに一般的な質問として聞くことも可能です。
診断書の費用は自己負担です
これは実際に負担が増える部分なので、正直に書きます。診断書の作成料は公的医療保険の対象外です。横浜市も、医療保険が適用にならない診断書料などの費用は自立支援医療の対象外だと明記しています。したがって全額を自分で払うことになります。
金額は医療機関ごとに決められていて、全国共通の価格はありません。確かめられるのは、通っている医療機関に直接聞いた金額だけです。診断書をお願いするときに「文書料はいくらになりますか」と受付で確認してください。
最初の出費であることに変わりはないので、家計の見通しには入れておいてください。更新のときは原則2年に1回で済むため、毎年かかるわけではありません。
精神障害者保健福祉手帳との違い
「自立支援医療受給者証と障害者手帳は何が違うのか」もよく検索されています。この2つは別の制度で、別の申請です。
| 自立支援医療受給者証 | 精神障害者保健福祉手帳 | |
|---|---|---|
| 目的 | 通院医療費の自己負担を軽くする | 精神障害があることを証明し、各種の支援やサービスにつなげる |
| 使える場面 | 受給者証に記載された指定自立支援医療機関での通院医療 | 税の控除、公共料金の割引、自治体のサービスなど(内容は自治体によって幅があります) |
| 有効期間 | 1年以内 | 2年 |
| 等級 | ありません | 1級から3級 |
自立支援医療を受けるのに手帳は必要ありませんし、手帳を持っているからといって自動的に医療費が1割になるわけでもありません。どちらか一方だけを使っている方も、両方を使っている方もいます。
ただし、同時に申請する場合には診断書をまとめられる扱いがあります。厚生労働省は、精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、診断書が省略できる場合があると説明しています。埼玉県はより具体的に、同時に申請を行う場合は手帳用の診断書があれば自立支援医療用の意見書が不要だと案内しています。愛知県も、手帳の申請と同時に申請できるとしています。
診断書の作成料が1通分で済むかどうかは、家計にとって小さくない差です。手帳の申請も考えているなら、同時に出せるかどうかを窓口で確認してから動くほうが有利になる可能性があります。ただし東京都が案内しているように、同時申請だと受給者証が届くまでに時間が余分にかかることもあります。急ぎたい事情があるかどうかで判断してください。
手帳を取るかどうか自体で迷っている方は、障害者手帳のメリットとデメリットを先に読んでみてください。3級と診断されている場合については精神障害者保健福祉手帳3級の意味で扱っています。働けない状態が続いていて生活費のことも考える必要があるなら、精神疾患での障害年金も別の制度として検討できます。
それでも判断がつかないときは
制度の説明を読んでも、自分が当てはまるのか、いくらになるのか、どの書類が要るのかは、なかなか見通しが立たないものだと思います。この制度は所得区分の判定と自治体ごとの運用が絡むので、一般論だけで結論は出ません。確実なのは、次の2か所に聞くことです。
お住まいの市区町村の担当窓口。障害福祉課や保健福祉課という名前のことが多いところです。申請書の様式、必要な書類、所得区分の判定、受給者証が届くまでの目安、独自の上乗せ助成があるかどうかは、ここで確認できます。名前を伝えずに一般的な質問として電話で聞くこともできます。
通っている医療機関。指定自立支援医療機関かどうか、診断書を書いてもらえるか、文書料はいくらか、「重度かつ継続」に当たりそうか。これらは通院先でしかわかりません。次の診察のときに聞けば足ります。医療相談室や精神保健福祉士がいれば、書類の相談に乗ってもらえることもあります。都道府県や指定都市の精神保健福祉センターも、制度についての相談を受け付けています。
手続きは一日で終わるものではありませんが、今日できることは、通院先に「自立支援医療は使えますか」と一言たずねることだけでも十分です。そこから始めれば、次にすることは向こうから教えてもらえます。
わたしたちは就労支援の現場で、通院を続けながら通ってこられる方に会います。この制度を使っていない方に話を聞くと、対象にならないと思っていたか、そもそも名前を知らなかったかのどちらかであることが多いです。自立支援医療は、使っている方にとっては毎月の負担が目に見えて変わる制度です。次の診察のときに一言たずねれば足りるので、順番としては早いほうがいいと思います。
