「精神障害者手帳 3級 意味ない」と検索する方の多くは、二つのどちらかだと思います。すでに3級の手帳が手元にあって、思っていたほど何も変わらなかった方。もしくは、これから申請しようとして、調べるほどに期待が下がってきている方です。

この記事では「意味はあります」と押し返すことも、「たしかに意味がありません」と突き放すこともしません。3級で実際に使えるものと、1級や2級に限られていて3級では使えないものを、厚生労働省・国税庁・NHK・JRが出している資料から並べます。読み終えたときに、自分にとって使い道があるかどうかを自分で判断できる状態になっていれば十分です。

先に一つだけ言っておくと、3級は珍しい等級ではありません。厚生労働省の令和5年度衛生行政報告例によれば、令和5年度末現在の精神障害者保健福祉手帳の交付台帳登載数は全国で1,519,474人、そのうち3級は495,625人でした(いずれも有効期限切れを含む数です)。手帳を持っている方のおよそ3人に1人が3級ということになります。

判定基準に書かれている「3級」の状態

厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」では、3級を「精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」と定めています。

同じ通知の別添には、各等級の基本的なとらえ方が例として書かれています。3級については、おおむね次のような記述です。

  • 一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難である
  • デイケア、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援事業や就労継続支援事業等を利用する者、あるいは保護的配慮のある事業所で、雇用契約による一般就労をしている者も含まれる
  • 日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難が生じてくることもある
  • 清潔保持は困難が少ない。対人交流は乏しくない。引きこもりがちではない
  • 自主的な行動や、社会生活の中で発言が適切にできないことがある
  • 普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむねできる

読んでいて、思っていたより自分の実感と近いと感じる方もいれば、遠いと感じる方もいると思います。ここで押さえておきたいのは、判定基準の3級の説明に「雇用契約による一般就労をしている者も含まれる」と明記されている点です。働けているかどうかで3級の該当性が否定されるわけではない、という前提でつくられている基準です。

判定は、診断書に書かれた「精神疾患(機能障害)の状態」と「能力障害(活動制限)の状態」の両面から総合的に行われます。医師の診断書による申請の場合、判定を行うのは都道府県(指定都市)に置かれている精神保健福祉センターです。

3級で使えるもの・使えないもの

制度ごとに並べます。等級の条件がある制度と、ない制度がはっきり分かれます。

3級の使い道は、大きく3つに分かれます

精神障害者保健福祉手帳3級
等級の条件がないもの障害者雇用枠での就職、所得税・住民税の障害者控除、NHK受信料の全額免除(世帯全員が非課税の場合)
1級に限られるもの特別障害者としての控除、NHK受信料の半額免除、介護者と一緒に利用するJRの運賃割引
住んでいる場所と事業者によるもの自治体の医療費助成、公共施設の利用料減免、私鉄・バス・タクシーの割引
自治体の医療費助成は1級のみ、または1級・2級のみとしている自治体が多く見られます。JRは、本人がひとりで片道100キロを超えて利用する場合であれば3級(第二種)でも5割引です。
制度 3級の扱い 根拠と注意点
障害者雇用枠での就職 使えます 障害者雇用促進法の対象は手帳の交付を受けている人。等級の条件はありません
所得税の障害者控除(27万円) 使えます 特別障害者(40万円)になるのは1級のみです
住民税の障害者控除(26万円) 使えます 特別障害者(30万円)になるのは1級のみです
JRの運賃割引(本人がひとりで利用) 使えます 第二種として、片道の営業キロが100キロを超える普通乗車券が5割引
JRの運賃割引(介護者と一緒に利用) 原則使えません 第一種(1級)が対象。12歳未満の第二種と介護者の定期券は例外です
NHK受信料の全額免除 条件を満たせば使えます 世帯構成員全員が市町村民税非課税であることが条件。等級の条件はありません
NHK受信料の半額免除 使えません 障害等級が重度(1級)の方が世帯主で受信契約者の場合に限られます
障害福祉サービス(就労移行支援・就労継続支援など) 手帳の有無を問わない制度です 手帳がなくても利用できる制度なので、3級だから使える/使えないという話ではありません
生活保護の障害者加算を手帳で判定してもらうこと 使えません 手帳による判定ができるのは1級または2級で、かつ手帳の交付日または更新日が初診日から1年6か月を経過している場合に限られます
特別障害者手当 実質的に対象外です 等級ではなく、常時特別の介護が必要な状態かどうかで判断されます
自治体の医療費助成 自治体によります 1級のみ、または1級・2級のみとしている自治体が多く見られます
公共施設の利用料減免 自治体によります 等級を問わず実施している自治体が多いものの、内容は地域差があります

以下、それぞれを補足します。

いちばん大きく変わるのは、障害者雇用枠が使えるようになることです

3級を取ったことによる変化として、実務上いちばん大きいのはここです。

障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)は、企業に一定割合以上の障害者を雇用する義務を課しています。その第37条第2項では、雇用義務の対象となる「対象障害者」のうち精神障害者を、「精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る」と定めています。ここに等級の条件は書かれていません。1級でも3級でも、手帳を持っていれば企業の雇用率に算定されます。

企業の側から見ると、法定雇用率は令和6年4月に2.5%へ、令和8年7月からは2.7%へ引き上げられ、対象となる事業主の範囲も従業員37.5人以上まで広がりました。厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」では、令和7年6月1日現在の民間企業の雇用障害者数は70万4,610.0人で、過去最高を更新しています。

同じ法律には、募集や採用について障害者でない人と均等な機会を与えなければならないこと(第34条)、賃金や教育訓練などの待遇で不当な差別的取扱いをしてはならないこと(第35条)も定められています。さらに第36条の2と第36条の3では、事業主に過重な負担とならない範囲で、障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとされています。いわゆる合理的配慮です。

ここが一般枠との実務上の違いです。通院日を勤務日として調整してもらう、業務量や指示の出し方を変えてもらうといった相談を、個人的なお願いとしてではなく制度上の手続きとして持ち出せるようになります。

もちろん、障害者雇用枠を使うかどうかは選べます。手帳を持っていても一般枠で応募できますし、手帳を持っていることを勤め先に伝える義務もありません。使える選択肢が一つ増えた、という状態です。

税金の控除は3級も対象です。ただし「特別障害者」ではありません

国税庁のタックスアンサー「No.1160 障害者控除」では、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人は障害者控除の対象で、そのうち障害等級が1級と記載されている人が特別障害者になるとされています。つまり2級と3級は、一般の障害者としての控除です。

区分 所得税の控除額 住民税の控除額
障害者(手帳2級・3級) 27万円 26万円
特別障害者(手帳1級) 40万円 30万円

これは所得から差し引く額であって、そのまま返ってくる金額ではありません。手取りがいくら増えるかは所得によって変わります。会社員の方は年末調整で、確定申告をする方は申告書で申請します。ご家族に扶養されている場合は、扶養している方の申告で控除を受ける形になります。金額としては地味に見えるかもしれませんが、毎年続きますし、手続きも年に一度で済みます。

「意味ない」と言われる最大の理由は、手当が付かないことです

期待と実際のギャップがいちばん大きいのがここだと思います。「障害者手帳をもらったら手当が出る」というイメージで申請した結果、何も振り込まれない、というものです。

はっきり書きます。全国一律で「精神障害者保健福祉手帳の3級だから支給される手当」という制度はありません。 これは3級に限った話ではなく、1級でも2級でも同じです。手帳の等級そのものを支給要件にした国の現金給付は存在しません。

よく名前が挙がる特別障害者手当は、厚生労働省の特別障害者手当についての案内によれば「精神又は身体に著しく重度の障害を有するため、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の者」に支給されるものです。支給月額は30,450円(令和8年4月より適用)で、本人や配偶者・扶養義務者の前年の所得による制限もあります。20歳未満を対象とする障害児福祉手当も、支給要件は「精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者」で、支給月額は16,560円(令和8年4月より適用)です。

いずれも手帳の等級を要件にしていません。判断されるのは、常時の介護が必要な状態かどうかです。3級の判定基準が「一人で外出できる」「金銭管理はおおむねできる」といった状態を想定していることを考えると、3級の方がこの手当に該当することは、制度の設計上ほとんど想定されていないと言えます。

なお、自治体が独自に手当を設けていることはあります。名称も対象も自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認してください。全国一律ではないので、他の地域の人の話がそのまま当てはまるとは限りません。

医療費が安くなるのは、手帳ではなく別の制度です

もう一つ、誤解が多いところです。手帳を持っていること自体で、通院の窓口負担が下がるわけではありません。

精神科への通院医療費の自己負担を原則1割にするのは、自立支援医療(精神通院医療)という別の制度です。手帳とは申請書も受給者証も別で、等級も関係ありません。手帳を取ったのに医療費が変わらないと感じている方は、自立支援医療のほうを申請していない可能性があります。手続きは自立支援医療制度で通院費を1割にする手順にまとめています。

なお、自治体が実施している医療費助成(精神以外の診療科も含めて自己負担を助成するもの)は、手帳の等級を要件にしていることが多い制度です。厚生労働省がまとめた令和6年12月末現在の一覧を見ると、医療費助成については「1級に限る」「1級・2級に限る」と注記している都道府県が多く並んでいます。3級では対象外になる地域が多い、というのが実際のところです。

交通機関の割引は、事業者ごとに扱いが違います

鉄道やバスの割引は、国が一律に決めているものではなく、事業者がそれぞれ判断しています。「手帳があれば電車が安くなる」と一括りにできない部分です。

JRグループについては、令和7年(2025年)4月1日から精神障害者割引が始まりました。手帳の裏面にある「旅客鉄道株式会社等旅客運賃減額」の欄に第一種または第二種の記載(スタンプまたは印字)がある方が対象で、第一種が1級、第二種が2級と3級にあたります。

割引の内容は次のとおりです。

利用のしかた 対象 割引率
本人がひとりで利用(片道の営業キロが100キロを超える場合に限る) 第一種・第二種とも、普通乗車券 5割
介護者1名と一緒に利用 第一種の方と介護者。普通乗車券・回数乗車券・普通急行券・定期乗車券 5割
介護者1名と一緒に利用 12歳未満の第二種の方と介護者。定期乗車券 5割

3級の方が使えるのは一つ目、片道100キロを超える普通乗車券です。日常の通勤や通院で使える割引ではないので、期待と違うと感じる方は多いと思います。ただし帰省や遠方への外出では効きます。有効期限が切れた手帳や、写真が貼付されていない手帳は割引の対象になりません。

私鉄・バス・タクシーは、実施している事業者としていない事業者があり、等級による線引きも事業者ごとに違います。厚生労働省の一覧にも「一部バス会社に限る」「一部の民営鉄道に限る」といった注記が並んでいます。お住まいの地域の交通事業者の案内で確認するのが確実です。

NHK受信料は、3級でも全額免除の対象になることがあります

ここは「3級は対象外」と説明されがちですが、正確には二つに分かれます。

半額免除は、日本放送協会放送受信料免除基準の別表で「障害等級が1級である重度の精神障害者」が世帯主かつ受信契約者である場合と定められています。3級は対象外です。

全額免除のほうは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者が世帯構成員にいて、その世帯構成員の全員が市町村民税非課税の措置を受けている場合が対象とされています。ここには等級の条件がありません。3級でも、世帯全員が非課税であれば対象になります。

自分の世帯が該当するかどうかは、市区町村の窓口で証明を受ける形になります。休職や離職で世帯の収入が下がっている時期には、確認してみる価値があります。

障害福祉サービスは、そもそも手帳がなくても使えます

就労移行支援や就労継続支援、自立訓練(生活訓練)といった障害福祉サービスは、障害者総合支援法にもとづく制度です。同法第4条の「障害者」の定義は、精神保健福祉法第5条第1項に規定する精神障害者のうち18歳以上である者とされていて、手帳の所持は要件になっていません

手続きの窓口は市区町村です。ここは「3級では足りない」のではなく、そもそも手帳の等級で決まる話ではありません。手帳がまだなくても相談できます。

手帳の等級と障害年金の等級は、別々に判定されます

「精神障害者手帳3級 年金 もらえない」という検索が一定数あります。ここは分けて考えてください。

手帳の等級と障害年金の等級は、別の制度の、別の基準による判定です。 手帳が3級だから障害年金の対象外になる、ということはありません。逆に、障害年金を受けている方が年金証書の写しを添えて手帳を申請した場合には、手帳制度実施要領の定めにより、年金の等級がそのまま手帳の等級として扱われます。この経路では、年金3級の方は手帳も3級になります。

つまり、医師の診断書で手帳を申請して3級だった方と、年金の等級から手帳3級になった方が混在しています。どちらも「手帳3級」ですが、そこから障害年金の可否を逆算することはできません。年金の条件や申請の流れは精神疾患での障害年金。もらえる条件と申請の現実にまとめています。

想定と違う等級だった、通らなかったというとき

申請したのに交付されなかった、あるいは想定より低い等級だった場合に、できることが三つあります。

有効期限内でも、等級の変更を申請できます

手帳制度実施要領には、手帳の交付を受けた者は有効期限の期間内であっても、精神障害の状態が重くなった(または軽くなった)ことにより手帳に記載された等級以外の等級に該当するに至ったと考えるときは、障害等級の変更の申請を行い、判定を求めることができる、と書かれています。更新を待つ必要はありません。診断書を添えて、市区町村の窓口を経由して申請します。

変更が認められた場合、新しい手帳の有効期限は変更決定を行った日から2年が経過する日の属する月の末日になります。

決定に納得できないときは、審査請求という手続きがあります

手帳を交付しない旨の決定は行政の処分にあたるため、行政不服審査法にもとづく審査請求ができます。同法第82条により、行政庁は処分をするときに、不服申立てができる旨、申立て先の行政庁、申立てができる期間を書面で教示しなければならないとされています。通知書のどこかに書かれているはずなので、まずそこを見てください。

期間は、原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、かつ処分があった日の翌日から1年以内です(正当な理由があるときは例外があります)。

次の更新のときに、改めて判定を受けられます

手帳の有効期限は交付日から2年が経過する日の属する月の末日です。更新申請は有効期限の3か月前から行うことができ、有効期限を過ぎている場合でも申請すること自体はできると要領に明記されています。

更新は「そのままスライドする手続き」ではなく、2年ごとに、そのときの状態が障害等級に定める状態にあるかどうかを改めて認定するものです。等級が上がることも下がることもあります。診断書を書く医師に、日常生活や仕事の中で実際に困っている場面を具体的に伝えておくことが、結果的に判定の材料になります。

それでも迷うときは

手帳3級で確実に変わるのは、障害者雇用枠という選択肢が増えることと、毎年の所得税・住民税の障害者控除です。手当は付きません。医療費が下がるのは自立支援医療という別の制度で、手帳ではありません。交通機関や自治体のサービスは、住んでいる場所と事業者によって差が大きく、3級が対象から外れているものも実際にあります。

このうち、いま自分に効くものが一つもないのであれば、「今のところ使い道が少ない」というのは正しい認識です。それは事実なので、無理に意味を見つけようとしなくてかまいません。

ただ、手帳は2年で更新する仕組みなので、状況が変わったときに効いてくることがあります。働き方を変えるとき、世帯の収入が下がったとき、住む場所が変わったとき。そのときに手元にあるかどうかで、選べるものの数が変わります。返還が必要なのは障害等級に定める状態がなくなったときだけで、使わなかったから返す必要はありません。

手帳全体のメリットとデメリット(会社に知られるのか、運転免許や保険はどうなるのか、といった点を含みます)は障害者手帳のメリットとデメリットを正直に書くにまとめています。自分の地域で何が使えるかは、市区町村の障害福祉担当窓口か、都道府県・指定都市の精神保健福祉センターで確認できます。名前を伝えずに一般的な質問として聞くこともできますし、電話1本で済むことがほとんどです。

わたしたちは就労支援の現場で、3級の手帳を持っている方に多く会います。取った直後は使い道が思い当たらなかったという方でも、働き方や世帯の状況が変わったときに初めて効いた、という順番になることがよくあります。いま使い道が少ないことと、この先も要らないことは別の話です。更新の案内が来るまではしまっておくもの、という受け止め方で十分だと思います。