診察室で「少し休みましょう」と言われて、診断書を書いてもらうことになった。あるいは会社に休職を相談したら「まず診断書を出してください」と言われた。どちらの入口から来た方も、次に浮かぶのは同じ疑問だと思います。その紙には何が書かれるのか、期間はどうなるのか、誰にどう渡せばいいのか。

一枚の紙のことなのに、休職の入口はここで詰まりがちです。順番に見ていきます。

診断書に書かれるのは、大きく2つです

休職に入るときに会社へ出す診断書は、厚生労働省の資料では「病気休業診断書」と呼ばれています。書かれる内容について、厚生労働省の心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きには、こう書かれています。

診断書には病気休業を必要とする旨のほか、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましい

つまり2つです。療養が必要であること。そして、どれくらいの期間が見込まれるか。会社が休職の手続きを始めるために必要なのは、この2点だからです。

実物の紙面としては、おおむね次のような項目が並びます。様式は医療機関ごとに違うので、順番や言い回しは変わります。

  • あなたの氏名と生年月日
  • 診断名(書き方は下に補足します)
  • 診断した年月日
  • 現在の状態についての所見
  • 療養を要する旨と、その見込み期間
  • 医療機関の名称と所在地、医師の氏名

期間の書き方は「令和◯年◯月◯日から◯か月間の療養を要する」のように、始まりの日と長さで書かれることが多くあります。ここを読み違えると休職の開始日の話がずれるので、受け取ったらその場で日付だけ確かめておくと安心です。

病名が書かれるかどうかは、医療機関や使う様式によって違います。「適応障害」「うつ病」といった診断名が入ることもあれば、「心身の不調により」といった書き方になることもあります。会社に病名を知られたくない気持ちがあるなら、診察のときにそのまま医師に伝えて構いません。書き方の相談は、失礼なお願いではありません。

期間は何か月と書かれるのか

いちばん気になるところだと思いますが、ここは決まった答えがありません。何か月と書くかは、あなたの状態を診たうえでの医師の判断です。

書かれ方には幅があります。まず短めに書いて、その時期にもう一度診て、必要なら延長していく形もあります。はじめからある程度の期間を見込んで書かれることもあります。どちらが正しいというものではなく、状態と、通院の間隔と、会社の手続きの都合が絡んで決まります。

希望を伝えること自体は構いません。「会社の規定で、この日までに手続きが要ると言われています」「一度に長く休むより、様子を見ながらにしたいです」といった事情は、伝えたほうが医師も判断しやすくなります。ただし、期間を指定して書いてもらうことはできません。診断書は医師が自分の判断で書く文書だからです。

会社から「◯か月以上と書いてもらってください」と言われることもあります。就業規則で休職の条件が決まっているために出てくる注文で、無理な要求とは限りません。そういうときは、言われた内容をそのまま医師に伝えてください。会社の規定でそう求められている、という事実は、医師にとっても判断の材料になります。ただ、伝えたうえで医師が別の期間を書くこともあります。それは医師の判断なので、あなたが間に立って調整する必要はありません。

診断書の期間が、そのまま休職期間になるとは限りません

ここが見落とされやすいところです。

休職という制度は、法律で全国一律に決まっているものではありません。厚生労働省のモデル就業規則の解説にも、休職の定義、休職期間の制限、復職等については労働基準法に定めがないと、はっきり書かれています。条件も期間も、勤め先の就業規則で決まります。

モデル就業規則の休職の規定は、たとえば「業務外の傷病による欠勤が◯か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」を休職の条件にする形になっています。この形をとっている会社では、診断書を出したその日から休職が始まるのではなく、まず欠勤や年次有給休暇の期間があって、それを超えたところで休職に切り替わります。

だから、診断書に「3か月の療養を要する」と書かれていても、休職期間が3か月になるとは限りません。診断書は医師が医学的な見込みを書いたもので、休職の期間は会社の規定が決めるものです。この2つは別々に動きます。

休職に入る前後で何を確認しておけばよいかは、休職の手続きと過ごし方にまとめています。就業規則のどこを見ればいいかも、そちらに書きました。

診断書は、頼むところから始まります

書いてほしいと言い出せずにいる方が、思いのほか多くいます。

医師法第19条第2項に、次のように定められています。診察をした医師は、診断書の交付の求めがあった場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。求められれば書くことが、医師の側の義務として法律に書かれているということです。

ですから「こんなことでお願いしていいのだろうか」と考える必要はありません。診察のときに「仕事を休むことを考えているので、会社に出す診断書をお願いしたいです」と伝えれば、それで話は進みます。

その場で受け取れるとは限らず、後日になることもあります。頼み方の流れや、間が空くときにどうするかは、診断書のもらい方で別に扱っています。

そもそも、なぜ会社は診断書を求めるのか

法律が「休職には診断書が必要」と定めているわけではありません。先に書いたとおり、休職そのものが労働基準法に定めのない制度だからです。

それでも実際にはほとんどの会社が診断書を求めます。理由は単純で、休職を認めるかどうかを会社が判断するための材料が、ほかにないからです。モデル就業規則の休職の規定も「業務外の傷病による欠勤」で「なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」を条件にしていて、この「療養を継続する必要がある」を裏づけるのが医師の診断書という位置づけになります。

ですから、診断書は会社があなたを疑うために求めている書類ではありません。会社が休職の手続きを進めるために必要な根拠です。逆に言えば、診断書が出た時点で、休職を認めるかどうかは「頑張れるかどうか」の話ではなくなります。

誰に、どうやって出すか

診断書を出す相手

診断書を受け取ったあと
直属の上司に渡す手引きが示す標準的な流れ。そこから人事と産業保健スタッフに連絡が回る
人事に直接出す上司に渡しにくい事情があるときは、こちらでも構わない
産業医に相談するまず相談するところから始める道もある
会社側の手順を示したものなので、本人が必ず上司に渡さなければならない決まりではありません。渡し方は手渡しでも郵送でも構いません。

厚生労働省の手引きが示す標準的な流れは、次のようになっています。主治医が作成した診断書を、労働者から管理監督者などに提出してもらう。管理監督者は、病気休業診断書が提出されたことを人事労務管理スタッフと産業保健スタッフに連絡する。

つまり、想定されている窓口は直属の上司で、そこから先の連絡は社内で回るということです。上司に渡せば、人事に自分から重ねて連絡しなくても手続きは進みます。

ただし、これは会社側の手順を示したものであって、本人が必ず上司に渡さなければならない決まりではありません。上司との関係そのものが体調に関わっているなら、そこを通ること自体が大きな負担になります。人事に直接出して構いませんし、産業医に相談するところから始める道もあります。どう切り出すかについては、休職を上司や人事にどう伝えるかに例文まで置きました。

渡し方は、手渡しでも郵送でも構いません。法律に決まりはありません。出社がつらければ郵送で構いませんし、そのときは「本日、診断書を郵送しました」と一報を入れておくと、届いたかどうかを気に病まずに済みます。

いつ出すか

休職の開始日より前に出すのが基本です。会社は診断書を受け取ってから手続きを始めるので、開始日の当日や後になると、その間の扱いが宙に浮いてしまいます。

とはいえ、診断書の発行に数日かかることもあります。その場合は、先に「診断書が近く出る見込みです」と連絡だけ入れておくのが確実です。会社側も、書類を待っている状態だと分かっていれば、並行して手続きの準備を進められます。

出したあとに、日付と渡した相手をメモしておいてください。手帳の隅でも、スマートフォンのメモでも構いません。休職の開始日の認識がずれたときに、この一行があるだけで話が早く済みます。

提出する前に、コピーを取ってください

これがこの記事でいちばんお伝えしたいことです。原本を求められることが多いので、渡す前に写真を撮るかコピーを取るか、どちらかを必ずしてください。スマートフォンで撮った一枚で足ります。

あとから見返したくなる場面が、少なくとも4つあります。

場面 何を確認したくなるか
休職の開始日を会社と確認するとき 診断日と、書かれていた期間
傷病手当金を申請するとき 療養が必要とされていた期間
期間を延長してもらうとき 前回どこまでの期間で書かれていたか
会社と話が食い違ったとき 実際に書かれていた文言

原本を渡してしまうと、これらのたびに会社に「見せてください」と頼むことになります。頼めば見せてもらえるはずのものですが、体調が良くない時期にその連絡をするのは、それ自体が負担です。もう一度発行してもらう手もありますが、そのたびに受診と文書料が必要になります。

撮り方に決まりはありません。封筒に入れる前に、机の上で1枚撮っておく。それだけです。日付と期間の欄がぼやけていないかだけ確かめて、あとはスマートフォンの中に置いておいてください。原本を郵送するときは、届いたかどうかが記録に残る方法を選んでおくと、あとから「受け取っていない」というやり取りをせずに済みます。

ひとつ補足しておくと、傷病手当金の申請書に付けるのは、会社に出した診断書とは別の書類です。健康保険法施行規則第84条で、傷病手当金の支給申請書には、発病の年月日や主症状、経過の概要、労務に服することができなかった期間などを記した医師または歯科医師の意見書を添えることとされています。会社に出した診断書を使い回すのではなく、申請書の医師記入欄に書いてもらう形になります。手続きは休職中にもらえるお金のほうで扱っています。

似た名前の書類が、いくつも出てきます

休職の話が始まると、紙の種類が増えます。どれも「医師が書く書類」なので混ざりやすいのですが、目的が違います。一度整理しておくと、あとで会社から何を求められているのかが分かりやすくなります。

書類 いつ 何のために
病気休業診断書 休職に入るとき 療養が必要な旨と見込み期間を会社に示す
傷病手当金の申請書にある医師の意見書 傷病手当金を申請するたび 働けなかった期間を健康保険に証明する
情報提供依頼書などの会社の様式 会社が主治医の意見を求めるとき 産業医などが主治医から情報を受け取る
復職の診断書 復職を申し出るとき 復職できる状態だと会社に示す

この記事で扱っているのは、いちばん上の一枚です。いちばん下の復職の診断書は、内容も頼み方も別物なので、復職の診断書にまとめてあります。今の段階で読む必要はありません。

提出した診断書は、会社でどう扱われるのか

「上司に渡したら、部署のみんなに病名が知られるのではないか」という不安は、よく聞きます。

厚生労働省のこころの耳に載っている診断書等の個人情報の取扱いに関する注意点は?では、会社に提出された診断書も個人の健康情報として取り扱うこととされ、利用目的を明確にし、利用目的以外で使用しないようにする必要があると説明されています。休業の確認のために提出された診断書であれば、その範囲で利用し、人事の処遇などで利用してはならないとも書かれています。あわせて、取り扱う担当者を限定するなどのルールを設けるようにする、とされています。

つまり制度の側の想定としては、渡した診断書は休職の手続きのために使われ、扱う人も限られる、ということです。実際の運用が会社ごとに違うのは確かですが、「誰でも見られる書類」ではありません。

もうひとつ知っておくとよいことがあります。厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」には、本人が自発的に会社へ提出した情報については本人の同意を得たものと解されるが、その情報について会社が医療機関等に直接問い合わせる場合には、別途、本人の同意を得る必要があると書かれています。

診断書を出したことで、会社が主治医に自由に連絡できるようになるわけではありません。そこにはもう一段、あなたの同意が要ります。

会社の様式を渡されたとき

「所定の用紙があるので、これに書いてもらってください」と会社から渡されることがあります。戸惑うかもしれませんが、珍しいことではありません。医師に渡せば、その様式に書いてもらえるのが通常です。診察の受付で「会社の用紙があります」と先に伝えておくと、話が早く進みます。

反対に、会社に様式があるかどうか分からないまま医療機関の書式で書いてもらい、あとから「所定の用紙で出し直してください」と言われることもあります。二度手間と文書料が重なるので、診断書を頼む前に「会社所定の様式はありますか」と人事に一言聞いておくと確実です。何も指定がなければ、医療機関の書式のままで問題ありません。

このとき見ておいてほしいのが、用紙の中に同意欄がないかです。厚生労働省の手引きに載っている様式例のひとつには、本人が記入する欄として「私は本情報提供依頼書に関する説明を受け、情報提供文書の作成並びに産業医への提出について同意します」という一文と、署名の欄が置かれています。

こうした様式は、会社(産業医)が主治医に情報の提供を求めるためのものです。診断書とは目的が違います。署名すれば、そこに書かれた範囲の情報が主治医から会社の産業医に渡ることに同意したことになります。

署名してはいけない、という話ではありません。復職の相談を進めるうえで必要になる場面もあります。ただ、何の書類で、どこまでの情報が誰に渡るのかを読んでから署名してください。分からなければ「これは何のための書類ですか」と聞いて構いません。手引きが説明を受けたうえでの同意を想定しているので、確認するほうが本来の形です。

なお、会社の様式に書いてもらう場合も、医療機関の文書料はかかります。金額は医療機関によって違うので、様式を渡すときに窓口で聞いておくと予定が立てやすくなります。

期間が切れるときの、延長の診断書

診断書に書かれた見込み期間が終わりに近づいたとき、まだ療養が必要なら、あらためて診断書を書いてもらって会社に出すのが一般的な流れです。

段取りとして大事なのは一点だけです。期間が終わる日より前に受診しておくこと。期限を過ぎてから慌てて受診すると、書類が途切れた期間が生まれます。会社の手続きの上でも、傷病手当金の申請の上でも、その空白はあとから面倒になります。

前回の診断書に書かれた終わりの日を、カレンダーに入れておいてください。その2週間ほど前に診察の予定が入っていれば、無理なく続きます。診察のときは「会社に出す診断書の期間が◯月◯日までなので、続けて療養が必要なら書いていただきたいです」と伝えれば通じます。

厚生労働省の手引きでも、休業者と会社が接触するタイミングとして、診断書や傷病手当金申請書の提出のタイミングに合わせると本人の負担が軽くなることがある、と書かれています。書類の提出と近況の連絡をまとめてしまうのは、理にかなったやり方です。

延長を考えるときにもうひとつ確認しておきたいのが、休職できる期間の上限です。就業規則で決まっていて、勤続年数によって変わる会社もあります。医師が書ける期間と、会社が認めている期間は別のものなので、上限の日付を知らないまま延長を重ねると、あとから慌てることになります。読むのがつらい項目かもしれませんが、日付だけでも把握しておいてください。

診断書が思うように出ないとき

いくつか、実際に起きることを書いておきます。

初診で書いてもらえなかった。 一度の診察では状態の判断がつかず、次の受診まで待つことになる場合があります。医師法は正当の事由がなければ交付を拒んではならないと定めていますが、判断のために経過を見る必要があるという理由は、拒否とは別の話です。急いでいる事情があるなら、そのまま伝えてください。

期間が思ったより短かった。 短めに書いて経過を見る書き方はよくあります。足りなければ延長できるので、その場で長さを交渉するより、次の受診の予定を決めておくほうが現実的です。

受け取るまでに日数がかかる。 会社には先に「診断書は◯日ごろに出る見込みです」と伝えておけば、手続きの流れは止まりません。診断書が手元にないことを、休職の相談を切り出さない理由にしなくて大丈夫です。

今日は、一枚のことだけ考えれば足ります

診断書のまわりには、休職期間、傷病手当金、復職の見通しと、考えることがいくらでもぶら下がってきます。全部を一度に決める必要はありません。

今日必要なのは、療養が必要だと書かれた一枚を用意して、コピーを取って、会社に出すこと。それだけです。期間の話も、お金の話も、そのあとから順番に考えて間に合います。

わたしたちは就労支援の現場で、休職の期間について行き違いがあったという話をよく聞きます。診断書に書かれた月数が、そのまま休める長さだと受け取ってしまう形です。期間は医師が見立てた療養の見込みで、休職をどこまで認めるかは会社の規定で決まります。別のものだと知っておくと、延長のときにあわてずに済みます。