明日また出社することを考えると息が浅くなる。そういう状態でこのページにたどり着いた方が多いと思います。調べているのは診断書の出し方かもしれませんが、本当に必要なのは、明日どうやって休むかのほうではないでしょうか。

先に結論だけ書きます。診断書がすぐ出るかどうかは、診察してみないと分かりません。ただ、明日休むことは、診断書がなくてもできます。この2つは別々の話で、混ざったまま考えると身動きが取れなくなります。順番に分けていきます。

明日休むために、診断書は要りません

明日休むときの分かれ道

明日は出社できそうにない
年次有給休暇が残っている労働者の請求する時季に与えなければならないと条文にあります。理由の説明も、診断書も要りません
残日数がゼロ欠勤という形になり、その日の賃金は出ませんが、休むことはできます。何日以上の欠勤で診断書を求めるかは就業規則で確かめます
どちらの場合も、休むことと診断書が出ることは別の話です。賃金が出ない期間は、あとから傷病手当金の対象になる場合があります。

年次有給休暇について、労働基準法第三十九条の第5項はこう定めています。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。

条文はここまでです。労働者が理由を申し出ることも、会社がその理由を審査して可否を決めることも、条文には書かれていません。診断書や医師の証明を条件にするという定めもありません。休みたい日を伝えれば、その日に与えなければならない、という構造になっています。

続くただし書きだけ、知っておく価値があります。

ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

これが時季変更権と呼ばれるものです。読んでほしいのは末尾で、会社にできるのは日をずらすことであって、有給休暇をなくすことではありません。厚生労働省の解説では、「事業の正常な運営を妨げる」場合の例として、年末など特に業務が忙しい時季を指定する場合や、同じ時期に多数の労働者の指定が重なって全員には付与しがたい場合が挙げられています。忙しいから常に断れる、という意味ではありません。

つまり、明日の朝に「体調不良のため、本日は年次有給休暇を取ります」と連絡することは、制度としてそのまま想定されている使い方です。病名を説明する必要も、診断書を添える必要もありません。

有給休暇が残っていないときは

残日数がゼロでも、休めないわけではありません。その場合は欠勤という形になります。その日の賃金は出ませんが、体を休めることはできます。

ここで確認しておくとよいのが、何日以上の欠勤で診断書の提出を求めるかという会社の規定です。就業規則の欠勤や休職の条項に書かれていて、何日から求めるかは会社によって違います。日数の全国的な相場を示す公的な資料はないので、自分の会社の規定を見るのが確実です。

賃金が出ない期間については、あとから健康保険の傷病手当金が受けられる場合があります。この記事の後半で触れます。

診断書が本当に必要になるのは、どの場面か

診断書が必ず要る場面は、実はそれほど多くありません。整理すると次のとおりです。

場面 診断書が必要か
明日1日休む(年次有給休暇) 条文上、必要とされていません
数日〜1週間の欠勤 会社の就業規則によります。日数の線が決まっています
休職に入る ほとんどの会社で必要です
傷病手当金の申請 診断書とは別に、申請書に医師が記入する欄があります
復職する 復職の可否が記された診断書を求められるのが一般的です

このうち、はっきりと必要なのが休職です。厚生労働省と労働者健康安全機構の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援の第1ステップである病気休業開始時の対応として、次のように書かれています。

病気休業の開始においては、主治医によって作成された診断書を労働者より管理監督者等に提出してもらう。診断書には病気休業を必要とする旨の他、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましい。

会社の手続きが診断書から始まる設計になっているので、休職を申し出るなら診断書は避けて通れません。ただ、それは数週間から数か月の枠を作るための手続きです。明日と明後日をしのぐ話とは、時間の単位が違います。

休職に入るまでの流れそのものは、休職の手続きと過ごし方にまとめてあります。

「すぐ書いてくれる病院」を探すより先に

検索していると、すぐ診断書を出してくれるクリニックの見分け方、といった情報に行き当たると思います。この記事ではそれを書きません。書けない理由が2つあります。

ひとつは、医師法第二十条です。

医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

診察をしないまま診断書を出すことは、法律で禁じられています。オンライン診療であっても診察そのものは必要です。受診せずに書類だけ受け取る道は、制度としてありません。

もうひとつは、診断書という書類の性質です。医師法第十九条第2項には、診察をした医師は、診断書の交付を求められたら正当の事由がなければ拒んではならない、と定められています。求めに応じる義務は確かにあります。ただしそれは、診察して分かったことを書いた書類を渡す義務であって、こちらが望む内容を書く義務ではありません。

だから、診断書は頼み方の工夫で出る書類ではないのです。「こう言えば通る」という言い方を覚えていく必要もありません。診察室でしたほうがよいのは、うまく言うことではなく、起きていることを漏らさず伝えることです。次の章がその話です。

急いでいるときにこういう説明を読むと、遠回りをさせられているように感じるかもしれません。ただ、診断書はこの先に何度も出てくる書類です。休職を延長するとき、傷病手当金を受け取り続けるとき、復職を判断するとき、そのつど同じ医師が経過を見て書きます。最初の1枚を実態から離れた形で作ってしまうと、あとの説明がすべてそこに引きずられます。今日いちばん早いのは、書類を急ぐことではなく、休むほうを先に確保することです。

初診で出ることも、出ないこともあります

正直に書きます。初診で診断書が出ることはありますし、出ないこともあります。どちらもよくあることです。

出ないことがあるのは、医師が慎重だからです。気分の落ち込みや不眠は、うつ病でも適応障害でも起きますし、甲状腺の病気や貧血、薬の副作用でも起きます。症状が出てまだ日が浅いときは、経過を見ないと判断がつかない場合もあります。ここで急いで病名をつけてしまうと、あとの治療の方向がずれることがあります。

保留になったのは、症状を軽く見られたからではありません。 このことだけは覚えておいてください。診断書が出なかった日に「大したことないと思われた」と受け取ってしまい、次の受診をやめてしまう方がいます。そこで途切れるのがいちばんもったいない結果になります。

その場でできることがあります。診断書が出なかったときは、「次はいつ受診すればよいですか」と聞いてください。1週間後の再診で書かれることは珍しくありません。あわせて、「今の状態で休むことについて、先生はどう考えますか」と聞いておくと、休むこと自体の相談は続けられます。

診察のときに伝えると、判断しやすくなること

医師が見ているのは、症状の中身と、それがいつから、どのくらい続いているかです。ところが体調が悪い日の診察は5分や10分で終わることもあり、大事なところが伝わらないまま帰ってしまいがちです。

大げさに言う必要はありません。むしろ実際より重く言うと、あとで経過を追うときの基準が狂って、自分が損をします。伝えたいのは正確なところです。次の4つだけ、行く前にメモにしておいてください。

1. いつからか
「先月の異動のあとから」「2か月くらい前から」。きっかけに心当たりがなければ、ないと言って構いません。

2. 眠れているか、食べられているか
寝つくのに何時間かかるか、夜中に目が覚めるか、朝早く目が覚めてしまうか。体重が減っているなら何キロか。ここは医師がいちばん知りたい情報のひとつで、しかも聞かれないと言い忘れやすいところです。

3. 日常で何ができなくなっているか
気持ちの説明より、動作の変化のほうが伝わります。「風呂に入れない日がある」「洗濯物を3日ためている」「メールの文面が読めない」「駅に着くと足が止まる」。実際に起きていることを、そのまま書いてください。

4. 仕事がどうなっているか
勤務時間、残業の量、通勤時間、担当が変わったか、誰との関係でつらいか。休職の見込み期間を書くとき、医師はここを見ます。仕事の負荷が伝わっていないと、期間の判断がずれます。

メモの利点は、話せなくても渡せることです。診察室で言葉が出てこない日があります。紙を差し出して「うまく話せないので、これを見てください」で通じます。

適応障害なら簡単に書いてもらえる、という話について

「適応障害のほうが診断書を書いてもらいやすい」という言い方を見かけることがあります。ここも整理しておきます。

適応障害は、はっきりしたストレスのもとがあって、それに反応して症状が出ている状態を指します。だから診察で焦点になるのは、その原因にあたる出来事が具体的に語られるかどうかです。異動でどんな仕事に変わったのか、いつから残業が何時間になったのか、誰とのやり取りで動悸がするのか。ここが具体的であるほど、医師は判断できます。

つまり、書いてもらいやすい病名があるのではなく、伝わる情報が足りているかどうかの違いです。前の章の4項目のうち、適応障害を考えるときにとりわけ効いてくるのは4番目の「仕事がどうなっているか」になります。

逆に言うと、原因のほうを言いたくなくて曖昧に話してしまうと、判断の材料が減ります。職場の人間関係を口に出すのはためらわれるものですが、診察室で話したことがそのまま会社に伝わることはありません。診断書に書かれるのは、療養が必要であることとその見込み期間が中心で、経緯が細かく記されるわけではないのが一般的です。

初診の予約が数週間先だったとき

精神科や心療内科は、初診の予約が2週間先、3週間先ということが珍しくありません。「それまで持たない」と感じたと思います。

ここでもう一度、最初の話に戻ってください。受診の予定と、休むことは切り離せます。 予約が3週間先でも、明日から有給休暇を取ることはできます。欠勤という形でも休めます。診断書が出るのは受診の後ですが、休むこと自体はその前から始められます。

予約の電話をかけるときは、キャンセル待ちができるかを聞いておいてください。空きが出たら連絡をもらえる医療機関があります。何軒か当たって、いちばん早い日を押さえておくのが結局は近道です。

受け取りまでにかかること

診断書は、その日のうちに受け取れることもあれば、後日になることもあります。書式が決まっている書類なので、混んでいる日は作成に時間がかかります。1週間程度かかる医療機関もあります。

文書料は健康保険の対象外で、金額は医療機関ごとに違います。受付で「休職のための診断書をお願いしたら、文書料はいくらで、受け取りはいつになりますか」と聞いておくと、会社への連絡の段取りも組みやすくなります。

会社に提出する期限が決まっている場合は、その日付を先に伝えてください。急ぎであることが分かっていれば、対応が変わることがあります。

診断書を待っている間も、お金の話は止まりません

診断書が出るまで何も進まない、と感じるかもしれませんが、そうでもありません。傷病手当金の待期の考え方を知っておくと、休み始めた日から時計が動いていることが分かります。

全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金の説明では、傷病手当金は連続して3日間休んだ後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。この最初の3日間を待期といいます。

ここが大事なところです。協会けんぽは、待期には「有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません」と説明しています。つまり、まず有給休暇で休み始めても、待期の3日はそれで成立します。待期を作るために無給で休む必要はありません。

そのうえで、実際に支給される段階では、休んだ期間について給与の支払いがないことが条件になります。給与が支払われている間は支給されず、支払われた額が傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給される、という整理です。1日あたりの額は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2にした額が目安になります。

申請書には医師が記入する欄があります。診断書とは別の書類ですが、療養の期間を医師に証明してもらう点は同じです。書き方は傷病手当金の申請書の書き方に分けてあります。

明日から3日間の、現実的な順番

今日決めることを減らすために、順番だけ置いておきます。

いつ やること
今日か明日の朝 「体調不良のため、本日は年次有給休暇を取ります」と連絡する。理由の説明は不要です
休んでいる間 精神科・心療内科を探して予約する。初診は数週間先のこともあるので、まず電話をかけてしまう
予約が先になるなら 就業規則で、何日以上の欠勤に診断書が要るかだけ確認しておく
受診の前日まで 上の4項目をメモにする。書けるところだけで足ります
受診の日 診断書が出ればそのまま休職の相談へ。出なければ次の受診日を決める

一度に全部やる必要はありません。いちばん上の1行だけで、明日は休めます。

会社への伝え方で迷うときは、そのまま使える文面を休職を上司や人事にどう伝えるかに置いてあります。

今夜がつらいとき

受診も手続きも明日以降の話です。今この時間がしんどいときに使える窓口があります。

こころの耳電話相談(厚生労働省)は、働く方やそのご家族、企業の人事労務担当者を対象にしたフリーダイヤルの相談窓口です。

  • 電話 0120-565-455
  • 平日(月曜日〜金曜日)17時〜22時(受付は21時50分まで)
  • 土曜日・日曜日 10時〜16時(受付は15時50分まで)
  • 祝日、振替休日、年末年始(12月29日〜1月3日)は除く

平日の夜に開いているので、仕事のあとにかけられます。同じサイトにSNS相談とメール相談の窓口もあり、電話が苦手ならそちらから始められます。

死にたい気持ちが出てきているときは、診断書の話は後回しにしてください。厚生労働省の「まもろうよ こころ」には、24時間対応の窓口として#いのちSOS(0120-061-338)とよりそいホットライン(0120-279-338)が案内されています。どちらも無料で、夜中でもつながります。話せる相手が今夜もいるということだけ、頭の隅に置いておいてもらえればと思います。

診断書は、休むための道具のひとつです

診断書がすぐ手に入るかどうかは、正直なところ受診してみないと分かりません。ただ、それが分からないままでも、明日休むことはできます。年次有給休暇は請求した時季に与えられるものとして条文に書かれていますし、有給が残っていなくても欠勤という形が残ります。

診断書が要るのはその先、休職という長い枠を作る段階です。順番としては、先に休んで、体を少し戻してから受診する。そのほうが診察でも話しやすくなりますし、医師に伝えられる情報も増えます。

今日のところは、明日の朝の連絡だけ決めておけば足ります。

わたしたちは就労支援の現場で、限界まで我慢してから相談に来られる方に多く会います。急いで診断書を探している時期は、たいていもう十分に限界です。診断書が出るかどうかより先に、明日をどう休むかだけ決めてしまって構いません。順番を入れ替えるだけで、少し息がつけることがあります。