診察室で「診断書を出しましょう」と言われて紙を受け取ると、これで手続きの心配はひととおり片づいた、という気持ちになります。会社にも出せるし、お金の申請にも使えるし、あとで必要になったらコピーを取ればいい。そう考えるのは自然だと思います。

ところが実際に手続きを進めていくと、途中で行き違いが起きます。傷病手当金の申請をしようとしたら「申請書を持ってきてください」と言われる、自立支援医療の窓口で「この様式ではありません」と返される、という形です。診断書は、出す先ごとに別の書類として用意されているからです。

この記事では、うつ病と書かれた診断書がそのあとの手続きでどう使われるのかを、出す先ごとに並べます。診断書のもらい方そのものは診断書のもらい方に、費用の話は診断書の費用に分けてあります。

出す先ごとに、まったく別の書類です

診断書を1枚もらったあと、出す先で分かれます

うつ病と書かれた診断書を1枚もらった
会社に出す全国共通の様式はなく、医療機関の書式の診断書です
傷病手当金診断書ではなく、支給申請書の医師記入欄に医師が直接書きます
制度の申請自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳・障害年金は、それぞれ専用の様式です
書く人はほとんど同じ主治医ですが、書類としては別々に依頼することになります。詳しい中身は下の表にまとめています。

まず全体を一覧にします。ここだけ頭に入っていれば、窓口で戸惑う場面はかなり減ります。

出す先 書類の呼ばれ方 様式 書く人 主に問われること
会社(休職を始めるとき) 診断書、病気休業診断書 全国共通の様式はなく、医療機関の書式 医師 休業が必要であること、必要な療養期間の見込み
傷病手当金 支給申請書の医師記入欄(協会けんぽの様式では4ページ目「療養担当者記入用」) 加入している健康保険の申請書の一部 医師 労務不能と認めた期間、その期間の症状と経過
自立支援医療(精神通院医療) 医師の診断書 市町村等が定める様式 医師(指定自立支援医療機関の) 通院による治療を続ける必要がある状態か
精神障害者保健福祉手帳 診断書(精神障害者保健福祉手帳用) 別紙様式2(全国共通) 医師(原則として精神保健指定医または精神科医) 病状と、日常生活能力の状態
障害年金 診断書(精神の障害用) 様式第120号の4(全国共通) 医師 日常生活の制限の度合い
復職するとき 診断書、復職診断書 全国共通の様式はなく、医療機関の書式 医師 職場復帰が可能かどうか、就業上の配慮についての意見

書く人はほとんど同じ主治医です。それでも書類としては別々に依頼することになります。1回の診察でまとめて頼めるものもありますが、「1枚もらったから、あとは使い回せる」という前提だけは外しておいてください。

なぜ、こんなに分かれているのか

同じ主治医が、同じ人について書くのに、なぜ様式まで別なのか。理由は単純で、手続きごとに根拠になっている法律と、決めている主体が違うからです。

傷病手当金は健康保険の給付ですから、様式を用意しているのは加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合)です。精神障害者保健福祉手帳の診断書は、国が実施要領の中で別紙様式2として定めています。自立支援医療の申請を受け付けるのは市町村の窓口で、様式もそちらが用意します。障害年金の診断書は全国共通の様式第120号の4で、日本年金機構が配布しています。会社に出す診断書だけは公的な制度の様式ではなく、会社とのあいだでやりとりする書類です。

そして、それぞれが確かめたいことも違います。健康保険が知りたいのは働けなかった期間であり、障害福祉が知りたいのは通院を続ける必要があるかどうかや生活能力の状態であり、年金が知りたいのは日常生活の制限の度合いです。同じ病名でも、聞かれていることが違うので、1枚では足りなくなります。

会社に出す診断書

休職を始めるときに会社へ出す診断書には、全国共通の様式が用意されていません。医療機関が持っている書式に書いてもらう形になります。会社によっては所定の用紙を用意していることがあるので、依頼する前に総務や人事に確認しておくと二度手間が減ります。

内容については、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に記述があります。職場復帰支援の第1ステップである「病気休業開始及び休業中のケア」の説明として、病気休業の開始においては主治医によって作成された診断書を労働者より管理監督者等に提出してもらう、と書かれています。そのうえで、診断書には病気休業を必要とする旨のほか、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましいとされています。

つまり会社に出す診断書で求められているのは、休むことが必要だという判断と、どのくらいの期間の見込みかという2点です。症状を細かく書いてもらう書類としては想定されていません。

手引きでは、この診断書が提出されたことを管理監督者が人事労務管理スタッフと産業保健スタッフに連絡し、休業中の事務手続きや職場復帰支援の手順についての説明を行う、という流れになっています。診断書を出したところから会社側の手続きが動きはじめる、という位置づけの書類です。

傷病手当金は、診断書ではなく申請書の欄です

ここがいちばん多い行き違いです。傷病手当金は診断書を添付する仕組みではありません

全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険傷病手当金支給申請書は4ページあり、1ページ目と2ページ目が被保険者記入用、3ページ目が事業主記入用、そして4ページ目が「療養担当者記入用」です。様式には「療養担当者が意見を記入するところ」と書かれています。療養担当者というのは医師などのことです。

医師が書く欄の中身は、次のとおりです。

  • 労務不能と認めた期間(様式には「勤務先での従前の労務に服することができない期間をいいます」と説明が付いています)
  • 傷病名(労務不能と認めた傷病を記入します)
  • 発病または負傷の年月日と、その原因
  • 初診日(療養の給付の開始年月日)
  • 労務不能と認めた期間に診療した日があったかどうか
  • その期間中における「主たる症状及び経過」「治療内容、検査結果、療養指導」等

そして欄の下に「上記のとおり相違ないことを証明します」とあり、医療機関の所在地と名称、医師の氏名、電話番号を記入する形式になっています。申請書そのものに医師の証明をもらう作りですから、会社に出した診断書のコピーを付けて代えることはできません。申請書を医療機関に持っていく必要があります。

もう一点、注意しておきたいところがあります。記入の手引きには、病院を転院した場合はそれぞれの病院で療養担当者(医師等)の意見を受けてください、主治医が変更となった場合など4ページ目が複数に分かれる場合は申請書を分けて申請してください、と書かれています。休職中に通院先が変わった方は、期間の区切り方を先に決めておくと後戻りが減ります。

また、2ページ目には「療養担当者記入欄(4ページ)に記入されている傷病による申請である場合は、左記にチェックを入れてください」という欄があり、別の傷病で申請する場合は別途その傷病に対する療養担当者の証明を受けるように、とも書かれています。1枚の申請書は、原則としてひとつの傷病についてのものだという整理です。

依頼する時期にも決まりがあります。医師が証明するのは労務不能と認めた「期間」ですから、申請したい期間が過ぎてからの記入になります。3ページ目の事業主の証明についても、記入の手引きに「証明は、申請期間経過後の日付をご記入ください」と書かれています。さらに、申請期間が3か月を超える場合は申請書を分けて申請するように、とも案内されています。休職が長くなりそうなときは、はじめから2か月や3か月ごとに区切って申請していく形になると考えておいてください。

診断書を1枚もらってあるから傷病手当金も大丈夫だろう、と思ったまま時間が過ぎてしまうと、その分だけ入金が遅れます。会社に診断書を出した時点では、傷病手当金の手続きはまだ何も始まっていません。ここは別の作業として、予定に入れておいてください。

書き方そのものは傷病手当金支給申請書の書き方と記入例にまとめてあります。

自立支援医療の診断書は、書ける医療機関が限られます

自立支援医療(精神通院医療)は、通院にかかる医療費の自己負担を軽くする制度です。厚生労働省の資料では、対象となる方として統合失調症、うつ病・躁うつ病などの気分障害、ストレス関連障害や不安障害などが挙げられています。

申請に必要な書類のひとつが医師の診断書です。ここで気をつけたいのは、書いてもらえる医療機関に条件があることです。自立支援医療(精神通院医療)についてには、この制度による医療費助成を受けられるのは「指定自立支援医療機関」での医療に限られており、診断書を記載できるのも同様であると注記されています。今通っている病院や診療所が指定を受けているかどうかを、先に確認しておいてください。

様式は市町村等が用意しているもので、医療機関で入手できる場合もあります。「重度かつ継続」に該当する場合は様式が異なることもある、とも書かれています。

診断書が省略できる場合もあります。資料には、精神障害者保健福祉手帳と同時に申請する場合や、前年の申請で診断書を提出した場合など、省略できることがあると書かれています。更新についても、受給者証の有効期間は1年以内で、更新の申請はおおむね有効期間終了の3か月前から受付が始まり、病態や治療方針に変更がなければ2回に1回は医師の診断書の省略ができるとされています。ただし、どの場合に省略できるかは市町村や精神保健福祉センターに確認するよう促されている部分です。

制度の中身については自立支援医療制度で精神科の通院費を1割にする手順に書いています。

手帳の診断書は、初診日から6か月経ってからです

精神障害者保健福祉手帳の申請に使う診断書は、厚生労働省の精神障害者保健福祉手帳制度実施要領で「別紙様式2」として定められています。全国共通の様式です。

条件がひとつ書かれています。添える診断書は「精神障害に係る初診日から6か月を経過した日以後におけるものに限る」とされています。通い始めてすぐの時期には申請できないということです。診断書を記載する医師については、原則として精神保健指定医または精神科医とされ、てんかんの患者について内科医が主治医となっている場合のように、精神科以外でも精神障害の診断または治療に従事していると言える医師は含まれると説明されています。

様式の中身は、会社に出す診断書とはかなり性格が違います。

  • 病名(主たる精神障害、従たる精神障害、身体合併症)とICDコード
  • 初診年月日(主たる精神障害の初診年月日と、診断書を作成する医療機関の初診年月日の両方)
  • 発病から現在までの病歴および治療の経過、内容
  • 現在の病状、状態像等
  • 生活能力の状態(「保護的環境ではない場合を想定して判断する」と注記されています)
  • 日常生活能力の判定(食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買物、通院と服薬、他人との意思伝達・対人関係、身辺の安全保持・危機対応、社会的手続や公共施設の利用、趣味・娯楽への関心など8つの場面を4段階で評価します)
  • 日常生活能力の程度(5段階から1つを選びます)
  • 現在の障害福祉等のサービスの利用状況

病名だけでなく、生活のしかたを書く欄が大きいのが手帳の診断書です。等級は、精神疾患の状態とそれに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に判定するとされています。

なお、精神障害を支給事由とする障害基礎年金や障害厚生年金などを受けている場合は、年金証書等の写しを添える方法で申請でき、診断書は要りません。この場合は精神保健福祉センターにおける判定も行われず、年金における障害等級がそのまま手帳の等級として扱われます。ただし要領には、年金給付を受けている者であっても医師の診断書による申請によって手帳の交付を受けることができる、とも書かれています。

手帳の有効期限は2年で、更新の申請は有効期限の日の3か月前から行うことができます。要領には、有効期限を超過している場合も更新申請を行うことができる、とも書かれています。更新のたびに、また診断書を用意することになります。

時間の見通しも書いておきます。要領では、都道府県知事は市町村長が申請書を受理したときに、交付の可否の決定を申請書を受理した日から概ね1か月以内に行うことが望ましい、とされています。診断書ができあがってから手帳が届くまでに、さらに時間がかかるということです。急いで必要になったときに間に合う書類ではありませんので、使う予定があるなら早めに動くほうが確実です。

障害年金の診断書は、様式第120号の4です

障害年金の診断書は、日本年金機構が部位ごとに様式を分けていて、精神疾患では「精神の障害用」を使います。様式番号は様式第120号の4です。年金請求書などに添付します。

障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領の冒頭には、この診断書で日本年金機構が確認することとして「精神疾患による病態に起因する日常生活の制限の度合いを確認します」と書かれています。確認にあたっては、疾患名や病歴・治療経過・病状等の内容と日常生活能力に関する評価について、齟齬や矛盾がなく整合性があるかという点にも着目する、とも書かれています。

読者の側が知っておくと違うのは、次の2点だと思います。

ひとつは、日常生活能力の判定について様式に「判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください」と書かれていることです。記載要領も、支援が常態化した環境で生活が安定している場合であっても、単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定して記載するよう求めています。

もうひとつは時間の幅です。記載要領には、判定は診察時(来院時)の一時的な状態ではなく、現症日以前1年程度での障害状態の変動について、症状の好転と増悪の両方を勘案したうえで判断するものだと書かれています。調子のよい日に受診が重なることもありますから、悪いときにどうなるかを日ごろから伝えておくことに意味があります。

日本年金機構は、診断書を作成する前に必ず年金事務所等に相談するよう案内しています。理由として、障害年金の要件や使用する診断書の種類、診断書に記入する症状の日付を確認する必要があるためだと書かれています。先に医師へ依頼するのではなく、先に年金事務所に相談するという順番が案内されている、という点は覚えておいてください。

制度全体は精神疾患での障害年金にまとめています。

復職するときは、もう一度別の診断書が要ります

休職の入り口で出した診断書は、復職のときにはそのまま使えません。職場復帰支援の手引きでは、第2ステップとして、休業中の労働者から職場復帰の意思が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書(復職診断書)を提出するよう伝える、とされています。診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらうことが望ましい、とも書かれています。

同じ会社に出す書類でも、入り口の診断書は「休むことが必要だ」という判断を、出口の診断書は「戻れる」という判断と配慮の内容を書いてもらうものです。詳しくは復職の診断書に分けてあります。

傷病名の書かれ方は、書類のあいだでそろえておく

複数の手続きを並行して進めていると、書類ごとに傷病名の書かれ方が少し違う、ということが起こります。どの病名を書くかは医師の判断ですので、そこに口を出すことはできません。手続きの側から言えるのは、同じ手続きの中で名前がそろっているかどうかは確認しておいたほうがよいということだけです。

たとえば傷病手当金の申請書では、2ページ目に本人が傷病名と発病または負傷の年月日を書き、4ページ目に医師が労務不能と認めた傷病と発病または負傷の年月日を書きます。同じ項目が2か所に出てくる作りなので、ここが食い違うと確認に時間がかかります。4ページ目を依頼するときに自分の記入内容を見せておけば、たいてい防げます。

頼む順番をどう考えるか

一度にすべてを頼もうとすると、体調のよくない時期に負担が大きくなります。手続きの性質から言えば、順番はおおむね決まっています。

時期 用意する書類
休むと決めたとき 会社に出す診断書
休んだ期間が過ぎたあと 傷病手当金の支給申請書(4ページ目を医師に依頼します)
通院が続く見通しが立ったとき 自立支援医療の診断書
初診日から6か月を過ぎたあと 精神障害者保健福祉手帳の診断書
障害年金を考えるとき 先に年金事務所へ相談し、そのうえで診断書(精神の障害用)

傷病手当金の申請書と自立支援医療の診断書のように、時期が重なるものは同じ診察でまとめて頼んで構いません。ただし、書き上がるまでに日数がかかることがありますので、次の診察の予定と合わせて、いつ受け取れるかを聞いておくと予定が立てやすくなります。

診断書を出すことで不利になるのではないか、という心配についてはうつ病の診断書のデメリットに分けて書いています。

判断がつかないときの聞き先

どの様式が要るのかは、手続きの窓口がいちばん正確に答えられます。

  • 傷病手当金は、加入している健康保険(協会けんぽの支部、または健康保険組合)
  • 自立支援医療と精神障害者保健福祉手帳は、お住まいの市町村の担当窓口、または精神保健福祉センター
  • 障害年金は、年金事務所(診断書を作成する前に相談するよう案内されています)
  • 会社に出す診断書と復職の診断書は、会社の総務や人事の担当者

通院先に医療相談室や医療ソーシャルワーカーがいれば、どの書類をいつ頼むかの相談ができます。障害福祉のサービスをすでに使っているなら、支援員に一緒に整理してもらうこともできます。

診断書は1枚で全部をまかなう万能の紙ではありませんが、逆に言えば、必要になったときにそのつど頼めばよいものでもあります。今日の時点で全部そろえる必要はありません。目の前の手続きひとつ分だけ、どの様式が要るかを確かめるところから始めてください。

わたしたちは就労支援の現場で、制度の申請に必要な書類をそろえる場面に立ち会います。一枚の診断書で全部まかなえると思っていた、という行き違いは本当に多いです。書類が分かれているのは手続きが意地悪だからではなく、決めている役所も、聞かれていることも違うからです。必要になった順に一枚ずつで構いません。