適応障害と言われた。あるいは、まだ受診はしていないけれど、そうかもしれないと思っている。そういう状態で「適応障害 仕事」と検索する方が知りたいのは、たぶん病気の説明ではなく、この仕事をどうしたらいいのかということだと思います。
この記事は、続けろとも辞めろとも言いません。まだ決める段階ではないという前提で書いています。ここでお渡しするのは、道が三つあるということと、それぞれの道で何が起きるか、そして決める前に確かめておくと結果が変わることです。
先に一つだけ書いておきます。三つの道のうち、いちばん情報が届いていないのは「いまの会社で働き方を変える」という道です。しかも、この道の根拠になる仕組みは令和8年4月に変わったばかりです。ここをいちばん詳しく書きます。
道は三つあります
適応障害と言われたあと、選べる道
三つのどれかを今日決める必要はありません。ただ、どの道を選ぶかによって、先にやっておくべきことが変わります。たとえば辞めることを考えているなら、退職の前に休職と傷病手当金の手続きを済ませておくかどうかで、退職後に手元に残るものが変わります。これはあとから取り返せません。
続けながら働き方を変える道は、令和8年4月に根拠ができました
いままで、体調を崩した人が会社に配慮を求める根拠は、はっきりしませんでした。ここが変わっています。
事業主の努力義務になりました
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)に、第8章「治療と就業の両立支援」という章が置かれました。その第27条の3第1項は、次のように定めています。
事業主は、疾病、負傷その他の理由により治療を受ける労働者について、就業によつて疾病又は負傷の症状が増悪すること等を防止し、その治療と就業との両立を支援するため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
語尾は「努めなければならない」です。守らなければ罰則がある種類の義務ではありません。それでも、相談に応じる体制を整えることが、法律上の事業主の努めとして書かれているという事実は、話を始めるときの足場になります。
同じ条の第2項に基づいて、厚生労働省は治療と就業の両立支援指針を令和8年2月10日に告示し、令和8年4月1日から適用しています。これ以前は「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」という名前の文書でしたが、告示という形の指針に置き換わりました。古い名前で検索すると出てくる資料がありますが、いま見るべきなのは新しい指針のほうです。
指針が対象にしている疾病
指針が対象とする疾病は、国際疾病分類に掲げられている疾病であって、医師の診断により、増悪の防止等のため反復・継続して治療が必要と判断され、かつ、就業の継続に配慮が必要なものとされています。がんや脳卒中に限る、といった書き方はされていません。雇用形態にかかわらず労働者すべてを対象とする、とも明記されています。
そのうえで厚生労働省は、この枠組みの中でメンタルヘルス不調者の主治医向け支援マニュアルを別に出しています。その冒頭には、事業所にメンタルヘルス対策の経験がない場合などに、適切な配慮があれば就業を続けられたであろう人が、配慮を受けられなかったために不本意に休業や離職に至ることが少なくないと考えられる、と書かれています。国の側も、配慮の不足で辞めてしまう人がいることを前提にして、この仕組みを作っているということです。
会社に頼めることは、二つに分かれます
指針は、会社が行うものを二つの言葉で呼び分けています。ここを分けて覚えておくと、話が通じやすくなります。
| 呼び方 | 中身として指針が挙げているもの |
|---|---|
| 就業上の措置 | 就業場所の変更、作業の転換(業務内容の変更)、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など |
| 治療に対する配慮 | 通院時間の確保、休憩場所の確保など |
そして指針の「安全と健康の確保」という項目に、次の一文があります。
したがって、業務の繁忙等を理由に必要な就業上の措置及び治療に対する配慮を行わないことはあってはならない。
もう一か所、覚えておいてよい記述があります。措置を検討するときの留意事項として、疾病のり患をもって安易に就業を禁止せず、主治医や産業医等の意見を勘案し、可能な限り配置転換、作業時間の短縮その他の必要な措置を講じて就業の機会を失わせないよう留意すると書かれています。病気だから働かせない、という結論に先に行かないこと、が指針の立場です。
会社が用意していれば使える制度
指針は、環境整備の項目で、休暇制度と勤務制度を具体的に列挙しています。いずれも、法律が全社に義務づけているものではありません。会社が自主的に設けるかどうかで決まります。
| 制度 | 指針の説明 |
|---|---|
| 時間単位の年次有給休暇 | 年次有給休暇は1日単位が原則だが、労使協定の締結により、年5日の範囲内で1時間単位の付与が可能になる |
| 傷病休暇・病気休暇 | 事業主が自主的に設ける法定外の休暇。取得条件や取得中の賃金の扱いは事業場ごとに異なる |
| 時差出勤制度 | 始業・終業の時刻を変えて、身体に負担のかかる通勤時間帯を避ける |
| 短時間勤務制度 | 療養中または療養後の負担を軽減する目的で所定労働時間を短縮する |
| 在宅勤務制度 | 情報通信機器を使い自宅で勤務することで、通勤による負担を軽減する |
| 試し出勤制度 | 長期間休業していた人の復帰を支援するため、勤務時間や勤務日数を短縮して試しに出勤する |
この一覧は、後で出てくる勤務情報の様式例の「利用可能な制度」欄とそのまま同じ並びになっています。つまり、主治医に渡す書類の中で、自分の会社にどれがあるかを一つずつ確認することになります。就業規則を先に見ておく理由がここにあります。
頼み方には順番があります
指針は、両立支援の進め方を段階に分けて書いています。順番を飛ばすと話が進まないので、先に全体を見ておいてください。
治療と就業の両立支援指針が示している進め方
- 1本人が会社に申し出る私傷病に関わることなので、本人からの申出が出発点になると指針に書かれている
- 2勤務の情報を主治医に渡す会社が定める様式などを使い、仕事の内容・勤務時間・通勤・使える制度を主治医に伝える
- 3主治医の意見をもらって会社に出す症状と治療の状況、就業継続の可否、望ましい就業上の措置、治療への配慮の4点について意見をもらう
- 4会社が産業医等の意見を聴いて決める産業医等がいない会社では主治医の情報を参考にする。決めるのは会社だが、本人から希望を聴き、十分な話合いを通じて了解を得るよう努めることとされている
出発点が本人の申出だ、という点は覚えておいてください。会社が気づいて動いてくれるという設計にはなっていません。同時に指針は、申出が行いやすいように、事業場内ルールの作成と周知、研修による意識啓発、相談窓口と情報の取扱方法の明確化といった環境整備を会社に求めています。言い出しにくい状態そのものが、会社側の課題として書かれているということです。
主治医に渡す書類には、何を書く欄があるか
厚生労働省は勤務情報を主治医に提供する際の様式例を公開しています。実際に開いてみると、次の欄があります。
- 従業員氏名、生年月日、住所
- 職種(事務職、自動車の運転手、建設作業員など)
- 職務内容(作業場所・作業内容)。あわせて、体を使う作業(重作業・軽作業)、長時間立位、暑熱場所、寒冷場所、高所作業、車の運転、機械の運転・操作、対人業務、遠隔地出張、海外出張、単身赴任のチェック欄
- 勤務形態(常昼勤務、二交替勤務、三交替勤務、その他)
- 勤務時間(始業と終業、休憩、週何日)と、時間外・休日労働の状況、出張の状況
- 通勤方法(徒歩、公共交通機関で着座できるかできないか、自動車など)と通勤時間
- 休業可能期間、給与支給の有無、傷病手当金の割合、年次有給休暇の残日数
- 利用可能な制度(時間単位の年次有給休暇、傷病休暇・病気休暇、時差出勤制度、短時間勤務制度、在宅勤務、試し出勤制度)
- 会社で選任されている産業医等(産業医、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、保健師)
最後に、本人の署名欄と会社名の欄があります。この紙は、会社と本人が一緒に埋めることが想定されている書類です。指針も、本人から相談があった場合には、産業保健スタッフや人事労務担当者がこの書面の作成を支援することが望ましいとしています。
チェック欄に「対人業務」が並んでいることに注目してください。診断名から仕事の向き不向きを決めるのではなく、いま自分がしている仕事にどういう条件が含まれているかを、項目に沿って書き出すという作りになっています。自分の職務内容を上から順に当てはめていくだけで、主治医に渡す材料ができます。
主治医が書く意見書には、何を書く欄があるか
もう一方の主治医の意見を求める際の様式例には、次の欄があります。
| 欄 | 書かれること |
|---|---|
| 病名 | 診断名 |
| 現在の症状 | 通勤や業務遂行に影響を及ぼし得る症状や薬の副作用等 |
| 治療の予定 | 入院治療・通院治療の必要性、今後のスケジュール |
| 退院後/治療中の就業継続の可否 | 可/条件付きで可(就業上の措置があれば可能)/現時点で不可(療養の継続が望ましい) |
| 望ましい就業上の措置 | 残業を避ける、長期の出張や海外出張は避ける、といった例が様式に印字されている |
| 治療に対する配慮事項 | 通院時間を確保する、休憩場所を確保する、といった例が印字されている |
| 上記の措置期間 | いつからいつまでか |
就業継続の可否の欄が三択になっていて、真ん中に「条件付きで可」が置かれていることが、この様式のいちばん大事なところだと思います。働けるか働けないかの二択ではなく、条件を付ければ働けるという答えが、最初から用意されています。
様式の下部には、注意書きが二つ印字されています。一つは、この書類は患者本人から会社に提供され、プライバシーに十分配慮して管理されるということ。もう一つは、就業継続の可否や具体的な配慮は主治医の意見をもとに産業医等の意見を勘案しつつ、労働者と十分話し合った上で事業者が最終的に決定するということです。決めるのは会社だと様式そのものに書いてあります。
主治医は、あなたの職場を見たことがありません
主治医向けのマニュアルには、精神疾患について、主治医が把握できるのは主に患者から見た職場環境等であることに留意が必要だ、と書かれています。診察室で話したことが情報のすべてです。
だから、勤務情報の様式例を先に埋めて渡す意味があります。何時から何時まで働いていて、通勤にどれくらいかかっていて、月に何時間残業があって、どの業務がいちばんつらいのか。それが伝わっていない状態で書かれた意見書は、職場の実態とずれた内容になりやすくなります。
同じマニュアルは、異動の必要性についても率直に書いています。企業はまず慣れている元の職場への復帰から検討するが、職場の人間関係や業務内容への不適応が要因となっている可能性がある場合などでは、本人や上司、同僚、主治医等から情報を十分に集めて、異動を含めた配置先を慎重に検討することになる、という説明です。復職の場面での配置転換については、適応障害で休職した人は、同じ職場に戻るのかに国の手引きの原文を引いてまとめてあります。
会社に義務があるものと、ないもの
ここが、この記事でいちばん正直に書いておきたいところです。「異動を申し出れば認められます」とは書けません。応じる義務があるものと、ないものが分かれているからです。
| 求めること | 会社の側の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 治療と就業の両立について相談に応じる体制を整える | 努力義務 | 労働施策総合推進法第27条の3第1項 |
| 産業医等が健康相談に応じるための体制を整える | 努力義務 | 労働安全衛生法第13条の3 |
| 産業医への健康相談の申出の方法を労働者に周知する | 義務(産業医を選任している事業場) | 労働安全衛生法第101条第2項、労働安全衛生規則第98条の2第2項 |
| ストレスチェックで高ストレスと判定された人が申し出たときの医師の面接指導 | 義務。申出を理由とする不利益な取扱いも禁止 | 労働安全衛生法第66条の10第3項 |
| 時間外・休日労働が月80時間を超え疲労の蓄積が認められる人が申し出たときの面接指導 | 義務。遅滞なく行う | 労働安全衛生法第66条の8第1項、労働安全衛生規則第52条の2・第52条の3 |
| 面接指導のあと、医師の意見を勘案し必要と認めるときの就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等 | 義務。ただし「必要があると認めるとき」という条件が付く | 労働安全衛生法第66条の8第5項、第66条の10第6項 |
| 心身の条件に応じた適正な配置 | 努力義務 | 労働安全衛生法第62条 |
| 健康情報を本人の同意なく取得しない | 指針が原則として禁止。情報の適正な管理も義務 | 治療と就業の両立支援指針、労働安全衛生法第104条 |
| 就業規則を労働者に周知する | 義務 | 労働基準法第106条 |
| 異動・配置転換の希望に応じる | 義務ではありません | 就業規則の人事異動の規定は、会社が命じる側の定めです |
| 短時間勤務・時差出勤・在宅勤務・傷病休暇・試し出勤の制度を設ける | 義務ではありません | 事業主が自主的に設ける制度だと指針に明記されています |
| 休職制度を設ける | 義務ではありません | 労働基準法に休職の定めはありません |
配置転換は、会社が命じる側の仕組みです
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、人事異動の条をこう示しています。
会社は、業務上必要がある場合に、労働者に対して就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。
解説では、労働者を採用した後に会社が業務上の理由から就業場所や従事する業務を変更することは、変更がない旨の特別な合意等がない限り可能だとされています。異動は会社の権限として書かれていて、労働者が請求できる権利としては書かれていません。そのうえで解説は、労働者の意に沿わない変更を命じるとトラブルが生じ得ること、労働者の同意を得るようにすることが大切であることにも触れています。
つまり、異動を希望として伝えることはできますが、通るかどうかは会社の判断になります。ここを「頼めば通る」と書いてある記事を見かけたら、根拠を確かめてください。
一方で、会社が一方的に決めてよいわけでもありません
指針は、措置等の検討と実施の項目で、労働者に対する措置等を事業主が一方的に判断しないようという書き出しで三つの取組を求めています。就業継続の希望や配慮の要望を聴取し、十分な話合い等を通じて労働者本人の了解を得られるよう努めること。安易に就業を禁止しないこと。疾病やその治療に対する誤解や偏見等が生じないよう関係者が配慮すること。この三つです。
法律の一般的な枠としては、労働契約法第5条が、使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする、と定めています。安全配慮義務と呼ばれるものです。ただし条文は「必要な配慮」としか書いておらず、具体的に何をすべきかは書かれていません。この条文だけを持ち出しても話は動きにくいので、具体的な措置の話は指針と労働安全衛生法の側から進めるほうが実際的です。
ストレスチェックは、使える入口の一つです
すでに受けたストレスチェックの結果が手元にあるなら、そこが入口になります。厚生労働省のストレスチェックの説明ページによれば、次のことを理由に不利益な取扱いを行うことは禁止されています。ストレスチェックを受けないこと、結果の事業者への提供に同意しないこと、面接指導の申出を行ったこと、面接指導の申出を行わないことの四つです。さらに、面接指導の結果を理由として、解雇、雇い止め、退職勧奨、不当な動機・目的による配置転換・職位の変更を行うことは禁止されています。
面接指導を実施する医師には、事業者からあらかじめ勤務状況(労働時間、労働密度、深夜業の回数と時間数、作業態様や作業負荷の状況など)と職場環境の情報が提供されることになっています。主治医に勤務情報を渡すのと同じ構造です。
なお、ストレスチェックの実施が義務なのは、産業医の選任義務がある事業場(常時50人以上)です。それ以外の事業場では、当分の間、努力義務とされています。
就業規則のどこを見るか
どの道を選ぶにしても、先に見ておくと選択肢が変わるのが就業規則です。労働基準法第106条は、使用者に就業規則を労働者へ周知させることを義務づけています。見せてもらえないものではありません。人事や総務に「就業規則を確認したい」と伝えれば足ります。
見る場所は四つです。
1. 人事異動の条
配置転換や勤務地の変更について、どう書かれているか。会社が命じる形なのか、本人の申出の手続きが用意されているのか。ここを読んでおくと、話をどこに持っていけばよいかが分かります。
2. 休職の条
休職できる条件、休職できる期間、期間が満了したときにどうなるか。モデル就業規則の規定例では、休職期間が満了しても傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とするという形が示されています。期間の終わりがいつになるのかを、日付として把握しておいてください。あわせて、休職期間中に休職事由が消滅したときは原則として元の職務に復帰させるが、元の職務に復帰させることが困難または不適当な場合には他の職務に就かせることがある、という規定例も示されています。
3. 休暇の条
年次有給休暇を時間単位で取れる仕組みがあるかどうかと、病気休暇の定めがあるかどうか。通院のたびに1日休むのと、2時間だけ抜けるのとでは、続けられるかどうかが変わることがあります。
4. 安全衛生の条
面接指導とストレスチェックについて、どう書かれているか。モデル就業規則の規定例では、面接指導の結果、必要と認めるときは就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を命ずることがある、という形になっています。
なお、労働基準法第89条が就業規則の記載事項として挙げているものの中に、休職は単独では出てきません。会社が定めを置く場合に書かれる種類のもので、休職制度がない会社もあるということです。休職そのものの位置づけは休職とは何かにまとめてあります。
労働条件通知書の「変更の範囲」も見てください
もう一つ、手元にあるかもしれない書類があります。採用のときに受け取った労働条件通知書です。
労働基準法施行規則第5条は、明示しなければならない労働条件の一つとして「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」を挙げ、括弧書きで「就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む」としています。厚生労働省の労働条件の明示の説明によれば、ここでいう変更の範囲とは、雇入れ直後にとどまらず、将来の配置転換など今後の見込みも含めた、契約期間中における変更の範囲を指します。
自分の契約で業務や勤務地がどこまで変わりうることになっているのかは、配置転換の話をするときの前提になります。範囲が広く書かれているなら移れる先が多いということですし、職種や勤務地が限定されているなら別の考え方が必要になります。手元の書類を出して、この欄を確かめてみてください。
いったん休む道
働き方を変えても難しいとき、あるいは、いまはもう調整の話し合いをする体力がないというときは、休むという道があります。
指針も、長期の休業が必要と判断した場合の手順を定めています。会社は労働者に対して、休業に関する制度(賃金の取扱いと手続を含む)、休業可能期間、職場復帰の手順について情報提供を行うことになっています。休業中は、あらかじめ定めた連絡方法で連絡を取り、相談できる窓口を明確にすることが重要だともされています。
実際の始め方は三つです。医師に診断書を書いてもらうこと、就業規則の該当箇所を確認すること、会社に伝えること。この順番と、それぞれの中身は休職の手続きと過ごし方にまとめました。診断書の頼み方は診断書のもらい方にあります。
休職中の生活費については、健康保険から傷病手当金を受け取れる場合があります。受け取れるかどうかの条件は傷病手当金の条件は4つに、休職中に手元に入るお金の全体像は休職中にもらえるお金にあります。ここでは深追いしません。
辞める、変える道
辞めるという選択肢も、はじめから外す必要はありません。ただ、この道には順番の問題があります。
先に休職して傷病手当金を受け始めてから退職するのと、何もしないまま退職するのとでは、退職後に受け取れるものが変わります。健康保険法にそう書かれているためで、順番を逆にすると、あとから取り返すことができません。退職の前に確認しておくことと、退職という手続きがいつ成立するのかは、適応障害で退職を考えているときに条文から整理しています。辞めることを少しでも考えているなら、退職届を書く前にそちらを読んでください。
転職活動の具体的な進め方は、この記事では扱いません。ここで書いておきたいのは、働き方を変える先は、いまの会社の外にもあるし、中にもあるということだけです。
背景に長時間労働やハラスメントがあるとき
もし不調の背景に、長時間労働やハラスメントがあるなら、話の筋が変わります。働き方の調整として処理してしまうと、原因のほうが職場に残ります。
ハラスメントについては、相談窓口の設置を含む防止措置が事業主に義務づけられています。社内で相談しにくい場合の外部の窓口を含め、パワハラの相談先にまとめました。仕事が原因で不調になった場合の労災の考え方は適応障害で労災は認められるのかにあります。
決める前に、確認しておくこと
道を選ぶ前に確かめておくと結果が変わるものを、五つに絞ります。全部を今日やる必要はありません。
1. 就業規則の休職の条で、期間の終わりがいつになるかを確かめる
これだけは早いほうがよいです。日付が分かると、それまでに何を決めればよいかが決まります。
2. 自分の会社にどの制度があるかを確かめる
時間単位の年次有給休暇、傷病休暇、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務、試し出勤の六つです。勤務情報の様式例のチェック欄と同じ並びなので、そのまま主治医に渡す材料になります。
3. 産業医がいるかどうかと、健康相談の申出の方法を確かめる
いなければ、人事に「体調のことで相談したい」と伝えるところから始まります。
4. 主治医に、職場の状況を具体的に伝える
勤務時間、通勤、業務の内容、いまつらい場面。この四つが伝わっているかどうかで、意見書の中身が変わります。次の診察のときに、勤務情報の様式例を印刷して持っていくのが早いです。
5. 傷病手当金を受け始めているかどうかを確かめる
これは辞めることを考えている場合に効いてきます。受け始めていないなら、退職の話はそのあとでも遅くありません。
相談できるところ
会社の中に話せる相手がいないときの窓口を挙げておきます。
働く人のこころの耳電話相談(厚生労働省)は、働く方とその家族、企業の人事労務担当者を対象にしたフリーダイヤルです。番号は0120-565-455で、平日(月曜日から金曜日)は17時から22時まで(受付は21時50分まで)、土曜日と日曜日は10時から16時まで(受付は15時50分まで)です。祝日、振替休日、年末年始は除きます。病名の診断や治療方法の提示、法令違反やハラスメントに該当するかどうかの判断はできない窓口ですが、いまの状況を人に話して整理するために使えます。こころの耳の相談窓口案内には、電話のほかにSNS相談とメール相談も載っています。
総合労働相談コーナー(厚生労働省)は、都道府県労働局や労働基準監督署の中などにある窓口です。案内のページによると全国378か所にあり、解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせ、パワハラなど、あらゆる分野の労働問題を対象としています。専門の相談員が面談または電話で対応し、利用は無料で予約もいりません。「配置転換をお願いしたのですが、こう言われました」という状態の相談にも使えます。
指針の別添3には、両立支援に使える機関の一覧があります。労働者が使えるものとしては精神保健福祉センターと保健所が挙げられているほか、全国9か所の労災病院に併設された治療就労両立支援センターが、医療ソーシャルワーカーや公認心理師等を配置して、メンタルヘルスを含むすべての疾病について治療と仕事の両立支援を行っていると書かれています。都道府県の産業保健総合支援センターは事業者向けの支援機関として整理されていますが、その業務の中に労働者(患者)と事業主の間の個別調整支援が挙げられています。会社との間に人を挟みたいときに、この一行を知っていると相談の仕方が変わります。
今日は、決めなくて構いません
読み終えて、確かめることが多いと感じたかもしれません。全部を今日やる必要はありませんし、続けるか休むか辞めるかを今日決める必要もありません。決めておいたほうがよいのは、結論ではなく材料のほうです。いまの仕事のどの条件がつらいのか。就業規則にどの制度があるのか。主治医は自分の職場のことをどこまで知っているのか。この三つは、どの道を選ぶことになっても必ず要ります。
そして、働き方を変えるという道が制度として用意されていることは、知っておいて損はありません。令和8年4月からは、相談に応じる体制を整えることが事業主の努めとして法律に書かれました。応じる義務があるものとないものは分かれますが、相談すること自体は、手順の中に最初から組み込まれています。今日のところは、就業規則のありかを人事に聞いておく。それだけでも一歩です。
わたしたちは就労支援の現場で、続ける・休む・変えるの三つの間で止まってしまった方に会います。決めきれないのは、どれを選んでも失うものが見えているからで、判断力の問題ではないと思います。家族の意見と自分の気持ちが食い違って、余計に動けなくなることもあります。先に材料を揃えるという順番は、決断の先送りではなく、この指針が定めている手順そのものです。
