休職について調べていると、書いてあることがサイトごとに違って戸惑うと思います。期間が1年と書かれているところもあれば3年と書かれているところもあり、給与が出ると書かれているところも出ないと書かれているところもあります。どれが正しいのか分からなくなって、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
ばらつきには理由があります。休職は、法律で全国一律に決められた制度ではないからです。厚生労働省が公表しているモデル就業規則の解説には、休職の定義や休職期間の制限、復職などについて労働基準法に定めはない、とはっきり書かれています。
この記事では、制度としての休職がどこに位置づけられているのかだけを整理します。実際に休職するときに何をどの順番でやるかは休職の手続きと過ごし方にまとめてあるので、ここでは触れません。今は「そもそも休職とは何なのか」を落ち着いて把握するところまでで十分です。
休職とは、労働契約を残したまま働く義務が止まることです
まず定義からです。中央労働委員会のメンタルヘルス不調による傷病休職後の復職の可否(個別労働紛争のあっせん事例)のなかで示されている説明が、いちばん分かりやすいと思います。休職とは、ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対して労働契約そのものは維持させながら、労務への従事を免除または禁止することだとされています。
厚生労働省のモデル就業規則も、ほぼ同じ説明をしています。業務外での疾病など、主に労働者側の個人的な事情によって相当長期間にわたり就労を期待できない場合に、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いだという書き方です。
ここで押さえておきたいのは、二つの言葉が組み合わさっている点です。ひとつは「労働契約は維持される」ということ、もうひとつは「就労義務が免除される」ということです。契約は続いているので、会社との関係は切れていません。そのうえで、働かなければならないという義務のほうだけが、いったん外れています。
休職を考えている方の多くが、会社を離れることのように感じて踏み切れずにいます。けれど制度の設計としては、在籍したまま義務だけを止めるものです。辞めることとは別の扱いだと、まず知っておいてください。
法律には「休職」の中身が書かれていません
ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)は、会社が就業規則を作るときの見本として公表されているものです。その第9条が休職の規程例で、解説の3番目にこう書かれています。休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労基法に定めはありません。
つまり、労働基準法をどれだけ読んでも、休職が何か月とれるのか、その間に給与が出るのか、期間が終わったらどうなるのかという答えは出てきません。国が決めていないからです。
これは、働くことに関する他の休みと比べるとはっきりします。年次有給休暇は労働基準法第39条が日数まで定めていますし、会社側の都合で休ませる場合の休業手当は同法第26条が平均賃金の6割以上と定めています。産前産後の休業や育児休業も、それぞれの法律に根拠があります。これらは法律が中身まで決めている休みですが、休職はそうではありません。
もうひとつ知っておくとよいのが、休職制度を設けること自体が会社の義務ではないという点です。労働基準法第89条は、就業規則に必ず書かなければならない事項を並べていますが、そこに休職は入っていません。休職の定めを置くのであれば就業規則に書く必要がありますが、置かないという選択もできます。加えて、就業規則の作成と届出が義務づけられているのは常時10人以上の労働者を使う会社です。それより小さい会社では、就業規則そのものがないこともあります。
「休職制度がない会社は違法なのではないか」と感じるかもしれませんが、そうではありません。だからこそ、他の人の体験談や一般的な解説ではなく、自分の勤め先の規定を確認することが必要になります。
休職・欠勤・休業・休暇は、どう違うのか
言葉が似ているので、ここで整理しておきます。制度としては別のものです。
| 言葉 | どういう状態か | 根拠がどこにあるか |
|---|---|---|
| 欠勤 | 働く義務がある日に働かなかった状態。義務そのものは残っている | 手続きは会社の就業規則。働かなかった分の賃金は差し引かれるのが原則 |
| 休職 | 労働契約を残したまま、働く義務が一定期間免除されている状態 | 会社の就業規則。労働基準法に定めはない |
| 休業 | 働けない、または働かせない状態を指す言い方。会社側の都合による休業や、産前産後休業・育児休業などが含まれる | 会社都合の休業は労働基準法第26条、産前産後や育児介護はそれぞれの法律 |
| 休暇 | もともと働く義務がある日について、その義務が免除される日 | 年次有給休暇は労働基準法第39条。慶弔休暇や病気休暇は会社が任意で設けるもの |
欠勤と休職の違いが、いちばん分かりにくいところだと思います。欠勤は義務が残ったまま働かなかった状態で、休職は義務そのものがいったん止まっている状態です。同じように会社に行っていなくても、契約上の意味が違います。
実際の流れとしては、この二つはつながっています。モデル就業規則の第9条は、業務外の傷病による欠勤が一定の月数を超え、なお療養を続ける必要があるために勤務できないときに休職とする、という書き方をしています。まず欠勤があり、それが一定期間を超えたところで休職に切り替わるという順番です。多くの会社の規定もこの形になっています。
なお、厚生労働省の職場復帰支援の手引きなど、行政の資料では病気で休むことを「病気休業」と呼んでいる場面があります。会社の就業規則上の扱いとしての「休職」と、状態を指す言葉としての「休業」が、資料によって混ざって出てきます。読むときに混乱しやすいところなので、頭の片隅に置いておいてください。
就業規則の「休職」には、何が書かれているのか
では、会社の就業規則には何が定められているのでしょうか。モデル就業規則を見ると、休職に関する定めが第9条だけでなく、いくつかの条文に分かれて置かれていることが分かります。おおよそ次の6項目です。
1つめは、どういうときに休職になるか(休職事由)です。 モデル就業規則の第9条は、業務外の傷病による欠勤が一定期間を超えて療養が必要な場合と、そのほか特別な事情があり休職させることが適当と認められる場合の二つを挙げています。
2つめは、どのくらいの期間休職できるかです。 モデル就業規則では期間の数字が空欄になっていて、会社が記入する形になっています。長さは会社ごとに違い、勤続年数によって変わる例もあります。実際にどのくらいが多いのかは、休職期間はどのくらいとれるのかで別に扱います。
3つめは、休職している間の賃金の扱いです。 モデル就業規則では第43条第3項に置かれていて、原則として賃金を支給しないという書き方と、一定期間まで何割かを支給するという書き方の両方が用意されています。解説にも、無給とするか有給とするかは各事業場で決めて就業規則に定めるように、と書かれています。休職中のお金の見通しについては、休職中の給与はどうなるかにまとめています。
4つめは、休職の事由がなくなったときの扱いです。 モデル就業規則の第9条第2項は、休職期間中に休職事由が消滅したときは原則として元の職務に復帰させる、としています。元の職務に戻すことが困難または不適当な場合には、他の職務に就かせることがある、とも書かれています。
5つめは、休職期間が満了しても復職できないときの扱いです。 モデル就業規則の第9条第3項は、傷病が治らず就業が困難な場合は休職期間の満了をもって退職とする、という規程例になっています。同じ内容が退職の条文(第52条)にも重ねて置かれています。読むのがつらい項目ですが、休職制度の中でいちばん効いてくるところです。
6つめは、休職期間を勤続年数に入れるかどうかです。 モデル就業規則の退職金の条文(第55条第2項)には、休職する期間については会社の都合による場合を除いて勤続年数に算入しない、という規程例が置かれています。ここも会社ごとに違います。
このほか、厚生労働省の職場復帰支援の手引きでは、私傷病による休業の最長期間や、いったん復職してから同じ理由で再び休むときに前回の期間を通算しないための「クーリング期間」を定める場合には、あらかじめ就業規則等に定めて周知しておくことが望ましいとされています。一度復職したあと再発したときにどう数えるかまで想定して規定が置かれている会社もある、ということです。
休職には、いくつか種類があります
「休職」と一語で呼ばれていますが、中身の違うものが同じ名前で括られています。
病気やけがを理由とするものは私傷病休職(傷病休職)と呼ばれます。この記事を読んでいる方の多くが関わるのは、これだと思います。中央労働委員会の資料でも、業務外の傷病による長期の欠勤が一定期間に及んだときに行われるものだと説明されています。
それ以外もあります。モデル就業規則の第9条第1項第2号にある「特別な事情」について、解説は公職への就任や、刑事事件で起訴された場合を例に挙げています。刑事事件で起訴されたことを理由とするものは起訴休職と呼ばれます。中央労働委員会の資料では、主なものとして傷病休職と事故欠勤休職が挙げられています。自分の都合で長期に休むことを理由とする休職を設けている会社もあります。
種類の違いは、扱いの違いにつながります。中央労働委員会の資料は一般的な傾向として、本人の都合や本人の責任による休職の場合は賃金が支給されず、勤続年数への算入も行われないか低い比率にとどまるのに対し、会社の都合による休職の場合は内容に応じて賃金が支給され、勤続年数への算入も高い比率で行われると説明しています。
自分の会社の規定を読むときには、休職の条文にいくつの号が並んでいるか、自分がどれに当たるのかを見てください。同じ「休職」でも、どの号に当たるかで賃金や勤続年数の扱いが変わることがあります。
私傷病休職の趣旨は、解雇を猶予することです
制度の位置づけを知るうえで、避けて通れない話があります。裁判例が私傷病休職をどう位置づけてきたか、という点です。
中央労働委員会の資料は、裁判例が休職制度の趣旨を、使用者が解雇を猶予して傷病の回復を待つことによって労働者を失職から保護することにあると解してきたと説明しています。同じ資料の別の箇所には、この制度の目的は解雇猶予である、とも書かれています。
「解雇猶予」という言葉は、初めて見るとぎくりとすると思います。ただ、この言葉の向きを間違えないでください。猶予されているのは会社の側です。 働けない状態が続けば契約を続ける理由がなくなるところを、一定期間は待つという形にして、その間の身分を守る。それが休職という仕組みの成り立ちです。
だから休職は、罰でも、恩情でもありません。回復のための時間を制度として確保するものです。そう理解しておくと、休職を申し出ることへの抵抗が少し軽くなるのではないかと思います。
法律に定めがないことは、会社が自由に決めてよいという意味ではありません
ここは誤解が生まれやすいところなので、はっきり書いておきます。休職の中身が就業規則で決まるからといって、会社が何をしてもよいわけではありません。休職をめぐる場面には、いくつもの法律が別の角度からかかっています。
安全配慮義務があります。 労働契約法第5条は、使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとすると定めています。休職や復職の場面でも、この義務は消えません。
解雇には制限があります。 労働契約法第16条は、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には権利の濫用として無効になると定めています。就業規則に「期間満了で退職とする」と書いてあれば自動的にすべて有効になる、という話ではありません。
裁判例は、会社側に検討する義務があるとしてきました。 中央労働委員会の資料によれば、傷病休職期間の満了時に、従前の業務に復帰できる状態ではないけれども、より軽い業務になら就くことができ、そのような業務での復職を希望している人に対しては、使用者は現実に配置可能な業務の有無を検討する義務があるとされています。そうした検討をせずに退職扱いや解雇を行った場合、無効とされた例もあります。
就業規則を知らせることも会社の義務です。 労働基準法第106条は、就業規則を見やすい場所に掲示するか備え付けるか、書面を交付するなどの方法で労働者に周知させなければならないと定めています。「休職の規定を確認したい」と申し出るのは、当然に認められている求めです。
法律が決めていないのは休職の中身であって、会社と働く人の関係そのものではありません。この区別をつけておくと、規定を読んだときに落ち着いて判断できます。
業務が原因の病気やけがは、扱いの前提が違います
もうひとつ整理しておきたいことがあります。ここまで説明してきた私傷病休職は、業務が原因ではない病気やけがを前提にしています。モデル就業規則の第9条も「業務外の傷病による欠勤」と書いています。
業務が原因の場合は、法律の側に定めがあります。労働基準法第19条は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかって療養のために休業する期間と、その後30日間について、原則として解雇してはならないと定めています。私傷病休職のように期間が満了したら退職、という組み立てとは前提が違います。
自分の不調が業務によるものかどうかは、自分では判断がつきにくいところですし、最終的には労働基準監督署が判断します。ただ、長時間労働やハラスメントに心当たりがある場合には、私傷病休職として処理される前に相談しておく価値があります。労働基準監督署や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーが窓口になります。
公務員の休職は、法律に根拠があります
民間で働く方には直接は関係しませんが、検索すると公務員向けの説明が混ざって出てくるので、違いに触れておきます。
国家公務員については、国家公務員法第79条が、心身の故障のため長期の休養を要する場合と、刑事事件に関し起訴された場合に、本人の意に反して休職にできると定めています。第80条には休職の効果が定められていて、休職者は職員としての身分を保有するが、職務に従事しないと書かれています。休職事由が消滅したときは休職は当然に終了する、ともあります。
地方公務員については、地方公務員法第28条第2項が同じように、心身の故障のため長期の休養を要する場合と、刑事事件に関し起訴された場合を挙げています。同法第27条第2項は、法律または条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して休職されることはないと定めています。手続きや効果は条例で定めることになっています(第28条第3項)。
こうして並べると、民間との違いがはっきりします。公務員の休職は法律と条例に根拠がありますが、民間の休職は会社の就業規則に根拠があります。 公務員向けの記事に書かれている期間や手続きは、民間で働く方には当てはまりません。検索結果を読むときは、どちらの話なのかを確かめてください。
有期契約や試用期間中はどうなるのか
契約社員やパート、あるいは入ったばかりの立場で不調になった方にとっては、ここがいちばん気になるところだと思います。正直に書くと、一律の答えはなく、会社の規定によります。そのうえで、確認できることを並べます。
厚生労働省のモデル就業規則は、パートタイム労働者の就業に関する事項を本体とは別に定める形をとっています。解説でも、パートタイム労働者等について規程の一部を適用除外にする場合や全面的に適用除外にする場合には、就業規則本体にその旨を明記し、別の就業規則を作成しなければならないと説明されています。正社員には休職制度があるのに、パートや契約社員には適用されないという状態が、制度上ありうるということです。
ただし、それを確かめる手がかりがあります。パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム労働者や有期雇用労働者と通常の労働者との間で待遇に違いがある場合、本人から求められたときには相違の内容と理由を説明しなければならないとされています。休暇を含めた待遇全般が対象です。「自分にも休職の制度がありますか、ない場合はなぜですか」と聞くことは、制度として想定されている行為です。
有期契約の場合にもうひとつ考えておきたいのが、契約期間との関係です。休職期間の途中で契約期間の満了が来ることがあります。就業規則の休職の条文だけでなく、契約書に書かれた契約期間と更新の基準もあわせて見ておく必要があります。
試用期間中については、モデル就業規則の第9条に試用期間中の人を除くという定めは置かれていません。ただし実際の会社の規定でどうなっているかは別の話なので、確認が必要です。試用期間についてはっきりしていることは、試用期間中であっても14日を超えて雇用されたあとに解雇する場合には原則として30日前の予告か解雇予告手当が必要になる、という点です(労働基準法第20条、第21条)。試用期間中だから何も守られない、ということはありません。
制度の輪郭が分かったら、次は自分の会社の規定です
長くなったので、まとめます。
- 休職とは、労働契約を残したまま、働く義務が一定期間免除される扱いのことです
- 労働基準法には休職の定義も期間の制限も書かれていません。中身は会社の就業規則で決まります
- 休職制度を置くこと自体、会社の義務ではありません。制度がない会社もありえます
- 欠勤は義務が残ったまま働かない状態、休職は義務そのものが止まっている状態です
- 就業規則には、休職事由、期間、賃金、復職、期間満了時の扱い、勤続年数への算入が定められています
- 私傷病休職の趣旨は、解雇を猶予して回復を待つことにあると裁判例では解されてきました
- 法律に定めがないのは休職の中身であって、安全配慮義務や解雇の制限は休職中も生きています
ここまで読んで、結局は自分の会社次第なのか、と感じたかもしれません。そのとおりなのですが、これは悪い知らせばかりではありません。世間一般ではどうなのかという問いには答えが出ませんが、自分の会社ではどうなっているのかという問いには、文書に書かれた答えがあります。 就業規則を働く人に知らせることは会社の義務なので、読ませてもらうことができます。
実際に何をどの順番で進めればよいかは、休職の手続きと過ごし方に3つの手順としてまとめてあります。休んでいる間のお金のことは休職中の給与はどうなるか、どのくらいの期間休めるのかは休職期間はどのくらいとれるのかで扱っています。
今日のところは、休職が何であって何でないのかが分かっていれば十分です。全部を今日決める必要はありません。
わたしたちは就労支援の現場で、休職という制度をよく知らないまま休みに入った方に会います。あとから「就業規則を読んでおけばよかった」と話す方は多いのですが、体調が悪い時期に規程を読むのは、それ自体がなかなかの作業です。全部を理解しなくて構いません。自分の会社では何がどう決まっているのか、その一点だけ人に聞いてしまうのが早いこともあります。
