手帳を受け取ったときには2年先の話だったものが、気づくと目の前に来ています。「何をすればいいのか」「また診断書を書いてもらうのか」「今度は通らないかもしれない」。更新が近づくと、この3つがだいたい同時にやってきます。

先に結論を書きます。やることは、有効期限の3か月前から、市区町村の窓口に更新の申請書を出すことです。添えるのは新しい診断書か、障害年金の年金証書などの写しです。期限を過ぎてしまっても申請はできます。更新しないという選び方もあって、その場合に何かを返しに行く義務は原則としてありません。

以下、ひとつずつ根拠を示していきます。全国どこでも同じと言えるのは、法令と厚生労働省の実施要領に書かれていることだけです。案内の届き方や窓口の運用は自治体によって違うので、そこは分けて書きます。

有効期限がいつまでなのか

手帳の有効期限は、手帳の表面に日付で印字されています。まずそこを見てください。

その日付がどう決まっているかというと、厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」に書かれています。手帳に記載する有効期限は、交付日から2年が経過する日の属する月の末日です。そして交付日は、市町村長が申請書を受理した日とされています。手帳が手元に届いた日でも、審査が終わった日でもありません。窓口に書類を出した日です。

たとえば4月10日に窓口が申請書を受け取ったなら、交付日は4月10日で、そこから2年が経過するのが2年後の4月10日、その日が属する月の末日ですから、有効期限は2年後の4月30日になります。月の途中で申請しても、期限は必ず月末で切りそろえられます。

もとになっているのは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律45条4項です。手帳の交付を受けた者は、2年ごとに、政令で定める精神障害の状態にあることについて都道府県知事の認定を受けなければならないと定められています。「更新」という言葉は法律の条文には出てこなくて、正確には2年ごとの認定を受け直す手続きです。

等級の変更を受けたときは、そこから2年になります

有効期限の途中で等級の変更が認められた場合は、期限の数え方が変わります。実施要領では、この場合の有効期限は変更決定を行った日から2年が経過する日の属する月の末日とされています。東京都の案内も同じ説明です。等級が変わると、そこで期限が引き直されると考えてください。

いっぽう、更新のタイミングで等級が変わった場合は、扱いが違います。実施要領は「更新後の有効期限は、更新前の有効期限の2年後の日とする」と定めています。等級が変わっても変わらなくても、更新であれば前の期限の2年後です。

3か月前に申請しても、期限が早く来ることはありません

ここは誤解されやすいところなので、はっきり書いておきます。更新の申請を3か月前に出しても、新しい有効期限はいま持っている手帳の期限の2年後です。申請した日や決定が出た日から2年ではありません。早く出したせいで次の期限が早まる、ということはありませんので、安心して早めに動いてください。

更新の申請は、期限の3か月前からできます

精神保健福祉法施行規則28条2項に、認定の申請は「精神障害者保健福祉手帳に記載された有効期限の到来する日の三月前から行うことができる」と書かれています。ここは省令に定められている全国共通の期間です。

なぜ3か月なのかについては、総務省行政評価局が厚生労働省の説明として記録を残しています。手帳の交付手続きは、市町村が申請書を受理して確認し、都道府県などの精神保健福祉センターに送り、そこで2週間から3週間かけて判定し、市町村を通して交付する流れになっていて、受理から決定まで最低でも1か月程度かかること、2年に1回の更新なので自治体に大量の申請書が集まることから、3か月前からの申請を認めているとされています。

実際にどのくらいかかるのかも、同じ総務省の資料に調査結果があります。都道府県と指定都市12か所の処理期間は、2週間から1か月が2か所、1か月程度が3か所、1か月から2か月が6か所、2か月程度が1か所でした。中核市12市が窓口で案内している期間は、1か月から2か月が7市、2か月から3か月が5市です。東京都は、紙形式の手帳で2か月程度、カード形式で2か月半程度かかると案内しています。

つまり、3か月前に申請してちょうど間に合うくらいの手続きだと考えておくのが現実的です。期限まで1か月を切ってから動くと、切れ目ができる可能性があります。

年金証書で申請すると、少し長くかかることがあります

総務省の調査では、年金証書を添えた申請のほうが、医師の診断書を添えた申請より認定に時間がかかるという回答が多く見られました。年金事務所に等級を照会する手続きが入るためです。中核市でも、年金証書を添えた申請には1か月長い期間を案内している市が多かったと記録されています。年金証書のルートを使う方は、そのぶん早めに動いてください。

更新の案内が届くかどうかは、自治体によって違います

ここは全国共通ではありません。同じ総務省の調査で、都道府県などが市町村に更新の案内文書の送付を要請しているかを聞いたところ、要請しているのは12か所のうち1か所、要請していないが市町村が任意に送っているのが6か所、要請しておらず送付状況も把握していないのが5か所でした。

いまの案内を見ても、はっきり分かれています。東京都は、手帳や自立支援医療受給者証を持っている方に向けて、更新手続きが始まる1週間前にLINE、SMS、書面のいずれかで知らせるサービスを用意しています。横浜市は反対に、「更新申請に関して、事前に横浜市から個別のお知らせをすることはありませんので、手帳に書いてある有効期限をご自分で確認してください」と明記しています。

案内が来ることをあてにしないのが安全です。手帳を受け取ったときか、この記事を読んだいまのうちに、有効期限の3か月前の日付をスマートフォンのカレンダーに入れてしまうのが確実です。診察のタイミングも合わせておくと、診断書を頼む余裕ができます。

更新に必要なもの

更新の手続きは、最初の交付申請に準じる形になっています。申請書の所定欄に更新であることを書いて、次のどちらかの書類を添えて、住んでいる市区町村の窓口に出します。窓口を経由して都道府県知事または指定都市の市長に提出される仕組みです。

ルート 添える書類 判定
診断書 医師の診断書(手帳用の様式) 精神保健福祉センターが等級を判定します
年金証書 年金証書などの写しと、直近の年金振込通知書または年金支払通知書の写し 精神保健福祉センターの判定は不要です

診断書を書けるのは、精神保健指定医を中心とした精神科の医師が原則ですが、実施要領には、てんかんで内科医が主治医になっている場合のように、他科の医師であっても精神障害の診断または治療に従事している医師なら含まれると書かれています。

診断書には作成の時期に条件があります。精神障害に係る初診日から6か月を経過した日以後に作成されたものであることが必要で、東京都はこれに加えて、作成日が申請日から3か月以内であることを求めています。更新の場合はすでに初診から何年も経っているのが普通なので、実際に気にするのは「いつ書いてもらうか」のほうです。

写真は、毎回必要とは限りません。実施要領では、更新のときの写真は「必要に応じ」とされていて、具体的には障害等級の変更を申請する場合と、手帳の有効期限の更新欄がなくなった場合が挙げられています。ただし、ここは自治体の運用が入るところなので、窓口に確認してください。

診断書の文書料は医療機関ごとに違います。金額の目安と、費用を抑えられる場面については診断書の費用で整理しています。

手帳そのものは、申請のときに預けなくてかまいません

実施要領には、申請の際にあらかじめ手帳を添付させる必要はなく、更新を認める決定をしたあとに提出させれば足りる、申請者が手元に手帳を有しない期間が長く生じないよう配慮する、と書かれています。審査のあいだ手帳を取り上げられて、割引が使えなくなる、ということにはならない建て付けです。

ただし東京都と横浜市の案内を見ると、更新の申請時に現在の手帳の写しを求めています。原本を預けるのではなく、コピーを添えるという運用です。ここも窓口によって違うので、出しに行く前に必要書類を確認してください。

更新で等級が変わることがあります

更新は、期限を延ばすだけの事務手続きではありません。東京都は「更新の際は、ご提出いただいた書類に基づいて、改めて等級の審査が行われます」と書いています。提出された診断書の内容にもとづいて、精神疾患の状態と、それに伴う生活能力障害の状態の両面から、あらためて総合的に判定されます。

ですから、軽くなる方向にも、重くなる方向にも変わりえます。そして、障害等級のいずれにも該当しないという決定になることもあります。その場合は、理由を付けて通知されます。精神保健福祉法45条3項と5項で、そう定められています。

等級によって何が変わり、何が変わらないのかは精神障害者保健福祉手帳3級は「意味ない」のかにまとめました。所得税と住民税の障害者控除のように、等級にかかわらず対象になるものもあります。

等級の変更は、期限を待たずに申請できます

体調が悪くなってきた、いまの等級では実態と合っていないと感じるときに、次の更新まで待つ必要はありません。精神保健福祉法施行令9条1項で、手帳に記載された障害等級以外の等級に該当するに至ったときは、障害等級の変更の申請を行うことができると定められています。実施要領も、有効期限の期間内であっても、状態が重くなった、あるいは軽くなったことによって別の等級に該当すると考えるときは変更の申請ができる、と明記しています。

手続きは更新に準じます。申請書の所定欄に等級変更の申請であることを書いて、診断書か年金証書などの写しと、写真を添えて出します。認められた場合、前に書いたとおり、有効期限は変更決定の日から2年が経過する日の属する月の末日に引き直されます。

年金証書で申請したときの等級について

ひとつ補足しておきます。手帳の等級と障害年金の等級は、根拠になる法律も判定の枠組みも別のもので、診断書で申請した場合には別々に判定されます。

ただし、年金証書などの写しを添えて申請した場合だけは扱いが違います。実施要領は、この場合は精神保健福祉センターによる判定を要することなく手帳を交付するものとし、年金1級であれば手帳1級、年金2級であれば手帳2級、年金3級であれば手帳3級とすると定めています。横浜市の案内も同じ説明です。入口をどちらにするかで結果が変わりうる、ということです。

なお実施要領には、年金証書を持っている人であっても、医師の診断書で申請して精神保健福祉センターの判定を受けることができる、とも書かれています。どちらのルートを使うかは選べます。障害年金そのものについては精神疾患での障害年金で書いています。

期限を過ぎてしまったとき

まず、この一文を読んでください。実施要領の更新の項に、こう書かれています。「なお、有効期限の経過後であっても、更新の申請を行うことができる。」

期限が切れたからといって、最初から取り直しになるわけではありません。手続き自体はやり直せます。気づいた時点で市区町村の窓口に連絡してください。

そのうえで、正直に書いておきます。切れているあいだは、手帳を提示して受けられるものが使えません。交通機関の割引も、施設の入場料の減免も、有効期限の切れた手帳では対象になりません。障害者雇用の枠でも、後で書くとおり扱いが変わります。空白の長さは、そのまま使えない期間の長さになります。

自立支援医療(精神通院医療)とは扱いが違うことも押さえておいてください。あちらは有効期間が切れたあとの申請が新規申請として扱われ、受給者番号が変わる場合もあります。手帳と受給者証を同時に申請している方は、期限がずれていることがあるので、両方の日付を確認しておくと安心です。制度の中身は自立支援医療制度で通院費の負担を軽くする手順にまとめました。

申請したのに、決定が出る前に期限が来てしまったとき

3か月前に申請しても、審査が長引いて期限をまたぐことがあります。この場面での扱いは、残念ながら全国共通ではありません。

総務省の調査では、更新手続き中であることの証明について、手帳の写しに証明文を記載して交付する市が2市、更新申請書の控えや写しに受付印を押して渡す市が7市、何も交付していない市が3市でした。厚生労働省は、行政コストの合理化の観点から、現時点では地方公共団体の実情に合わせた対応に委ねることが適当だという考えを示しています。

つまり、証明書を出してくれる自治体もあれば、出さない自治体もあるのが現状です。申請したときに、受付印のある控えをもらえるか、期限をまたいだ場合にどうすればいいかを窓口で聞いておくと、あとで困りません。

更新しないという選び方

更新しなければならない、という義務はありません。体調が落ち着いて使う場面がなくなった、手帳を持っていることの負担のほうが大きくなった、という理由で更新しない方もいます。

更新しなければ、有効期限が来た時点で手帳の効力が終わります。手続きは要りません。

返還の規定について

精神保健福祉法45条の2に、手帳の返還の規定があります。ここは正確に読む必要があります。

第1項が求めているのは、政令で定める精神障害の状態がなくなったときに、速やかに返還することです。更新しなかったことに対する返還の義務ではありません。返還する場合は、手帳に記載された居住地を管轄する市町村長を経由して行います。

第3項には、都道府県知事が返還を命じることができるという規定もありますが、第4項で、命じようとするときはあらかじめ指定医に診察させなければならないとされています。実施要領を読むと、想定されているのは、精神障害の状態でないことが著しく疑われる場合や、偽りその他不正の行為によって手帳を取得したことが著しく疑われる場合です。通常の更新の場面で出てくるものではありません。

このほか、第2項で手帳の譲渡と貸与が禁止されています。また、手帳の交付を受けた者が亡くなったときは、戸籍法の届出義務者が速やかに返還しなければならないと施行令10条の2第1項に定められています。

実際に、どのくらいの人が更新していないのか

厚生労働省が労働政策審議会に出した資料に、令和6年度の数字があります。年度末時点の手帳交付台帳数が154万7,433件で、その年度中の返還件数が2.6万件、有効期限切れの件数が7.6万件でした。割合にすると、返還が1.7%、有効期限切れが4.9%で、合わせて6.6%です。

この7.6万件の内訳、つまり自分から更新しなかった人がどれだけで、更新を申請したけれど該当しないと判定された人がどれだけかは、公表された資料からは分かりませんでした。ここは分からないと書いておきます。分かるのは、更新せずに期限が切れることが例外的な出来事ではない、ということだけです。

障害者雇用で働いている方へ

障害者雇用の枠で働いている方には、期限の管理がもうひとつの意味を持ちます。事実として書いておきます。

障害者の雇用の促進等に関する法律37条2項で、雇用率制度の対象となる「対象障害者」の定義が置かれています。精神障害者については、精神保健福祉法45条2項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限るとされています。有効な手帳を持っていることが条件になっているので、手帳の期限が切れると、その方は会社の実雇用率の算定から外れます。

ここで大事なのは、これは会社の集計上の話であって、手帳が切れたら働けなくなるという意味ではないということです。雇用契約は雇用契約として続きます。ただ、会社の側は毎年6月1日時点の状況を報告する義務があるので、手帳の期限を把握しようとします。

この点については、いま国で見直しの議論が進んでいます。2026年6月22日の第139回労働政策審議会障害者雇用分科会で、厚生労働省は、手帳の更新が得られなかった場合でも、その労働者が引き続き雇用されていて今後も雇用される見込みであると判断できるときは、一定期間は従前どおり手帳を有しているものとみなしてはどうか、という案を示しました。一定期間の長さは1年とする方向で提案されています。ただし、これは検討の途中の話であって、まだ決まったものではありません。2年にすべきだという意見も分科会で出ています。

いまの時点で言えるのは、期限の管理が要るということだけです。会社に伝えるかどうかは本人が決めることですが、期限が近いこと自体は自分で把握しておいたほうが、あとで慌てずにすみます。障害者雇用の仕組みそのものについては障害者雇用とはで書いています。

更新のときにやっておくと楽なこと

最後に、手続きを軽くするための現実的な段取りをまとめます。

まず、手帳の有効期限を見て、その3か月前の日付をカレンダーに入れてください。案内が来る自治体もありますが、来ない自治体もあります。

次に、その1か月くらい前の診察のときに、主治医に「手帳の更新の診断書をお願いしたい」と伝えてください。書き上がるまでに日数がかかることがありますし、文書料もそのときに聞けます。診断書の様式は市区町村の窓口にあるほか、都道府県の精神保健福祉センターのサイトに置かれていることもあります。

そして、窓口に出しに行くときに、受付印のある控えをもらえるかを聞いておいてください。期限をまたいだときの証明になる自治体があります。

有効期限の切れた手帳でも、期限を過ぎてから更新の申請はできます。もし今この記事を、期限が過ぎたあとに読んでいるとしても、間に合わなかったということはありません。窓口に電話するところから始めてください。

手帳を持ち続けるかどうか自体を迷っている方は、障害者手帳のデメリットは本当にあるのかで、持っていることで実際に何が変わるのかを整理しています。更新のたびに考え直してよいものですし、いったんやめてから、また必要になったときに申請することもできます。

わたしたちは就労支援の現場で、手帳の期限を切らしてしまった方に会うことがあります。届いた案内を見落としたか、更新の時期を覚えていなかったかのどちらかであることが多いです。自治体によっては通知が来ないので、交付されたときに自分で期限を控えておくのが確実です。切れてしまっても更新の申請自体はできますから、気づいた時点で窓口に相談してください。