「自分は対象外なのではないか」と思いながら調べている方、あるいは不支給の通知を受け取ったばかりの方が、このページを読んでいると思います。がっかりしている状態で細かい制度の話を読むのはしんどいので、先に全体の見取り図だけ書いておきます。
障害年金が支給されない理由は、そんなに多くありません。原因ごとに5つに分かれます。そして、どれに当たるかによって、そのあとにできることが違います。やり直しがきかないものもあれば、時間が経てば道が開くものもあります。まず自分がどれなのかを確かめるところが出発点です。
先にはっきりさせておきたいことがあります。この記事は「あきらめなければ通ります」とは書きません。制度上どうなっているかを正確に示すだけです。そのうえで、まだ残っている手続きと、障害年金以外に使える制度まで案内します。
不支給になる理由は、5つのどれかです
障害年金は、初診日・保険料の納付・障害の状態という条件を組み合わせて決まる制度です。条件を裏返すと、支給されない理由は次の5つに整理できます。
| 類型 | どこで引っかかっているか | あとからやり直せるか |
|---|---|---|
| ① 保険料の納付要件 | 初診日の前日までの納付・免除が足りない | やり直せません |
| ② 初診日 | いつが初診日か特定できない、証明が取れない | 取り扱いが定められています |
| ③ 障害の状態 | 等級に当たる状態と判断されなかった | 悪化したときに請求できます |
| ④ 20歳前傷病の所得 | 前年の所得が基準を超えている(全額停止と半額停止の2段階) | 翌年度に所得が下がれば戻ります |
| ⑤ 障害認定日 | まだその日を迎えていない | 時期が来れば請求できます |
上から順に見ていきます。ひとつずつ、自分に当てはまるかどうかだけ確かめてください。
① 保険料の納付要件を満たしていない
いちばん先に確認してほしいのがここです。障害の状態がどれだけ重くても、この要件を満たしていなければ支給されません。
原則は、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることです。これは国民年金法第30条第1項ただし書に定められています。
さらに特例があり、初診日が令和18年3月末日までにある場合は、初診日において65歳未満であり、かつ初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないことを満たせば、納付要件を満たしたものとされます。
見落とされやすいのは「初診日の前日において」という部分です。不支給の通知を受け取ってから慌てて過去の保険料を納めても、この判定には反映されません。すでに起きたことの評価なので、あとから条件を作り直すことができない、この記事のなかで唯一やり直しのきかない部分です。
ただし、自分の記録がどうなっているかを見ないまま「たぶん未納があったから」と結論を出すのは早いです。免除や納付猶予の手続きをしていた期間は納付要件の計算に入りますし、学生納付特例も同じです。ねんきんネットや年金事務所で、実際の納付記録を確認してください。
「今から免除を申請すれば間に合う」ではありません
ここは誤解が生まれやすいので、はっきり書いておきます。
国民年金保険料の免除・納付猶予は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)についてさかのぼって申請できます。ただし、日本年金機構は同じページに次のように明記しています。「不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません」。
つまり、初診日を迎えたあとに過去の期間の免除を申請しても、障害年金の納付要件はさかのぼって満たされません。納付要件が「初診日の前日において」判定されるのは、このためです。免除や納付猶予の手続きが効いてくるのは、あくまで何かが起きる前に済ませてあった場合です。
すでに不支給になった方にとっては受け入れがたい話だと思います。ただ、ここで手を尽くしても結果が変わらないことを先に知っておいたほうが、限られた体力を審査請求やほかの制度に向けられます。
20歳前に初診日がある場合の例外
納付要件が不要になる場合があります。ただし条件があって、20歳前であることに加えて、その時点で年金制度に加入していない期間であることが必要です。
20歳前であっても、働いていて厚生年金保険の被保険者だった期間に初診日があるなら、この例外には当たりません。その場合は通常のルートになり、障害厚生年金の対象として、納付要件も同じように判定されます。日本年金機構の障害年金ガイドの受給要件フローでも、20歳前の分岐は「初診日に国民年金の被保険者でしたか」を「いいえ」で通った先にしか出てきません。年齢だけで決まるものではない、ということです。
② 初診日が特定できない、証明できない
初診日が決まらないと、どの年金の対象になるのかも、納付要件を満たすのかも判定できません。障害年金の手続きが止まりやすいのは、実はこの部分です。
初診日とは、障害の原因になった病気やけがについて、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日です。同じ病気で転院している場合は、いちばん最初に診療を受けた日が初診日になります。精神疾患では、内科や心療内科を経てから精神科に移っている方が多く、自分では初診日が分からないという相談がよくあります。
ここで大事なのは、初診時の医療機関の証明が取れないときの取り扱いが、制度としてきちんと定められていることです。証明が添付できない場合でも、初診日を合理的に推定できる一定の書類によって、本人が申し立てた日を初診日と確認できる場合があります。病院が廃業していた、カルテの保存期間を過ぎていたという理由だけで道が閉じるわけではありません。
「証明が取れないので無理だ」と自分で結論を出す前に、年金事務所で「証明が取れないのですが」と相談してみてください。どの資料なら代わりになるのかは、ケースによって違います。
③ 障害の状態が、等級に届いていない
診断書の内容から、政令の障害等級表に定める状態に当たらないと判断された場合です。精神の障害では、この類型が実際にはいちばん多くなります。
障害基礎年金には3級がありません
見落とされやすいのがここです。初診日にどの年金制度に入っていたかで、対象になる等級の範囲が変わります。
| 初診日に加入していた制度 | 請求できるもの | 対象になる等級 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険の被保険者 | 障害厚生年金 | 1級・2級・3級(+障害手当金) |
| 国民年金の加入期間 | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
| 20歳前で年金制度に加入していない期間 | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
| 60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
つまり、同じ状態でも、初診日が厚生年金なら3級で受け取れる可能性があり、国民年金なら2級に届かなければ支給されません。厚生労働省の等級判定ガイドラインの目安表にも、「表内の『3級』は、障害基礎年金を認定する場合には『2級非該当』と置き換えることとする」と注記されています。3級に相当する状態と評価されても、障害基礎年金では不支給になるということが、表のなかにそのまま書かれています。
3級に届かなかったときの障害手当金
初診日が厚生年金だった方には、もうひとつ出口があります。障害厚生年金に該当する状態より軽い障害が残ったときの障害手当金という一時金です。
厚生年金保険法第55条第1項は、初診日において被保険者であった者が、初診日から起算して5年を経過する日までの間におけるその傷病の治った日において、政令で定める程度の障害の状態にある場合に支給すると定めています。「治った」には、症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日も含まれます。
注意点が2つあります。ひとつは、これが厚生年金保険にしかない制度で、障害基礎年金にはないことです。もうひとつは、納付要件が障害厚生年金とまったく同じことです。第55条第2項が第47条第1項ただし書を準用しているので、①の納付要件が理由で不支給になった方は、障害手当金にも届きません。
金額は、令和8年度で報酬比例の年金額の2倍、最低保障は1,271,000円(昭和31年4月1日以前生まれは1,267,400円)です。
診断名によって、原則として対象外になるもの
障害認定基準の第8節には、次の2つが明記されています。
- 神経症については、「その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象とならない」。ただし、臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものは、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱うとされています。
- 人格障害は、「原則として認定の対象とならない」。
不安障害、パニック障害、適応障害、強迫性障害などは、いわゆる神経症圏に分類されます。この診断名だけで請求すると、原則として対象外という判断になります。ただし、病態が実際にはどうなのかを医師に記載してもらう仕組みは制度として用意されていますので、診断名だけを見て自分で結論を出さず、通院先で確認してください。
目安表だけで結論は出ません
等級判定ガイドラインは、診断書の「日常生活能力の程度」(5段階)と「日常生活能力の判定」の平均(4段階を1から4の数値に置き換えた平均)を組み合わせた目安表を示しています。判定平均が1.5未満の欄には「3級非該当」とだけ書かれていて、障害基礎年金ではこれが「2級非該当」に置き換わります。
ただし、この目安は判定の出発点にすぎません。ガイドライン自身が留意事項として、「障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得る」と書いています。逆方向にも効く注記です。目安の表を見て自分で「非該当だ」と決める必要はありませんし、目安が2級だからといって必ず2級になるわけでもありません。
④ 20歳前の傷病で、前年の所得が基準を超えている
ここでいう20歳前の傷病とは、①で書いたとおり、20歳前で、かつ年金制度に加入していない期間に初診日がある場合です。本人が保険料を納めていない期間の傷病を対象にする制度なので、支給に関して制限があります。そのひとつが所得による支給停止です。国民年金法第36条の3にもとづくもので、具体的な額は政令で定められています。
大事なのは、ここが1段階ではなく2段階になっていることです。所得が基準を超えたら一律にゼロになるのではなく、「全額が止まる」ラインと「半分だけ止まる」ラインが別々にあります。令和8年4月時点で、扶養親族等がいない場合は次のとおりです。
| 前年の本人の所得額 | 扱い | 2級の場合の年額 |
|---|---|---|
| 4,794,000円を超える | 全額が支給停止 | 0円 |
| 3,761,001円から4,794,000円 | 2分の1の額が支給停止 | 423,650円 |
| 3,761,000円以下 | 全額支給 | 847,300円 |
表の金額は昭和31年4月2日以後生まれの方の令和8年度の額です。「所得が基準を超えている」と聞いてゼロだと思い込んでしまう方がいますが、間の帯に入っていれば半分は受け取れます。自分の前年所得がどちらの帯なのかを確かめてください。
扶養親族等がいる場合は、1人につき所得制限額に38万円が加算されます。対象となる扶養親族等が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは1人につき48万円、特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の者に限る)であるときは1人につき63万円が加算されます。
ここで大事なのは、これが「支給停止」であって「受給権がなくなった」わけではないことです。前年の所得にもとづく支給対象期間は10月分から翌年9月分までと決まっていて、毎年、受給者本人の前年所得の確認が行われます。所得が下がった年があれば、その分の期間からまた支給されます。年金を受け取る権利そのものは残っています。
なお、20歳前傷病の障害基礎年金には、所得のほかにも支給の制限や調整があります。恩給や労災保険の年金等を受給しているときはその額について調整されますし、海外に居住したときや刑務所等の矯正施設に入所した場合は全額が支給停止になります。
⑤ 障害認定日を、まだ迎えていない
制度上の時期がまだ来ていないだけ、というケースです。落ち込むところではありません。
障害認定日は、初診日から起算して1年6か月を経過した日です(国民年金法第30条第1項)。その期間内に傷病が治った場合は、治った日が障害認定日になります。ここでいう「治った」には、症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日も含まれます。
初診日から1年6か月が経っていない時点では、原則として障害年金の請求はできません。日本年金機構の障害年金ガイドの判定フローも、この段階では「初診日から1年6カ月経過」を待つ形になっています。
20歳前に初診日がある方の場合は、障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日が判定の時点になります。障害年金ガイドのフローは、この場合を「20歳に到達するまで待ってください」と案内しています。
該当する方は、今すぐできることはありませんが、その日が来るまでの通院の記録が、あとで診断書の内容になります。今の時期の受診を続けておくことに意味があります。
「働いているともらえない」は誤解です
ここは誤解が実害につながるところなので、資料の書き方に沿って正確に書きます。
結論から言えば、就労していること自体が、そのまま不支給の理由になるわけではありません。障害認定基準の第8節には、日常生活能力等の判定について次のように定められています。現に仕事に従事している者については、「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること、という書き方です。
知的障害と発達障害の項では、さらに踏み込んだ言い方をしています。「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している」。働いている人はみな何らかの援助や配慮のもとで働いている、という前提から出発しているわけです。
厚生労働省の等級判定ガイドラインの「就労状況」の欄にも、考慮すべき要素として次のようなものが並んでいます。
- 援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する
- 就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型・B型)および障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする
- 障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する
- 1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や、就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合はそれを考慮する
- 精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)を考慮する
- 就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、両方の場面の状況を考慮する
ただし、就労状況は判断材料として必ず見られます。ここは正確に書いておきます。診断書には現症時の就労状況を書く欄があり、ガイドラインも一般企業での就労については「月収の状況だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する」としています。見られないわけではなく、「働いているかどうか」ではなく「どんな条件のもとで、どれだけの援助を受けて働けているか」を見る作りになっている、ということです。
ですから、働いていることを隠す必要はありませんし、隠さないほうがいいです。むしろ、遅刻や欠勤の頻度、職場で受けている配慮の内容、業務が単純作業に限られていること、意思疎通で困っている場面といった実際の働き方を、日ごろから主治医に具体的に伝えておくことに意味があります。それが診断書の記載につながります。
不支給の通知が届いたら、まず理由を聞くところから
通知には結論が書かれていますが、なぜその結論になったのかまでは、読んだだけでは分からないことが多いです。
近畿厚生局と九州厚生局は、どちらも同じ案内をしています。不支給等の理由について尋ねたいときは、請求した年金事務所に問い合わせてください、という案内です。健康保険関係であれば全国健康保険協会の各県支部か健康保険組合が窓口になります。
これは大事な順番です。理由が①の納付要件なのか、③の障害の状態なのかで、そのあとにできることがまったく違うからです。納付要件が理由なら審査請求をしても結論は変わりにくく、障害の状態が理由なら、審査請求と事後重症請求という二つの道が残ります。まず理由を確かめてください。
なお、審査請求の期限は待ってくれません。理由を確認する作業と並行して、次の章の期限を頭に入れておいてください。
決定に納得できないときの、審査請求と再審査請求
不服の申立ては二段階になっています。順番と期限が法律で決まっているので、そこから書きます。
第1段階:社会保険審査官への審査請求(3か月)
年金の決定に不服があるときは、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、地方厚生局に置かれた社会保険審査官へ審査請求ができます。この期限は社会保険審査官及び社会保険審査会法第4条第1項に定められていて、この期間を経過したときは審査請求をすることができません。
ただし同じ条文にただし書があり、正当な事由によりこの期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明したときは、この限りでないとされています。また、審査請求書を郵便で提出した場合、送付に要した日数は期間の計算に算入されません(同条第3項)。
手続きそのものは重いものではありません。審査請求書に、不支給の通知書の写しを添えて提出します。近畿厚生局は、年金関係については日本年金機構の年金事務所を経由して提出することもできると案内しています。用紙は各厚生局のホームページからダウンロードできるほか、電話で依頼すれば郵送してもらえますし、年金事務所や全国健康保険協会の各県支部にも備え付けられています。厚生労働省のページからは、委任状の様式もあわせて配布されています。提出は郵送のほか、e-Gov電子申請でも行えます。
何が審査されるのかについて、九州厚生局は「保険者の決定が法令・通達等に基づいて、妥当になされたかどうかを審査します」と説明しています。あわせて、審査の結果として「決定が変更となることもあります」とも書かれています。必ず覆るという意味ではありませんし、そう読むべきでもありません。ただ、覆ることがある手続きとして制度に置かれています。
かかる期間については、九州厚生局が、審査請求書を受け付けてから概ね3か月から4か月かかっているのが現状で、内容によってはそれ以上かかる場合もある、と案内しています。
なお、審査請求をした日から2か月以内に決定がないときは、審査請求人は社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができます(国民年金法第101条第2項、厚生年金保険法第90条第3項)。決定を待ち続けなければ次に進めない、という作りにはなっていません。
第2段階:社会保険審査会への再審査請求(2か月)
社会保険審査官の決定にさらに不服があるときは、厚生労働省に置かれた社会保険審査会へ再審査請求ができます。期限は、審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内です(社会保険審査官及び社会保険審査会法第32条第1項)。第1段階の3か月より短いので、決定書が届いたら日付を確認してください。
社会保険審査会は、厚生労働省の説明では「第2審として行政不服審査を行う国の機関」とされています。第1段階と違うのは、審理のしかたです。法律には次のように定められています。
- 審理は公開しなければならない。ただし、当事者の申立てがあったときは、公開しないことができる(第37条)
- 当事者およびその代理人は、審理期日に出頭し、意見を述べることができる(第39条第1項)
- 意見陳述に際し、当事者およびその代理人は、審査長の許可を得て、原処分をした保険者に対して質問を発することができる(第39条第6項)
つまり、書面のやりとりだけでなく、自分で出席して意見を述べる場が制度として用意されています。公開が心配なときは、当事者の申立てによって公開しないこともできると条文に書かれています。
なお、再審査請求と審査請求は原処分の執行を停止しません(第35条第1項)。申立てをしている間も、不支給という状態そのものは続きます。生活のほうは、この記事の後半にある別の制度で先に手当てを考えたほうが確実です。
裁判に進む場合
決定の取消しの訴えは、原則として、審査請求に対する社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起できません(国民年金法第101条の2、厚生年金保険法第91条の3)。いきなり裁判にはできませんが、必ず再審査請求まで済ませなければならないわけでもありません。前置されているのは審査請求のほうです。
日本年金機構は、この訴えについて、審査請求の決定(再審査請求をした場合は当該決定または社会保険審査会の裁決)の送達を受けた日の翌日から起算して6か月以内に、国を被告として提起できると案内しています。ただし、原則として審査請求の決定の日から1年を経過したときは訴えを提起できません。
また、審査請求があった日から2か月を経過しても決定がないとき、決定の執行等による著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他正当な理由があるときは、審査請求の決定を経なくても訴えを提起できるとされています。
一度だめでも、重くなったときにもう一度請求できます
不服申立てとは別に、まったく違う道がもうひとつあります。事後重症による請求です。
障害認定日には等級に当たる状態ではなかった方が、その後に悪化して等級に当たる状態になったときは、あらためて請求ができます。国民年金法第30条の2に定められていて、障害認定日の後、65歳に達する日の前日までの間に該当する状態になったときに、その期間内に請求できるという書き方です。
ここは、③の類型で不支給になった方にとって現実的な選択肢です。前の決定を争うのではなく、今の状態で新しく請求する形になります。日本年金機構の障害年金ガイドも、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは受け取ることができる場合がある、と案内しています。
覚えておいてほしい点が3つあります。
ひとつめは、受け取れるのは請求日の翌月分からだということです。障害認定日にさかのぼることはできません。障害年金ガイドは、請求日が月をまたぐとその分だけ受け取りの開始が後ろにずれると具体例で説明したうえで、「障害年金を受け取ることができる状態になった場合は、速やかにご請求ください」と書いています。「もう少し様子を見てから」と迷っているうちに月が変わると、その月分は戻ってきません。
ふたつめは、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があることです。ここには明確な締切があります。
みっつめは、正直に書いておきます。不支給の理由が①の納付要件だった場合は、事後重症による請求をしても結論は変わりません。国民年金法第30条の2第2項が第30条第1項ただし書を準用していて、納付要件は事後重症の場合にも同じようにかかるからです。状態が重くなったから道が開く、という話にはなりません。だからこそ、まず不支給の理由を確認するところから始めてください、と前の章で書きました。
なお、厚生労働省の等級判定ガイドラインには、ガイドライン施行前の障害年金請求で不支給となった方から新たに障害年金請求や額改定請求があった場合は、ガイドラインを用いて等級判定を行う、と書かれています。判定の枠組み自体が途中で整えられているという事情もあります。
障害年金以外に、いま使える制度
障害年金が対象外だったとしても、生活を支える制度がそこで全部終わるわけではありません。それぞれ別の法律にもとづく別の制度で、障害年金の可否とは連動していません。ここが実務ではいちばん大事なところです。
傷病手当金は健康保険の給付で、病気やけがで働けないあいだの生活を支えるものです。障害年金とはまったく別の条件で判断されます。会社の健康保険に入っていて、医師が働けない状態だと認めていて、給与が支払われていないなら、対象になる可能性があります。条件は傷病手当金がもらえないケースにまとめています。なお、同一の傷病で傷病手当金と障害厚生年金の両方を受けられるときは調整が行われますが、障害年金が不支給であればその調整は起きません。
自立支援医療(精神通院医療)は、通院の医療費の自己負担を軽くする制度です。障害年金を受けているかどうかは要件になっていません。通院が続く時期に効いてくる制度なので、優先度は高いです。自立支援医療制度にまとめています。
精神障害者保健福祉手帳も、障害年金とは根拠法も判定の枠組みも別の制度です。年金が不支給でも手帳は取得できますし、その逆もあります。障害者手帳のメリットとデメリットを読んでから決めて構いません。
生活保護は、ほかの制度を使ってもなお生活が成り立たないときの制度です。使えるものを先に使うという順番はありますが、障害年金が対象外だったこと自体は、生活保護の妨げになりません。条件は生活保護を受けられる条件にまとめています。
このほか、病気やけがの原因が仕事にある場合は労災保険の対象になることがあります。長時間労働やハラスメントが原因で体調を崩した場合も含まれますので、心当たりがあるときは労働基準監督署に相談する方法があります。
それでも判断がつかないときは
ここまで読んでも、自分がどの類型なのか分からなかったとしても、それが普通です。初診日がいつか、その日にどの制度に入っていたか、納付記録がどうなっているかは、記録を見ないと確定しません。
相談先ははっきりしています。
- 不支給の理由を聞きたいときは、請求した年金事務所です
- 一般的な相談は、年金事務所と街角の年金相談センターです。初診日が国民年金加入中や20歳前の場合は、お住まいの市区町村の窓口でも障害基礎年金の請求ができます
- 審査請求の相談先は、地方厚生局に置かれた社会保険審査官です
- 電話での一般的な問い合わせはねんきんダイヤル 0570-05-1165(050から始まる電話からは 03-6700-1165)です
年金事務所は予約相談ができます。窓口に行く前に、初診日にあたりそうな時期と、当時の勤務先や加入していた制度、そして手元にある不支給の通知書をまとめておくと、話が早く進みます。
不支給の通知を受け取った直後は、制度から線を引かれたように感じると思います。ただ、通知に書かれているのは「今回の請求は、この条件に照らして支給に至らなかった」ということであって、それ以上のことは書かれていません。期限のあるものだけ先に押さえて、あとは体調に合わせて進めて構いません。今日は、不支給の通知の日付を確認するところまでで十分です。
わたしたちは就労支援の現場で、不支給の通知を受け取った方に会うことがあります。そこで止まってしまう方と、次の手に進める方の違いは、不支給の理由を知っているかどうかであることが多いように見えます。理由によって、待てば道があるのか、別の制度を見たほうがいいのかが変わります。通知だけ見て自分で結論を出さず、まず理由を聞くところから始めて構いません。
