生活保護について調べている方の多くが、制度の中身を知る前のところで止まっています。自分は対象にならないのではないか、窓口で断られるのではないか、家族に知られるのではないか。そう思っているうちに、手持ちのお金だけが減っていきます。

この記事では、実際に何を見られて、どういう順番で決まるのかを整理しました。判定の仕組みと、生活保護法に書かれている4つの要件、扶養についての取扱い、申請から決定までの流れです。

はじめにひとつだけ書いておきます。厚生労働省が公開している「生活保護制度の概要」には、次のように書かれています。

生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずに自治体までご相談ください。

これは、ためらって相談に来ない方が多いことを前提に書かれた案内です。自分が受けられるかどうかを、相談する前に自分で判定しておく必要はありません。

どうやって決まるのか

最低生活費と収入を比べます

生活保護の判定は、感覚や印象ではなく、計算で行われます。厚生労働省は次のように説明しています。

厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。

つまり、比べる相手は他人ではなく、自分の世帯について計算された「最低生活費」という金額です。生活保護は世帯を単位として行われますので、判定されるのは個人ではなく世帯の状況になります。

収入がゼロでなくても対象になります

ここが誤解されやすいところです。収入があること自体は、対象外になる理由になりません。

厚生労働省のQ&Aでも、就労収入がある方でも、その収入と資産が最低生活費に満たない場合には受給できると説明されています。年金を受けている場合も同じ考え方です。収入が最低生活費を下回っていれば、その差額が支給されます。

「少しは働けているから自分は違う」「年金が出ているから対象外だ」と考えて相談をやめてしまう方がいますが、判定の仕組み上、それは結論になりません。

最低生活費は住んでいる地域と世帯構成で変わります

最低生活費は全国一律ではありません。厚生労働省のQ&Aでも「最低生活費は、お住まいの地域や世帯の構成等により異なります」と説明されていて、地域は「級地」という区分で分けられています。同じ収入額でも、住んでいる市区町村と世帯の人数・年齢によって結論が変わることがあります。

そのため、この記事では具体的な金額は書きません。金額の決まり方については生活保護でいくら受け取れるのかで扱っています。

4つの要件

生活保護法第4条第1項は、保護は「生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めています。厚生労働省は、この条文を4つに分けて説明しています。

要件 厚生労働省の説明 位置づけ
資産の活用 預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却等し生活費に充ててください 保護の要件(法第4条第1項)
能力の活用 働くことが可能な方は、その能力に応じて働いてください 保護の要件(法第4条第1項)
あらゆるものの活用 年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください 保護の要件(法第4条第1項)
扶養義務者の扶養 親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください 要件ではなく、保護に優先して行われるもの(法第4条第2項)

4つ目だけ位置づけが違います。ここが最も誤解されているところなので、あとで節をあらためて書きます。

なお、生活保護法第4条第3項は「前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない」と定めています。差し迫った状況にある場合には、この整理どおりに進まないことがあるという意味です。

資産の活用

預貯金や、生活に利用されていない土地・家屋があれば、まず生活費に充てることが求められます。これは原則です。

ただし厚生労働省は、「生活保護を申請したい方へ」のページで、持ち家がある人でも申請はできること、居住用の持ち家については保有が認められる場合があることを明記しています。自動車についても、処分するのが原則としたうえで、通勤用の自動車を持ちながら求職している場合など、処分しないまま保護を受けられる場合があると書いています。

何が認められるかは個別の判断になりますので、自分の持ち物を見て先に諦める必要はありません。受給が始まったあとの取扱いについては生活保護を受けると何が制限されるのかで扱っています。

能力の活用

働くことが可能な場合は、その能力に応じて働くことが求められます。逆にいえば、働けない状態にあることが確認されれば、この要件との関係で問題になることはありません。

病気や障害のために働けない状態が続いている場合、その状態は主治医の診断や日常生活の状況から判断されます。申請後の調査項目にも「就労の可能性の調査」が含まれています。

あらゆるものの活用(他法他施策優先)

年金や手当など、他の制度で受けられるものがあれば、そちらを先に使うという考え方です。制度の運用では「他法他施策の活用」と呼ばれていて、厚生労働省の実施要領には、健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法、雇用保険法、労働者災害補償保険法、児童扶養手当法、障害者総合支援法など、活用を図るべき法律が具体的に挙げられています。

大事なのは順番の話であって、他の制度を受けていることが対象外の理由になるわけではないという点です。障害年金や傷病手当金を受けていても、それを収入として計算したうえで最低生活費に足りなければ、差額が対象になりえます。

扶養義務者の扶養

生活保護法第4条第2項は、扶養義務者の扶養は「すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と定めています。第1項の「要件として行われる」とは書き方が違います。

この違いについて、厚生労働省の事務連絡「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」は次のように説明しています。

生活保護法第4条第2項において、扶養義務者の扶養は「保護に優先して行われる」ものと定められており、「保護の要件」とは異なる位置づけのものとして規定されている。

そのうえで、意味するところは「実際に扶養義務者からの金銭的扶養が行われたときに、これを被保護者の収入として取り扱うこと等」であり、「扶養義務者による扶養の可否等が、保護の要否の判定に影響を及ぼすものではな」いとされています。

つまり、扶養できる親族がいることは受給の要件ではありません。実際に仕送りを受けたときに、それが収入として計算されるという話です。

扶養照会について

家族に知られたくないという理由で申請をためらう方が多いところです。ここは確認できた範囲だけを書きます。

扶養義務者とは誰か

民法第877条は「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定めています。第2項では、家庭裁判所が特別の事情があると認めた場合に、三親等内の親族にも扶養の義務を負わせることができるとされています。

生活保護の運用では、この直系血族と兄弟姉妹が「絶対的扶養義務者」と呼ばれ、それ以外の三親等内の親族のうち一定の状況にある方が「相対的扶養義務者となり得る者」として扱われます。

全員に同じように連絡するわけではありません

厚生労働省の事務連絡では、扶養に関する調査は次の順で行うとされています。

  1. 扶養義務者の存否の確認。 要保護者からの申告を基本とし、必要に応じて戸籍謄本等で確認します。
  2. 扶養の可能性の調査。 存在が確認された扶養義務者について、要保護者等からの聞き取り等により行います。金銭的援助だけでなく、精神的な支援の可能性も確認します。
  3. 扶養照会。 上の作業の結果、「扶養義務の履行が期待できる」と判断される者に対して行います。

事務連絡は「特に、扶養照会は、(1)から(3)までの作業の結果、『扶養義務の履行が期待できる』と判断される者に対して行うものであることに注意する必要がある」と、わざわざ念を押しています。

照会の方法も一律ではありません。夫婦と中学3年生以下の子に対する親などは「重点的扶養能力調査対象者」として重点的な調査の対象になり、それ以外の扶養義務者については文書による照会など必要最小限度の調査を行うこととされています。

照会を行わないこととされている場合

事務連絡は、可能性調査の結果「扶養義務履行が期待できない者」と判断された場合には、個別に慎重な検討を行ったうえで、扶養照会を行わないこととして差し支えないとしています。そのうえで、次の3類型を例示しています。

類型 事務連絡に挙げられている例
扶養義務者が被保護者、社会福祉施設入所者、長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫等)、未成年者、概ね70歳以上の高齢者など
要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない場合(借金を重ねている、相続をめぐり対立している、縁が切られているなどの著しい関係不良の場合等)
扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者(夫の暴力から逃れてきた母子、虐待等の経緯がある者等)

②については、さらに具体的な説明があります。一定期間(例えば10年程度)音信不通であるなど交流が断絶している場合は、それだけで「著しい関係不良等」と判断してよいとされています。また、音信不通となっている正確な期間が分からない場合でも、それに相当する期間音信不通であるとの申出があり、その申出の内容が否定される明確な根拠がないことをもって該当すると判断して差し支えない、とも書かれています。

③については、生活保持義務関係にある相手であっても扶養照会を控えることとされています。この場合に関係機関への調査を行うときは、扶養義務者本人に、調査を行っている事実や要保護者の居住地、その手がかりとなる情報(例えば福祉事務所名など)が知られることのないよう、特に慎重に調査を行うことと定められています。

判断するのは福祉事務所です。ご自身で当てはまると思っても自動的に決まるわけではありませんし、逆に当てはまらないと思っても、事務連絡には「これらの例示と同等のものと判断できる場合」も該当するものとして取り扱ってよいと書かれています。ですので、連絡してほしくない事情があるときは、その事情を相談のときに伝えて相談してください。事務連絡も、相談にあたっては丁寧に生活歴等を聞き取り、個々の要保護者に寄り添った対応がなされるよう配慮するようにと書いています。

「家族に相談してから」と言われた場合

厚生労働省の課長通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」には、相談段階の対応についての質疑応答が載っています。扶養義務者の状況や援助の可能性を聴取すること自体は申請権の侵害に当たらないとしたうえで、次のように書かれています。

「扶養義務者と相談してからではないと申請を受け付けない」などの対応は申請権の侵害に当たるおそれがある。 また、相談者に対して扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い、その結果、保護の申請を諦めさせるようなことがあれば、これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。

厚生労働省も「生活保護を申請したい方へ」のページで、扶養義務者の扶養は保護に優先するとしたうえで、「例えば、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と明記しています。

申請から決定までの流れ

申請してから決定が通知されるまでの日数

14日以内に通知(原則)
特別な理由があるときは30日まで
申請した日14日
生活保護法第24条第5項・第6項によるものです。30日まで延ばせるのは、扶養義務者の資産及び収入の状況の調査に日時を要する場合など特別な理由があるときで、延ばした場合は決定の書面に理由を明示することになっています。
段階 行われること 根拠・目安
事前の相談 福祉事務所の生活保護担当で制度の説明を受け、生活福祉資金や他の社会保障施策の活用も検討します 厚生労働省「生活保護の手続きの流れ」
保護の申請 氏名・住所、保護を受けようとする理由、資産及び収入の状況などを記載した申請書を提出します。申請書を作成できない特別の事情があるときは、申請書がなくても申請できます 生活保護法第24条第1項
調査 実地調査(家庭訪問等)、預貯金・保険・不動産等の資産調査、扶養義務者による扶養の可否の調査、年金等の社会保障給付や就労収入等の調査、就労の可能性の調査 厚生労働省「生活保護の手続きの流れ」、法第28条・第29条
決定の通知 保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、理由を付けた書面で通知されます 法第24条第3項・第4項
決定までの日数 申請のあった日から14日以内。扶養義務者の資産及び収入の状況の調査に日時を要する場合その他特別な理由がある場合は30日まで延ばせます。延ばした場合は書面に理由を明示することになっています 法第24条第5項・第6項

申請できるのは、本人だけではありません。生活保護法第7条は、保護は「要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始する」と定めています。同条ただし書では、要保護者が急迫した状況にあるときは、申請がなくても必要な保護を行うことができるとされています。

申請できる場所

窓口は、現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。

福祉事務所を設置していない町村にお住まいの方は、町村役場でも申請の手続きを行うことができます。厚生労働省のQ&Aにもそう書かれていますし、生活保護法第24条第10項でも、保護の開始または変更の申請は町村長を経由してすることもできると定められています。この場合、町村長は申請を受け取ってから5日以内に、必要な事項を記載した書面を添えて保護の実施機関に送付することとされています。

書類がそろっていないとき

厚生労働省は「必要な書類が揃っていなくても申請はできます」と書いています。課長通知の質疑応答でも、相談段階で資料の提出を求めること自体は申請権の侵害に当たらないとしたうえで、「『資料が提出されてからでないと申請を受け付けない』などの対応は適切ではない」とされています。申請から決定までの間に書類を出すことでも差し支えないとも書かれています。

住むところがない方についても、厚生労働省は「まずは現在いる場所のお近くの福祉事務所へご相談ください」「例えば、施設に入ることに同意することが申請の条件ということはありません」と案内しています。

申請の前に相談できる別の窓口

生活保護に至る前の段階の支援として、生活困窮者自立支援制度があります。窓口は自立相談支援機関です。

厚生労働省は、この制度の対象を「仕事が見つからない」「働きたくても働けない」「家賃を払えない」「住むところがない」「社会に出るのに不安を感じる」といった状況にある方と説明しています。支援員が相談を受けて、必要な支援を一緒に考え、支援プランを作成します。

主な事業には次のようなものがあります。

  • 自立相談支援事業。 相談を受けて支援プランを作り、自立に向けた支援を行います。
  • 住居確保給付金。 離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方に、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給します(一定の資産・収入等の要件があります)。
  • 家計改善支援事業。 家計の状況を整理し、家計を自分で管理できるように支援します。
  • 就労準備支援事業、就労訓練事業。 すぐに就労することが難しい方に、段階を踏んだ支援を行います。
  • 居住支援事業。 住居をもたない方などに、一定期間、宿泊場所や衣食を提供します。

どちらの窓口に行くべきか迷う場合、先に自立相談支援機関に相談しても、生活保護の担当に相談しても構いません。厚生労働省の説明でも、生活保護の事前の相談では生活福祉資金や各種社会保障施策の活用についても検討することになっています。窓口どうしはつながっています。

他の制度を受けている場合

障害年金や傷病手当金を受けていることは、生活保護の対象外になる理由ではありません。他法他施策優先というのは、使える制度は先に使うという順番の話です。それらを収入として計算したうえで、最低生活費に足りなければ差額が対象になりえます。

現在の状況によっては、生活保護よりも先に確認したほうがよい制度があります。

それでも判断がつかないときは

制度の説明を読んでも、自分が当てはまるかどうかは分からないと思います。最低生活費は級地と世帯構成で変わりますし、資産や扶養についての判断は個別の事情を見て行われます。一般論だけで結論が出ない設計になっています。

確実なのは、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当に聞くことです。福祉事務所を設置していない町村にお住まいなら、町村役場でも手続きができます。生活保護に至る前の支援について知りたい場合は、自立相談支援機関という別の窓口もあります。

相談に行く前にできる準備としては、いま手元にいくらあるか、毎月の収入がいくらか、家賃がいくらかを紙に書き出しておくくらいで十分です。書類がそろっていなくても申請はできますし、そろえてからでないと受け付けないという対応は適切でないと国も示しています。

厚生労働省が「ためらわずにご相談ください」と書いているのは、ためらう人が多いことを分かったうえでのことです。まず聞いてみる、というところから始めて構いません。

わたしたちは就労支援の現場で、生活保護を使いながら通ってこられる方に会います。申請してよかったと話す方も、相談に行くまでにはずいぶん時間がかかっています。ためらいの理由は制度の中身ではなく、断られたらどうしようという想像のほうであることが多いように見えます。条件に当てはまるかどうかを判断するのは福祉事務所なので、当てはまらないと自分で決めてしまわなくて大丈夫です。