生活保護について調べていると、「デメリット」という言葉が必ず一緒に出てきます。受けたら車を手放すことになる、カードが使えなくなる、家を売らされる、一生抜けられない。そういう話が並んでいて、読むほど決めにくくなります。
先にお伝えしておきたいことがあります。この分野で流れている情報には、制度として一律に決まっていることと、福祉事務所の判断による部分が大きいことが混ざっています。そして後者を「絶対にできません」と書いてしまっている記事が少なくありません。
ここでは、生活保護法の条文と、厚生労働省が出している実施要領(都道府県知事や指定都市長にあてた通知で、実際の運用の基準になっているもの)で確認できることだけを使って整理します。確認できなかったことは、確認できなかったと書きます。受給の要件や申請の流れは生活保護を受けられる条件に、いくら受け取れるかは生活保護でもらえる金額にまとめています。
「デメリット」として検索されていること
デメリットとして語られていることは、2つに分かれます
実際に検索されている不安を並べると、次のように整理できます。まず一覧で答えを書いておきます。
| 心配されていること | 確認できた範囲での答え |
|---|---|
| 車を持てなくなるのではないか | 一律の禁止ではありません。通勤や通院などのために保有が認められる場合が通知に定められています。当てはまるかどうかの判断は福祉事務所が行います |
| クレジットカードが使えなくなるのではないか | 公的な一次情報を確認できませんでした。カード会社の審査基準は各社が定めるものです |
| 持ち家を売らされるのではないか | 居住している家屋は「保有を認めること」と通知にあります。処分価値が利用価値に比べて著しく大きい場合は例外です |
| 働いても意味がないのではないか | 勤労控除があり、就労収入の全額が差し引かれるわけではありません |
| ケースワーカーの訪問や指導があるのか | あります。家庭訪問は少なくとも年2回以上。指導や指示は「必要の最少限度」に限ると条文にあります |
| 医療費はどうなるのか | 国民健康保険からは外れ、医療扶助になります。費用は原則として医療機関へ直接支払われます |
| 引っ越しはできるのか | 住宅扶助に上限額があり、転居に敷金等が出る場合は通知に列挙されています |
| 近所や勤務先に知られるのか | 近隣へ知らせる仕組みは確認できませんでした。勤務先には報告を求めうる規定があります |
| 一生抜けられなくなるのではないか | 保護を必要としなくなったときは停止または廃止すると条文にあります |
以下、ひとつずつ根拠を示していきます。
自動車を持てるのか
「生活保護 車」は特に多く検索されている組み合わせです。ここが、一律の禁止と福祉事務所の判断がいちばん混同されやすいところでもあります。
原則と、その例外が定められています
前提として、生活保護法第4条は「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定めています。資産は活用するのが原則です。
そのうえで、厚生事務次官通知(実施要領)は、処分させなくてよい資産として5つの類型を挙げています。そのひとつが「社会通念上処分させることを適当としないもの」で、自動車の保有はこれに当たるかどうかという形で、保護課長通知(生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて)に細かく書かれています。
通勤に使う場合
保護課長通知は、自動車による以外に通勤する方法が全くないか、または通勤することがきわめて困難であり、かつその保有が社会的に適当と認められるときとして、次の4つの場合を挙げています。
- 障害者が自動車により通勤する場合
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する者等が自動車により通勤する場合
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域にある勤務先に自動車により通勤する場合
- 深夜勤務等の業務に従事している者が自動車により通勤する場合
このうち2から4については、さらに次のすべてに当てはまる場合に限るとされています。世帯状況からみて自動車による通勤がやむを得ず、その勤務が世帯の自立の助長に役立っていると認められること。地域の自動車の普及率を勘案して、自動車を保有しない低所得世帯との均衡を失しないこと。処分価値が小さく、通勤に必要な範囲の自動車と認められること。そして、その勤務に伴う収入が自動車の維持費を大きく上回ることです。
条件は細かいのですが、少なくとも「生活保護なら車は絶対に持てない」という説明が通知の内容と違うことは、この記述から分かります。
通院や通所、通学に使う場合
働いていない場合についても規定があります。保護課長通知は、障害のある方(お子さんを含みます)が通院、通所、通学のために自動車を必要とする場合と、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住する方が通院等のために自動車を必要とする場合について、保有を認めて差し支えないとしています。
こちらも条件が付いています。定期的に自動車が利用されることが明らかであること、送迎サービスや扶養義務者による送迎などの活用が困難であること、処分価値が小さく通院等に必要最小限のもの(排気量がおおむね2000cc以下)であること、維持に要する費用が他からの援助等で確実にまかなわれる見通しがあること、本人か生計同一者もしくは常時介護者が運転することです。
さらに通知は、これらの要件に該当しない場合であっても「その保有を認めることが真に必要であるとする特段の事情があるとき」には、厚生労働大臣に情報提供することとしており、例外の余地を残しています。
申請の時点で働いていない場合
失業や傷病で働くのを中断している時期に申請する場合についても記述があります。保護課長通知は、おおむね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる人であって、保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるものについては、処分の指導を行わないものとして差し支えないとしています。6か月を過ぎても脱却していない場合でも、就労を阻害する要因がなく、自立支援プログラムなどにより具体的に就労に向けた活動が行われている人については、保護開始からおおむね1年の範囲内で処分の指導を行わないことができるとされています。
ただし通知には、この扱いはあくまで処分の指導を保留しているだけであり、その期間中に車の使用を認める趣旨ではないと明記されています。
ここが自治体差の出るところです
正直に書きます。ここまで挙げた条件は、どれも「著しく困難な地域」「社会的に適当」「処分価値が小さく」といった、あてはめの余地がある言葉でできています。同じ状況でも、地域の実情や福祉事務所の判断によって結論が変わりうる部分です。
ですから、この記事で言えるのは「一律の禁止ではなく、認められる場合が通知に定められている」というところまでです。自分の場合にどうなるかは、お住まいの地域の福祉事務所に、車の使い道と生活の状況を具体的に伝えて確認してください。
クレジットカードは使えるのか
これは正直に書きます。確認できませんでした。
クレジットカードの保有や利用について定めた公的な一次情報を探しましたが、生活保護法にも、厚生労働省の実施要領にも、それに当たる記述を見つけられませんでした。したがってこの記事では「持てません」とも「問題なく使えます」とも書けません。
確認できた範囲で言えることは2つです。ひとつは、カードを作れるかどうかは各カード会社が定める審査の基準によるということ。これは生活保護に限った話ではありません。もうひとつは、生活保護法第61条により、収入や支出その他生計の状況に変動があったときは速やかに届け出る義務があるということです。手元に入ってきたお金についての申告の義務は、支払い方法とは別に存在します。
なお申告の頻度については保護課長通知に規定があり、資産は少なくとも12か月ごと、収入は就労が可能と判断される人は原則として毎月、就労が困難と判断される人は少なくとも12か月ごととされています。
持ち家と預貯金の扱い
住んでいる家
厚生労働省は「生活保護を申請したい方へ」のページで、持ち家がある人でも申請できると案内しています。この案内の根拠は、社会局長通知(生活保護法による保護の実施要領について)の資産の活用の章にあります。
そこには、当該世帯の居住の用に供される家屋について「保有を認めること」と書かれています。ただし書きとして、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものは例外とされています。土地についても、居住する家屋に付属した土地で建築基準法に規定する必要な面積のものは保有を認めることとされています。
その判断が難しい場合は、原則として各実施機関が設置するケース診断会議等で総合的に検討することになっています。通知には、その際「当該世帯に将来の生活の不安を抱かせることのないよう配慮する必要がある」とも書かれています。家を持っているというだけで、その場で申請が門前払いになる仕組みにはなっていません。
ローンが残っている家
ここは扱いが違います。保護課長通知は、ローンにより取得した住宅でローン完済前のものを保有している人を保護した場合、結果として生活に充てるべき保護費からローンの返済を行うことになるので、原則として保護の適用は行うべきではないとしています。
住宅ローンが残っている場合は、この点を先に福祉事務所に伝えて相談したほうが、話が早く進みます。
預貯金
申請の時点で持っている預貯金は、活用すべき資産として扱われるのが原則です。株券や国債証券、投資信託の受益証券など資産形成に資する有価証券、貴金属および債券は、保有を認められないとされています。
一方で、受給が始まったあとの話は別です。保護課長通知は、支給された保護費のやりくりによって生じた預貯金等について、保護開始時に保有していたものではないこと、収入の未申告などの不正な手段により蓄えられたものではないことを確認したうえで、使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合は、活用すべき資産には当たらないものとして保有を容認して差し支えないとしています。
生活用品では、家具什器や衣類寝具は世帯の人員や構成から判断して必要と認められる品目と数量は保有を認めること、趣味装飾品は処分価値の小さいものは保有を認めることとされています。ルームエアコンの保有を認めてよいかという問いに対しては、通知に「お見込みのとおり」と書かれています。
働いて収入を得たときにどうなるか
「働いても保護費が同じだけ減るなら意味がない」という話をよく見かけます。ここは仕組みを知っておくと見方が変わる部分なので、少し詳しく書きます。
まず、申告の義務があります
生活保護法第61条は、収入、支出その他生計の状況について変動があったとき、または居住地もしくは世帯の構成に異動があったときは、速やかに福祉事務所長等に届け出なければならないと定めています。働いて収入を得たら、その事実は申告するものだという前提です。また第60条には、常に能力に応じて勤労に励み、健康の保持及び増進に努め、収入や支出の状況を適切に把握し、生活の維持及び向上に努めなければならないという規定があります。
福祉事務所の側にも、収入の状況を客観的に把握するため、毎年6月以降、課税資料の閲覧が可能となる時期に速やかに課税の状況を調査し、収入申告額との突合作業を実施するという規定があります。申告していない収入は、あとから分かる仕組みになっているということです。
勤労控除という仕組みがあります
そのうえで、申告した就労収入がまるまる差し引かれるわけではありません。
厚生事務次官通知は、勤労収入を得ている人について、勤労に伴う必要経費として基礎控除額表の額を認定することとしています。加えて、勤労収入を得るための必要経費として、社会保険料、所得税、労働組合費、通勤費等の実費の額を認定するとされています。
厚生労働省の制度概要資料は、基礎控除について「就労に伴い経常的に生じる就労関連経費を補填するとともに、就労意欲の助長を促進するため、就労収入の一部を手元に残すもの」と説明し、就労収入額に応じて設定されること、就労収入額に比例して控除額が増加することを示しています。
基礎控除のほかに、次の2つの控除もあります。2026年8月時点で厚生労働省のサイトに掲載されている実施要領の本文では、次の額が示されています。
| 控除 | 対象 | 額 |
|---|---|---|
| 新規就労控除 | 新規に就労したため特別の経費を必要とする人 | 月額12,900円 |
| 20歳未満の人への控除 | 就労している20歳未満の人 | 月額11,900円 |
金額は年度ごとに見直されるものなので、最新の額は福祉事務所で確認してください。なお、通勤用や事業用の自動車の保有が認められた人については、燃料費や車検費用、自賠責保険料、自動車税等も、必要最小限度の額の範囲で必要経費として控除して差し支えないとされています。
「働いた分がそのまま消える」という説明は、少なくとも制度の設計とは違います。もっとも、控除の額は決して大きくありません。働けば生活が一気に楽になるという意味ではないことも、あわせて書いておきます。
ケースワーカーの訪問と指導
家庭訪問があります
社会局長通知は、生活状況等を把握して援助方針に反映させることや、自立を助長するための指導を行うことを目的として訪問を行うと定めています。保護の開始または変更の申請等があった場合は、申請書等を受理した日から1週間以内に訪問して実地に調査することとされ、その後の計画的な訪問は、世帯の状況に応じて必要な回数を訪問することとし、少なくとも1年に2回以上とされています。
生活保護法第28条には、資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、報告を求めたり、居住の場所に立ち入って調査させたりすることができるという規定があります。ただし同条第4項には「立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と書かれています。
指導・指示には条文上の限度があります
生活保護法第27条は、福祉事務所が被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導または指示をすることができると定めています。ここだけを読むと、何でも言われるように感じるかもしれません。
同じ条文には続きがあります。第2項は「前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない」、第3項は「第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない」と定めています。
指導や指示に従う義務は第62条にあり、これに違反したときは保護の変更、停止または廃止をすることができるとされています。ただし同条第4項は、その処分をする場合には本人に弁明の機会を与えなければならず、あらかじめ処分をしようとする理由と弁明をすべき日時および場所を通知しなければならないと定めています。処分に納得できない場合の審査請求の手続きも、法律に定められています。
制度としては、一方的に決められて終わりという作りにはなっていません。
医療はどうなるのか
国民健康保険からは外れ、医療扶助になります
国民健康保険法第6条は、都道府県等が行う国民健康保険の被保険者としない人を列挙しており、その第9号に「生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。)に属する者」が入っています。保護が始まると国民健康保険からは外れ、医療は医療扶助という形で受けることになります。
厚生労働省の医療扶助運営要領は、医療扶助による診察、薬剤、医学的処置、手術等の診療の給付は医療券を発行して行うと定めています。医療券は暦月を単位として発行され、福祉事務所において所要事項を記載し、福祉事務所長印を押したものをもって有効とされます。医療の給付は、生活保護法の指定を受けた医療機関に委託して行われます。令和6年(2024年)3月1日からは、マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認も始まっています。
厚生労働省の制度概要資料では、医療扶助について「費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)」と説明されています。原則として窓口での自己負担は生じません。ただし医療券には本人支払額を記入する欄があり、収入の状況によっては本人が支払う額が設定される場合があります。
自立支援医療との関係
通院にかかる医療費を軽くする制度としては、自立支援医療(精神通院医療)があります。厚生労働省は、精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有し、通院による精神医療を継続的に要する人を対象とすると説明しています。
生活保護を受けている間の医療費は医療扶助として支給されるので、通院費の自己負担はこの間は原則として発生しません。関係が出てくるのは、保護が停止または廃止されて医療費の自己負担が戻ってきたあとです。手続きの流れは自立支援医療制度で通院費の負担を軽くする手順に書いています。
引っ越しはできるのか
引っ越しについては、2つのことが関わってきます。
ひとつは、生活保護法第61条の届出義務です。居住地や世帯の構成に異動があったときは速やかに届け出なければならないとされているので、転居は事後報告で済ませられるものではありません。実際には、先に福祉事務所に相談する形になります。
もうひとつは、住宅扶助に上限額があることです。厚生労働省の制度概要資料では、住宅扶助は実費で、地域に応じて上限額が設定されると説明されています。同資料に示されている令和7年(2025年)4月時点の基準額の例では、東京23区の場合、単身世帯で月5万3,700円以内となっています。金額は地域と世帯人員によって変わり、年度ごとに見直されるので、お住まいの地域の額は福祉事務所で確認してください。
転居のときの敷金等が住宅扶助として認められる場合については、保護課長通知に18の類型が列挙されています。指導に基づいて現在よりも低額な住居に転居する場合、退職等により社宅から転居する場合、火災等の災害や老朽・破損により居住にたえない状態になった場合、家主から相当の理由をもって立退きを要求された場合、離婚により新たに住居を必要とする場合などです。現在の居住地が就労の場所から遠く通勤が著しく困難で、その近くに転居することが世帯の自立助長に特に効果的に役立つと認められる場合も含まれています。
引っ越しができないわけではありません。ただし、自分の都合だけで先に決めてしまうと住宅扶助の扱いで困ることになるので、先に相談するという順番が大事になります。
家族や周囲に知られるのか
親族への扶養照会
生活保護法第4条第2項は、民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとすると定めています。この規定があるため、扶養についての照会が行われる場合があります。一方で厚生労働省は「生活保護を申請したい方へ」のページで、「扶養義務者の扶養は保護に優先しますが、例えば、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということはありません」と明記しています。
扶養照会の具体的な扱いは生活保護を受けられる条件のほうで扱っています。
勤務先や銀行への調査
これは事実として書いておきます。生活保護法第29条は、保護の決定や実施のために必要があると認めるときは、官公署や日本年金機構等に対して必要な書類の閲覧や資料の提供を求め、または「銀行、信託会社、次の各号に掲げる者の雇主その他の関係人」に報告を求めることができると定めています。社会局長通知の関係機関調査の項にも、年金事務所、公共職業安定所、事業主、保健所、指定医療機関等の関係機関について必要事項を調査することとされています。
必要があると判断された場合に勤務先へ照会が行くことは、制度上ありうる話です。ここを「絶対に知られません」と書くことはできません。
近所に知られるのか
近隣住民に知らせる仕組みについては、確認できませんでした。 生活保護法にも実施要領にも、受給していることを近所に通知する規定を見つけられませんでした。
一方で、家庭訪問は少なくとも年2回以上行われるものとされています。訪問があること自体は制度に書かれていることなので、そこは知っておいてください。
「デメリット」ではなく、誤解であるもの
最後に、デメリットとして語られていることのうち、制度の説明と食い違っているものを2つ整理しておきます。
一度受けたら一生抜けられない
生活保護法第26条は「保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない」と定めています。必要がなくなれば終わるものだ、というのが条文の書き方です。
抜けるときの制度もあります。生活保護法第55条の4は、被保護者の自立の助長を図るため、厚生労働省令で定める安定した職業に就いたことその他の事由により保護を必要としなくなったと認められた人に対して、就労自立給付金を支給すると定めています。
資産をすべて失う
ここまで見てきたとおり、居住している家屋は保有を認めることとされ、生活に必要な家具什器や衣類寝具も、処分価値の小さい物品も保有が認められています。自動車についても、認められる場合が具体的に定められています。
厚生労働省が「生活保護を申請したい方へ」のページで、必要な書類が揃っていなくても申請はできること、住むところがない人でも申請できること、持ち家がある人でも申請できること、自営業に必要な店舗や器具も保有できる場合があることを並べて案内しているのは、この誤解が実際に申請の妨げになっているからだと思われます。
ここまでを踏まえて
はっきり決まっているのは、資産の活用が原則であること(法第4条)、収入や住まい、世帯構成の変動を届け出る義務があること(法第61条)、指導や指示に従う義務があること(法第62条)、そして医療は医療扶助になり国民健康保険からは外れること(国民健康保険法第6条)です。
一方で、車を持てるか、家を残せるか、どこに引っ越せるかといった部分は、通知に判断の枠組みが定められていて、そのあてはめを福祉事務所が行います。ここを「絶対にできない」と決めつけて調べるのをやめてしまうと、実際には認められたかもしれない選択肢を自分で外してしまうことになります。
現実的な進め方をひとつだけ書いておきます。お住まいの自治体の福祉事務所に相談するとき、車の使い道、住んでいる家の状況、いま働けているかどうかを、そのまま話してみてください。相談したからといって申請が始まるわけではありません。厚生事務次官通知(生活保護法による保護の実施要領について)にも、保護の相談に当たっては相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も慎むことと明記されています。
わたしたちは就労支援の現場で、生活保護を受けている方とも、受けずに踏みとどまっている方とも接します。踏みとどまる理由として聞くことが多いのは、この記事で挙げたような制約そのものより、周囲にどう見られるかのほうです。制約のほうは条文と通知で範囲が決まっていますが、周囲の目のほうは範囲が決まっていません。範囲が決まっているものから確かめていくと、判断がしやすくなります。
