障害年金は、病気やけがで生活や仕事に制限が出たときに受け取れる公的年金です。老後の年金とは別のもので、現役世代でも受け取れます。
ただ、「自分は対象になるのか」を知りたくて調べ始めると、途中で分からなくなることが多い制度でもあります。病名の話、等級の話、診断書の話が同時に出てきて、結局どこを見れば自分のことが判断できるのかがぼやけてしまうからです。
実際のところ、対象になるかどうかは3つの条件を順番に確かめる作業です。それ以上でも以下でもありません。ここでは日本年金機構の資料と、根拠になっている条文だけを使って、その3つを順に開いていきます。どれで引っかかっているのかが分かれば、次にやることも決まります。
条件は3つ。全部そろって、はじめて対象になります
日本年金機構の「障害年金ガイド」は、次の3つのすべてに該当する方が受給できる、と書いています。
- 障害の原因となった病気やけがの初診日が、対象になる期間にあること
- 初診日の前日において、保険料の納付要件を満たしていること
- 障害認定日に、障害等級表に定める状態に当たっていること
大事なのは、この3つが「どれかを満たせばいい」ものではないという点です。3つとも満たして、はじめて対象になります。どんなに状態が重くても、初診日が特定できなければ判定に進めませんし、納付要件を満たしていなければ支給されません。
逆に言えば、確かめる順番は決まっています。まず初診日を決める。次にその日を基準に納付記録を見る。最後に状態を見る。この順で進めれば、途中で迷子になりません。
1つめ 初診日。すべてがここから決まります
初診日とは、障害の原因になった病気やけがについて、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日です。同じ病気で転院している場合は、いちばん最初に診療を受けた日が初診日になります。いま通っている病院に初めて行った日ではありません。
この日が決定的なのは、あとの2つの条件がどちらもこの日を基準に測られるからです。納付要件は「初診日の前日において」判定され、障害認定日は「初診日から1年6か月」で決まります。初診日が動けば、全部が動きます。
そして初診日には、もうひとつ大きな役割があります。その日にどの年金制度に入っていたかで、請求できる年金の種類が変わります。
| 初診日に入っていた制度 | 請求できるもの | 対象になる等級 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険の被保険者(会社員・公務員など) | 障害厚生年金 | 1級・2級・3級(+障害手当金) |
| 国民年金の被保険者(自営業、無職、学生、配偶者の扶養に入っている方など) | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
| 20歳前で年金制度に加入していない期間 | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
| 60歳以上65歳未満で日本に住んでいて年金制度に加入していない期間 | 障害基礎年金 | 1級・2級のみ |
ここで注意したいのは、障害基礎年金には3級がないことです。同じ状態でも、初診日に厚生年金に入っていた方は3級で受け取れる可能性があり、国民年金だった方は2級に届かなければ支給されません。なお、障害厚生年金の1級・2級に当たる場合は、障害基礎年金もあわせて受け取れます。
「国民年金の被保険者」の範囲は、思っているより広いです。国民年金法7条は被保険者を3つに分けていて、自分で保険料を納める第1号被保険者のほか、厚生年金に入っている会社員などが第2号被保険者、その配偶者に扶養されている方が第3号被保険者になります。会社員の配偶者の扶養に入っていた期間も、国民年金に加入していた期間です。
2つめ 保険料の納付要件。多くの方がここでつまずきます
3つのうち、あとから取り返しがつかないのがこの条件です。だからいちばん丁寧に見ておきます。
原則は「3分の2以上」
条文はこう書いています。国民年金法30条1項のただし書は、「当該傷病に係る初診日の前日において、当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない」としています。厚生年金保険法47条1項のただし書も同じ形です。
読みにくいので、数え方に置き換えます。
- 数える終わりは、初診日がある月の前々月です。初診日の月と、その前の月は入りません。
- 分母は、そこまでの被保険者期間の全部です。
- 分子は、そのうち保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間です。
- この分子が分母の3分の2以上あれば、原則の要件を満たします。
障害年金ガイドが挙げている例で言うと、20歳から初診日がある月の2か月前までの被保険者期間が15か月あり、そのうち納付済期間と免除期間が12か月ある場合、必要なのは10か月以上なので要件を満たしている、という数え方になります。
特例は「直近1年間に未納がなければよい」
3分の2に届かなくても、もうひとつ道があります。日本年金機構は、初診日が令和18年3月末日までにあるときは、次の両方に当てはまれば納付要件を満たしたものとされる、と説明しています。
- 初診日において65歳未満であること
- 初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
この特例は、国民年金法の本体ではなく附則に置かれています。根拠は昭和60年5月1日法律第34号(国民年金法等の一部を改正する法律)の附則20条で、「障害基礎年金等の支給要件の特例」という見出しがついています。ここで30条1項ただし書の「三分の二に満たないとき」という文言に、直近1年間に未納がないときを除く、という読み替えが入る仕組みです。厚生年金保険法についても同じ改正法の附則64条に同じ形の規定があり、どちらも「初診日において65歳以上であるときは、この限りでない」とただし書で釘を刺しています。
つまり、原則の3分の2は本則にあり、直近1年の特例は附則にある時限的な措置です。附則が「令和18年4月1日前」と期限を切っているのは、そのためです。
若いうちに働き始めて厚生年金に入り、その後に体調を崩して国民年金に切り替えた、というような経歴の方は、過去に未納の時期があっても直近1年で救われることがよくあります。3分の2の計算だけを見て諦めないでください。
「初診日の前日において」が意味していること
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
条文にも日本年金機構の説明にも、必ず「初診日の前日において」と書かれています。これは飾りではなく、判定に使う記録を撮影する日を固定している言葉です。納付記録の写真は初診日の前日に撮られ、それ以降の動きは写りません。
具体的には、こうなります。
- 初診日よりあとに未納分を納めても、この判定には入りません。
- 初診日よりあとに過去の期間の免除を申請して承認されても、この判定には入りません。
日本年金機構は、「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」のページで、この点をはっきり書いています。未納のままにしておくと障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取れない場合があるとしたうえで、「不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません」としています。
体調を崩してから障害年金のことを知り、慌てて役所に走る、という順番になるのが普通です。けれど制度は、そのタイミングでの巻き返しを認めていません。厳しい設計ですが、逆に言えば初診日より前に手を打ってあれば効くということでもあります。
だから、いま保険料を納めるのが難しい方にお伝えしたいのは、未納のまま放っておかないでほしい、ということです。免除や納付猶予を申請して承認されていれば、その期間は納付要件の計算に入ります。日本年金機構は、免除・納付猶予の申請ができるのは保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)だとしています。過去の分についても、まだ間に合う範囲があります。
免除・納付猶予・未納は、まったく違う扱いです
同じ「保険料を払っていない」でも、手続きをしてあるかどうかで扱いが分かれます。日本年金機構の整理は次のとおりです。
| 状態 | 老齢基礎年金の受給資格期間 | 老齢基礎年金の年金額への反映 | 障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間 |
|---|---|---|---|
| 納付 | あり | あり | あり |
| 全額免除 | あり | あり(割合は減る) | あり |
| 一部免除(減額分を納付している場合) | あり | あり(割合は減る) | あり |
| 納付猶予 | あり | なし | あり |
| 未納 | なし | なし | なし |
いちばん右の列が、障害年金の納付要件に関わるところです。未納だけが、どこにも算入されません。納付猶予は老齢基礎年金の年金額には反映されませんが、障害基礎年金の受給資格期間には算入されます。
学生納付特例と、20歳以上50歳未満の方が使える納付猶予についても同じです。国民年金法90条の3と、平成26年法律第64号の附則14条は、これらの期間を国民年金法5条3項の「保険料全額免除期間」に算入すると定めていて、条文のうえでも免除期間として扱われます。
学生の頃に納付特例を使っていた、失業したときに免除を申請していた、という方は、その期間が味方になります。記憶があいまいなら、記録を見て確かめてください。
20歳前に初診日がある場合は、納付要件が問われません
初診日が20歳前で、そのとき年金制度に加入していなかった場合、保険料の納付要件は不要です。まだ保険料を納める立場になっていない時期だからで、日本年金機構も「年金の加入を要件としていない」と説明しています。この場合は障害基礎年金の対象になり、障害認定日以後に20歳になったときは20歳に達した日、障害認定日が20歳より後のときはその障害認定日に、等級に当たる状態かどうかを見ます。
ただし、納付要件が問われないかわりに所得による支給制限があります。ここは通常の障害年金にはない、20歳前傷病だけの取り扱いです。
| 前年の本人の所得額 | 支給のされ方 |
|---|---|
| 4,794,000円を超える | 年金の全額が支給停止 |
| 3,761,001円から4,794,000円 | 2分の1の年金額が支給停止 |
| 3,761,000円以下 | 全額支給 |
扶養親族がいる場合は、1人につき所得制限額に38万円が加算されます。対象となる扶養親族が老人控除対象配偶者または老人扶養親族のときは1人につき48万円、特定扶養親族または19歳未満の控除対象扶養親族のときは1人につき63万円の加算です。
支給の対象期間は10月分から翌年9月分までで、毎年、前年の所得の確認が行われます。このほか、恩給や労災保険の年金等を受けているときはその分が調整され、海外に居住したときや刑務所などの矯正施設に入所した場合は全額が支給停止になります。
なお、20歳前でも働いていて厚生年金に入っていた場合は、この扱いにはなりません。初診日に厚生年金の被保険者だったなら通常のルートに乗り、納付要件も判定されます。20歳前かどうかではなく、その日に加入していたかどうかで決まります。
3つめ 障害認定日に、等級に当たる状態であること
3つめの条件は、状態の重さです。ただし「いつの時点の状態か」が決まっていて、その日を障害認定日といいます。
障害認定日は、初診日から起算して1年6か月を経過した日です。その期間内に傷病が治った場合には、その治った日が障害認定日になります。ここでいう「治った」には、症状が固定して治療の効果が期待できない状態に至った日が含まれます。完治という意味ではありません。
障害認定基準は、この考え方を「障害の程度の認定を行うべき日」と定義したうえで、「傷病が治った場合」とは、器質的な欠損や変形、機能障害を残している場合には、医学的に傷病が治ったとき、またはその症状が安定し長期にわたって固定性が認められ医療効果が期待し得ない状態に至った場合をいう、と説明しています。
つまり、原則としては初診日から1年6か月待つことになります。「調子が悪いのですぐ申請したい」と思っても、この期間があることは知っておいてください。
障害認定日に等級に当たる状態でなかった場合でも、道が閉じるわけではありません。その後に悪化して等級に当たる状態になったときは、事後重症による請求ができます。この場合の受け取りは請求日の翌月分からで、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。請求が遅くなるとその分だけ受け取りの開始が後ろにずれるので、該当しそうだと思ったら早めに窓口に相談してください。
等級の状態は、日本年金機構が次のように説明しています。
| 等級 | 状態の説明 |
|---|---|
| 1級 | 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方など |
| 2級 | 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害。家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方など |
| 3級 | 労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方(厚生年金保険のみ) |
障害年金ガイドには、この等級表について「身体障害者手帳の等級とは異なります」という注記がついています。手帳の等級と年金の等級は、別の制度で別々に判定されるものです。
精神疾患の場合に等級がどう判断されるのか、日常生活能力がどう見られるのか、実際に受け取れる金額がいくらになるのかは、精神疾患での障害年金。もらえる条件と、申請の現実にまとめてあります。状態の目安と金額を知りたい方は、そちらを見てください。
3級より軽いときの障害手当金
初診日に厚生年金の被保険者だった方には、もうひとつ、障害手当金という一時金の制度があります。障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときのものです。
条件は、初診日から5年を経過する日までの間に傷病が治っていること、治った日に障害厚生年金を受け取れる状態よりも軽いこと、そして厚生年金保険法施行令の別表に定める障害の状態であることです。厚生年金保険法55条2項は47条1項ただし書を準用しているので、障害手当金にも同じ保険料の納付要件がかかります。
なお、障害認定日において国民年金・厚生年金・共済年金を受け取っている方や、労働基準法・労災保険法などによる障害補償を受け取っている方は、障害手当金を受け取れません。
自分が条件を満たしているか、どこで確かめるか
ここまで読んでも「自分がどうなのか」は分からなかったと思います。それが当たり前です。初診日がいつで、その日にどの制度に入っていて、納付記録がどうなっているかは、記録を見ないと確定しないからです。
確かめる先は3つあります。
ねんきん定期便は、毎年の誕生月に届きます。ただし年齢によって中身が違います。50歳未満(35歳・45歳を除く)と50歳以上(59歳を除く)にはハガキで届き、月別の納付状況は直近13か月分しか載りません。35歳・45歳・59歳の年には封書で届き、こちらには年金加入履歴と全期間の月別状況が入っています。手元にあるのがハガキなら、それだけでは3分の2の計算はできません。
ねんきんネットでは、パソコンやスマートフォンから24時間、最新の記録を確認できます。確認できるのは、公的年金制度の加入履歴の一覧、各月の加入状況、各月の国民年金保険料の納付状況、各月の厚生年金保険の標準報酬月額などです。月ごとの納付・未納・免除が見られるので、納付要件を自分で当たってみるならここがいちばん早いです。登録はマイナポータルとの連携か、ユーザIDの取得のどちらかで行います。
年金事務所・街角の年金相談センターの窓口では、記録を出したうえで直接聞けます。予約相談があり、インターネット予約は土日祝日も含めて毎日8時から23時30分まで受け付けています。一般的な問い合わせはねんきんダイヤル(0570-05-1165、050から始まる電話からは03-6700-1165)でも受け付けていて、月曜は8時30分から19時、火曜から金曜は8時30分から17時15分、第2土曜は9時30分から16時です。耳や発声が不自由で電話が難しい方には、ファクシミリによる年金相談も用意されています。
窓口に行く前に、初診日にあたりそうな時期と、その頃の勤務先や加入していた制度をメモしておくと話が早く進みます。分からないところは「分からない」と書いたままで構いません。記録に漏れや誤りがあると感じたときも、窓口で調査を依頼できます。
なお、初診日が国民年金に加入中や20歳前だった場合は、お住まいの市区町村の窓口でも障害基礎年金の請求ができます。初診日が厚生年金に加入中だった場合は、年金事務所か街角の年金相談センターです。
この記事で扱いきれなかったこと
条件のほかに、実際に請求する段になると出てくる論点がいくつかあります。ここでは名前だけ挙げておきます。
初診時の病院が廃院していたり、カルテが残っていなかったりして初診日を証明する書類がそろわないことがあります。日本年金機構は、初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、初診日を合理的に推定できる一定の書類によって本人が申し立てた日が初診日と認められる場合がある、としています。証明が取れないという理由だけで諦める前に、窓口に相談してください。
障害認定日から何年も経っている場合も、請求はできます。障害認定日時点の状態が分かる診断書と、現在の状態が分かる診断書の2枚をそろえる方法が案内されています。ただし5年以上前の年金は時効により受け取れません。
受け取り始めたあとは、障害の状態を定期的に確認するしくみがあります。提出が必要となる年には障害状態確認届(診断書)が誕生月の3か月前の月末に送られてきて、誕生月の末日までに提出します。
どれも、条件の話とは別の段階です。まずは3つの条件のどこに自分がいるのかを確かめるところまでで、今日は十分です。初診日にあたりそうな時期を思い出すだけでも、一歩進んでいます。
わたしたちは就労支援の現場で、自分は条件に当てはまらないと思い込んでいた方に会うことがあります。保険料に未納の時期があった、働いているから無理だろう、といった理由で、確かめる前にあきらめている形です。納付の記録は年金事務所で確認できますし、当てはまるかどうかを判断するのは本人ではありません。条件を読んで迷ったら、それは相談してよいという合図だと思います。
