障害年金について調べていると、「デメリット」という言葉が必ずついてきます。受け取ることで何か不利になるのではないか、あとで困ることになるのではないか、という不安から検索されているのだと思います。
先に結論を書きます。実際に起きる負担はあります。更新のたびに診断書の費用と手間がかかりますし、等級に該当しなくなれば支給は止まります。ただ、ネット上で「デメリット」として並んでいるものの中には、公的な資料で確認すると起きないものと、そもそも公的な資料では確かめようがないものが混ざっています。
この記事では、その3つを分けます。事実として起きること、起きないこと、確認できないこと。確認できないものを「大丈夫です」と言い切ることも、「危ないです」とあおることも、どちらもしません。判断するのは読んでいるあなたなので、材料だけを正確にお渡しします。
なお、もらえる条件や申請の手順そのものについては、精神疾患での障害年金のほうに書いています。この記事は「受け取ったあとに何が起きるか」だけを扱います。
先に一覧で分けます
検索されている「デメリット」を並べると、次のようになります。答えを先に書いておきます。
| 心配されていること | 確認できた範囲での答え |
|---|---|
| 更新のたびに手間や費用がかかるのではないか | かかります。診断書を医師に書いてもらう必要があり、文書料は自費です |
| 途中で止められることがあるのではないか | あります。等級に該当しないと判断されれば支給停止になります |
| 所得が増えると打ち切られるのではないか | 20歳前で、かつ年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金だけ、所得による支給制限があります |
| 将来の老齢年金が減るのではないか | 障害基礎年金1級・2級を受けている間は国民年金保険料が法定免除になり、その期間の老齢基礎年金は2分の1で計算されます。ただし納付の申し出や追納で戻せます |
| 65歳になったら両方満額もらえるのではないか | もらえません。1人1年金が原則で、65歳以後も組み合わせを選ぶ形になります |
| 税金がかかるのではないか | かかりません。国民年金法25条・厚生年金保険法41条2項で公課が禁止されています |
| 家族の扶養から外れるのではないか | 健康保険の被扶養者の収入判定には障害年金が含まれます。金額次第です |
| 会社に知られるのではないか | 請求手続きに勤務先は関わりません。ただし例外が1つあります(後述) |
| 生命保険や住宅ローンの審査に響くのではないか | 公的な資料では確認できませんでした |
| 障害者手帳を取らないと受けられないのではないか | 手帳は障害年金の要件ではありません。別の制度です |
以下、ひとつずつ根拠を示していきます。
実際に起きること
1. 更新のたびに、診断書の費用と手間がかかります
障害年金は、決まったらそれで終わりではありません。障害の状態に応じて提出が必要となる年に、日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が誕生月の3か月前の月末に送られてきます。診断書の欄を医師に記載してもらい、誕生月の末日までに提出します。診断書には、提出期限前3か月以内の障害の状態が記入されている必要があります。
ここが、実務でいちばん確実に発生する負担です。理由は3つあります。
ひとつは費用です。診断書は医師に書いてもらう文書で、文書料は自費になります。公的に統一された金額は定められていないため、いくらかかるかは医療機関によって違います。通院のときに窓口で確認しておいてください。
ふたつめは受診の段取りです。提出期限前3か月以内の状態を書いてもらう必要があるので、その期間に受診し、医師に記載を依頼し、書き上がったものを受け取り、期限までに届くように送る、という流れになります。診断書の作成に何週間かかかる医療機関もあります。届いた時点で受診日を押さえておくほうが安全です。
みっつめは遅れたときの影響です。日本年金機構は、提出が遅れたり記載内容に不備がある場合は年金の支払いが一時止まることがある、と明記しています。うっかりでも止まります。
なお、毎年ではありません。提出が必要になる年は人によって違い、初回は年金証書の「次回診断書提出年月」の欄で確認できます。2回目以降は日本年金機構から届くお知らせで分かります。
2. 等級に該当しなくなれば、支給は止まります
これが2つ目の、確実に存在する制度上のリスクです。障害年金は「一度決まれば一生」という制度ではありません。
障害の程度が軽くなり、年金を受ける程度でなくなったときは、年金が支給停止になります。この場合は「障害給付受給権者 障害不該当届」の提出が必要とされています。逆に等級が下がって減額になることも、上がって増額になることもあります。
ただ、ここは片方だけ書くと誤解を招くので、戻る道もあわせて書きます。障害の程度が軽くなって年金が停止されていた方が、65歳に達するまでに障害の程度が重くなり、障害年金を受けられる程度になったときは、ふたたび年金を受けられるようになります。医師が作成した診断書を添えて「老齢・障害給付 受給権者支給停止事由消滅届」を提出する手続きです。
つまり、止まることはあるけれども、止まったら終わりではありません。ここを知らずに「一度切られたらもう無理だ」と思ってしまう方がいます。そうではありません。
3. 20歳前傷病による障害基礎年金には、所得制限があります
ここは対象になる方が限られますが、当てはまる場合は影響が大きい部分です。
対象になるのは、20歳前で、かつ年金制度に加入していない期間に初診日がある方の障害基礎年金です。年齢だけで決まるものではありません。20歳前であっても、就職して厚生年金に加入していた期間に初診日があれば、それは通常の障害厚生年金のルートになるので、この所得制限はかかりません。
この制限がある理由ははっきりしていて、20歳前傷病による障害基礎年金は保険料を納めたことを前提にしていないからです。日本年金機構の説明は次のとおりです。支給停止は2段階になっています。
| 前年の本人の所得額 | 支給の扱い |
|---|---|
| 4,794,000円を超える | 年金の全額が支給停止 |
| 3,761,001円から4,794,000円 | 2分の1の年金額が支給停止 |
| 3,761,000円以下 | 全額支給 |
扶養親族がいる場合は、1人につき所得制限額に38万円が加算されます。対象になる扶養親族が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは1人につき48万円、特定扶養親族または控除対象扶養親族(19歳未満の方に限ります)であるときは1人につき63万円です。上の表の金額は、令和8年4月時点で扶養親族等がいない場合のものです。
見落としやすいのは期間のずれです。前年の所得にもとづく支給対象期間は「10月分から翌年9月分まで」とされています。所得が増えた年の翌年10月から反映される形になるので、収入が変わった時期と年金が変わる時期がずれます。
このほか、20歳前傷病の障害基礎年金には次の制限もあります。
- 恩給や労災保険の年金等を受けているときは、その受給額について障害基礎年金の年金額から調整されます
- 海外に居住したときや、刑務所等の矯正施設に入所した場合は、年金の全額が支給停止になります(矯正施設に入所していても、有罪が確定していなければ支給停止にはなりません)
この所得制限は、20歳前傷病の障害基礎年金にだけあるものです。 初診日に国民年金や厚生年金に加入していた方の障害年金には、所得による支給制限はありません。「障害年金は働いて稼ぐと打ち切られる」という話が広まっているのは、この20歳前傷病のルールが全体の話として伝わってしまっているためだと思われます。
4. ほかの給付が減ることがあります
障害年金を受け取ることで、別の給付のほうが調整される場合があります。「障害年金が減る」のではなく「ほかが減る」形なので、家計全体で見たときに増え方が思ったより小さくなることがあります。
労災保険の障害給付。同一の病気やけがによって障害年金と労災保険の障害給付が行われるときは、労災保険の給付の一部が減額される場合があります。また、同一の病気やけがで労働基準法の規定による障害補償を受けることができるときは、6年間、障害年金を受け取ることができません。
傷病手当金。過去に傷病手当金を受給した期間に対して、同一の病気やけがで障害厚生年金をさかのぼって受給できることになった場合は、受給済みの傷病手当金が調整されます。すでに受け取ったお金の返金が必要になることがあるということです。該当しそうなときは、加入していた健康保険の保険者に連絡してください。
児童扶養手当。障害年金ガイドには、児童扶養手当の受給者やその配偶者が公的年金制度から年金を受けるようになったり年金額が改定された場合、市区町村から支給されている児童扶養手当が支給停止または一部支給停止される可能性がある、と書かれています。詳細は市区町村の児童扶養手当担当窓口に確認してください。
生活保護。生活保護法4条2項は、他の法律に定める扶助は生活保護に優先して行われると定めています。障害年金を受けられる状態なら先にそちらを受けることになり、受け取った分は保護費の計算に入ります。世帯としての手取りがそのまま増えるわけではありません。ただし障害年金を受けたほうが、手元に残る自由度は上がります。生活保護そのものの検討材料は生活保護のデメリットにまとめています。
老齢年金との関係。65歳以降に「両方満額」にはなりません
ここは誤解というより、単純に知られていない部分です。
1人1年金が原則です
公的年金では、支給事由(老齢、障害、遺族)が異なる2つ以上の年金を受けられるようになったときは、原則としていずれか1つの年金を選ぶことになります。同じ支給事由で受け取れる「老齢基礎年金と老齢厚生年金」や「障害基礎年金と障害厚生年金」は、1つの年金とみなされてあわせて受けられます。
65歳以後には例外があります。障害基礎年金を受けている方が老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けられるようになったときは、65歳以後、障害基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受けることができます。ただし、障害基礎年金と老齢基礎年金という2つの基礎年金をあわせて受けることはできません。
つまり、選ぶ形になります。障害基礎年金と障害厚生年金の組み合わせにするか、老齢基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせにするか、障害基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせにするか。どれが有利かは金額次第なので、年金事務所で試算してもらってください。選択には「年金受給選択申出書」の提出が必要です。
障害基礎年金を受けている方が遺族厚生年金を受けられるようになったときも、同じように65歳以後の組み合わせを選ぶ形になります。
保険料が免除される代わりに、老齢基礎年金は2分の1で計算されます
これが、「将来の老齢年金が減るのか」という不安に対する、いちばん正確な答えです。ここだけは噂ではありません。
障害基礎年金、または被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている方は、国民年金保険料が法定免除になります(国民年金法89条1項)。認定された日を含む月の前月の保険料から免除で、市区役所または町村役場に「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を提出する手続きです。
保険料を払わなくてよくなるので、その場では負担が軽くなります。ただし日本年金機構は、あわせて次のように説明しています。この期間についての老齢基礎年金の額は、平成21年3月以前の期間は1カ月を3分の1、平成21年4月以降の期間は1カ月を2分の1で計算します。
今から先の期間は2分の1で計算されるということです。免除期間が長くなるほど、65歳以降に受け取る老齢基礎年金は満額から離れていきます。
ただし、避ける手段が制度の中に用意されています。
- 納付の申し出。国民年金法89条2項に、免除されることになった保険料について保険料を納付する旨の申し出があったときは、その期間の保険料に限り免除の規定を適用しない、と書かれています。つまり免除に該当していても、自分で納めるという選び方ができます
- 追納。日本年金機構は、その期間にかかる年金額を満額にしたい場合は追納を行うことになる、と案内しています
どちらを選ぶかは家計の状況によります。今の生活が苦しくて障害年金を請求している段階なら、まずは免除を受けて、余裕ができてから追納を検討する形で構いません。大事なのは、放っておくと2分の1で計算されるということを知っておくことです。知らないまま何年も過ぎるのがいちばん惜しい形です。
なお、この仕組みは国民年金の保険料の話です。初診日に厚生年金に加入していて、その後も会社勤めを続けている方は、厚生年金保険料を給与から納め続けることになるので、この法定免除の話は当てはまりません。
税金と社会保険。この2つを混同しないでください
ここが、この記事でいちばん誤解が多いところです。障害年金は非課税です。ただし、収入として数えられる場面はあります。 この2つは矛盾していません。別の制度が別の目的で判定しているだけです。
障害年金は非課税です(条文で確認しました)
根拠は年金の2つの法律にあります。
国民年金法25条(公課の禁止)。「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りでない。」
厚生年金保険法41条2項。「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。」
どちらも本文で公課を禁止し、ただし書きで老齢の年金だけを例外にしています。障害年金は本文のほうに残るので、非課税です。国税庁も「No.2011 課税される所得と非課税所得」で、非課税所得は所得税法および租税特別措置法のほか、その他の法律に規定されていると説明しています。障害年金はこの「その他の法律」に当たります。
実務上どうなるかも書いておきます。日本年金機構は、障害年金や遺族年金は所得税および復興特別所得税の課税対象になっていないため(非課税)、公的年金等の源泉徴収票は送付されないと説明しています。源泉徴収票が送られてくるのは、老齢または退職を支給事由とする年金を受けている方だけです。
したがって、障害年金を受け取っているという理由で確定申告をする必要はありませんし、住民税の計算に入ることもありません。
それでも「収入」として数えられる場面があります
一方で、健康保険の被扶養者になれるかどうかの判定には、障害年金が含まれます。
日本年金機構は、被扶養者の収入要件について次のように案内しています。年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は年間収入180万円未満)であること、かつ同居の場合は収入が被保険者の収入の半分未満、別居の場合は被保険者からの仕送り額未満であること。そのうえで、被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれると明記しています。
添付書類の説明はさらにはっきりしています。「障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税対象となる収入がある場合は、別途『受取金額のわかる通知書等のコピー』が必要になります」。非課税だと分かったうえで、収入として数えると書いてあるわけです。
家族の扶養に入っている方が障害年金を受け取り始めると、この判定が動きます。金額が基準を超えれば扶養から外れ、自分で国民健康保険と国民年金の手続きをすることになります。ここは「税金がかからないから扶養も大丈夫」とはならないところなので、受給が決まったら、扶養している家族の勤務先か加入している健康保険の保険者に金額を伝えて確認してください。
逆に、数えられない場面もあります
同じ「所得の判定」でも、含めない制度もあります。障害年金生活者支援給付金がその例です。この給付金は、障害基礎年金を受けていて前年の所得額が一定以下の方に、年金とは別に支給されるものです。日本年金機構の説明では、障害年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれません。
令和8年度の月額は1級が7,025円、2級が5,620円です。障害基礎年金を受けている方が対象なので、障害厚生年金3級だけを受けている場合は対象になりません。
まとめると、こういう整理になります。
| 場面 | 障害年金の扱い |
|---|---|
| 所得税・住民税 | 非課税。源泉徴収票も送られません |
| 健康保険の被扶養者の収入判定 | 収入に含まれます(130万円/180万円の基準) |
| 年金生活者支援給付金の所得判定 | 含まれません |
| 20歳前傷病の障害基礎年金の所得制限 | 障害年金以外の本人の所得で判定します |
制度ごとに「収入」の定義が違うということです。ひとつの答えを全部に当てはめようとすると、必ずどこかで食い違います。
よくある誤解として整理するもの
ここからは、公的な資料で確かめられる範囲で「そうはなりません」と言えるものと、「確かめられません」としか言えないものを分けます。
会社に知られるのか
障害年金の請求手続きに、勤務先は登場しません。障害年金ガイドによれば、請求書類の提出先は次のとおりです。
- 厚生年金加入中に初診日がある方(障害厚生年金・障害手当金)は、お近くの年金事務所、街角の年金相談センター
- 国民年金加入中に初診日がある方などは、年金事務所、街角の年金相談センター、またはお住まいの市(区)役所・町村役場
- 20歳前に初診日がある方は、お住まいの市(区)役所・町村役場
いずれにも勤務先は入っていません。傷病手当金の申請書のように会社が記入する欄がある手続きとは、この点が違います。
税の面からも、伝わる経路がありません。前の章のとおり障害年金は非課税で、公的年金等の源泉徴収票が送られてこないため、年末調整でも確定申告でも登場しません。障害者雇用率の算定対象になるのは各種の障害者手帳を持っている方で、障害年金の受給そのものではありません。会社の側に、障害年金の受給を確認する制度上の必要がないということです。
ただし、例外が1つあります。 家族の健康保険の被扶養者になる手続きです。前の章に書いたとおり、被扶養者(異動)届は事業主を経由して日本年金機構に提出することになっていて、障害年金を受けている場合は受取金額のわかる通知書のコピーを添付します。この場合、あなた自身の勤務先ではなく、あなたを扶養している家族の勤務先に金額が渡ります。家族の扶養に入っている方は、ここだけ承知しておいてください。
生命保険や住宅ローンの審査に影響するのか
これは正直に書きます。公的な資料では確認できませんでした。
生命保険に加入できるかどうか、住宅ローンの審査に通るかどうかは、それぞれの保険会社や金融機関が定める引受・審査の基準によります。全国共通の公的な基準を探しましたが、見つけられませんでした。したがってこの記事では、「障害年金を受けると保険に入れない」とも「問題なく入れる」とも書けません。検討している会社に、契約の前に直接確認する方法がいちばん確実です。
公的な資料で確認できたことを2つだけ書いておきます。
ひとつは金融庁の対応指針です。「金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」では、障害を理由として、正当な理由なく、サービス等の提供を拒否することは、不当な差別的取扱いに該当するとされています。一方で、客観的に判断してその取扱いが事業の目的・内容・機能に支障をきたすと判断される場合は、不当な差別的取扱いには当たらないとも書かれています。保険や融資の引受は個別の審査を伴うので、この線引きがどう当てはまるかはその場の判断になります。納得できない対応を受けたときのために、金融庁には障害を理由とする差別に関する相談窓口が置かれています。
もうひとつは、障害年金そのものの性質です。国民年金法24条と厚生年金保険法41条1項に受給権の保護が定められていて、給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができないとされています(老齢の年金を国税滞納処分により差し押える場合だけが例外です)。障害年金を担保にしてお金を借りることは、制度としてできません。逆に言えば、借金の返済が滞っても障害年金の受給権そのものは差し押さえられません。
障害者手帳を取らないと受けられないのか
受けられます。手帳は障害年金の要件ではありません。
障害年金ガイドが示す受給要件は、初診日、保険料の納付要件、障害の状態の3つで、手帳は入っていません。請求手続きの説明にも出てきません。精神障害者保健福祉手帳は精神保健福祉法にもとづく別の制度で、根拠になる法律も判定の枠組みも違います。手帳を持っていなくても障害年金を請求できますし、手帳を持っていても障害年金の等級が同じになるとは限りません。
手帳のほうに何かデメリットがあるのかは、障害者手帳のメリットとデメリットに別に書いています。手帳と年金の等級がなぜ食い違うのかは、精神疾患での障害年金のほうで扱っています。
働けなくなるのか、働くと止まるのか
障害年金を受けているからといって、働いてはいけないという決まりはありません。所得による支給制限があるのは、前に書いたとおり20歳前傷病の障害基礎年金だけです。
ただし、更新のときに提出する診断書には就労の状況を書く欄があり、判断材料として見られます。就労していること自体が直ちに不支給の理由になるわけではありませんが、状態の評価には影響します。このあたりの考え方は精神疾患での障害年金に詳しく書いたので、そちらを見てください。
受け取らなかった場合に失うもの
デメリットを見るときは、受け取らなかった場合に何が起きるかも並べないと、判断材料としてつり合いません。こちらも書いておきます。
請求が遅れた分は戻ってきません。 障害認定日の時点ですでに等級に当たる状態だった場合の請求(障害認定日による請求)では、障害認定日の翌月分からさかのぼって受け取れますが、5年より前の分は時効で消えます。障害認定日には該当せず、その後に悪化して該当した場合の請求(事後重症による請求)では、請求日の翌月分からの受け取りになります。日本年金機構も、請求日が遅くなると受け取りの開始時期が遅くなるため、受け取ることができる状態になった場合は速やかに請求してほしいと書いています。1か月迷えば1か月分、後ろにずれます。
65歳という区切りがあります。 事後重症による請求も、年金額の改定の請求も、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。
国民年金保険料の法定免除を受けられません。 障害基礎年金の1級・2級を受けていれば保険料が免除になりますが、受けていなければ免除の対象になりません。保険料を払えずに未納のまま放置すると、その期間は老齢基礎年金の計算にまったく入りません。法定免除の2分の1のほうが、未納のゼロよりは残ります。
障害年金生活者支援給付金も受けられません。 これは障害基礎年金を受けている方が対象の制度なので、年金を請求していなければ入口に立てません。
障害年金を受けることによる負担は、更新の手間と診断書代、そして老齢基礎年金の計算に影響が出る可能性です。受けないことによる損失は、受け取れたはずの金額そのものです。並べてみると、比べる対象としてはかなり非対称だと思います。
迷ったときの確認先
ここまで読んでも、自分の場合にどうなるのかは判断がつかないと思います。それが普通です。初診日がいつか、どの制度に入っていたか、20歳前傷病に当たるかどうかで、この記事に書いたことのどれが自分に効いてくるかが変わるからです。
確認先ははっきりしています。
- 年金事務所、街角の年金相談センター。65歳以降にどの組み合わせが有利になるかの試算も、ここで相談できます
- 初診日が国民年金加入中や20歳前の場合は、お住まいの市区町村の窓口でも障害基礎年金の請求や届出ができます
- 国民年金保険料の法定免除の届出は、市区役所・町村役場の国民年金担当窓口です
- 家族の扶養に入っている場合の影響は、扶養している家族の勤務先か、加入している健康保険の保険者に確認してください
- 一般的な問い合わせはねんきんダイヤル 0570-05-1165(050から始まる電話からは 03-6700-1165)です
年金事務所は予約相談ができます。インターネット予約は土日祝日も含めて毎日8時から23時30分まで受け付けています。
最後にもう一度だけ整理します。この記事で公的な資料から確認できた「デメリット」は、更新の手間と診断書の費用、等級に該当しなくなったときの支給停止、20歳前傷病の場合の所得制限、そして国民年金保険料の法定免除にともなう老齢基礎年金への影響でした。会社に自動的に伝わる仕組みは見当たらず、税金もかかりません。生命保険と住宅ローンについては、公的な資料では確認できませんでした。
分からないことを分からないまま置いておくのは落ち着かないと思いますが、確かめようのないものを断定して書くほうが、あとで困ることになります。ここまでが、いま公的資料でたどれる範囲です。
わたしたちは就労支援の現場で、障害年金を受け取っている方にも、迷って手を出していない方にも会います。迷っている方の理由を聞くと、制度そのものより「受け取ると何かを失うのではないか」という漠然とした不安であることが多いように見えます。この記事で書いたとおり、事実として起きることはそれほど多くありません。確かめられることと確かめられないことを分けて考えるだけでも、判断はずいぶん楽になります。
