退職してしばらくすると、市区町村から国民年金の納付書が届きます。月に17,920円(令和8年度)。収入が止まっている時期にこの金額を見ると、手が止まると思います。

免除の話は、たいてい「老後の年金が減るか減らないか」という文脈で語られます。老後の話だと思って読み飛ばしたくなるかもしれません。けれど、精神疾患で働けなくなって退職した方にとって、この手続きがいちばん効いてくるのは老後ではありません。障害年金です

障害基礎年金には保険料納付要件という条件があります。未納が一定量あると、状態がどれだけ重くても支給されません。そして日本年金機構は、免除等の申請について「不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません」と、はっきり書いています。あとから追いつくことができない種類の手続きだということです。

この記事では、退職したときの切り替えの届出から、免除と猶予の種類、失業を理由とする特例免除、免除と未納が何を分けるのか、そして追納までを順に整理しました。数字はすべて令和8年度の公表値です。

退職すると、国民年金の第1号被保険者になります

会社に勤めているあいだは厚生年金保険に加入していて、国民年金では第2号被保険者という扱いでした。退職して次の勤め先に入らない期間は、国民年金の第1号被保険者になります。ここからは保険料を自分で納めることになります。

届出は退職日の翌日から14日以内です

切り替えは自動では行われません。国民年金法第12条第1項は、被保険者は資格の取得や種別の変更を市町村長に届け出なければならないと定めていて、その期限は国民年金法施行規則第6条の2で「当該事実があつた日から十四日以内」とされています。日本年金機構も、提出期限を退職日の翌日から14日以内、提出者を本人または世帯主と案内しています。

手続き先は住所地の市区役所または町村役場の国民年金の窓口です。持っていくのは、基礎年金番号通知書などの基礎年金番号がわかる書類か、マイナンバーカードです。退職直後は、厚生年金保険の資格喪失日を証明できるもの(離職票など)が必要になることがあります。

体調が落ちていて自分では動けないときは、世帯主が代わりに提出できます。国民年金法第88条第2項は、世帯主に世帯の被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負わせていて、第3項では配偶者の一方が他方の保険料を連帯して納付する義務を負うと定めています。手続きを家族に頼むことは、制度の想定の範囲内です。

配偶者を扶養に入れていた場合は、配偶者にも手続きが要ります

見落とされやすいのがここです。あなたの健康保険の被扶養者になっていた配偶者は、国民年金の第3号被保険者でした。あなたが退職して第2号被保険者でなくなると、配偶者も同時に第3号被保険者の資格を失います。日本年金機構も、その配偶者は国民年金第1号被保険者の手続きをする必要があると案内しています。

つまり、退職によって保険料の納付義務が生じるのはあなただけではありません。配偶者の分についても、同じように免除の申請を検討することになります。

保険料は月額17,920円(令和8年度)です

令和8年度(令和8年4月から令和9年3月まで)の国民年金保険料は、1か月あたり17,920円です。年度ごとに改定されるので、古い年度の数字を見ていないか確認してください。納付期限は、法令で納付対象月の翌月末日と定められています。

ほかに月額400円の付加保険料という上乗せの仕組みもありますが、収入が止まっている時期に検討するものではありません。

未納のままにすると、障害年金が受けられなくなることがあります

ここがこの記事の中心です。

障害年金には「保険料納付要件」があります

障害基礎年金を受け取るための条件は3つで、そのひとつが保険料納付要件です。国民年金法第30条第1項ただし書きは、次のように定めています。初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が、その被保険者期間の3分の2に満たないときは支給しない、という書き方です。裏返せば、3分の2以上あれば要件を満たします。

さらに特例があります。昭和60年改正法(国民年金法等の一部を改正する法律)の附則第20条第1項は、初診日が令和18年4月1日前にある傷病について、初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの直近1年間に、保険料納付済期間と保険料免除期間以外の被保険者期間がないときは、3分の2要件を満たさなくても納付要件を満たしたものとする、と定めています。ただし書きで、初診日において65歳以上のときは適用しないとされています。

日本年金機構の説明では、この特例は「初診日が令和18年3月末日までのとき」と表現されています。期限つきの規定なので、いま現在は使えても、いつまでも残っている前提では考えないほうがよい仕組みです。

まとめると、こうなります。

どちらか一方を満たせばよい 中身
原則(国民年金法第30条第1項ただし書き) 初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること
特例(昭和60年改正法附則第20条第1項) 初診日が令和18年4月1日前にあり、初診日において65歳未満で、初診日のある月の前々月までの直近1年間に未納がないこと

免除の承認を受けた期間は、この判定で未納になりません

条文を読むとわかるとおり、納付要件の計算に入るのは「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」です。免除の承認を受けた期間は、納めていなくても、この判定では未納として数えられません。日本年金機構も、免除・納付猶予を受けた期間中に障害や死亡といった不測の事態が発生した場合、一定の要件に該当すれば障害基礎年金や遺族基礎年金を受け取ることができる、と説明しています。

納付猶予と学生納付特例も同じです。老齢基礎年金の年金額には反映されませんが、障害基礎年金と遺族基礎年金の受給資格期間には算入されます。学生納付特例のページには「万が一のときにも安心です」と書かれています。

一方、手続きをしないまま放置した未納期間は、そのまま未納として数えられます。同じ「保険料を納めていない状態」でも、申請しているかどうかで扱いがまったく変わります。

「あとで申請すればいい」は通用しません

いちばん強調したいのがここです。日本年金機構の国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度のページには、未納のままにしておくとどうなるかという項目があり、こう書かれています。

不慮の事故や病気が発生してから、過去にさかのぼって申請を行っても、障害基礎年金の保険料納付要件に算入されません。

国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間を説明したページにも、2年1か月前までさかのぼって申請できるとしたうえで、「免除等の申請が遅れると、万一、障害を負ったり死亡した際に、障害年金や遺族年金を受けられない恐れがあります」と書かれています。

障害年金の納付要件は「初診日の前日において」判定されます。初診日より後に慌てて手続きをしても、この判定には反映されません。精神科や心療内科の受診を迷っている段階の方こそ、受診より先に免除の申請を済ませておく意味があります。障害年金の全体像は精神疾患での障害年金。もらえる条件と、申請の現実にまとめました。

免除と猶予には、いくつかの種類があります

保険料を納めるのが難しいときの4つの道

退職して国民年金の第1号被保険者になり、保険料を納めるのが難しい
申請免除全額・4分の3・半額・4分の1の4段階。本人・世帯主・配偶者の前年所得で審査されます。年齢の制限はありません
納付猶予20歳以上50歳未満の方。本人と配偶者の前年所得で審査され、世帯主の所得審査はありません
学生納付特例学生本人の前年所得だけで審査されます。家族の方の所得の多寡は問いません
法定免除障害年金(2級以上)や生活扶助を受けているとき。所得の審査はなく、申請ではなく届出です
いずれも申請または届出をして承認されてはじめて効きます。手続きをしていない期間は未納として扱われます。

制度の名前が似ていて混ざりやすいので、根拠となる条文ごとに分けて並べます。

申請免除(全額・4分の3・半額・4分の1)

国民年金法第90条第1項が全額免除を、第90条の2第1項から第3項が4分の3免除・半額免除・4分の1免除をそれぞれ定めています。本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合などに、申請して承認されると保険料の納付が免除されます。年齢の制限はありません。

条文でひとつ押さえておきたいのが、いずれの条にもあるただし書きです。「世帯主又は配偶者のいずれかが次の各号のいずれにも該当しないときは、この限りでない」と書かれています。本人の所得だけを見る制度ではありません。

承認の基準となる所得は次のとおりです。

種類 前年所得の基準 令和8年度に納める額
全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 0円
4分の3免除 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 4,480円
半額免除 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 8,960円
4分の1免除 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 13,440円

一部免除の場合、減額された残りの額を納めないと免除の効果が生じません。半額免除の承認を受けたのに8,960円を納めていない月は、免除期間ではなく未納として扱われます。ここは間違えやすいところです。

なお、地方税法に定める障害者・寡婦・ひとり親に当たる場合は基準額が変わります。手続きの際に窓口で伝えてください。

納付猶予(20歳以上50歳未満)

納付猶予は、20歳以上50歳未満の方について、本人と配偶者の前年所得が一定額以下の場合に保険料の納付を猶予する制度です。所得の基準は全額免除と同じ「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。

免除との違いは2つあります。ひとつは、世帯主の所得審査がないこと。実家に戻って親と同居している場合など、世帯主の所得が理由で免除が通らないときに残る選択肢になります。もうひとつは、あとで見るとおり老齢基礎年金の年金額に反映されないことです。

この制度は法律の本則ではなく附則に置かれていて、令和17年6月までの期間を対象とする形になっています。恒久的な制度として設計されているわけではない、ということです。

学生納付特例

国民年金法第90条の3が定めています。学生本人の前年所得が「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」以下であれば承認されます。この条には世帯主・配偶者についてのただし書きがなく、日本年金機構も「家族の方の所得の多寡は問いません」と明記しています。

学生納付特例だけは、承認の年度が4月から翌年3月までです(免除・納付猶予は7月から翌年6月まで)。

法定免除(申請ではなく届出です)

国民年金法第89条第1項は、障害基礎年金などの受給権者であるとき、生活保護法による生活扶助を受けるときなどに、保険料を納付することを要しないと定めています。こちらは所得の審査がなく、該当すれば届出だけで免除になります

日本年金機構が挙げているのは、生活保護の生活扶助を受けている方、障害基礎年金または被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている方、国立ハンセン病療養所などで療養している方です。「国民年金保険料免除事由(該当・消滅)届」を市区役所または町村役場に提出します。生活扶助は受け始めた日を含む月の前月の保険料から、障害年金は認定された日を含む月の前月の保険料から免除になります。

生活保護そのものの条件については生活保護を受けられる条件。何を見られて、どう決まるのかにまとめています。

退職した人には「失業等による特例免除」があります

ここが、退職して収入が止まった方にとっていちばん実用的な部分です。

本人の前年所得を除いて審査されます

通常の免除は前年所得で審査されます。困るのは、去年まで働いていた方です。今は収入がなくても、前年所得が基準を超えていると通りません。

そのための特例が用意されています。日本年金機構の説明はこうです。「失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる特例があります」。失業した本人の前年所得を審査から外す、という扱いです。対象になる期間は、災害や失業等のあった月の前月からです。

ただし、世帯主と配偶者の所得は審査されます

ここを誤解したまま申請して落ちる方がいます。同じ日本年金機構のページに、次のように書かれています。

なお、世帯主や配偶者がいる方は、世帯主や配偶者が所得要件を満たしているか、失業等の特例に該当している必要があります。

特例で外れるのは、失業した本人の所得だけです。実家に戻って親の世帯に入っている場合の親の所得や、共働きだった配偶者の所得は、そのまま審査の対象に残ります。無条件に通る制度ではありません。

それでも申請しない理由にはなりません。全額免除が難しくても、4分の3免除や半額免除といった一部免除が通ることがありますし、50歳未満であれば世帯主の所得審査がない納付猶予という道もあります。窓口では「どれなら通りそうか」を含めて相談できます。

必要な書類

失業の事実を確認できる書類を添えます。日本年金機構が挙げているのは次のものです。

立場 添付する書類
雇用保険の被保険者であった方 勤務先から交付される「雇用保険被保険者離職票」のコピー、ハローワークから交付される「雇用保険受給資格者証」「雇用保険受給資格通知」のコピー など
事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている方 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写しおよびその申請時の添付書類の写し

これらが用意できない場合は、履歴事項全部証明書や税務署への個人事業の開廃業等届出書の写しなど、ほかの書類でも確認できることがあります。ただし別途、失業の状態にあることの申し立てを書式で行う必要があります。

なお、過去に同じ失業等の事由で申請していて、すでに書類を添付したことがある場合は、あらためて添付する必要はありません

申請は毎年必要です

通常の免除では、全額免除または納付猶予の承認を受けた方が翌年度以降も希望する場合、継続して申請があったものとして審査(継続審査)が行われます。ただし、失業等による特例免除で承認された方は、翌年度も申請が必要です。ここは自動で続きません。

免除と未納は、何がどう違うのか

3つの観点で並べます。この表がこの記事のいちばん実用的な部分です。

期間の扱い 障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格期間への算入 老齢基礎年金の受給資格期間への算入 老齢基礎年金の年金額への反映
納付 あり あり あり
全額免除 あり あり あり(割合は下の表)
一部免除(減額後の保険料を納めた場合) あり あり あり(割合は下の表)
納付猶予 あり あり なし
学生納付特例 あり あり なし
未納 なし なし なし

いちばん左の列を見てください。免除も猶予も学生納付特例も「あり」で、未納だけが「なし」です。手続きをしたかどうかだけで、この列が変わります。

年金額への反映の割合は、免除の種類ごとに違います。国民年金法第27条が計算方法を定めていて、日本年金機構も同じ割合を公表しています。

免除の種類 老齢基礎年金の年金額への反映(平成21年4月以降の期間) 平成21年3月分までの期間
全額免除 全額納付した場合の2分の1 3分の1
4分の3免除 8分の5 2分の1
半額免除 8分の6 3分の2
4分の1免除 8分の7 6分の5
納付猶予 反映されません 反映されません
学生納付特例 反映されません 反映されません

金額でいうと、令和8年度の老齢基礎年金は、40年すべて納付した場合が847,300円、40年すべて全額免除だった場合が423,650円です(昭和31年4月2日以後生まれの方の額)。半分になるのは小さくありませんが、未納にした期間は年金額にも受給資格期間にも入らないので、そちらのほうが影響は大きくなります。

老齢基礎年金を受け取るには、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した期間が10年以上必要です。免除の期間はこの10年に入りますが、未納の期間は入りません。

申請の実務

どこで、何を出すか

申請先は、住所地の市区役所・町村役場の国民年金の担当窓口か、お近くの年金事務所です。郵送でも提出できますし、電子申請も用意されています。

必要なものは、基礎年金番号通知書などの基礎年金番号がわかる書類か、マイナンバーカード。失業を理由に申請する場合は、先に挙げた離職票などの書類。所得を証明する書類は原則として不要ですが、本人・配偶者・世帯主のうち前年(または前々年)の税の申告をしていない方がいる場合は、先に市区町村の税務担当窓口で申告をしてから申請します。

なお、申請すると、市区町村長に対して本人・配偶者・世帯主の所得状況の証明を求めることに同意したことになります。誰の所得が見られるのかは、申請の時点ではっきりしている、ということです。

さかのぼれるのは2年1か月前までです

保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)について、さかのぼって申請できます。学生納付特例も同じです。

過去分は日が経つほど申請できる期間が短くなります。日本年金機構は年度ごとに申請期限の一覧表を公開していて、納付期限の2年後が土日祝に当たる場合は直前の営業日までに申請書が受理される必要があるとしています。

繰り返しになりますが、さかのぼって申請できることと、障害年金の納付要件に算入されることは別の話です。初診日より後に申請した期間は、その初診日に係る障害年金の判定には効きません。

承認は年度単位で、1枚の申請書は1年度分です

免除・納付猶予の「年度」は7月から翌年6月までです。学生納付特例は4月から翌年3月まで。1枚の申請書で申請できるのは1年度分なので、複数年度を希望する場合は年度ごとに申請書を出します。

審査に使われる前年所得も年度ごとに違います。令和8年度分(令和8年7月から令和9年6月)は令和7年中の所得で審査され、令和8年7月になってから申請できます。

継続申請という仕組みがあります

全額免除または納付猶予の承認を受けた方が翌年度以降も希望する場合は、継続して申請があったものとして審査されます。毎年出し直さなくてよい、ということです。ただし、前に書いたとおり失業等による特例免除で承認された方は翌年度も申請が必要です。

婚姻や離婚などで配偶者の有無が変わった場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予継続申請者の配偶者状況変更届」の提出が必要になります。

一度却下されても、もう一度申請できることがあります

日本年金機構は、過去に却下された期間でも申請できる場合として、失業等の事由で申請したが遅れたために特例免除が認められなかった場合、却下後に税の修正申告で本人・配偶者・世帯主の所得が変わった場合、却下後に離婚や世帯主の変更があった場合を挙げています。状況が変わったのなら、もう一度相談してみる価値があります。

追納。ただし、無理をしてまで急ぐものではありません

免除や猶予を受けた期間の保険料は、あとから納めて年金額を回復させることができます。国民年金法第94条第1項が定める追納です。

10年以内、3年度目以降は加算がつきます

追納できるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られます。そして、免除・納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。

令和8年度中に追納する場合の月額は、たとえば令和7年度の月分が17,510円、令和6年度の月分が16,980円で、この2つには加算額がありません。平成28年度の月分は16,850円で、こちらには加算額が含まれています。

効果の目安として、日本年金機構の国民年金保険料の追納制度の案内は、1年間分を追納すると全額免除の期間なら老後の年金が年間で約1万円、納付猶予や学生納付特例の期間なら年間で約2万円増える、としています。納めた保険料は全額が社会保険料控除の対象になります。

追納の申込先は年金事務所です(街角の年金相談センターでは手続きできません)。納付は納付書によるもので、口座振替やクレジットカードは使えません。また、すでに老齢基礎年金を受け取れる方は追納できません。

追納しないという判断もあります

追納は義務ではありません。10年という期限はありますが、体調が戻らないうちに無理をして納める必要はありません。

考えておきたいのは順番です。追納で回復するのは老後の年金額です。いま生活を立て直すことや、通院を続けることのほうが先に来る時期は珍しくありません。回復して働けるようになってから、余裕のある年に少しずつ追納するという進め方でも制度上は成り立ちます。

一部免除を受けた期間については、減額後の保険料を納めていないと追納できないという決まりがあります。ここだけは、承認を受けたその年度のうちに気をつけておきたい点です。

つながっている制度

免除の申請で窓口に行くとき、あわせて確認しておくと二度手間にならないものがあります。

精神科や心療内科への通院が続く見込みなら、自立支援医療で自己負担が原則1割になります。申請先は市区町村の障害福祉の窓口で、国民年金の窓口とは別ですが、同じ庁舎にあることが多いです。手順は自立支援医療制度で精神科の通院費を1割にする手順にまとめました。

障害年金については、免除の申請とは別に、初診日がいつかを確かめる作業が要ります。免除の手続きが効いてくるのはまさにこの場面なので、いま申請しておいて、体調が落ち着いてから障害年金の条件を読む、という順番で構いません。

退職後も傷病手当金を受け取れる場合があります。条件は傷病手当金は退職後も受け取れますにまとめています。健康保険と年金は別の制度なので、どちらか一方の手続きで済むことはありません。

生活の立て直しが難しい状況であれば、生活保護の条件も見ておいてください。生活扶助を受けることになれば、国民年金の保険料は法定免除になります。

今日は、届いた納付書を捨てないでください

ここまで読んで、やることが多いと感じたかもしれません。全部を今日やる必要はありません。

いま効くのはひとつだけです。届いた納付書を捨てず、市区町村の国民年金の窓口に「払えないので免除を相談したい」と伝えること。それだけで、未納として積み上がっていくはずだった期間が、免除期間として記録される可能性が生まれます。電話で「何を持っていけばいいですか」と聞くところからで構いません。

払えないことは、恥ずかしいことでも珍しいことでもありません。免除は、まさにそのために法律に書かれている仕組みです。国民年金法第90条は「申請があつたときは」と始まります。制度は、こちらから声をかけるのを待っている作りになっています。

そして、この手続きが守っているのは老後だけではありません。これから先に何かあったとき、障害年金という支えが残るかどうかが、いま手続きをするかどうかで変わります。体調が悪い日に読むには重い話かもしれませんが、動くのは一度で済みます。窓口に電話をする、それが今日の一歩で十分です。

わたしたちは就労支援の現場で、障害年金の相談を受けることがあります。そこで納付の記録をたどると、退職したあとの何か月かが未納のままになっていた、という場面に出会うことがあります。そのときになってから戻すことはできないので、いま手続きできるうちに済ませておく意味は大きいです。