「社会不安障害 向いてる仕事」で検索している方が知りたいのは、たぶん職業の名前ではないと思います。電話が鳴るたびに体がこわばる、朝礼で当てられるかもしれないと思うと前の晩から眠れない、上司の席まで報告に行くのに十五分かかる。そういう毎日を続けられる気がしないので、続けられる場所がどこかにあるのかを確かめたい。そういう調べ方なのだろうと思います。

先に、この記事でやらないことを書いておきます。「社会不安障害の人にはこの仕事が向いています」という書き方はしません。診断名から適職を導く根拠が、どこにもないからです。症状や診断の説明もしません。そこは医師の領分です。

代わりに扱うのは、法律に書いてあることです。障害者雇用促進法には、働くうえで支障になっている事情を改善するための措置を事業主に義務づけた条文があります。合理的配慮と呼ばれるものです。そして厚生労働省の告示とその事例集には、どんな配慮が実際に行われているかが具体的に並んでいます。「自分に向いている仕事を探す」より「働ける条件を作る」ほうが、法律に根拠がある分だけ確かです。この記事はそちらの道の地図です。

なお、呼び方について一つだけ触れておきます。「社会不安障害」「社交不安障害」「社交不安症」「SAD」と、同じものを指す言葉がいくつも流通していて、検索結果でも混ざります。ただ、これから見ていく制度の書類に出てくるのは、病名そのものではなく状態のほうです。どの呼び方で診断を受けていても、この先の話は同じように読めます。

まず、制度は診断名では動きません

調べ始めるとき、多くの方が「自分の病名だと何が使えるのか」という順番で探します。ところが制度の側は、そういう作られ方をしていません。

精神障害者保健福祉手帳の等級を決めているのは病名ではありません。等級を定めているのは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令の第6条で、そこに書かれているのは「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」といった状態の記述です。厚生労働省の判定基準も、精神疾患(機能障害)の状態と、能力障害(活動制限)の状態の両面から総合的に判定するという手順を示しています。診断名の欄はありますが、そこで等級が決まるわけではありません。判定の詳しい中身は精神障害者保健福祉手帳2級とはどんな状態かにまとめてあります。

障害年金も同じ考え方です。根拠になる政令が手帳とは別にあり、初診日や保険料の納付といった要件が付きますが、いずれにしても「この病名なら何級」という対応表は存在しません。

これは、調べ物の入り口を変えたほうがよいという意味です。「社会不安障害だと何がもらえるか」ではなく「いまの状態で、どの場面にどれだけ制限があるか」から考えると、どの窓口でも話が通じます。診断名は入場券ではなく、状態を説明するときの手がかりの一つにすぎません。

合理的配慮の対象も、手帳では区切られていません

ここが、この記事でいちばん誤解が多いところです。

障害者雇用促進法の第37条第2項には「対象障害者」という言葉が出てきて、精神障害者については精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人に限る、と書かれています。これは企業の法定雇用率を計算するときの話です。ところが、合理的配慮の義務がかかる相手はそれとは別に定義されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律第2条第1号は、この法律でいう障害者を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定めています。手帳は出てきません。

厚生労働省の障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&Aは、この点をはっきり答えています。差別禁止・合理的配慮の対象になる障害者は同法第2条第1号に規定する障害者であり、「障害者手帳の有無・週所定労働時間等による限定はしていません」と書かれています。障害者雇用率制度の対象範囲以外の人であっても、第2条第1号に当てはまるなら含まれるとも明記されています。

つまり、合理的配慮は障害者雇用枠に入った人だけのものではありません。いま一般枠で働いている人も、手帳を持っていない人も、条文上は対象の外に置かれていません。

ただし、正直な但し書きが要ります。制度の対象であることと、実際に配慮が始まることは別です。事業主が障害を把握していなければ手続きは動きません。同じQ&Aは、本人から申出があったときの確認方法として、手帳による確認、障害福祉サービスの受給者証や難病の医療受給者証による確認、それらがない場合は本人の了解を得たうえで障害名または疾患名を記載した医師の診断書または意見書による確認、という三通りを挙げています。手帳がなくても道は閉じていませんが、何かしら医療の側の書類が要る場面はある、というのが実際のところです。手帳を取るかどうかの判断材料は障害者手帳のデメリットは本当にあるのかに整理してあります。

合理的配慮とは、法律に書かれた事業主の義務です

条文を三つ見ます。長くないので、そのまま引きます。

第36条の2(募集及び採用について)は、事業主は「労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない」と定めています。応募する側から申し出るのが起点になっている、というのがこの条文の形です。

第36条の3(採用後について)は、事業主は「その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない」と定めています。こちらには「障害者からの申出により」という限定がありません。

どちらの条文にも、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」というただし書きが付いています。無制限の義務ではありません。ここは最初に押さえておいてください。

第36条の4は二つのことを定めています。第1項は、これらの措置を講じるにあたって「障害者の意向を十分に尊重しなければならない」こと。第2項は、採用後の措置について「その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」ことです。相談できる体制を作ること自体が、事業主の義務になっています。

募集・採用時と採用後で、動き方が違うので分けて並べます。

募集・採用時(第36条の2) 採用後(第36条の3)
起点 障害者からの申出 事業主からの確認(本人から申し出てもよい)
確認の時期 面接日等までに余裕をもって申し出る 雇入れ時まで。把握が遅れた場合は把握した際に遅滞なく。以後も必要に応じて定期的に
決め方 話し合って、事業主が意向を尊重しつつ確定する 同じ
限界 過重な負担にあたるときは義務から外れる 同じ
相談体制 定めはありません 相談窓口の設置などが事業主の義務です(第36条の4第2項)

条文だけでは動かないので、厚生労働大臣が指針を定めることになっています(第36条の5)。それが合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)です。以下の手続きと具体例は、この告示と、それに紐づく事例集から引いています。

うまくいかなかったときの道も、法律に置かれています

先に出口を書いておきます。頼んだのに取り合ってもらえない、という事態は起こりえます。

第74条の4は、第35条(待遇の差別禁止)と第36条の3(採用後の合理的配慮)に関して障害者である労働者から苦情の申出を受けたとき、事業主は自主的な解決を図るよう努めなければならないと定めています。それでも解決しない場合、第74条の6により都道府県労働局長が必要な助言、指導又は勧告をすることができます。第74条の7は、募集・採用についての紛争を除いて、当事者の申請にもとづき紛争調整委員会の調停に付すことができるとしています。

そして第74条の6第2項は、「事業主は、障害者である労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。相談したこと自体で不利になる状態を防ぐための条文です。

なお、この義務に違反した事業主に罰則はありません。厚生労働省のQ&Aは、罰金等を課すより助言・指導・勧告という行政指導で継続的に雇用管理の改善を促すほうが有効だと考えられるため罰則規定は設けていない、と説明しています。「法律違反だから即座に何かが起きる」という種類の規定ではありません。

公的な文書に、実際に載っている配慮の例

ここからが本題です。何を頼めるのかを自分で考えなくても、公的な文書に例が並んでいます。

まず、合理的配慮指針の別表です。障害区分と場面ごとに、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例が挙げられています。精神障害の欄に書かれているのは、次の内容がすべてです。

場面 別表に書かれている例
募集及び採用時 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
採用後 業務指導や相談に関し、担当者を定めること
採用後 業務の優先順位や目標を明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすく示したマニュアルを作成する等の対応を行うこと
採用後 出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること
採用後 できるだけ静かな場所で休憩できるようにすること
採用後 本人の状況を見ながら業務量等を調整すること
採用後 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること

七項目だけです。指針自身が、ここに書かれた事例はあくまで例示であり、あらゆる事業主が必ずしも実施するものではなく、ここに載っていない事例でも合理的配慮に該当するものがある、と断っています。

事例集には、もっと具体的な形で並んでいます

別表を実際の取り組みで肉づけしたものが、厚生労働省の合理的配慮指針事例集【第六版】です。全国の都道府県労働局・ハローワーク、高齢・障害・求職者雇用支援機構等を通じて、事業主が実際に取り組んでいる事例を収集したものだと冒頭に書かれています。企業の規模・業種・職種が事例ごとに添えられています。

精神障害の項から、人と関わる場面に関係するものを拾います。以下はすべて、事例集にそのまま載っている記述です。

面接の場面については、こういう例が挙がっています。

  • 他の社員が出入りしない個室の会議室で面接を実施した(100〜299人/小売業/品出し)
  • 集団面接を免除した(10〜49人/サービス業(特例子会社)/清掃)
  • 緊張している様子の方には、面接の中断を認めており、時間を空けて本人が落ち着いてから面接を再開している(10〜49人/サービス業(特例子会社)/事務)
  • 書面により必要な説明を行った(1,000人以上/宿泊業/事務)
  • 支援機関の職員から事前に本人の障害特性を確認しておき、面接時に本人に過度な負担がかからないように配慮した(規模・業種・職種によらず多くの事例があった)

働き始めてからの場面については、次のような例があります。電話や対人のやり取りに関わるものを中心に並べます。

  • 本人の障害特性を考慮し、苦手なことに配慮した上で、業務を担当してもらっている(人との接触の少ない業務を担当してもらう、電話応対を免除する、単純な作業(社員の補助業務や反復作業等)から開始して徐々に複雑な作業に移行してもらうなど)(規模・業種・職種によらず多くの事例があった)
  • 体調不良時の欠勤連絡は緊張が伴うとのことなので、本人の担当者に個別に連絡してもよいこととしている(1,000人以上/医療/清掃)
  • 事務作業に専念できるよう、人の出入りする窓口から離れた座席に配置している(300〜499人/農業協同組合/事務)
  • 通勤時や職場での対人関係のストレス軽減のために在宅勤務とした(1,000人以上/情報通信業/データ入力)
  • 対面での仕事が苦手な為、サテライトオフィスを借り上げて完全リモートワークを行っている(100〜299人/卸・小売業/事務)
  • 直接相談しにくい内容も相談できるよう、相談用紙と投函する箱を設置している(10〜49人/サービス業(特例子会社)/清掃)
  • 新しい仕事を依頼する場合は、事前に伝えて心の準備をしてもらっている(1,000人以上/宿泊業/事務)

休憩の取り方についても、別表の一行が具体化されています。

  • 休憩時間を一人で過ごしたいという本人の意向により、静かに休憩できるようにしている(規模・業種・職種によらず多くの事例があった)
  • 一人で休憩できるよう、本人の希望に応じて、従来の休憩場所以外の休憩場所を確保(会議室の開放等)したり、休憩時間をずらしたりしている(同上)
  • 一人で休憩を取れるように、休憩時間を他の従業員とずらしている(300〜499人/小売業/自動販売機商品補充員)
  • 会食恐怖症がある者に一人がけで壁に面した机を用意し、同じ休憩室ながらも安心して食事がとれるようにした(301人〜999人/物品賃貸業/商品仕分)

指示の出し方については、掲示や図表を使う例が挙がっています。ホワイトボード等により個人別にその日や週ごとの作業を掲示している、1日の業務の手順や1週間の勤務について図や表で確認・修正している、作業指示に際してメモをとるよう指導している、といったものです。あわせて発達障害の項には、口話でのコミュニケーションの少ない業務を希望していた人について電話対応を無しにするとともに業務指示等を筆談で行うようにした(1,000人以上/病院/事務)という例や、机の電話を外すという例も載っています。

周囲への説明の仕方についても、参考になる記載があります。説明する内容の例として、「精神障害があることや必要な配慮のみを説明し、具体的な病名は説明しない」という一行が挙げられています。職場に伝えることと病名を明かすことは、同じではありません。

念のためもう一度書きますが、事例集は例示です。ここに載っているから通る、という保証にはなりません。ただ、「そんなことを頼んでいいのだろうか」と迷っている内容の多くが、すでに厚生労働省の文書に前例として載っているという事実には意味があると思います。自分だけの特別な要求ではないと分かるだけで、口に出しやすくなることがあります。

どのくらい実際に行われているのか

例があることと、行われていることは違います。数字も見ておきます。

厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書によると、精神障害者を雇用している事業所のうち63.3%が「配慮している」と回答しました。配慮している内容として挙げられたものの割合は次のとおりです(複数回答)。

精神障害者に対して行われている配慮(上位)

短時間勤務等勤務時間の配慮54.3%
休暇を取得しやすくする、勤務中の休憩を認める等休養への配慮50.9%
通院・服薬管理等雇用管理上の配慮49.2%
能力が発揮できる仕事への配置40.3%
業務実施方法についてのわかりやすい指示35.4%
仕事に集中できる場や設備、休憩スペース等の確保19.4%
テレワークを活用できる14.0%
令和5年度障害者雇用実態調査(令和5年6月1日現在。常用労働者5人以上の民営事業所)の図5-2から。精神障害者を雇用している事業所のうち「配慮している」と回答した63.3%の内訳で、複数回答です。

読み取れることは二つあります。ひとつは、実際に多く行われている配慮は、時間と休養に関するものだということです。仕事の中身を変える配慮より、いつ働くか・いつ休むかの調整のほうが、企業にとって実行しやすいのだと思われます。もうひとつは、テレワークや集中できる場所の確保のように、対人の場面そのものを減らす配慮は、実施率がまだ低いということです。事例集に載っていても、どこの職場でも当たり前ではありません。

人と関わる場面がつらいと感じている方には、これは残念な数字に見えるかもしれません。ただ、時間と休養の配慮なら半数の事業所が現に実施しているとも読めます。全部をいちどに変えてもらう交渉より、通りやすいところから始めるほうが現実的です。

配慮を求めるには、何が要るのか

「頼めば通る」とは書きません。指針が定めているのは結果ではなく手続きです。順番に見ていきます。

合理的配慮が決まるまでの3つ

  1. 1支障となっている事情を伝える希望する措置まで言えなくても、支障となっている事情を明らかにするだけで足りると指針に書かれています
  2. 2どの措置を講じるかを話し合う本人が具体的に出しにくい場合は、事業主が実施可能な措置を示して話し合います
  3. 3事業主が内容を確定し、理由を説明する実施できない場合はその旨を伝え、求めに応じて理由を説明することとされています
合理的配慮指針の第3に定められた手続きです。募集・採用時は本人からの申出が起点で、採用後は事業主からの確認が起点になります。

具体的に言えなくてもかまいません

申し出るときの負担を減らす記載が、指針にあります。募集及び採用時について、障害者は「募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容」を申し出ることとされていますが、続けて「障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りる」と書かれています。採用後の場面にも同じ一文があります。

これは実務的に大きい規定です。「電話対応を私の業務から外し、代替として書面での連絡体制を整えてください」という設計を自分でしなくても、「電話を取る場面が続くと業務が止まってしまいます」と伝えれば、手続きとしては足りるということです。措置を考えるのは事業主の側の仕事で、本人が具体的に出しにくい場合は事業主が実施可能な措置を示して話し合うことになっています。

指針にはもう一つ、意向を確認することが困難な場合には就労支援機関の職員等に本人を補佐することを求めても差し支えないという定めもあります。一人で面談の席に着かなくてもよい、という道が制度の中に書かれています。

準備には時間がかかる場合があるので、面接日等までに時間的余裕をもって申し出ることが求められる、という注意も添えられています。面接の当日に切り出すより、応募の段階で連絡しておくほうが制度の想定に沿います。

過重な負担という限界があります

「この限りでない」の中身も、指針に書かれています。事業主は、過重な負担に当たるかどうかを次の六つの要素を総合的に勘案しながら個別に判断することとされています。

# 考慮される要素 指針の説明
1 事業活動への影響の程度 生産活動やサービス提供への影響その他の事業活動への影響の程度
2 実現困難度 立地状況や施設の所有形態等による、機器や人材の確保、設備の整備等の困難度
3 費用・負担の程度 措置を講ずることによる費用・負担の程度
4 企業の規模 企業の規模に応じた負担の程度
5 企業の財務状況 企業の財務状況に応じた負担の程度
6 公的支援の有無 公的支援を利用できる場合は、その利用を前提とした上で判断する

判断するのは事業主です。ただし、判断して終わりにはできません。過重な負担に当たると判断した場合には、実施できないことを本人に伝えるとともに、本人の求めに応じてその理由を説明することとされています。さらに、その場合であっても、本人と話し合い、意向を十分に尊重したうえで、過重な負担にならない範囲で何らかの措置を講ずることとされています。「できません」で終わる筋にはなっていません。

考えられる措置が複数あるときに、事業主がより提供しやすい措置を選ぶことは差し支えないとも書かれています。希望どおりの形にならないことは、制度の想定の中にあります。

厚生労働省のQ&Aには、過重な負担の判断について疑義が生じた場合の仕組みとして、都道府県労働局長による助言・指導・勧告や紛争調整委員会の調停が挙げられています。事業主が話し合いに応じないなど指針に定める手続きに反する事実がある場合には、労働局長が助言・指導・勧告を行うことができる、とも書かれています。

相談する場所は、社内に用意されているはずです

合理的配慮指針の第6は、相談体制の整備等として事業主に四つのことを求めています。相談への対応のための窓口をあらかじめ定めて労働者に周知すること、担当者が適切に対応できるよう必要な措置を講ずること、相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じてそれを周知すること、相談をしたことを理由として解雇その他の不利益な取扱いを行ってはならない旨を定めて周知・啓発すること、の四つです。

窓口は事業所ごとに設ける必要はなく、既存の相談窓口を活用する、担当者や部署をあらかじめ定める、外部の機関に委託する、といった形でよいとQ&Aは説明しています。名前が「合理的配慮相談窓口」でなくても構わないということです。直属の上司に切り出す以外の経路が、制度上は用意されていることになっています。就業規則や社内の案内に相談窓口の記載があるかどうかを、まず探してみてください。

一般枠で働いている場合はどうなるか

すでに働いていて、これまで何も伝えていない、という方が多いと思います。ここも整理しておきます。

合理的配慮指針には、採用後の合理的配慮について事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、提供義務違反を問われないと書かれています。伝えていなければ義務は発生しない、という関係です。

一方でQ&Aは、募集及び採用時に障害者であることを明らかにしていなかった人が採用後に合理的配慮を求めることを妨げるものではない、と明記しています。面接時には知らず採用後に知った場合も提供義務はあり、その場合は把握した際に遅滞なく職場で支障となっている事情の有無を確認することとされています。後から申し出ることは、制度上ふつうの経路です。

もう一つ知っておくとよいのは、応募の段階の話です。障害者差別禁止指針(平成27年厚生労働省告示第116号)には、募集に際して一定の能力を有することを条件としている場合、その条件を満たしているかどうかの判断は過重な負担にならない範囲での合理的配慮の提供を前提に行われるものであり、合理的配慮の提供があれば当該条件を満たすと考える場合、その旨を事業主に説明することも重要であると書かれています。黙っていると、配慮なしの状態で条件を満たすかどうかが判断されます。ここは応募する側が動かないと伝わらない部分です。

Q&Aにも、本人から採用後の合理的配慮に係る申出があったことをもって不利益な取扱いを招くこととならないようにする必要がある、と書かれています。障害者雇用枠そのものの仕組みは障害者雇用とはに整理してあります。

場面から逆算して、仕事の条件を考える

ここまで来ると、最初の問いに戻れます。「向いてる仕事は何か」ではなく、「どういう条件なら続けられるか」です。

「人と話すのが苦手」でひとくくりにすると、必要な条件が見えなくなります。つらい場面が何なのかで、必要になる条件が違うからです。

つらいと感じている場面 職場に求めることになる条件の例
電話が鳴ること、出ること 外線を取る役割が業務に含まれているか。連絡手段がメールやチャットで代替できるか
人数の多い場に居ること 席の配置、休憩の取り方、朝礼や全体会議の頻度
発言を求められること 会議での発言の機会がどれくらいあるか。書面での提出に置き換えられるか
評価されている感じが続くこと 上長との1対1の面談の頻度と形式。日誌や記録での代替があるか
初対面の人と話すこと 来客・接客の有無。担当が固定されるか毎回変わるか
予定が急に変わること 業務の変更が事前に伝えられる運用になっているか

この表の右側は、求人票の職種名からはほとんど読み取れません。同じ「事務」でも、電話が中心の職場と、入力が中心の職場があります。だから職業の名前で探すより、その職場の一日の中で人とやり取りする場面がどこにあるかを聞くほうが、判断の材料になります。求人の探し方そのものは障害者雇用の求人はどこで探すのかにまとめています。

向き不向きは、記事ではなく実際に試して分かります

そのうえで、正直に書いておきたいことがあります。自分がどの場面でどれだけ支障が出るのかは、頭の中では正確に測れません。予想より平気だったところと、予想以上にきつかったところは、たいてい入れ替わります。これは記事を読んで分かることではなく、試して分かることです。

試せる場所が公的に用意されています。無料です。

地域障害者職業センターは、高齢・障害・求職者雇用支援機構が全国47都道府県に設置しています。同機構の就職支援・相談窓口の説明では、就職の希望などを把握したうえで職業能力等を評価し、それらを基に就職して職場に適応するために必要な支援内容・方法等を含む個人の状況に応じた支援計画(職業リハビリテーション計画)を策定する、とされています。これが職業評価です。利用にあたっては、あらかじめ電話かFAXで連絡してくださいと案内されています。

職業準備支援は、そのセンターで受けられる支援の一つです。職業準備支援のご案内によると、一人ひとりの状況に応じて個別カリキュラムを作成し、さまざまな作業や講座を通して基本的な労働習慣を身につけたり自分に合った働き方を見つける支援、履歴書の書き方や面接の受け方等の講座、そして対人技能、ストレス対処及び障害特性の整理等の講座を組み合わせるとされています。人とのやり取りの部分そのものが、支援メニューの中に項目として立っています。

精神障害者総合雇用支援という枠組みもあります。同機構の案内では、主治医との連携の下で、雇用促進・職場復帰・雇用継続のための専門的支援を行うとされています。ここで対象になる「精神障害のある方」は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方、または医師の診断書等により躁うつ病(そう病、うつ病を含む)、統合失調症その他の精神疾患を有していることが確認できる方と書かれています。手帳がなくても入口はあります。

このほか、厚生労働省の「障害者の方への施策」のページでは、ハローワークが求職登録にもとづいて専門職員や職業相談員によるケースワーク方式の職業相談・紹介、職場定着指導等を実施すると説明されています。就業面と生活面の相談を一体的に受ける障害者就業・生活支援センターもあります。就職の前段階から時間をかけたい場合は、就労移行支援とはのほうが近いかもしれません。

窓口に行くときは、病名を説明しようとしなくて大丈夫です。「電話を取る場面が続くと業務が止まります」「朝礼のある職場で三か月もちませんでした」のように、場面と結果で伝えるほうが話が早いです。制度が見ているのも、結局はそこだからです。

この記事のまとめ

社会不安障害という診断名がついても、それだけで何かが自動的に決まるわけではありません。手帳も障害年金も、判定されるのは状態と生活・就労のうえでの制限です。仕事についても、診断名から適職が導かれる仕組みはどの法律にもありません。

代わりに使えるのが合理的配慮です。障害者雇用促進法第36条の2と第36条の3は、障害の特性に配慮した必要な措置を講じることを事業主の義務としています。この義務の対象は、手帳の有無や週の所定労働時間で区切られていません。合理的配慮指針の別表と事例集には、電話応対を免除する、一人で休憩できるようにする、個室で面接を行う、出退勤の時刻を調整する、といった例が実際に載っています。

同時に、限界も条文に書かれています。事業主に過重な負担を及ぼすときは義務から外れ、判断するのは事業主です。指針が保証しているのは結果ではなく、申し出て、話し合って、内容を確定し、できない場合は理由の説明を受ける、という手続きのほうです。うまくいかないときは都道府県労働局長の助言・指導・勧告や調停という道があります。

自分がどの場面にどれだけ支障が出るのかは、試さないと分かりません。地域障害者職業センターの職業評価と職業準備支援は、そのために無料で用意されている場所です。

いま働けていないことを、向いている仕事がまだ見つかっていないせいだと考えると、探し続けるしかなくなります。条件のほうを動かせると分かると、探す範囲も、聞くことも変わってきます。急がなくて大丈夫です。窓口に電話をして、名前を出さずに一般的な質問として聞くこともできます。

わたしたちは就労支援の現場で、人前の場面を避けながら働き方を探している方に会います。この障害の難しいところは、配慮を申し出るという行為そのものが、いちばん苦手な場面と重なりやすいことだと思います。申し出る前に、支援の窓口で言い方を一緒に整理してから職場に向かう方も見てきました。頼む練習から始めても、遠回りではありません。