「障害者雇用 面接」で調べると、志望動機の例文と、想定質問への模範解答が並んだページがたくさん出てきます。この記事には、それを書いていません。

理由は二つあります。例文には根拠がなく、誰がどう答えて受かったのかを確かめる手立てがないこと。そして、面接は書いた文章を読み上げる場ではなく、入ったあとにどう働くかを相手と決めていく場なので、写した文で入口を通れたとしても、入ってから話が合わなくなることです。

代わりに二つのことを書きます。ひとつは、面接の準備のために、国が様式と手引きを作って公開しているということです。自分のことをどう説明すればよいか分からないという状態に対して、公的な用紙が用意されていること自体が、あまり知られていません。もうひとつは、面接する側が守らなければならない決まりです。聞いてはいけないことがあり、面接そのものに配慮を求めることができます。

なお、この記事は障害者雇用枠で応募すると決めた方に向けて書いています。求人の探し方は障害者雇用の求人はどこで探すのかに、制度の全体像は障害者雇用とは何かにまとめました。

面接の準備のために、公的な様式が一つ用意されています

厚生労働省が2019年11月に公開した就労パスポートという様式です。厚生労働省のページから、様式そのものと、書き方を説明した「活用の手引き」、支援機関向け・事業主向けのガイドラインが無料で手に入ります。様式はExcel・Word・PDFの3種類があり、漢字にふりがなの付いた版も用意されています。

手引きの説明では、就労パスポートは「障害のある方が、働く上での自分の特徴や希望する配慮などを整理し、就職や職場定着に向け、支援機関や職場と必要な支援などについて話し合う際に活用できる情報共有ツール」とされています。主な対象は就職・職場定着をめざす精神障害、発達障害、高次脳機能障害のある方としつつ、それ以外の障害のある方も希望があれば活用できると書かれています。名前は、就職活動や採用面接、職場定着といったさまざまな場面・段階を港(port)に見立てて、そこを歩みながら自分の情報を書き足していく「渡航歴」という意味を込めたものだと説明されています。

何を書く欄があるのか

就労パスポート(様式)を実際に開くと、記入欄は4ページです。上から順に並べます。

書くことになっている内容
最終更新日・氏名・障害名(診断名) 記載例には「障害名(診断名)は複数記載可能」という注記が付いています
1 職務経験 これまで職場や福祉サービス事業所などで経験した職務または作業と、その期間。受障前のものも含みます
2 仕事上のアピールポイント 職場などでできていた(できている)ことや、自分の強みが発揮できそうな職種・作業内容、培ってきたスキル
3 体調管理と希望する働き方 ストレスなどを感じやすい状況・場面/ストレスなどのサイン/対処方法(自分で取り組むこと・配慮してほしいこと)/通院のための休暇/服薬管理のための配慮/1日の勤務時間/1週間の勤務日数/休憩の取り方/業務量や作業内容・方法などの調整/業務を安定して遂行するために必要な機器、設備の調整/作業環境で避けたいものまたは配慮を望むもの
4 コミュニケーション面 4-1 相手とのやりとり(職場内の人との会話、業務中の仕事に関する会話)/4-2 相手の気持ちや考えの読みとり(推察)/相手や場面に応じた対応
5 作業遂行面 5-1 指示内容/5-2 理解しやすい方法/5-3 指示・報告の相手/5-4 二つ以上の指示への優先順位づけ/5-5 作業途中での予定変更への対応/5-6 作業の正確さ/5-7 作業ペース/5-8 安定した作業の実施/5-9 作業にともなう確認・質問・報告/5-10 他者との共同作業/5-11 結果のふり返り、目標設定
就職後の自己チェック 就職後の一定のタイミングで4と5を見直し、変化したと感じる項目の番号を書く欄です
参考:支援機関 利用している支援機関の名称、連絡先、利用している支援の内容

この様式でいちばん目を引くのは、4と5がほとんどチェックボックスになっていることです。文章を書かなくても、当てはまるものに印を付けるだけで説明ができます。たとえば5-2「理解しやすい方法」には、口頭説明、文章での説明、見本の提示、写真・図・絵での説明、作業手順書・マニュアルという選択肢が並んでいます。5-1「指示内容」には「一度の指示数は限定してもらえるとよい」「メモが追いつくスピードで話をしてもらえるとよい」といった文が用意されています。

もう一つ特徴的なのは、各項目に「自分で対処していること」という欄があることです。苦手なことを書く欄の隣に、それに対して自分がしている工夫を書く欄が置かれています。

誰と一緒に作るのか

活用の手引きは「支援者と一緒に作成するのがオススメ」という項目を立てて、理由をこう説明しています。事業主などに提示することを考えた場合、「自分は(主観的に)こう思っています」だけではなく、「他の人から(客観的に)見た自分の特徴はこうです」と伝えられるようにしておくほうがより有効だから、というものです。

そのうえで、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などの支援機関を活用し、支援者との面談や施設内訓練、職場実習といった実際の体験を通じて、支援者からの客観的な意見も参考にしながら作成することが望まれる、と書かれています。ふり返りの手順まで示されていて、自分で気づいたことを支援者に伝える、それに対する支援者の意見を聞く、自分では気づかなかったことで支援者が気づいたことがあれば伝えてもらう、という三つの順序が挙げられています。

ひとりで書き上げる書類として作られていない、ということです。埋まらないところが、そのまま相談の材料になります。

いつ、誰に渡すのか

手引きには、使う場面が表で整理されています。

いつ 誰に どう使うか
就職活動段階(他機関の利用登録時) 支援者 必要な支援の内容を一緒に検討する
就職活動段階(職場実習前、採用面接時) 職場の担当者 職務の設定などの参考にしてもらう
就職後(就職時) 現場責任者、上司、同僚など 体調把握、作業指示、コミュニケーションなどにおいて参考にしてもらう
就職後(就職して一定期間経過後) 現場責任者、上司、同僚、支援者など 必要な配慮の実施状況の確認、配慮してほしい内容の見直し、自己チェックにもとづくふり返り

面接だけの道具ではなく、入ったあとに配慮の中身を見直す場面まで想定されています。手引きは「一旦作成したら終わりではありません」として、就職活動や施設内訓練、職場実習、就職後の職場での体験をもとに更新していくものだと説明しています。更新するときは最終更新日の欄を書き換え、更新版の写しを渡すかどうかを自分で決めます。更新前の写しを回収または廃棄するか、両方を保管・共有するかも選べます。

原本は自分で保管します。 支援機関や職場の方に渡すのは写しです。記載された情報は個人情報にあたるので、写しを渡した支援機関や事業主は個人情報の保護に関する法律にもとづいて適正に管理することになる、と手引きに書かれています。

出さなくても構いませんし、全部書かなくても構いません

ここが、この様式でいちばん大事なところだと思います。

様式そのものの最後のページに、「就労パスポートは採用選考時の必須提出書類ではありません」と印刷されています。同じ文が活用の手引きにも、事業主向け活用ガイドラインにもあります。事業主向けのほうには、してはならないこととして次の三つが並べられています。

  • 採用の可否判断のために就労パスポートの作成・提示を必須とすること
  • 就労パスポートを所持していないからといって不利に取り扱うこと
  • 就労パスポートに記載されている情報量が多い、または少ないからといって不利に取り扱うこと

同じガイドラインには、採用の可否は面接や検査などと合わせて総合的に判断するもので、就労パスポートで把握された情報は他の面接や検査などで把握された事項と合わせて評価することが大切だ、とも書かれています。

書く量についても、手引きに三つの逃げ道が用意されています。書けそうな項目から書いてよいこと、所定の項目に当てはまらないときは自由記述欄を使ってよいこと、そして記載したくない項目は無記載のままで構わないことです。全項目の記載は義務ではないと明記されています。さらに様式の各項目は部分的に使えます。 項目1から5まですべて記載した場合でも、就職前には特に伝えておきたい欄だけを提示したり、項目1から3までだけを提示したりすることもできる、と書かれています。

作るかどうかも、誰に見せるかも、最終的に決めるのは本人です。手引きの3-1に、そのまま書かれています。

なお、これに似た道具として、地域障害者職業センターの職業準備支援などで作られるナビゲーションブックがあります。そちらは障害者雇用の求人はどこで探すのかで説明しました。どちらか一方を選ばなければならないものではないので、支援機関に相談するときに、いま使えるほうを教えてもらってください。

面接する側にも、守らなければならない決まりがあります

ここからは、質問される側ではなく、質問する側にかかっている決まりを見ていきます。

適性・能力に関係のないことは、把握しないことになっています

厚生労働省の公正な採用選考の基本は、採用選考の基本的な考え方として、応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことの二点を挙げています。そのうえで、公正な採用選考を行うということは、家族や生活環境に関することなどといった応募者の適性・能力とは関係のない事項で採否を決定しないということだと説明し、こう続けます。

そのため、応募者の適性・能力に関係のない事項について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。

理由もはっきり書かれています。これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがあるから、というものです。聞くだけなら害がないという考え方を、正面から否定しています。

具体的に挙げられているのは次のとおりです。

区分 挙げられている事項
本人に責任のない事項 本籍・出生地に関すること(戸籍謄抄本や本籍が記載された住民票の写しを提出させることも該当します)/家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)/住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)/生活環境・家庭環境などに関すること
本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること) 宗教に関すること/支持政党に関すること/人生観、生活信条などに関すること/尊敬する人物に関すること/思想に関すること/労働組合や学生運動などの社会運動に関すること/購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
採用選考の方法 身元調査などの実施/本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用/合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

面接についても項目が立てられていて、職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておき、適性と能力に関係のない事項を尋ねないよう留意すること、とされています。さらに、出自、障害、難病の有無及び性的マイノリティなど特定の人を排除しないことが必要だ、とも書かれています。

法令の裏づけもあります。同じページは、個人情報保護の観点からも職業安定法第5条の5及び平成11年告示第141号により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められないと述べています。

では、障害のことを聞かれるのはなぜか

ここで多くの方が引っかかると思います。病歴を聞いてはいけないことになっているのに、障害者雇用枠の面接では障害のことを聞かれるからです。

これは別枠として扱われています。障害者差別禁止指針は、法違反とならない場合のひとつとして、障害者専用の求人の採用選考又は採用後において、仕事をする上での能力及び適性の判断、合理的配慮の提供のためなど、雇用管理上必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認することを挙げています。目的が限定されていて、範囲も「雇用管理上必要な範囲」に限られている、という書き方になっています。

聞き方についても、障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】に説明があります。本人が障害者であることを明らかにしている場合に採用後の配慮について質問する際は、公正採用選考の原則に則り、能力・適性を判断するために必要な範囲内で、質問の趣旨及び必要性を明らかにした上で質問していただくことが基本ですとされています。もう一つ、プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインには、採用面接時などに事業主が応募者に対して障害の有無を照会する場合について、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠な場合に限られ、その際には目的を示して本人に障害の有無を照会しなければならないと書かれています。

つまり、答える前に「それは何のために必要な質問ですか」と確かめることは、制度の作りに沿った行動です。失礼にあたるのではないかと心配される方が多いところですが、目的を示して聞くのが元々のルールです。

落とす理由にしてはいけないこと

障害者差別禁止指針は、募集及び採用について、次の三つを障害者であることを理由とする差別に当たると示しています。

  • 障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること
  • 募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと
  • 採用の基準を満たす者の中から障害者でない者を優先して採用すること

根拠は障害者雇用促進法です。第34条は「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない」と定め、第35条は賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、障害者であることを理由とする不当な差別的取扱いを禁じています。

Q&Aには具体例も出ています。障害者手帳を持っている人について、一般求人ではなく障害者専用求人でのみ応募を受け付けることは、一般求人の対象から障害者を排除しているため差別に該当するとされています。手帳を持っていても一般求人に応募できる、というのは制度の側から見てもそうなっています。

一方で、正直に書いておかなければならないこともあります。同じQ&Aには、募集及び採用時において合理的配慮を提供し、障害者と障害者でない者に均等な機会を与えたうえで採用選考を行い、事業主が応募者の能力や適性を判断した結果に基づき障害者である応募者を採用しなかったとしても、法で禁止する障害者差別に当たるわけではない、と書かれています。不採用そのものが禁止されているわけではありません。 禁止されているのは、能力や適性ではなく障害を理由に落とすことです。

面接そのものにも、配慮を求められます

ここが、この記事でいちばん渡したい部分です。

障害者雇用促進法第36条の2は、こう定めています。事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。

条文にある「必要な措置」が合理的配慮です。採用されたあとの働き方の話だと思われがちですが、条文は「募集及び採用について」と書いています。面接という場そのものが、配慮の対象に入っています。

申し出るのが出発点です

制度の作りとして、ここは正確に押さえておいてください。募集及び採用時の合理的配慮は、本人が申し出ることから始まります。 合理的配慮指針は、募集及び採用時における合理的配慮が必要な障害者は、事業主に対して、募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容を申し出ること、と定めています。

なぜ申出が必要なのかも、Q&Aで説明されています。募集及び採用時にはどのような障害特性を有する障害者から応募があるか分からず、事業主がどのような配慮を行えばよいのか不明確な状況にあるから、というのが理由です。採用後は逆で、事業主のほうから職場において支障となっている事情の有無を確認することになっています。同じ合理的配慮でも、面接の段階と入ったあとで、動き出す側が違います。

言い出さなければ何も起きない、というのはつらい設計に見えるかもしれません。ただし、指針は言い出す側の負担を軽くする書き方もしています。希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りるとされていて、その場合は事業主が実施可能な措置を示して話し合うことになっています。「どうしてほしいかは分かりませんが、この場面で困ります」でよい、ということです。

Q&Aには、本人が意思表示をすることが困難である場合には、本人の意向を踏まえた第三者が申し出ることも可能だと書かれています。また指針には、合理的配慮の手続において障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に補佐することを求めても差し支えない、という一文もあります。

面接での配慮は、この3つの順で決まります

  1. 1申し出る支障になっている事情と、希望する措置の内容を事業主に伝えます。具体的に言えないときは、支障になっている事情を明らかにするだけで足ります
  2. 2話し合う事業主は、どのような措置を講ずるかについて本人と話し合います。具体的に申し出ることが困難なときは、事業主が実施可能な措置を示して話し合います
  3. 3決めて、伝える事業主は講ずる措置を確定して本人に伝えます。求めに応じて、その措置を講ずることにした理由や、実施できない理由を説明します
合理的配慮指針の第3が定める、募集及び採用時の手続です。準備に一定の時間がかかる措置もあるため、面接日等までの間に時間的余裕をもって申し出ることが求められています。

準備に時間がかかることがあるので、面接日までに時間的余裕をもって申し出ることが求められています。面接の日程が決まった連絡を受けたときが、いちばん自然なタイミングだと思います。

指針の別表に、面接についての例が載っています

合理的配慮指針には別表が付いていて、多くの事業主が対応できると考えられる措置の例が、障害区分ごとに「募集及び採用時」と「採用後」に分けて並んでいます。募集及び採用時の欄だけを抜き出すと、次のようになります。

障害区分 別表にある募集及び採用時の例
視覚障害 募集内容について、音声等で提供すること/採用試験について、点字や音声等による実施や、試験時間の延長を行うこと
聴覚・言語障害 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること/面接を筆談等により行うこと
肢体不自由 面接の際にできるだけ移動が少なくて済むようにすること
内部障害 面接時間について、体調に配慮すること
知的障害 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
精神障害 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
発達障害 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること/面接・採用試験について、文字によるやりとりや試験時間の延長等を行うこと
難病に起因する障害 面接時間について、体調に配慮すること/面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること
高次脳機能障害 面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること

この表を見ると、精神障害の欄には募集及び採用時の例が一つしか載っていません。ここで「自分の欄に書いていないことは頼めない」と読まないでください。 指針は別表について、記載されている事例はあくまでも例示であり、別表に記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがある、と明記しています。例が少ない欄は、頼める範囲が狭いという意味ではありません。

実際に行われた配慮の例

指針の別表とは別に、厚生労働省は合理的配慮指針事例集【第六版】を出しています。全国の都道府県労働局・ハローワーク、高齢・障害・求職者雇用支援機構などを通じて、事業主が実際に取り組んでいる事例を集めたものです。精神障害と発達障害の「募集・採用」の項に載っているものから、面接の場面に関わるものを挙げます。

  • 他の社員が出入りしない個室の会議室で面接を実施した
  • 集団面接を免除した、または集団での面接を行わないこととした
  • 緊張している様子の方には面接の中断を認め、時間を空けて本人が落ち着いてから面接を再開している
  • 就労支援機関に通っている時間やリズムを考慮し、本人へ確認したうえで面接時間を設定した
  • 本人が言葉に詰まった場合に、平易な表現の質問に変えたり、紙媒体での質問にした
  • 言葉だけでのやりとりではなく、図や文字を用いた面接を行った
  • 制限時間を設けずに筆記試験・適性検査を実施した、または筆記試験・適性検査を免除した
  • 適性検査の際に、同行する支援スタッフが試験監督者に質問する等の支援を行うことを認めた
  • 漢字を書くことが極端に苦手であったため、履歴書をパソコンで作成することを認めた
  • 本人だけでなく、家族や就労支援機関の担当者も一緒に職場見学や勤務内容の説明を実施した

事例集には、就労パスポートの名前も二か所出てきます。「就労パスポートの内容を参考に、仕事の切り出しを行った」というものと、「部署については事前に提出した就労パスポートを元に企業側が本人に合いそうな部署を選定してもらった」というものです。様式に書いたことが、実際に配属の検討材料として使われた例が記録されているということです。

配慮を求めても通らないことはあります。指針は、事業主が過重な負担に当たると判断した場合には、その措置を実施できないことを本人に伝えるとともに、本人からの求めに応じて過重な負担に当たると判断した理由を説明することとしています。そのうえで、過重な負担にならない範囲で別の措置を講ずることとされています。断られたときに理由を聞くのは、制度の中に用意されている手順です。

病名を説明することと、必要な配慮を説明することは別です

ここまで見てきた資料に、共通していることがあります。

就労パスポートの様式で、病名を書く欄は1ページ目上部の「障害名(診断名)」一つだけです。残りの欄はすべて、これまでの職務経験、できていること、ストレスを感じやすい場面とそのサイン、希望する勤務時間と勤務日数、指示の受け方、作業のペースといった、働く場面の話で埋まっています。合理的配慮の申出でも、伝えることとされているのは「支障となっている事情」と「希望する措置の内容」であって、診断名ではありません。

病名は、その人の困りごとを説明してくれません。同じ診断名でも、うるさい場所が特につらい方と、予定が急に変わることが特につらい方では、必要な配慮が違います。逆に、診断名が違っても「指示は一つずつ出してもらえると助かる」という点は同じ、ということも起こります。制度が病名ではなく場面と措置で書かれているのは、そのためだと考えると読み解きやすくなります。

とはいえ、自分の困りごとを場面ごとに言葉にするのは、簡単なことではありません。特に、休んでいた期間が長いほど「いまの自分に何ができるのか」が分からなくなります。これは考えて答えが出る種類の問題ではなく、試してみて分かることのほうが多い領域です。

確かめに行ける場所が、いくつかあります。

地域障害者職業センターは、都道府県ごとに置かれている機関です。障害者雇用促進法第22条は、この機関の業務として障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習を行うことを挙げていて、同法第26条により、障害者職業センターにおける職業リハビリテーションの措置は無料とすることが定められています。実際のプログラムの名前は職業準備支援で、模擬的な作業場面を使った作業支援や講座のほか、個別面談が行われます。個別面談では、体験にもとづいて整理した障害特性や課題、対処方法、配慮事項をまとめていくとされています。ここで整理したことが、そのまま就労パスポートの材料になります。窓口は各地の地域障害者職業センターです。就労移行支援も同じ役割を持っていて、事業所での訓練や職場実習を通じて自分の状態を見ながら整理していく流れです。制度の中身は就労移行支援とはにまとめました。

手引きが「支援者と一緒に作成するのがオススメ」と書いているのは、書き方を教えてもらうためというより、自分では気づかなかったことを言ってもらうためです。ひとりで机に向かって埋まらないのは、書く力の問題ではありません。

面接は、こちらが確認する場でもあります

最後に、聞かれる側から確かめる側に回る話を書きます。面接や内定の場は、労働条件を確認できる数少ない機会です。

求人の段階で明示しなければならない事項は、職業安定法第5条の3第1項と同施行規則第4条の2第3項に列挙されています。2024年4月から項目が増えていて、いまは業務の内容、就業の場所、労働契約の期間、試みの使用期間、有期契約を更新する場合の基準、始業終業の時刻と所定労働時間を超える労働の有無、休憩と休日、賃金の額、健康保険と厚生年金と労災保険と雇用保険の適用、受動喫煙を防止するための措置などが並んでいます。そして業務の内容と就業の場所については、それぞれ「変更の範囲」を含めて明示することになっています。

労働契約を結ぶ時点では、労働基準法第15条第1項と同施行規則第5条がかかります。同規則第5条第1項第1号の3は、明示すべき労働条件として「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)」を挙げています。同条第3項と第4項により、労働契約の期間、更新の基準、就業場所と業務(変更の範囲を含む)、始業終業時刻や休日、賃金、退職に関する事項については、書面の交付によって明示することとされています。本人が希望した場合は、ファクシミリや電子メール等でもよいことになっています。

「変更の範囲」という言葉が入っているところが要点です。 入社した直後の仕事と働く場所だけでなく、将来どこまで変わりうるのかまで示されることになっています。体調と相談しながら働き方を決めたい方にとって、通勤時間が変わる可能性があるのか、業務の内容が入れ替わる可能性があるのかは、決定的な情報です。求人票を見て分からなければ、面接の場で聞いてよい項目です。

面接や内定の場で確かめておきたいことを、条文の並びに沿って整理します。

確かめること どこに定めがあるか
就業の場所と、その変更の範囲 労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3、職業安定法施行規則第4条の2第3項第3号
従事すべき業務と、その変更の範囲 同上(職業安定法施行規則は第3項第1号)
試用期間の有無と期間、その間の条件が異なるかどうか 職業安定法施行規則第4条の2第3項第2号の2、同条第6項
契約期間、更新の基準、更新回数や通算期間の上限 労働基準法施行規則第5条第1項第1号・第1号の2
始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日 労働基準法施行規則第5条第1項第2号
社会保険と雇用保険の適用 職業安定法施行規則第4条の2第3項第6号
申し出た配慮のうち、実施すると決まったのはどれか 合理的配慮指針の第3(講ずることとした措置の内容を本人に伝えることとされています)
実施できないとされた配慮について、その理由 合理的配慮指針の第5(求めに応じて理由を説明することとされています)
入ったあと、配慮のことを相談する窓口は誰か 障害者雇用促進法第36条の4第2項、合理的配慮指針の第6(相談窓口をあらかじめ定めて周知することとされています)

もう一つ、知っておくと安心なことがあります。労働基準法第15条第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができると定めています。聞いていた話と違ったときに、辞められないわけではありません。

選考の途中で条件が変わる場合の決まりもあります。職業安定法第5条の3第3項は、労働契約を締結しようとする場合であって、最初に明示した労働条件を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合には、その変更する内容を明示しなければならないと定めています。面接を重ねるうちに話が変わっていったときは、変わった部分を示してもらう決まりがある、ということです。

求人票そのものの読み方と、求人・事業所PRシートに配慮の例が書かれていることは、障害者雇用の求人はどこで探すのかにまとめてあります。

話が通じなかったときに使えるもの

差別や合理的配慮をめぐって事業主と折り合いがつかない場合の手当ても、法律に書かれています。

障害者雇用促進法第74条の6は、都道府県労働局長は、紛争の当事者の双方または一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導または勧告をすることができると定めています。対象になる紛争は第74条の5に挙げられていて、第34条(募集及び採用の均等な機会)、第35条(待遇の差別禁止)、第36条の2(募集及び採用時の合理的配慮)、第36条の3(採用後の合理的配慮)に関するものです。採用前の段階の紛争も、ここに入っています。

一方で、第74条の7の調停は「労働者の募集及び採用についての紛争を除く」と書かれています。面接の段階のことは、労働局長の助言・指導・勧告の対象にはなりますが、紛争調整委員会の調停の対象にはなりません。ここは区別しておいてください。実際に動くときの入口は、応募したハローワークの障害者専門の窓口か、都道府県労働局です。ひとりで説明するのが難しければ、支援機関の担当者に間に入ってもらうこともできます。

面接の日にできることは、多くありません

長く書いてきましたが、当日にできることは限られています。用意しておけるのは、支援者と一緒に整理した就労パスポート(または同じ役割を持つメモ)と、事前に申し出て決まった配慮の内容、そして確かめたいことを書いた紙です。この三つを持っていけば、その場で考えなければならないことはかなり減ります。

体調を偽る必要はありません。元気に見せるためのふるまいを助言しているページもありますが、根拠はありませんし、実際にできないことをできると見せて入った先で困るのは自分です。就労パスポートの様式が、苦手なことの隣に「自分で対処していること」の欄を置いているのは、隠さずに伝えたうえで働ける形を作るための構造です。

そして、落ちることはあります。合理的配慮を受けて選考され、能力や適性を判断された結果として採用に至らないことは、制度上も起こりうるとされています。少なくとも、配慮を申し出たこと自体が理由になってよい仕組みにはなっていません。何社か受けることを前提に、体調に無理のない間隔で進めてください。

準備がまだ整わないと感じるときは、面接の前の段階に戻って構いません。地域障害者職業センターの職業相談・職業評価も、就労移行支援も、障害者雇用の求人はどこで探すのかで紹介した三つの窓口も、応募する前の段階から使えます。急いで面接に進むより、自分の説明が自分で納得できる形になってからのほうが、話が通りやすくなります。

わたしたちは就労支援の現場で、面接の準備に付き合うことがあります。うまく話せるかを心配される方が多いのですが、実際に詰まるのは話し方ではなく、自分の障害について何をどこまで伝えるかが決まっていないときのように見えます。そこさえ決まっていれば、言葉は多少つかえても伝わります。決める作業はひとりでやらなくてよいものですし、面接の日までに終わっていれば十分です。