障害年金の手続きで、いちばん多くの人が止まるのが初診日です。条件そのものは3つしかないのに、その1つ目でつまずいて先に進めなくなります。理由ははっきりしていて、初診日は過去の記憶と、他人が持っている記録に依存するからです。納付記録のように自分で照会すれば出てくるものではありません。

しかもこの日付は、あとから調整がききません。何年に何月何日に誰の診療を受けたかという事実だけで決まり、そこから受け取れる年金の種類まで自動的に決まってしまいます。

ここでは、初診日という言葉が制度上どう定義されているのか、日常の感覚とどこがずれるのか、証明はどうやって取るのか、そして証明が取れなかったときにどんな道が用意されているのかを、日本年金機構と厚生労働省の資料だけで順に整理しました。精神疾患での障害年金の全体像や金額については、精神疾患での障害年金。もらえる条件と、申請の現実のほうにまとめています。

初診日とは、その病気で初めて医師にかかった日です

定義そのものは短いです。日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」には、こう書かれています。

「初診日」とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日をいう。

法律の側も同じです。国民年金法第30条は、障害基礎年金の支給要件を定めるなかで「その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)」と書いています。つまり初診日は行政の運用ルールではなく、法律の条文に書き込まれた言葉です。

そして日本年金機構の用語集は、実務でいちばん効く一文を添えています。同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります

「初診」という言葉から、多くの方は今かかっている病院の初診を思い浮かべます。制度が言っているのはそこではありません。同じ病気でいくつも病院を移っているなら、いちばん古いほうです。

日常の感覚とずれるところ

定義が短いわりに、当てはめようとすると迷います。よくずれるのは次の4つです。

1つ目は、精神科や心療内科より前の受診です。 定義は「障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日」であって、「精神科にかかった日」ではありません。眠れないことを内科で相談していた、めまいや頭痛で耳鼻科や脳神経外科にかかっていた、体調不良で内科を受診して安定剤を出されていた。それが今の傷病と同じものだと医学的に判断されるのであれば、その日のほうが初診日になり得ます。診療科が精神科かどうかで決まるわけではありません。

2つ目は、健康診断です。 ここは通知にはっきり書かれています。厚生労働省は「初診日は、原則として初めて治療目的で医療機関を受診した日とし、健康診断を受けた日(健診日)は初診日として取り扱わないこととする」としています。健診で異常を指摘されただけの日は、原則として初診日になりません。

ただし例外が続きます。初めて治療目的で受診した日の医証(医療機関の証明)が得られない場合であって、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果であるときは、本人から健診日を初診日とするよう申し立てれば、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を求めたうえで健診日を初診日と認めることができる、と書かれています。原則は健診日を採らない、しかし証明が取れないときの逃げ道としては用意されている、という組み立てです。

3つ目は、転院です。 前に書いたとおり、同じ傷病であればいちばん古い受診が初診日です。途中で診断名が変わっていることもありますが、その場合に同一の傷病と見るかどうかは医学的な判断になります。受診状況等証明書には「発病から初診までの経過」を書く欄があり、診療録から前医の受診が確認できる場合は前医の医療機関名や受診期間も書くことになっています。前の病院からの紹介状が保管されていればコピーを添付するようにも求められています。この欄が、いちばん古い受診をたどるための手がかりになります。

4つ目は、前の病気との関係です。 国民年金法の条文にある「これらに起因する疾病」という部分が効いてきます。障害認定基準は、この「起因する疾病」を「前の疾病又は負傷がなかったならば後の疾病が起こらなかったであろうというように、前の疾病又は負傷との間に相当因果関係があると認められる場合」と定義しています。前の病気と相当因果関係があると認められるときは、後の病気ではなく前の病気の初診日が起点になります。なお、負傷はここに含まれないと明記されています。

相当因果関係があるかどうかは、傷病の性質についての医学的な判断です。この記事で「この病気とこの病気は関係あり」と書けるものではありません。前にかかっていた病気があるなら、そのことを隠さずに年金事務所と主治医に伝えて、判断してもらってください。

日付が思い出せないとき

年月までは分かるけれど何日かが分からない、という場合の取り扱いも決まっています。厚生労働省の通知は、資料により初診日のある年月までは特定できるが日付が特定されない場合には、その月の末日を初診日とするとしています。

ただし条件があります。その月のなかで加入していた年金制度が変わっていた場合(月の途中で退職して国民年金に切り替わったときなど)は、月末を初診日としません。同じ月でも日によって制度が違い、受け取れる年金の種類が変わってしまうからです。この場合は個別の判断になるので、年金事務所で相談してください。

なぜ初診日で全部が変わるのか

初診日にこれだけの重みがあるのは、そこから3つのことが同時に決まるからです。ひとつずつ見ていきます。

1. どの年金制度で請求するかが決まる

いちばん大きいのがここです。日本年金機構の受給要件は、初診日にどの制度に入っていたかで請求先そのものを分けています。

初診日に加入していた制度 請求できるもの 対象になる等級
厚生年金保険の被保険者である間(会社員・公務員など) 障害厚生年金 1級・2級・3級(+障害手当金)
国民年金の加入期間(自営業、無職、扶養に入っている方など) 障害基礎年金 1級・2級のみ
20歳前で年金制度に加入していない期間 障害基礎年金 1級・2級のみ
日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 障害基礎年金 1級・2級のみ

障害基礎年金には3級がありません。まったく同じ状態でも、初診日が在職中だった方は3級で受け取れる可能性があり、退職後や無職の期間だった方は2級に届かなければ支給されません。「働けなくなってから病院に行った」という順番の方は、ここで大きく不利になることがあります。だからこそ、もっと前の受診が初診日にならないかを丁寧にたどる意味があります。

退職の前後に受診した方は、日付が1日違うだけで結論が変わることがあります。厚生年金保険法第14条は、事業所に使用されなくなったときはその翌日に被保険者の資格を喪失すると定めています。退職日当日はまだ被保険者なので、その日までに受診していれば厚生年金の被保険者である間の初診日になり、翌日以降であれば国民年金の期間の初診日になります。当時の資格喪失日と受診日の関係は、年金事務所で記録を突き合わせてもらってください。

2. 保険料の納付を見る時点が決まる

納付要件は、初診日を基準にした期間で判定されます。原則は、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あることです。

さらに特例があり、初診日が令和18年3月末日までにある場合は、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ、要件を満たしたものとされます。

ここで初診日が効いてくるのは、「初診日の前日において」という言い方です。初診日より後になってから過去の未納分を納めても、この判定には反映されません。初診日が1か月ずれるだけで、見る期間もずれます。納付要件そのものの詳しい話はこの記事では扱いませんが、初診日が動くと納付要件の判定も動くということだけ押さえておいてください。

3. 障害認定日が決まる

障害認定日は、障害の程度の認定を行うべき日のことで、初診日から起算して1年6か月を経過した日です。1年6か月以内にその傷病が治った場合は、その治った日(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態に至った日を含みます)が障害認定日になります。

つまり「いつの時点の状態で判定されるのか」も、初診日から機械的に決まります。初診日が半年ずれれば、判定される時点も半年ずれます。過去にさかのぼって請求する場合には、その時点の診断書が必要になるので、初診日の確定はさかのぼれる範囲にも直結します。

初診日を証明する書類は「受診状況等証明書」です

初診日を証明する書類のことを、日本年金機構は初診日証明書類と呼んでいます。通常は、初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書、または診断書を提出します。

ここで少し安心できる話があります。日本年金機構の「障害基礎年金を受けられるとき」は、受診状況等証明書の必要性について「初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が異なる場合、初診日の確認のため」と書いています。裏を返すと、診断書を書いてもらう病院が初診の病院と同じであれば、受診状況等証明書は要りません。診断書そのものが初診日の証明を兼ねるからです。ずっと同じ病院に通っている方は、この時点で初診日の証明という関門を通過しています。

受診状況等証明書には何が書かれるのか

様式を見ておくと、何を頼むことになるのかが分かります。書くのは医療機関で、次の項目が並んでいます。

  • 氏名、傷病名、発病年月日、傷病の原因または誘因
  • 発病から初診までの経過(前医の受診が診療録で確認できる場合は、前医の医療機関名・受診期間・診療内容も。前医からの紹介状があればコピーを添付)
  • 初診年月日、終診年月日、終診時の転帰
  • 初診から終診までの治療内容および経過の概要
  • 上記の記載が何にもとづくものか(1 診療録、2 受診受付簿・入院記録、3 その他、4 本人の申し立て)

最後の項目が重要です。記入要領には、「4 本人の申し立てによるものです。」のみに○が付いた場合は初診日の証明とならないので注意してください、とはっきり書かれています。医療機関に「昔のカルテはないけれど、ご本人がそう言うならその日付で書きますよ」と言われて出来上がった書類は、それだけでは証明になりません。この場合は、次に説明する別の道に進むことになります。

なお、傷病名の欄に複数の傷病を書いたときは、傷病ごとに番号を付けて、それぞれの初診年月日と終診年月日が分かるように記入することとされています。

もう一度請求するときは、前回の証明を使えます

過去に請求して不支給だった方が、同じ傷病・同じ初診日で再請求する場合には、「障害年金前回請求時の初診日証明書類の利用希望申出書」という様式が用意されています。初診日の証明を一から取り直さなくてよい場合があるということです。一度あきらめた方が再挑戦するときの負担は、この分だけ軽くなります。

証明が取れないとき、どうするか

ここからがこの記事の本題です。

まず知っておいてほしいのは、古い受診の証明が取れないのは、あなたの落ち度ではないということです。医師法第24条第2項は、診療録について「病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない」と定めています。法律上の保存義務は5年です。10年前、20年前の受診の記録が残っていないのは、制度が想定している普通の状態です。

日本年金機構自身も「過去にさかのぼって障害年金を請求する場合など、初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合もあるため、こうした場合には、請求される方の状況に応じて、別途の初診日証明書類をご用意いただけるようにしています」と書いています。平成27年10月1日から施行された取り扱いで、厚生労働省の通知に細かく定められています。

まず出すのは「受診状況等証明書が添付できない申立書」

どの道を通る場合でも、最初に共通して出すのがこの申立書です。書くのは本人(または代筆者)で、内容は次のとおりです。

  • 傷病名、医療機関名、医療機関の所在地、受診期間
  • 受診状況等証明書が添付できない理由(カルテ等の診療録が残っていないため廃業しているため/その他)
  • どうやってそれを確認したか(電話/訪問/その他)と、確認した年月日
  • 添付できる参考資料のチェック欄

受診期間については、記入要領に「記憶があいまいな場合は、次の(例)のように記入しても構いません」として、「平成5年4月頃~平成5年10月頃」「昭和61年春頃~昭和62年夏頃」という書き方が示されています。正確に思い出せなくても書ける様式になっています。ここで完璧を求めて手が止まる必要はありません。

代筆した場合は、代筆者の氏名と請求者からみた続柄を書く欄があります。家族や支援者に手伝ってもらうことが前提の書類でもあります。

参考資料として使えるもの

申立書に列挙されているチェック項目が、そのまま「探す価値のあるもの」の一覧になります。公的な様式に書かれているものだけを挙げます。

参考資料 どこで確認できるか(様式の記載から)
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳 手元
身体障害者手帳等の申請時の診断書 診断書等を提出した市区町村の障害福祉の窓口
生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書 提出先の保険会社、労働基準監督署
事業所等の健康診断の記録 当時勤務していた事業所や健康診断を受けた医療機関
母子健康手帳 手元
健康保険の給付記録(レセプトを含む) 当時加入していた健康保険組合や全国健康保険協会
お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券(可能な限り診察日や診療科が分かるもの) 手元
小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表 学校・教育委員会
盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書 学校
第三者証明 後述

このほか「その他」に該当する例として、交通事故証明、インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー(診療や治療経過を要約したもの)、次の受診医療機関への紹介状、電子カルテ等の記録(氏名・日付・傷病名・診療科等が印刷されたもの)、交通事故や労災事故などのことが掲載されている新聞記事が挙げられています。

診察券についてはもう一段の取り扱いがあります。厚生労働省の通知は、診察券や医療機関が管理する入院記録等で初診日と受診した診療科が確認できた場合、請求傷病での受診である可能性が高いと判断できる診療科(精神科など)であれば、それらの参考資料により初診日を認めることができるとしています。内科などのように、それだけでは請求傷病での受診と判断しにくい診療科の場合は、他の参考資料とあわせて認めることができる、という書き方です。古い診察券が1枚出てくることには、はっきりした意味があります。

第三者証明という道

参考資料だけで初診日にたどり着けないときに使うのが第三者証明です。「初診日に関する第三者からの申立書」という様式があります。

20歳以降に初診日がある場合の基本形は、第三者証明2通と参考資料の組み合わせです。日本年金機構の案内は次のように示しています。

  1. 受診状況等証明書が添付できない申立書
  2. 初診日に関する第三者証明書を2通(2名の第三者による証明)
  3. 請求者が申し立てた初診日に関する参考資料(診察券、入院記録、医療機関や薬局の領収書、生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書、障害者手帳の申請時の診断書、交通事故証明書、インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー、事業所等の健康診断の記録、健康保険の給付記録など)

第三者になれる人には条件があります。厚生労働省の通知は、請求者の民法上の三親等以内の親族による第三者証明は認めないとしています。親、きょうだい、配偶者、おじやおばには書いてもらえません。友人、近所の方、当時の職場の同僚や上司などが対象になります。

そして、証明の内容は次のいずれかに当たるものであることが必要とされています。

  • 第三者が、請求者の初診日頃の受診状況を直接的に見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの
  • 第三者が、請求者や家族などから、請求者の初診日頃に、初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの
  • 第三者が、請求者や家族などから、請求時からおおむね5年以上前に、初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、その聞いていた受診状況を申し立てるもの

3つ目の裏返しとして、通知には、聞いた時期が請求時からおおむね5年以内である第三者証明は認められない、と明記されています。ただし、参考となる他の資料があわせて出されていて、様々な資料から申立ての初診日が正しいと合理的に推定できる場合には認めることができる、というただし書きが付いています。「今から頼んで、今の会話をもとに書いてもらう」ものではないという制度設計だと理解してください。

記入要領も同じことを念押ししています。「第三者証明に記入する内容は、請求者や請求者の家族などから最近得た情報は記入せず、申立者が見たり聞いたりした当時に知った内容のみを記入してください」と書かれています。また「単に請求者と会った際に体調が良くないことに気づいた場合などは、医療機関を受診している事実を申立者が直接見ていないため、『直接見て知った』には含まれません」という具体的な線引きもあります。通院の付き添い、入院時のお見舞い、医師からの生活上の注意文書を見た、といったものが「直接見て知った」に当たる例として挙げられています。

医療従事者に書いてもらえるなら、1通で足ります

ここは知られていないわりに効く例外です。初診日頃に受診した医療機関の担当医師や看護師など医療従事者が、当時の受診状況を直接見て認識していた立場で第三者証明を書く場合には、通知はこれを医証と同等の資料として扱います。つまり、参考となる他の資料がなくても、その第三者証明1通だけで初診日を認めることができるとされています。

病院が廃業していても、当時の医師や看護師と連絡が取れることはあります。個人開業のクリニックが閉院した場合など、元の医師がどこかで診療を続けていることも珍しくありません。

ただし条件があります。通知には、初診日頃の受診状況を直接把握できない立場だった医療従事者が、請求者の求めに応じて請求者の申立てにもとづいて行った第三者証明は、これには当たらないと書かれています。当時その場にいた人でなければなりません。

なお、第三者証明が1通しか用意できないときの一般的な取り扱いも定められています。通知は、原則として複数の第三者証明が必要としたうえで、複数を得られない場合には、単数であっても、医療機関の受診にいたる経過や医療機関でのやりとりなどが具体的に示されていて相当程度信憑性が高いと認められるものであれば、第三者証明として認めることができるとしています。人数がそろわないというだけで門前払いになるわけではありません。

初診日が「この期間のどこか」だと示せる場合

日付そのものを特定できなくても、初診日がこの期間の中にあることは間違いないと資料で示せるなら、そこから認めてもらえる道があります。厚生労働省の通知の第2に定められた取り扱いです。

用意するのは、期間の始まり(始期)を示す資料と、終わり(終期)を示す資料です。通知が挙げている例は次のとおりです。

始期の資料としては、請求傷病に関する異常所見がなく発病していないことが確認できる診断書等の資料(就職時に事業主に提出した診断書、人間ドックの結果など)、請求傷病の原因とその発生時期が明らかになる資料(職場の人間関係が起因となった精神疾患であることを明らかにする医学的資料と就職の時期を証明する資料、交通事故が起因となった傷病であることを明らかにする医学的資料と交通事故の時期を証明する資料など)が示されています。

終期の資料としては、請求傷病により受診した事実を証明する資料(2番目以降に受診した医療機関による受診状況等証明書など)、請求傷病により公的サービスを受給した時期を明らかにする資料(障害者手帳の交付時期に関する資料など)が挙げられています。

そのうえで、期間中の年金制度の入り方によって扱いが分かれます。

期間中の状況 扱い
同一の公的年金制度に継続して加入していて、期間中のいずれの時点でも納付要件を満たす 申し立てた初診日を認めることができる
期間の全部が20歳前の期間、または60歳から65歳の待機期間(いずれも厚生年金加入期間を除く) 同一制度に加入していたものとして扱う(20歳前は納付要件を考慮しない)
異なる公的年金制度にまたがっていて、期間中のいずれの時点でも納付要件を満たす 申し立てた初診日についての参考資料とあわせて認めることができる
異なる制度にまたがるが、申し立てた初診日が国民年金の加入期間・20歳前・60歳から65歳の待機期間である 参考資料がなくても認めることができる

考え方はシンプルです。期間内のどこを初診日にしても結論が変わらないなら、日付を特定しなくても支障がないということです。逆に、期間の途中で制度が変わっているときは結論が変わってしまうので、追加の資料が求められます。

5年以上前に作られたカルテに書かれている場合

もうひとつ、静かに効く取り扱いがあります。通知の第3の1です。請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)に、請求者が申し立てた初診日が記載されている場合には、初診日と認めることができるとされています。

2番目にかかった病院のカルテに「○年○月頃より△△医院を受診」と書かれていた、といったケースがこれに当たります。5年以上前ではないけれど相当程度前である場合には、参考となる他の資料とあわせて認めることができる、とも書かれています。ただしその参考資料は、診察券や入院記録など、本人の申立て以外の記録を根拠に初診日を推定できるものである必要があり、本人や家族の申立てにもとづく第三者証明は含まれないとされています。

つまり、いちばん古い病院の記録が消えていても、2番目、3番目の病院の古いカルテに前医のことが書かれていないかを確認する価値があります。受診状況等証明書に「発病から初診までの経過」と前医の記載欄があるのは、このためでもあります。

最後に、総合判断の余地があります

通知の第3の5には、ここまでのどの類型にも当てはまらない場合の受け皿が置かれています。初診日の医証がない場合であっても、2番目以降の受診医療機関の医証など提出された様々な資料や、傷病の性質に関する医学的判断等を総合的に勘案して、請求者が申し立てた初診日が正しいと合理的に推定できる場合には、その初診日を認めることができる、という書き方です。

ですから、「どの様式にも当てはまらないから無理だ」と自分で結論を出す必要はありません。手元にある材料を全部持って、年金事務所で「初診の証明が取れないのですが」と切り出すところからで構いません。

20歳前に初診日がある場合

初診日が20歳より前にある場合は、扱いが大きく変わります。国民年金法第30条の4にもとづく障害基礎年金です。

制度上のポイントは3つあります。

1つ目は、保険料の納付要件がないことです。 20歳前は年金制度に加入していない期間なので、納付要件は問われません。日本年金機構も「20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です」と明記しています。

2つ目は、受け取れるようになる時期です。 障害の状態の判定は、障害認定日(初診日から1年6か月を経過した日)に行いますが、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日の状態で判定されます。受給できるのもその翌月分からです。中学生や高校生のうちに初診日があった方は、実際の受け取りは20歳からになります。

3つ目は、初診日の証明が軽くなることです。 給付の内容が単一で、どの制度に入っていたかで結論が変わらないため、初診日の証明のハードルが下がります。日本年金機構は次の3つの方法を示しています。

  1. 2番目以降に受診した医療機関が作成した受診状況等証明書または診断書を用意する方法。 2番目以降の医療機関の受診日から障害認定日が20歳到達日以前であることが確認でき(受診日が18歳6か月前である場合、または受診日が18歳6か月から20歳到達日以前にあって20歳到達日以前に治った場合)、かつその受診日前に厚生年金の加入期間がないときは、初診の医療機関の証明は不要になります。案内には、初診が10歳のときのA病院であっても、17歳で受診したB病院の証明があればA病院の証明は要らない、という例が載っています。
  2. 第三者証明を2通用意する方法。 20歳前の場合は、参考資料をそろえなくても、第三者証明だけで申し立てた初診日を認めることができるとされています。20歳以降のケースとの大きな違いです。
  3. 初診日頃または20歳前の時期に受診した医療機関の医療従事者による第三者証明を1通用意する方法。

このほか、請求している傷病に関して18歳6か月前に障害者手帳の交付を受けていて、その交付日前に厚生年金の加入期間がない場合は、受診状況等証明書が添付できない申立書と、18歳6か月前の日が交付日として記載されている障害者手帳を用意することでも認められます。

第三者証明を書いてもらう場合、20歳前のケースでは書く内容も変わります。記入要領には、20歳前に初診日がある場合は、少なくとも20歳前までに障害年金を請求する病気やけがにより医療機関を受診したことが明らかであれば申し立てた初診日が認められる場合があるので、初診日の頃に限らず、20歳前に医療機関を受診していることが分かる内容を書いてくださいと案内されています。初診の日を特定して書く必要はありません。

ひとつ注意があります。20歳前に初診日があっても、その初診日が厚生年金の加入期間だった場合は障害厚生年金の対象になるため、20歳以降のケースと同じ扱いになります。中学卒業や高校卒業で就職していた方は、ここに当たる可能性があります。

20歳前の障害基礎年金には所得による支給制限があります

もうひとつ、知っておいたほうがよいことがあります。20歳前の傷病による障害基礎年金は、保険料を納めていない期間の初診日を根拠に支給されるため、支給に制限があります。日本年金機構によれば、前年の所得額が4,794,000円を超える場合は年金の全額が支給停止、3,761,000円を超える場合は2分の1が支給停止になります。扶養親族がいる場合は1人につき所得制限額が加算されます。支給停止となる期間は10月から翌年9月までで、毎年、前年所得の確認が必要です。

このほか、恩給や労災保険の年金等を受給しているときの調整や、海外に居住したときや矯正施設に入所した場合の支給停止も定められています。同じ障害基礎年金でも、初診日が20歳前かどうかでここまで扱いが違うということです。

初診日を思い出すために、手元でできること

体調が悪いなかで過去をたどるのはこたえる作業です。一度で終わらせようとせず、思い出した順にメモへ足していく形で構いません。探す場所として現実的なのは、財布や引き出しに残っている診察券、処方日と医療機関名が並んだお薬手帳、医療費控除のために保管した領収書の束、当時の手帳や日記、スマートフォンに残っている写真やメッセージの履歴です。家族は第三者証明を書けませんが、いつ頃だったかを思い出す手がかりとしては頼りになります。手元に何も出てこないときは、当時加入していた健康保険組合や協会けんぽに給付記録の照会をかける方法があります。

そして、「この年のこの季節に、この辺りの病院にかかった」というところまで来たら、そこから先は年金事務所と一緒に詰めるほうが早いです。医療機関に電話してカルテが残っているかを聞くところまで、自分だけでやる必要はありません。

相談先

初診日の確定は、記録の照会をともなう作業です。窓口ははっきりしています。

  • 年金事務所街角の年金相談センター。障害厚生年金の請求先でもあります。
  • 初診日が国民年金加入中や20歳前の場合は、お住まいの市区町村の窓口でも障害基礎年金の請求ができます。ただし初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所または街角の年金相談センターが提出先になります。
  • 一般的な問い合わせはねんきんダイヤル 0570-05-1165(050から始まる電話からは 03-6700-1165)。
  • 対面の相談は予約ができます。インターネット予約は土日祝日も含めて毎日8時から23時30分まで受け付けています。

窓口に行く前に、初診日にあたりそうな時期と、当時の勤務先や加入していた制度、通っていた病院の名前と場所をメモにしておくと話が早く進みます。分からない欄があっても構いません。分からないことを分からないまま持っていくのが、この手続きでは正しい進め方です。

初診日は、確かに障害年金でいちばん多くの人がつまずく論点です。ただ、つまずく人が多いことは制度の側も分かっていて、だから証明が取れないときの取り扱いがここまで細かく定められています。今日は診察券を探すところまで、で十分です。

わたしたちは就労支援の現場で、初診日のところで手が止まっている方によく会います。何年も前のことを思い出す作業なので、体調がよくない時期には特にこたえます。診察券やお薬手帳が一枚出てくるだけで話が進むことがあるので、思い出す作業と並行して、家にある紙を探してみるのもひとつです。一度で終わらせようとせず、思い出したことをメモに足していく形で十分です。