傷病手当金の支給日を調べている方の多くは、通帳を見ながら、あと何日待てばいいのかを知りたい状態だと思います。家賃の引き落とし日が近い、カードの支払いがある、そういう事情を抱えて日付を数えている方もいます。

先にお伝えしておくと、傷病手当金には「毎月◯日」のような決まった支給日がありません。給料日のように日付が決まっているものではなく、申請書を出すたびに審査があり、そのつど振り込まれます。だから「支給日はいつですか」という問いには、制度としての答えがありません。

ただ、目安がまったくないわけではありません。この記事では、協会けんぽが公表している数字と、初回が遅くなる理由、振り込まれるまでの流れ、そして遅いときにどこへ聞けばいいのかを整理しました。あわせて、入金までのあいだに生活費が持たないときにできることも書いています。

「支給日」という決まった日はありません

傷病手当金は、休んだ期間について申請し、それが認められたら振り込まれるという仕組みです。申請していない期間について自動で振り込まれることはありませんし、こちらが申請書を出さないかぎり、いつまでたっても入金はありません。

ここが給与といちばん違うところです。給与は働いていれば会社が計算して支払ってくれますが、傷病手当金は自分から申請して、認められて、はじめて動くお金です。何もしないで待っていると、待っているだけの時間が過ぎていきます。

そして、入金のタイミングは申請書をいつ出したかで決まります。同じ月に休んでいた人どうしでも、申請書を出した日が2週間違えば、入金も2週間ずれます。ネットで見かける「何日に入った」という体験談が自分に当てはまらないのは、この理由です。

協会けんぽが公表している目安

協会けんぽは、健康保険傷病手当金支給申請書のページで、次のように案内しています。

「審査の結果お支払い可能であれば、受付日から10営業日以内にお支払いいたします。」

よくあるご質問のほうにも、振込みはいつになりますかという問いへの答えとして、審査の結果お支払い可能であれば受付から10営業日以内に支払う、個人の振込状況については加入している支部へ問い合わせてほしい、と書かれています。

この一文は短いのですが、読むべきところが3つあります。

「受付日」は、こちらが投函した日ではありません

10営業日の起点になるのは、協会けんぽの支部が申請書を受け付けた日です。ポストに入れた日でも、会社に渡した日でもありません。

郵送であれば、届くまでの日数がここに加わります。会社を通して提出する運用の職場であれば、会社が発送するまでの日数も加わります。手元を離れてからカウントが始まるまでに、数日から、場合によっては2週間ほどの空白があると考えておいてください。

「審査の結果お支払い可能であれば」という条件がついています

書類に不備があったり、内容の確認が必要になったりした場合は、この目安には収まりません。協会けんぽ山梨支部は、審査にかかる期間について案内した資料のなかで、不備等で申請書が返された場合は、再受付してからあらためて同じ期間がかかると注意を書いています。書き直して送り直すと、日数はほぼ最初からやり直しになります。

営業日での数え方です

10営業日は土日祝日を含みません。連休をまたぐと、暦の上ではもっと先になります。

なお同じ山梨支部の資料では、傷病手当金について「協会けんぽに申請書が到着(受付)してから2週間前後で決定となり、振込されます」と案内されています。暦で数えた言い方に置き換えたものと読めます。ただしこれは一つの支部が出している案内なので、全国どこでも同じ日数を約束しているものではありません。

そして健康保険組合に加入している場合は、これらの数字はあてはまりません。組合ごとに審査の体制も振込のサイクルも違い、月に何回と決めて支払っている組合もあります。保険証や資格情報の発行元が「〇〇健康保険組合」になっている方は、組合の事務局に直接聞くのがいちばん早くて確実です。

初回が遅くなるのは、申請できるタイミングが決まっているから

6月1日から休み始めた場合の、初回の入金までの時間

申請期間が終わるのを待つ
医師と会社の証明をそろえて郵送する
受付から10営業日以内
6月7月8月上旬
このあとの表に挙げた例を、時間の長さで並べたものです。日数は一例で、会社や医療機関によって前後します。協会けんぽが目安として示している10営業日は、いちばん右の区間だけにかかります。

「休み始めて2か月たつのに、まだ1円も入ってこない」という状態は、めずらしくありません。これは審査が滞っているからではなく、そもそも申請書を出せるタイミングが後ろにあるためです。

理由を分けて見ていきます。

申請期間が過ぎるまで、提出できません

協会けんぽの記入の手引きには、はっきりと書かれています。

「この申請書は、申請期間が経過する前に提出することはできません。(申請期間が経過した後にご提出ください。)」

つまり、6月分について申請したいなら、6月が終わるまで出せません。休み始めた6月1日に申請書を出しておいて、あとから振り込んでもらう、という進め方はできない仕組みです。

同じ手引きには、「申請期間は暦で3ヶ月以内としてください。(3ヶ月を超える場合は申請用紙を分けてご申請ください。)」とも書かれています。まとめて長い期間を一度に申請することもできません。

最初の3日間は待期になります

健康保険法第99条第1項は、療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から傷病手当金を支給すると定めています。最初の連続した3日間は待期といって、支給の対象になりません。

初回の申請書には、この待期の期間も含めて書きます。手引きにも、初めて申請する場合は待期完成、つまり3日間連続して休んだ日の初日から申請してくださいと書かれています。申請期間として書いた日数と、実際に支給される日数が一致しないのは、この3日分があるためです。

会社の証明も、期間が過ぎてからです

申請書の3ページ目は会社が書く欄で、申請期間のうち出勤した日と、給与の支払い状況を証明します。手引きには、この証明は申請期間経過後の日付を記入するよう指示があります。

会社に渡してから戻ってくるまでの日数は、職場によってかなり違います。給与計算の締めのあとにまとめて処理する会社もあり、そこで1週間から2週間かかることがあります。

医師の意見も、過ぎた期間についてです

4ページ目は医師が書く欄で、労務不能と認めた期間についての意見が入ります。これも、これから先の期間について前もって書けるものではありません。次の診察のときに依頼して、書き上がるのを待つことになります。

時間の流れで見ると

6月1日から休み始めた方を例にすると、おおよそ次のような流れになります。日数はあくまで一例で、会社や医療機関によって前後します。

時期 起きること
6月1日 休み始めます。6月1日から3日が待期です
6月4日 ここから支給の対象になります
6月30日 申請期間が終わります。ここまで申請書は出せません
7月上旬 自分の2ページを書き、医師に4ページ目を依頼します
7月中旬 会社に3ページ目の証明を依頼します
7月下旬 4ページがそろい、支部へ郵送します
8月上旬 支部で受け付けられ、ここから10営業日以内という目安が動きます

こうして並べてみると、休み始めた日から最初の入金まで2か月前後になることは、遅れているわけではなく通常の流れだとわかります。手続きが止まっているのではないかと不安になったときは、いま自分がこの表のどこにいるかを確かめてみてください。

だからこそ、休職に入るときの生活費の見通しは、この空白を織り込んで立てておく必要があります。休職中に入ってくるお金と出ていくお金の全体像は「休職手当」という制度はありませんにまとめています。

2回目以降はどうなるか

2回目からは、待期のことも初回特有の待ち時間もなくなるので、流れがつかみやすくなります。ただし手順そのものは変わりません。その期間が過ぎてから、会社の証明と医師の意見をもらって出すという繰り返しです。

申請の区切り方について、協会けんぽはよくあるご質問のなかで、長期間休むことになった場合の申請サイクルとして、給与の支払い有無について事業主の証明が必要になるため、1か月単位で給与の締切日ごとに申請することをすすめています

このリズムに乗せると、月に一度申請して、その2週間ほどあとに入金がある、という形に落ち着いていきます。入金の日付そのものは毎月ずれますが、間隔はおおよそ一定になるので、家計の見通しは立てやすくなります。

逆に、2か月分、3か月分とためてから申請すると、そのあいだの入金がゼロになります。まとめたほうが手間は減りますが、手元のお金が細っている時期にこれをやると生活が回らなくなります。体調が許すかぎり、月ごとに区切って出していくほうが安全です

なお、申請が遅れても権利がすぐに消えるわけではありません。健康保険法第193条は、保険給付を受ける権利は行使することができる時から2年を経過したときに時効によって消滅すると定めています。傷病手当金は同法第99条第2項で一日につき支給される額が定められている給付なので、時効も日ごとに進みます。今日中に出さなければならないものではありませんが、放っておくと古い日の分から順に受け取れなくなります。

支給決定通知書が届きます

審査が終わって支給が決まると、通知が届きます。協会けんぽ山梨支部は、決定後に圧着ハガキで支給決定通知書を発送していて、支給決定期間や金額はその通知書で確認できると案内しています。

この通知書は、届いたらとっておいてください。いつからいつまでの分が、いくら支払われたのかが書かれているので、次にどの期間を申請すればいいのかを確かめるときの手がかりになります。

金額が思っていたより少ないと感じたときも、まずこの通知書で支給決定期間を見てください。初回であれば待期の3日分が引かれていますし、会社から住宅手当などが支払われていた期間があれば、その分が調整されていることもあります。額の計算そのものについては傷病手当金はいくらもらえるかに分けて書いています。

遅いと感じたときに確認すること

目安を過ぎても入金がないとき、順番に確かめると原因が見つかりやすくなります。

まず、申請書がいまどこにあるかを確かめます

意外と多いのが、申請書がまだ協会けんぽに届いていないという状態です。医師の欄が書き上がるのを待っている、会社の総務に預けたまま止まっている、そういうことがあります。会社を通して提出する運用の職場であれば、先に人事や総務に「いつ発送しましたか」と聞くのがいちばん早い確認になります。

電子申請を使った場合は、申請後の処理状況を確認できると案内されています。郵送で出した場合は、進み具合を支部に電話で聞くことになります。

問い合わせ先

協会けんぽは、申請の進捗状況について、加入している全国健康保険協会の各支部へ問い合わせるよう案内しています。あわせて、問い合わせの際は資格情報のお知らせを手元に用意してほしいとも書かれています。個人の振込状況についても同じく支部が窓口です。

自分がどの支部に加入しているかは、資格情報のお知らせか、マイナポータルの健康保険証の資格情報の画面で確認できます。

健康保険組合に加入している場合は、組合の事務局が問い合わせ先です。会社の人事を通さずに、自分で直接電話しても構いません。

聞きたいこと 聞く先
申請書がいつ発送されたか 会社の人事・総務(会社経由で出している場合)
申請が受け付けられているか、いま審査のどの段階か 加入している協会けんぽ支部、または健康保険組合
振込がいつになるか 同上
医師の欄が書き上がっているか 通院先の窓口、医療相談室

電話するときは、氏名と生年月日、記号・番号、そしていつごろ出した何月分の申請かを伝えられるようにしておくと、話が早く進みます。

よくある止まり方

  • 申請書に不備があって返送されたが、本人がそれに気づいていない。転居して住所が変わっていたり、家族が受け取って置いたままになっていたりすることがあります
  • 会社の証明の日付が申請期間より前になっていて、書き直しになった
  • 口座の書き方が違っていて振り込めない。特にゆうちょ銀行では、通帳に印字されている記号・番号では振り込めず、振込専用の店名と口座番号が必要です
  • 2ページ目に書いた傷病名や発病日が、4ページ目に医師が書いた内容と食い違っていて、確認に時間がかかっている

これらの書き方の詳細は傷病手当金支給申請書の書き方にまとめてあります。そもそも自分が対象になるのかどうかで迷っている場合は、傷病手当金を受け取れる条件を先に確かめてください。

なお、窓口に行けば現金で受け取れるということはありません。協会けんぽは、支部窓口での現金による支払いは行っていないと明記しています。急いでいても、振込を待つ以外の受け取り方はないと考えてください。

生活費が持たないときにできること

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。入金までの空白は、待てば埋まるものですが、その空白のあいだに家賃や光熱費の期日が来ます。お金が尽きてから動くより、尽きる前に動くほうが、選べる方法は多く残ります

社会福祉協議会の貸付

生活福祉資金貸付制度は、都道府県社会福祉協議会が実施主体となっている公的な貸付です。厚生労働省の案内では、低所得者世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象としていて、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金の4種類が用意されています。

利子については、連帯保証人を立てる場合は無利子、立てない場合は年1.5パーセントとされていて、緊急小口資金と教育支援資金は無利子です。連帯保証人を立てない場合も貸付は可能とされています。

相談は市区町村の社会福祉協議会、または都道府県の社会福祉協議会が窓口です。制度についてのコールセンターも案内されていて、番号は0120-46-1999、受付は平日の9時から17時までとなっています。

貸付なので返す必要はありますが、消費者金融やカードのキャッシングとは性質が違います。傷病手当金が入るまでのつなぎとして考えるのであれば、まずここに相談するのが順番として先です。

自立相談支援機関

生活困窮者自立支援制度の窓口です。厚生労働省は、生活にお困りの方の相談を受け付け、ひとりひとりの状況に合わせて、仕事の支援、家賃相当額の支給などの住まいの支援、家計の立て直しの支援などを提供していると説明しています。

支援員が相談を受けて、どのような支援が必要かを相談者と一緒に考え、支援プランを作成して、自立に向けた支援を行うという流れです。離職などにより住居を失った方、または失うおそれの高い方には、就職に向けた活動をするなどを条件に、一定期間、家賃相当額を支給する住居確保給付金という仕組みもあります。

窓口は住んでいる地域の自立相談支援機関です。市区町村の福祉の窓口で「自立相談支援の窓口はどこですか」と聞けば案内してもらえます。

ここでよくあるためらいが、「まだ働ける気がするから、相談するほどではない」というものです。この制度は生活保護とは別のもので、働けるかどうかを問われる場所ではありません。お金の見通しが立たないという相談そのものが、この窓口の対象です

支払いのほうを待ってもらう

入ってくるお金を増やすだけでなく、出ていくお金の期日をずらす方向でも手が打てます。

住民税や国民健康保険料は、納期限が来る前に市区町村の窓口に相談すると、分けて納める方法などを検討してもらえることがあります。電気やガス、水道も、事業者に事情を伝えると支払いの期日について相談できる場合があります。家賃についても、滞納してから連絡が来るのを待つより、先に管理会社や大家さんに事情を伝えておくほうが、話がこじれにくくなります。

どれも、滞ってからでは選択肢が減ります。通帳を見て「来月は届かない」と思った時点が、動くタイミングです。

少しでも早く受け取るためにできること

日数を大きく縮める方法はありませんが、無駄な往復を減らすことはできます。

電子申請を使うのがひとつです。協会けんぽは傷病手当金の申請について電子申請をすすめていて、印刷や郵送などにかかっていた手間や費用が削減できること、制度内容やよくある質問、入力方法の説明等を見ながら申請できること、申請前の入力チェック等により記載漏れや記載誤りを防ぐことができること、申請後の処理状況を確認することができることを挙げています。郵送の往復がなくなるぶん、受付までの日数が短くなります。

期間が終わる前に、書ける欄を書いておくのも効きます。提出はできませんが、自分が書く2ページを先に埋めておけば、月が変わってすぐ医師と会社に回せます。

医師と会社への依頼を早めに予約しておくことも有効です。次の診察が月末なら、そのときに4ページ目を書いてもらえるよう、前もって受付に伝えておきます。会社にも「今月分をいつ渡せばいいですか」と先に聞いておくと、給与の締め処理のタイミングに合わせやすくなります。

公金受取口座を使う方法もあります。マイナポータルで公金受取口座を登録していれば、申請書で「希望する」を選ぶだけで口座欄の記入そのものが不要になります。口座の書き間違いで差し戻される可能性がなくなるので、ゆうちょ銀行を指定したい方には特に安心です。

待っているあいだも、時間は進みます

入金の日付が読めないというのは、それだけで気持ちを削られます。金額がわからないより、いつ入るかわからないことのほうがきついという方は多いです。

ただ、この待ち時間の大部分は、審査が長いせいではありません。申請できるタイミングが後ろにあるという制度の形からくるものです。仕組みがそうなっていると知っているだけでも、待ち方は少し変わると思います。

今日できることは、たぶん次のどれかです。自分の申請書がいまどこにあるかを確かめる。まだ出していないなら、書ける欄だけ書いておく。次の診察で医師の欄を頼めるよう、受付に一言伝えておく。そして、来月の支払いが不安なら、社会福祉協議会か自立相談支援機関の電話番号を調べておく。

全部を今日やる必要はありません。ひとつだけ選んで、それが済んだら今日は終わりにしてください。

わたしたちは就労支援の現場で、初回の振り込みを待つ時期がいちばん不安だという話をよく聞きます。手続きは進んでいるのに何も届かない期間が続くので、止まっているように見えてしまいます。実際には申請できる時期が決まっているだけで、遅れているわけではないことがほとんどです。それでも生活が持たないときは、待つより先に相談してしまって構いません。