休むことを考え始めたときに、いちばん知りたいのは金額だと思います。月にいくら入ってくるのかが分からないと、休んでよいのかどうかの判断もつきません。

この記事は、傷病手当金の額の出し方だけに絞ってまとめました。自分の標準報酬月額から1日あたりの額を探せる早見表と、計算例を3つ載せています。受け取れる条件については傷病手当金を受け取れる条件にまとめてあるので、そちらを先に確かめてから戻ってきてください。

計算式は1行です

1日あたりの額を出す3つの手順

  1. 1直近12か月の標準報酬月額を平均する支給開始日以前の継続した12か月間の、各月の標準報酬月額を平均します
  2. 230で割る5円未満の端数は切り捨て、5円以上10円未満の端数は10円に切り上げます
  3. 33分の2にする50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は1円に切り上げます
2で丸めたあとの額に、3で3分の2をかけます。順番を入れ替えると数円ずれることがあります。

健康保険法の第99条第2項に、次のように定められています。

1日あたりの額 = 支給開始日以前の直近の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2

支給開始日というのは、いちばん最初に傷病手当金が支給された日のことです。休み始めた日でも、申請した日でもありません。

順番に見ていくと、やることは3つです。直近12か月の標準報酬月額を平均する、30で割る、3分の2にする。難しいのは計算そのものではなく、最初の「標準報酬月額」という言葉のほうです。

標準報酬月額は、いまの給与の額ではありません

ここでつまずく方がとても多いところなので、先に整理しておきます。

標準報酬月額は、社会保険の計算に使うために決められた、きりのよい金額です。健康保険では第1級の5万8,000円から第50級の139万円まで、50段階の等級に分かれています。給与が19万8,000円の方の標準報酬月額は19万8,000円ではなく、19万5,000円以上21万円未満の区分に当てはまるので20万円になります。

もう2つ、ずれる理由があります。

ひとつは、もとになる報酬の範囲です。健康保険法では報酬を「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と定めていて、通勤手当や住宅手当なども含まれます。基本給だけで考えていると、思ったより高い等級になっていることがあります。逆に、3か月を超える期間ごとに受けるもの、つまり年2回のボーナスなどは報酬から除かれるので、そちらは反映されません。

もうひとつは、決め直される時期です。標準報酬月額は原則として毎年1回、4月から6月に受けた報酬をもとに決められ、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。途中で報酬が大きく変わったときは改定されますが、それも3か月続けて変動したことが条件です。つまり、いまの給与明細の額とタイムラグがあるのが普通です。

自分の標準報酬月額を調べる方法

いちばん早いのは、会社の給与や社会保険の担当者に聞くことです。休職の相談をする流れで一緒に確認してしまうのが手間がかかりません。

自分で調べたい場合は、次の方法があります。

  • 給与明細の健康保険料の額を、全国健康保険協会が公表している都道府県ごとの保険料額表と照らし合わせる
  • ねんきんネットやねんきん定期便で、厚生年金の標準報酬月額を確認する
  • 加入している健康保険(協会けんぽの都道府県支部、または健康保険組合)に問い合わせる

2つめについて、ひとつ注意があります。厚生年金の標準報酬月額は等級の区切り方が健康保険と少し違い、下は8万8,000円、上は65万円までです。この範囲の中にいるなら健康保険の標準報酬月額と同じ額ですが、それより低い方や高い方はずれます。

早見表:標準報酬月額から1日あたりの額を探す

標準報酬月額30万円の場合の、30日分の目安

標準報酬月額30万円
傷病手当金の30日分(1日6,667円)20万10円
12か月ずっと標準報酬月額が30万円だった場合の目安です。所得税と雇用保険料はかかりませんが、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担は休職中も止まりません。

12か月ずっと同じ標準報酬月額だった場合の額を、条文どおりの端数処理で計算しました。真ん中の列が自分の月給の目安、左が標準報酬月額です。どちらからでも探せます。

標準報酬月額 報酬月額(月給の目安) 1日あたりの額 30日分の目安
5万8,000円 6万3,000円未満 1,287円 3万8,610円
6万8,000円 6万3,000円〜7万3,000円 1,513円 4万5,390円
7万8,000円 7万3,000円〜8万3,000円 1,733円 5万1,990円
8万8,000円 8万3,000円〜9万3,000円 1,953円 5万8,590円
9万8,000円 9万3,000円〜10万1,000円 2,180円 6万5,400円
10万4,000円 10万1,000円〜10万7,000円 2,313円 6万9,390円
11万円 10万7,000円〜11万4,000円 2,447円 7万3,410円
11万8,000円 11万4,000円〜12万2,000円 2,620円 7万8,600円
12万6,000円 12万2,000円〜13万円 2,800円 8万4,000円
13万4,000円 13万円〜13万8,000円 2,980円 8万9,400円
14万2,000円 13万8,000円〜14万6,000円 3,153円 9万4,590円
15万円 14万6,000円〜15万5,000円 3,333円 9万9,990円
16万円 15万5,000円〜16万5,000円 3,553円 10万6,590円
17万円 16万5,000円〜17万5,000円 3,780円 11万3,400円
18万円 17万5,000円〜18万5,000円 4,000円 12万円
19万円 18万5,000円〜19万5,000円 4,220円 12万6,600円
20万円 19万5,000円〜21万円 4,447円 13万3,410円
22万円 21万円〜23万円 4,887円 14万6,610円
24万円 23万円〜25万円 5,333円 15万9,990円
26万円 25万円〜27万円 5,780円 17万3,400円
28万円 27万円〜29万円 6,220円 18万6,600円
30万円 29万円〜31万円 6,667円 20万10円
32万円 31万円〜33万円 7,113円 21万3,390円
34万円 33万円〜35万円 7,553円 22万6,590円
36万円 35万円〜37万円 8,000円 24万円
38万円 37万円〜39万5,000円 8,447円 25万3,410円
41万円 39万5,000円〜42万5,000円 9,113円 27万3,390円
44万円 42万5,000円〜45万5,000円 9,780円 29万3,400円
47万円 45万5,000円〜48万5,000円 10,447円 31万3,410円
50万円 48万5,000円〜51万5,000円 11,113円 33万3,390円
53万円 51万5,000円〜54万5,000円 11,780円 35万3,400円
56万円 54万5,000円〜57万5,000円 12,447円 37万3,410円
59万円 57万5,000円〜60万5,000円 13,113円 39万3,390円
62万円 60万5,000円〜63万5,000円 13,780円 41万3,400円
65万円 63万5,000円〜66万5,000円 14,447円 43万3,410円

等級はこの上にも続いていて、いちばん上は139万円です。計算のしかたは同じなので、当てはまらない方は次の計算例を見ながら自分で出してみてください。

この表はあくまで出発点です。12か月のあいだに標準報酬月額が変わっている方は、平均を出すところから始める必要があります。次の計算例で手順を追ってみてください。

計算例を3つ

例1:12か月ずっと標準報酬月額20万円だった場合

  1. 平均した額は20万円です。
  2. 30で割ります。20万円 ÷ 30 = 6,666.66…円。10円の単位で見ると6.66円の端数が出るので、後で説明する端数処理で6,670円に切り上がります。
  3. 3分の2にします。6,670円 × 2 ÷ 3 = 4,446.66…円。ここも端数処理をして4,447円です。

30日分にすると13万3,410円、31日分にすると13万7,857円です。

例2:途中で標準報酬月額が変わった場合

支給開始日以前の12か月のうち、前半6か月が24万円、後半6か月が26万円だったとします。

  1. 平均を出します。(24万円 × 6 + 26万円 × 6)÷ 12 = 25万円。
  2. 30で割ります。25万円 ÷ 30 = 8,333.33…円。端数が3.33円なので切り捨てて8,330円です。
  3. 3分の2にします。8,330円 × 2 ÷ 3 = 5,553.33…円。33銭を切り捨てて5,553円です。

例1では2か所とも切り上げになり、例2では2か所とも切り捨てになりました。切り上げになるか切り捨てになるかは金額しだいで、有利不利の話ではありません。

例3:標準報酬月額が決まっている月が12か月に満たない場合

入社して6か月で休むことになり、その6か月の標準報酬月額がずっと44万円だった場合です。

このときは、次の2つを比べて少ないほうの額を使います。

  • これまでの各月の標準報酬月額を平均した額。この例では44万円です。
  • 支給開始日の属する年度の前年度9月30日時点で、全被保険者の標準報酬月額を平均した額。支給開始日が令和7年4月1日以降であれば32万円、令和7年3月31日以前であれば30万円です。

少ないほうは32万円なので、こちらで計算します。32万円 ÷ 30 = 10,666.66…円で、端数処理をして10,670円。その3分の2で7,113円です。

給与が高い方ほど、この比較で額が抑えられます。逆に、標準報酬月額の平均が32万円より低い方は、平均のほうがそのまま使われるので気にしなくて大丈夫です。

端数処理は2か所にあります

条文には、丸め方までしっかり書かれています。手で計算するときはここでずれやすいので、確認しておいてください。

1か所目は、平均した額を30で割ったところです。その額に5円未満の端数があるときは切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは10円に切り上げます。つまり10円の単位まで丸めます。

2か所目は、3分の2にしたところです。その金額に50銭未満の端数があるときは切り捨て、50銭以上1円未満の端数があるときは1円に切り上げます。こちらは1円の単位まで丸めます。

順番も決まっています。先に30で割って10円単位に丸め、丸めたあとの額に3分の2をかけます。平均した額にいきなり3分の2をかけてから30で割ると、数円ずれることがあります。

1日あたりの額から、月の見込みを出す

1日あたりの額が出たら、あとは日数をかけるだけです。ただし日数の数え方に少しくせがあります。

数えるのは暦の日数です。土日や祝日も、もともと会社の休みだった日も、支給の対象になる期間に入っていれば日数に数えます。営業日で数えるものではありません。

そのため、ひと月分といっても28日の月と31日の月では額が変わります。おおよその見当をつけるなら30日をかけて、その前後で幅を持たせておくのが実際的です。

もうひとつ、最初の月だけは日数が短くなります。休み始めてから連続する3日間は待期といって支給の対象にならないので、その分だけ最初の月は少なくなります。待期の数え方は傷病手当金を受け取れる条件にまとめました。

給与のときの手取りと比べるとき

3分の2という数字を見て、生活が3分の2になると考える方が多いのですが、手取りで比べるともう少し近づきます。理由は2つあります。

ひとつは税金です。健康保険法には、保険給付として受け取った金品を標準として租税その他の公課を課することはできないと定められています。傷病手当金からは所得税が引かれません

もうひとつは雇用保険料です。給与ではないので、こちらもかかりません。

ただし、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担は休職中も止まりません。傷病手当金から天引きされるわけではなく、会社に別に払う形になります。入るお金と出るお金を並べた全体像は休職中に受け取れるお金と、出ていくお金に整理してあります。

給与が一部出ているときは差額になります

健康保険法の第108条第1項に、報酬の全部または一部を受けることができる者に対しては、受けることができる期間は傷病手当金を支給しないと定められています。ただし、受けることができる報酬の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます

たとえば標準報酬月額30万円で1日あたりの額が6,667円の方に、30日のあいだに9万円の報酬が支払われた場合を考えます。1日あたりに直すと3,000円なので、差額の3,667円が1日あたりの支給額になります。30日分では11万10円で、報酬の9万円と合わせるとちょうど20万10円、つまり傷病手当金の満額と同じところに着地します。

ここでいう報酬に何が含まれるかは、支給申請書の記入の手引きに書かれています。有給休暇の賃金や、出勤の有無にかかわらず支給される通勤手当・扶養手当・住宅手当などが含まれます。一方で、出勤した日に対して支払われた残業手当や、見舞金のように一時的に支払われたものは含まれません。

会社が申請書の事業主記入欄にこれらを記入するので、自分で計算して申告する必要はありません。ただ、給与明細に少額でも支給がある月は差額になる可能性があると知っておくと、振り込まれた額を見て慌てずにすみます。

ほかの給付と重なると減ることがあります

同じ時期にほかの給付を受けていると、傷病手当金が減ったり出なくなったりします。健康保険法の第108条と、申請書の記入の手引きに書かれている内容を整理しました。

重なるもの どうなるか
会社からの報酬 受けられる期間は支給されません。報酬の額のほうが少ないときは差額が支給されます
同じ傷病による障害厚生年金 支給されません。年金の額(同じ理由で障害基礎年金も受けられるときは合算した額)を厚生労働省令の定めで日額に換算した額のほうが少ないときは、その差額が支給されます
同じ傷病による障害手当金 支給されるはずだった額の合計が障害手当金の額に達するまでのあいだ、支給されません
老齢・退職を理由とする年金 退職後に継続給付として受け取っている方が対象です。支給されませんが、年金の額を日額に換算した額のほうが少ないときは差額が支給されます
別の傷病による労災保険の休業補償給付 支給されません。休業補償給付の日額のほうが低い場合は差額が支給されます

この表で気をつけたいのが4行目です。老齢や退職を理由とする年金との調整は、退職後も継続して傷病手当金を受け取っている方に限られます。在職中に年金を受け取りながら働いていて休んだ場合とは扱いが違うので、混同しないでください。

2行目の障害厚生年金は、療養が長引いたときに現実に起こりやすい重なりです。両方を満額で受け取れるわけではなく、差額の考え方になります。順番を考えるときの前提にしておいてください。

なお、業務や通勤が原因の傷病そのものについては、健康保険ではなく労災保険の話になります。表の5行目は、傷病手当金の対象になる傷病とは別の原因で労災の給付を受けている場合を指しています。

計算した額と、実際に振り込まれる額がずれる理由

自分で計算した額と決定通知書の額が違っていて驚くことがあります。よくある理由をまとめておきます。

  • 標準報酬月額を、いまの給与の額で計算していた
  • 12か月の途中で標準報酬月額が変わっていることに気づいていなかった
  • 端数処理の順番を入れ替えていた
  • 支給開始日を、休み始めた日だと思っていた
  • 待期の3日間を日数に入れていた
  • 給与の一部(通勤手当など)が出ていて、差額になっていた
  • 転職などで標準報酬月額が決まっている月が12か月に満たなかった

どれも計算のしかたを間違えたというより、前提の置き方が少し違っていただけです。

おおよその額を先に知りたいときは、加入している健康保険に電話で聞くのがいちばん確実です。協会けんぽであれば都道府県支部、健康保険組合であれば組合の事務局が窓口になります。名前を伝えずに一般的な質問として聞くこともできますが、自分の額を教えてもらうには本人確認が必要です。

会社の給与担当者に、直近12か月の標準報酬月額を教えてほしいと頼む方法もあります。その数字さえ手元にあれば、この記事の計算式で自分で出せます。

額が分かったら、次にすること

金額の見当がついたら、あとは受け取れる条件に自分が当てはまっているかどうかです。ここが確認できていないと、計算した額は絵に描いた餅のままになります。傷病手当金を受け取れる条件で確かめてください。

そのうえで、月に入るお金と出るお金を並べてみてください。傷病手当金が入っても、健康保険料と厚生年金保険料の本人負担、それに住民税は休職中も止まりません。全体像は休職中に受け取れるお金と、出ていくお金にまとめてあります。

申請の準備に進む段階になったら、傷病手当金支給申請書の書き方を見ながら手を動かしてください。金額を計算する欄は申請書にはありません。書くのは休んだ期間と、医師と会社が証明する内容だけです。計算は保険者がやってくれます。

わたしたちは就労支援の現場で、休職中のお金の見通しを一緒に立てることがあります。額を計算してみて、思っていたより少ないと感じる方もいれば、思っていたよりあると感じる方もいます。どちらにしても、分からないまま過ごしている時期がいちばん消耗します。おおよその額が出るだけで、決められることが増えます。