「B型事業所 おかしい」と検索する方の多くは、答えそのものより先に、自分の感じ方が正しいのかどうかで迷っています。作業の指示のしかた、職員の言葉づかい、工賃の説明、休んだときの扱い。どこかが引っかかっているのに、それが自分の受け取り方の問題なのか、事業所の側の問題なのかが判断できない。そして、その判断を一緒にしてくれる人が近くにいない、という状態だと思います。
就労継続支援B型は、障害者総合支援法にもとづいて指定を受けて運営される事業です。人員、設備、運営について守らなければならない基準が省令で細かく決まっていて、基準に反していれば行政の指導や監査の対象になります。感覚とは別に、条文という共通の物差しがあるということです。
この記事は「おかしい事業所が多い」と言うためのものではありませんし、いま通っている場所を辞めるように勧めるものでもありません。基準に書かれていることを並べるので、自分の事業所に当てはめて上から順に見ていってください。当てはまらない項目が見つかったときに、どこへ相談できるのかも、近いところから順に並べます。条文は2026年8月時点のものを確認しています。
判断の物差しは、法令と省令に書かれています
B型の事業所は、都道府県知事の指定を受けて運営されています。指定都市・中核市などでは、障害者総合支援法第106条の大都市等の特例により、都道府県が処理することとされている事務をその市が処理します。つまり、どこが指定をしているかは事業所の所在地によって変わります。相談先を選ぶときに効いてくるので、頭の隅に置いておいてください。
事業者の責務は障害者総合支援法第42条にあります。本人の意向・適性・障害の特性その他の事情に応じて、常に障害者等の立場に立って効果的にサービスを行うよう努めなければならないとされ、第3項では人格を尊重し、法令を遵守し、忠実に職務を遂行しなければならないと定められています。
具体的な決まりを置いているのが指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)です。以下、基準省令と呼びます。B型については第198条から第202条までが直接の規定で、運営に関する部分は第202条が他のサービスの条文を準用する形になっています。条番号が飛ぶので追いにくいのですが、中身は次に整理します。
守られているかを確認する仕組みも法律にあります。同法第48条第1項により、都道府県知事または市町村長は、必要があると認めるときは報告や書類の提出を求め、事業所に立ち入って設備や帳簿書類を検査させることができます。第49条では、基準に従っていないと認めるときに都道府県知事が期限を定めて是正の勧告を行い、期限内に従わなかったときはその旨を公表できるとされています。厚生労働省の指定障害福祉サービス事業者等監査指針(令和8年6月8日障発0608第1号の別添3)は、監査の対象を選ぶときに踏まえる情報として通報・苦情・相談等に基づく情報や、市町村・相談支援事業等に寄せられる苦情を挙げています。相談が制度の入口として想定されている、ということです。
基準に照らして確認できること
まず確認しやすい4つ
- 1個別支援計画の控えが手元にあるか説明を受けて文書で同意し、交付を受けるものです
- 2前年度の平均工賃額を知らされているか目標水準とあわせて利用者に通知することが義務づけられています
- 3苦情の受付先が示されているか窓口を設置する等の必要な措置を講じることとされています
- 4掲示か、備え付けの書面があるか運営規程の概要、従業者の勤務の体制などの重要事項です
左が基準で決まっていること、右が自分で確かめられることです。
| 項目 | 基準ではこう決まっています | だからこう確認できます |
|---|---|---|
| 個別支援計画 | サービス管理責任者が作成し、原案を説明して文書により同意を得て、本人と相談支援事業者等に交付する。少なくとも6か月に1回以上見直す | 計画の控えが手元にあるか。半年以上、見直しの面接がないままになっていないか |
| アセスメント | 利用者に面接して行い、面接の趣旨を十分に説明して理解を得る | 計画を作る前に、自分の希望を聞く面接があったか |
| 人員配置 | 職業指導員と生活支援員の総数が常勤換算で利用者数÷10以上。それぞれ1以上。サービス管理責任者は利用者60人以下なら1以上 | 掲示や運営規程に書かれた職種・員数を見る。サービス管理責任者が誰かを言えるか |
| 工賃 | 生産活動の収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払う。平均額は月3,000円を下回らない | 工賃がどう計算されているかの説明があるか |
| 工賃の通知 | 年度ごとに目標水準を設定し、目標水準と前年度の平均額を利用者に通知し、都道府県に報告する | 前年度の平均工賃額を知らされているか |
| 生産活動 | 作業時間・作業量等が過重な負担とならないよう配慮する。安全のため必要かつ適切な措置を講じる | 体調に合わせて量や時間を調整できるか |
| 虐待の防止 | 虐待防止委員会を定期的に開催し結果を職員に周知、研修を定期的に実施、担当者を置く | 運営規程に虐待防止の項目があるか |
| 身体拘束等 | 生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き禁止。やむを得ず行うときは態様・時間・心身の状況・理由を記録する | 行動を制限されたことがあるか。あった場合、記録と説明があったか |
| 苦情解決 | 苦情を受け付ける窓口を設置するなどの措置を講じ、受け付けた内容等を記録する | 苦情の受付先が示されているか |
| 重要事項の説明 | 利用申込みのとき、運営規程の概要、従業者の勤務体制その他の重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得る | 契約時にその文書を受け取っているか |
| 掲示 | 事業所の見やすい場所に運営規程の概要、従業者の勤務の体制、協力医療機関その他の重要事項を掲示する(書面の備え付けと自由な閲覧でも可) | 事業所内に掲示があるか。なければ備え付けの書面があるか |
| 記録の保存 | 個別支援計画、サービス提供の記録、身体拘束等の記録、苦情の記録、事故の記録を整備し、5年間保存する | 記録が残っている前提で話ができる |
個別支援計画は、渡されて、半年ごとに見直されるものです
いちばん確認しやすいのがここです。基準省令第58条(B型に準用)が定めている流れは次のとおりです。
まずアセスメントを行います。アセスメントは利用者に面接して行わなければならず、サービス管理責任者は面接の趣旨を十分に説明して理解を得なければなりません。利用者が自ら意思を決定することに困難を抱える場合には、意思および選好、判断能力等を丁寧に把握することも求められています。次に、意向、支援の方針、課題、目標とその達成時期などを記載した原案を作り、利用者と担当者等を招集した会議を開いて意見を求めます。そのうえで、原案の内容を利用者または家族に説明し、文書により利用者の同意を得なければならないとされ、作成した計画は利用者と、指定特定相談支援事業者等に交付します。
作成後はモニタリングを行い、少なくとも6か月に1回以上、計画の見直しを行うことになっています。特段の事情がない限り、定期的に利用者に面接し、定期的に結果を記録しなければなりません。手元に控えがないと感じたら、まずは事業所に求めるところから始められます。
人員配置には、条文で決まった最低ラインがあります
B型の従業者の員数は、基準省令第199条が第186条を準用する形で定められています。
- 職業指導員および生活支援員の総数は、常勤換算方法で、利用者の数を10で除した数以上
- 職業指導員の数は1以上、生活支援員の数は1以上
- サービス管理責任者は、利用者の数が60以下の場合は1以上。61以上の場合は、1に、60を超えて40またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上
- 職業指導員または生活支援員のうち、いずれか1人以上は常勤。サービス管理責任者のうち1人以上は常勤
気をつけたいのは、「常勤換算方法」で数え、「利用者の数」は前年度の平均値を使うという点です。ある日たまたま職員が少なかったからといって、そのまま基準違反になるわけではありません。逆に言えば、日々の実感だけで判断するのは難しい項目でもあります。
自分で確かめられるのは、掲示や運営規程に書かれた職種・員数・勤務の体制です。基準省令第89条(B型に準用)は運営規程に「従業者の職種、員数及び職務の内容」を定めることを、第68条(同)は事業所ごとに勤務の体制を定めておくことと、その事業所の従業者によってサービスを提供することを求めています。
工賃の決め方は、条文にはっきり書かれています
工賃については、基準省令第201条がB型固有の規定を置いています。第1項は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払わなければならないと定めています。第2項は、利用者それぞれに対し支払われる1か月当たりの工賃の平均額は、3,000円を下回ってはならないとしています。これは平均額についての定めであり、個人の額がある月に3,000円を下回ったこと自体を直ちに基準違反とするものではありません。第3項は工賃の水準を高める努力義務、第4項は年度ごとに工賃の目標水準を設定し、その目標水準と前年度に支払われた工賃の平均額を利用者に通知するとともに、都道府県に報告しなければならないという義務です。
あわせて、第202条が準用する第192条第6項により、工賃の支払いに要する額は、原則として自立支援給付をもって充ててはならないとされています(災害その他やむを得ない理由がある場合は例外)。工賃の原資は生産活動の収益であって給付費ではない、という建て付けです。
つまり、前年度の平均工賃額は通知が義務づけられているので、聞けば答えが返ってくるはずの数字です。一方で、工賃の額そのものが低いことは、それだけでは基準の問題ではありません。なぜこの水準になるのかという構造の話は「B型事業所はやめとけ」と言われる理由にまとめています。
生産活動については第84条(B型に準用)が、作業時間や作業量等がその人に過重な負担とならないよう配慮すること、能率の向上が図られるよう障害の特性等を踏まえた工夫を行うこと、防塵設備または消火設備の設置等、安全に行うために必要かつ適切な措置を講じることを求めています。体調に合わせた調整を相談できるかどうかは、ここに根拠があります。
虐待の防止と、身体拘束の原則禁止
基準省令第40条の2(B型に準用)は、虐待の発生または再発を防止するため、対策を検討する委員会を定期的に開催して結果を従業者に周知徹底すること、従業者に対する研修を定期的に実施すること、これらを適切に実施するための担当者を置くことを義務づけています。第89条(同)は、運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めることを求めています。
身体拘束については第35条の2(同)が、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行ってはならないと定めています。やむを得ず行う場合には、態様および時間、その際の心身の状況、緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければなりません。適正化のための委員会の定期開催、指針の整備、研修の定期実施も求められています。
何が虐待に当たるかは障害者虐待防止法第2条が定義しています。障害者福祉施設従事者等による障害者虐待として挙げられているのは、身体への暴行や正当な理由のない身体拘束、わいせつな行為をすることまたはさせること、著しい暴言や拒絶的な対応その他の著しい心理的外傷を与える言動、著しい減食や長時間の放置・他の利用者による虐待行為の放置その他の職務上の義務を著しく怠ること、財産の不当な処分その他不当に財産上の利益を得ることです。
苦情窓口、重要事項の説明と掲示、記録
基準省令第39条(B型に準用)は、利用者や家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないと定め、受け付けた場合はその内容等を記録しなければならないとしています。さらに、市町村や都道府県知事が行う調査に協力し、指導・助言に従って必要な改善を行うこと、社会福祉法第83条に規定する運営適正化委員会が行う調査またはあっせんに、できる限り協力することも義務づけています。受付先がどこかわからない状態であれば、それを聞くことが最初の確認になります。
第9条(同)は、利用の申込みがあったときに、障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、運営規程の概要、従業者の勤務体制その他の重要事項を記した文書を交付して説明を行い、提供の開始について同意を得なければならないと定めています。第92条(同)は掲示で、事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、協力医療機関その他の重要事項を掲示しなければならないとされ、これらを記載した書面を備え付けて関係者がいつでも自由に閲覧できるようにすることで掲示に代えることができます。掲示が見当たらないときは、備え付けの書面がどこにあるかを聞いてみてください。
記録については第75条(同)が、個別支援計画、サービス提供の記録、市町村への通知に係る記録、身体拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況および処置についての記録を整備し、提供した日から5年間保存することを義務づけています。第19条(同)は、提供の都度記録し、提供したことについて利用者から確認を受けなければならないと定めています。毎回のサインや押印はこれにもとづくものです。
このほか、災害・虐待その他やむを得ない事情がある場合を除いて利用定員を超えて提供してはならないこと(第69条を準用)、正当な理由がなく提供を拒んではならないこと(第11条を準用)、他の事業者等との間で紹介の対償として金品をやりとりしてはならないこと(第38条を準用)も定められています。
「おかしい」と感じても、基準の問題ではないこともあります
ここは正直に書きます。違和感のすべてが基準違反というわけではありません。
作業内容が自分に合わない、単調に感じる、やりたいことと違う。これは基準の問題ではなく、その事業所が請けている仕事の内容と、自分の適性や希望が合っていないという話です。事業所ごとに仕事の種類はまったく違うので、合う場所に移るという解き方になります。工賃が思ったより低いことも、決め方と通知が基準どおりであれば額そのものは基準違反ではありません。職員や他の利用者との相性が合わないというのも、基準の話ではありません。
ただし、著しい暴言や拒絶的な対応、他の利用者による虐待行為の放置は、先に挙げた虐待の定義に含まれます。相性の問題として自分の中で片づける前に、定義に当てはまるかどうかだけは一度見てください。 そもそもB型が自分に合っているのかという疑問であれば、就労継続支援B型はどんな人が使えるかのほうが答えに近いと思います。
相談できる先を、近い順に並べます
どこに話すのが正解ということはありません。近いところから順に試すこともできますし、事情によっては最初から外部の窓口に行っても差し支えありません。
| 相談先 | どういう立場か | できること |
|---|---|---|
| 事業所の苦情受付担当・サービス管理責任者 | 事業所の内部。基準省令で窓口の設置が義務づけられている | 直接の話し合い。苦情の内容は記録される |
| 相談支援専門員(指定特定相談支援事業者) | サービス等利用計画を作った人。事業所とは別の事業者で、利用者と事業所の間に立つ | 状況の整理、事業所との連絡調整、計画の見直し |
| 市区町村の障害福祉担当課 | 支給決定をしている窓口 | 相談の受付。法第48条により報告徴収・立入検査ができる |
| 指定権者(都道府県・指定都市・中核市) | 指定と指導監査を行う立場。どこが指定権者かは事業所の所在地で変わる | 指導・監査。是正の勧告、公表、命令 |
| 運営適正化委員会(都道府県社会福祉協議会) | 社会福祉法にもとづく第三者機関 | 相談、助言、事情の調査、同意を得たうえでのあっせん |
| 市町村障害者虐待防止センター | 障害者虐待防止法にもとづく市町村の窓口 | 通報・届出の受理、相談・指導・助言 |
| 都道府県障害者権利擁護センター | 同法にもとづく都道府県の窓口 | 相談への対応、相談機関の紹介、市町村への援助、情報提供 |
事業所の中の窓口と、相談支援専門員
苦情の受付窓口の設置は基準です。個別支援計画の内容に関することであれば、サービス管理責任者が担当になります。ただ、毎日通う場所に直接言うのは負担が大きいと思います。ここを飛ばして次に進んでもかまいません。順番に決まりはありません。
外部でいちばん近いのが、サービス等利用計画を作った相談支援事業所の担当者、相談支援専門員です。通っているB型事業所とは別の事業者で、利用者と事業所の間に立つ立場にあります。障害者総合支援法第5条は、計画相談支援を「サービス利用支援」と「継続サービス利用支援」から成るものと定義していて、後者は主務省令で定める期間ごとにサービスの利用状況を検証し、その結果と心身の状況等を勘案してサービス等利用計画の見直しを行い、計画の変更や新たな申請の勧奨を行うものとされています。定期的に状況を確認する役割が制度上あるということです。
担当者がわからないときは、受給者証や契約時の書類に相談支援事業所の名前が書かれています。それでもわからなければ市区町村の障害福祉担当課で確認できます。
市区町村の障害福祉担当課
支給決定をしている窓口です。障害福祉サービスの受給者証を出したところ、と考えるとわかりやすいと思います。
課の名称は自治体ごとに違います。「障害福祉課」のところもあれば、「福祉課」「健康福祉課」「障がい福祉係」など、表記も分かれます。全国共通の名前はないので、電話で「障害福祉サービスの支給決定をしている窓口につないでください」と伝えるのが確実です。
なお、市町村によっては、地域の相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターが置かれています。障害者総合支援法第77条の2で市町村の設置は努力義務とされているため、置かれていない市町村もあります。あるかどうかは市区町村の窓口で確認してください。
指定権者(都道府県・指定都市・中核市)
指定を行い、指導と監査を行う立場です。是正の勧告、公表、命令といった手段を持っているのはここです。繰り返しになりますが、どこが指定権者かは事業所の所在地によって変わります。原則は都道府県ですが、指定都市・中核市などでは大都市等の特例により、その市が都道府県の事務を処理します。わからないときは市区町村の障害福祉担当課で聞けますし、事業所が掲示している重要事項の書面に指定番号や指定した行政庁が記載されていることもあります。
運営適正化委員会
社会福祉法第83条により、都道府県社会福祉協議会に置かれる委員会です。福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するために設けられていて、社会福祉・法律・医療に関して学識経験のある者などで構成されます。名称は法律で定められているので全国共通です。
同法第85条により、苦情について解決の申出があったときは相談に応じ、必要な助言をし、事情を調査します。申出人と、サービスを提供した者の双方の同意を得て、苦情の解決のあっせんを行うこともできます。さらに第86条では、苦情の解決に当たり、利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し速やかにその旨を通知しなければならないとされています。行政につながる経路が法律上用意されている、ということです。
虐待防止センター・権利擁護センター
障害者虐待防止法にもとづく窓口です。ここは条文の書き方を正確に押さえておく必要があります。
同法第16条第1項は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならないと定めています。「思われる」段階での通報が義務であり、確証を求められているわけではありません。第2項では、虐待を受けた障害者本人が市町村に届け出ることができるとされています。第3項は、刑法の秘密漏示罪その他の守秘義務に関する法律の規定は通報(虚偽であるものおよび過失によるものを除く)を妨げるものと解釈してはならないとし、第4項は、障害者福祉施設従事者等は、通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないと定めています。
通報の受け先は市町村です。同法第32条第1項は、市町村は、障害者の福祉に関する事務を所掌する部局または当該市町村が設置する施設において、その部局または施設が市町村障害者虐待防止センターとしての機能を果たすようにするものとすると定めています。条文がこの書き方をしているとおり、独立した名前の建物や窓口があるとは限りません。市区町村の障害福祉担当部局がその機能を担っていることも多く、名称や連絡先は自治体ごとに違います。市区町村のウェブサイトか電話で「障害者虐待防止センターの機能はどこが担っていますか」と聞くのが確実です。
都道府県には、同法第36条により都道府県障害者権利擁護センターが置かれます。虐待を受けた障害者に関する問題について相談に応じ、または相談を行う機関を紹介すること、情報の提供・助言・関係機関との連絡調整その他の援助を行うことなどが業務です。どこに相談すればいいかがわからない段階でも、相談先を紹介してもらう使い方ができます。
事業所を変えるという選択肢もあります
これは、辞めることを勧める話でも、引き止める話でもありません。移れるという事実だけを書きます。
B型を利用しているということは、市区町村から支給決定を受けて受給者証が交付されている状態です。基準省令第14条(B型に準用)は、事業者が提供を求められた場合に、その人の提示する受給者証によって支給決定の有無、有効期間、支給量等を確かめるものとしています。受給者証は特定の事業所に結びついたものではありません。
手続きは、市区町村と相談支援専門員を通します。事業所の側についても、基準省令第12条(同)が、市町村や一般相談支援事業・特定相談支援事業を行う者が行う連絡調整に、できる限り協力しなければならないと定めています。見学をしてから決めることもできますし、並行して見学し、比べたうえで決めても差し支えありません。何を聞けばいいかはB型事業所の見学で聞くべき質問リストにまとめました。この記事で挙げた確認項目のうち、個別支援計画、工賃の通知、掲示のあたりは、見学の場でもそのまま聞ける内容です。
そして、基準省令第11条(同)が定める提供拒否の禁止があります。苦情を言ったことや、他を見学したことが理由で締め出される、という前提で動く必要はありません。
最後に
いま感じている違和感が基準の問題なのかどうかは、この記事の一覧を上から見ていけば、ある程度は自分で判断がつくと思います。個別支援計画の控えが手元にあるか。前年度の平均工賃を知らされているか。苦情の受付先が示されているか。掲示か備え付けの書面があるか。この4つだけでも、かなりのことがわかります。当てはまらない項目が見つかったとしても、いきなり大きな話にする必要はありません。事業所に聞いてみて済むこともありますし、相談支援専門員に間に入ってもらう段階で整理がつくこともあります。
一方で、身体拘束や、暴言・拒絶的な対応・放置に思い当たることがあるなら、そこは相性や我慢の問題として自分の中に置いておくものではありません。障害者虐待防止法は、受けたと思われる障害者を発見した者に対して通報を義務づけています。確証がなくてもかまわないという書き方になっているのは、確証を集める役割を本人や周囲に負わせないためです。
判断がつかないまま通い続けるのが、いちばんつらい状態だと思います。まずは、条文に照らして何が確認できて何が確認できなかったのかを、メモに書き出すところからで十分です。それを持って相談すれば、話は具体的に進みます。
わたしたち自身が就労継続支援B型を運営している立場なので、この記事は身内に厳しい話を含みます。それでも書いておきたいのは、おかしいと感じたことを口に出すのは利用者にとって負担が大きく、多くの場合は黙って辞めるほうが選ばれている、ということです。黙って辞めても構いません。ただ、身体拘束や暴言に当たることであれば、次に通う方のために通報という道があることだけは知っておいてください。
